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20話 肝試し

 黒と白を基調としていて、たくさんのフリルがあしらわれたメイド服に身を包みこむ。

普段全くしない格好で、さらにスカートがいつもの制服よりも短いせいで、ずっと恥ずかしさを感じている。そう今日は夏祭りの日で、この地域の赤ちゃんから老人までもが私の通っている高校にやってくる。私の住んでいるところは大して都会でもないため、こういった地域のつながりが強く、市長までもが来て夏祭りをすすめていく。

大人だけでなく高校生や中学生、小学生までもがクラス単位で屋台を開くため、なかなかの規模のものである。


 私のクラスでは、今の私の恰好から分かるようにメイド喫茶をやることになっていた。

私としてはこんなにフリルのついた服はきたくない。

しかしクラスの中心的存在の男子のこの一言でやることに決まってしまった。

「水無月里穂さんのメイド服姿が見たい人挙手!」

慌てながらあたりを見渡す私の視界には、多くの手による壁ができているようだった。

こうして今に至る。


 「大丈夫だよ。水無月さんかわいいし、それにお嬢様みたいだから」

「お嬢様だったらメイド服じゃなくてドレスじゃない?」

メイド服を着るのを手伝ってくれた女子二人が会話を繰り広げる。

私は二人の会話が面白くて、恥ずかしさを忘れながらふと笑ってしまった。

「うむ、恥ずかしがっている姿もよかったけど、笑ってる姿もいいね」

二人のうちの一人が右手を顎に当てて、評論家といえばこれといわんばかりの口調や音程やしぐさで、私の体や顔を見る。

その様子がおかしくて、私はまたも笑ってしまい、恥ずかしさはほとんど消えていた。


 校舎の一番目立つところに設置されている大きな時計の長針と短針は、ともに真下を指していた。

少しそらは夕焼けで赤らみ始めていて、もうすぐ日の入りというところだった。

そして、この時間を待ってましたと言わんばかりひぐらしが鳴き始める。

私はひぐらしのその情緒あふれる泣き声が好きだった。

しかし、今年はできれば聞きたくなかった。

なぜならひぐらしの鳴き声は、私に夏の終わりを感じさせるからだ。

それはつまり、夏休み中ほとんど毎日麻衣さんと遊んでいた私が、麻衣さんと別れなければならないということだ。


 私は夏の終わりを感じつつ正門の方をただただ見つめていた。

屋台の準備に来た学生や大人だけでにぎわっていたところに、ほかの人々が流れ込みだす。

とうとう夏祭りの開幕の時間になったのだ。

そんななかちょうど私の携帯がメールの着信を教えるために鳴り響く。

”ちょっと遅れそうかも。里穂ちゃんのクラスは2年1組だったよね? 今行くから待っててね”

麻衣ちゃんからのそんな報告に私の頬は自然と緩んでいた。


 するととうとうお客さんらしき一人の男性がやってきた。

「ほら接客して来いよ。メイド長さん」

私がメイド服を着ることになった原因でもある男子に背中をポンとたたかれて、私は仕方なく接客しに行った。

「お帰りなさいませ、ご主人様……」

私はあまり自信を持てていないせいで声が小さくなってしまう。

それに、その男性からも、生徒からも、いろいろな人からの視線を感じて、さらに恥ずかしくなってしまっていた。


 それからいろいろな人を接客して40分が経った時だった。

麻衣ちゃんとその妹の春香ちゃんが私たちの屋台のところまできて、手を振っている。

「お帰りなさいませ。ご主人様!」

私は今日一番の笑顔で、麻衣ちゃんに話しかける。

それから私は麻衣ちゃんに紅茶やお菓子を提供したりと、楽しく接客した。

仕事を始めて50分ほどが経った頃、麻衣ちゃんたちが食べ終わり、店を出ようとしていたので、私は”またあとでね”とサインを送る。


 「まだ後半組との交代まで10分ほどあるけど、水無月さんがいっぱい頑張ったんだし、早く上がっていいよ」

さっき私がメイド服を着るのを手伝ってくれた女子生徒が私にそう言ってくれて、さらに周りの生徒も頷いていたので、私はその言葉に甘えて早く仕事を終えて麻衣ちゃんたちと遊ぶことにした。

「ありがとう! みんな!」


 「里穂ちゃんのメイド服姿すっごくかわいかったよ」

「ありがと! って、着替えるの忘れちゃった……」

私は麻衣ちゃんと早く屋台を回りたい一心でメイド服を着たままで来てしまっていた。

しかし私がメイドカフェをしていたところから若干離れて、千香が屋台をやっているところまで来ていたので、私はそのままでいることにした。


 千香のクラスの屋台までやってくると、千香は仕事を終えて屋台の前で立って待っていた。

「お姉ちゃん! 肝試しいきたい!」

4人がそろった時に唐突に春香ちゃんがそう言った。

「いいよ。里穂ちゃんと千香ちゃんも大丈夫?」

「私は普通に大丈夫だけど、千香いけるの?」

私はお化けの類が苦手な千香の顔を覗き込みながら質問する。

「い、いける! お、お化けなんて全然怖くないもん!」


 春香ちゃんという同い年の女の子がいるせいなのか、千香は間違いなく強がっている。

私は本当に大丈夫なのかと心配しながらも、4人で肝試しのやっているところまでやってきた。

肝試しが行われているのは校舎から少し離れたところにある、山の登山口で私たちの前に数人の人と受付の人がたっている。

毎年自治会の人たちにより行われている肝試しなのだが、一組最大二人までという決まりがあったので、私たちはグーとパーの二種類の手の形でチーム分けをする。


 私は春香ちゃんと、千香は麻衣ちゃんとペアになり肝試しに参加することになった。

千香と麻衣ちゃんのペアがまず先に出発し、その5分後に私と麻衣ちゃんが出発する。

私は千香が怖くておもらししないか心配でもあったが、春香ちゃんとはぐれないようにしっかり手をつなぎ、暗い山道を進んでいく。

急に驚かされて、ビクッと体を震わせて怖がる春香ちゃんはとてもかわいかったが私は気がかりなことがあった。


 今思い返してみると、メイドカフェで働く直前にトイレに行って以来私はおしっこをしていないため、1時間以上たった私の膀胱にはおしっこがたまってきていた。

私は春香ちゃんに見えないように、手をつないでいないもう片方の手で股間を抑える。

しかし、メイド服特有のフリルや分厚い生地のせいで全く効果はない。

次第に歩くペースが遅くなっていく私に気が付いた春香ちゃんが私のことを心配する。


 「里穂お姉ちゃん大丈夫?」

そう聞かれて、私は無理をして歩く速度をもとの速さに戻した。

すると足を一歩進めるごとにおしっこがあふれ出してきて、メイド服を着るために履いていたかぼちゃパンツのようなドロワーズがおしっこで濡らされていく。真っ白だったドロワーズが私のおしっこにより黄色く染まっていくのが太ももを通してわかる。

ふわりとしていて、ある程度ならおしっこを吸収しそうなドロワーズだったが、次第にその限界値を超えて、今度はメイド服のスカートを広げるために履いていたパニエを濡らしていく。


 いつものような生地一枚のスカートとは違い、多くの生地で下半身が覆われているため初めはおむつのようにおしっこは吸収されていたが、次第に生地にしみこんだおしっこが重力でスカートの下の方へと伝る。おしっこをたくさん吸った生地は重く、まるでおむつをはいているような感覚だ。

おしっこはとうとう生地伝い、地面にぽたぽたと落ちていく。

おしっこの大半が生地に吸収されていたせいで、できる水たまりと地面に落ちる水流は小さく弱いものだったが春香ちゃんには気づかれてしまっていた。


 「里穂お姉ちゃんおもらししちゃったの? よしよし、大丈夫だよ……」

「ありがとう……」

私は春香ちゃんに背中をなでられたまま、少しの間立ちすくんでいた。



 


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