2話 私のおしっこで千香を濡らしてしまうなんて……
「漏れる、漏れる、漏れちゃうよ!」
私は自転車を雑に降りて、左手を股間に挟みながら内股になって玄関まで走る。
素早く鍵を取出し、一瞬で鍵穴に鍵を差し込む。
私は手首を反時計回りにひねり、鍵を開けてドアを勢いよく開ける。
「あっ!」
靴を脱ぐために右手を離した瞬間、おしっこがあふれ出てきた。
手にも、太ももにも相変わらずの生暖かい感触が伝わる。
しかし、私は止まることなく、家に入ってすぐのところにあるトイレまで向かった。
その間もおしっこは出続けていて、玄関からトイレまでの道は私の黄色いおしっこでびしょぬれになっている。
私はそれでも、急いでトイレに入り、おしっこを吸って重くなったショーツを降ろす。
私が便器に腰掛けるころには、もう70%ほどのおしっこは出てしまっていた。
「はぁ…… スカートもショーツも靴下も濡れちゃったし、後始末大変だなあ」
私は残りの30%のおしっこを出しながら、独り言をつぶやく。
私がトイレットペーパーを巻き取り、股間や太ももを拭いているときだった、玄関のドアが再び開いて、誰かが入ってきた。おそらく、お母さんだろう。私はちょうどいい時にお母さんが帰ってきてくれて助かったと思った。
「お姉ちゃん! ただいまぁ~」
私の顔から一気に血の気が引いた。私のことを”お姉ちゃん”と呼ぶのはもちろん千香だけである。
だめ、とうとうバレちゃう。
私がおもらししたみっともない姿を千香が見てしまう……
タッタッタッタと、小学1年生らしく、かわいらしい足音が玄関からする。
次にドンと重い音が廊下に響いた。千香が私のおしっこに滑って、転んでしまったようだった。
私はすぐさまショーツを上げて、千香が安全かどうかを確認するためにドアを開けて、トイレを出る。
「いたたた。みず……?」
千香が廊下に広がっている水たまりの正体を確認するために、床に鼻を近づける。
「ち、千香! 大丈夫?」
私は千香におしっこの臭いをかがれるのを避けるために急いで呼びかけた。
「あ! お姉ちゃん!」
千香は私を見つけるとすぐに、私に抱き着きに来た。
私は千香を受け止めるために、千香の背中に腕を回す。
すると、千香の背中は私のおしっこでびっしょりと濡れてしまっている。
「お姉ちゃん、このお水なあに?」
とうとう聞かれてしまった。でも千香にバレちゃだめだから、嘘でも隠し通さないと。
私は中学一年生の時のお花見でしてしまったおもらし以来、絶対に見せてはいけないと決心してきたのだ。
「ちょっと掃除しようとしてたら、バケツをひっくり返しちゃって……」
水たまりの近くにバケツは一つもない。私はそんな見え見えのうそを千香についた。
「そうなんだ。千香もお片付け手伝うよ‼」
心臓が締め付けられるように痛い。嘘をついてやさしさをもらうのが一番つらい。
やっぱりおもらし癖自体を治さないといけないんだ。
「千香はやさしいね。でも、風邪ひいちゃいけないから先にお風呂に入ってて」
「やだ、お姉ちゃんと一緒に入りたい! それにお姉ちゃんもスカート濡れてるもん!」
こんなの、断れないよ。だって小学一年生の女の子がこんなにお願いしてきてるんだから。
私はおもらしの後片付けを後にして千香とお風呂に入ることにした。
私たちはぽたぽたと廊下に水滴を落としながらも脱衣所に向かう。
千香の重くぐっしょりと濡れた服を脱がしてあげる。
「お水いっぱい吸ってるね」
私はその純粋な一言に、嘘をついておしっこだという事実を隠している私の心はつらくなる。
何にも返答せずに、私は自分の服も脱いで、洗濯機に直接入れた。
私は千香の体を、いつもよりも入念に洗ってあげる。
それはもちろん、私のおしっこで汚れてしまったせいだからだ。
だが、千香は何にも気づく様子はない。
私は安心すると同時に、嘘をついている罪悪感を感じる。
私の中では、千香に嘘をつきたくないけど、おもらしのことを知られたくないという葛藤が渦巻いていた。
私たちはお風呂を上がり、パジャマに着替える。今日はお母さんもお父さんも仕事で遅くなるらしいので、千香と私の二人だけだ。私は洗濯機のそばにある、いつもおもらしの後始末に使うタオルとバケツをもって玄関に行く。
お母さんがいないときはいつもこうして、一人でおもらしの後始末をしている。タオルで出来る限りおしっこを吸い取ってバケツの上で絞る、これの繰り返しだ。
最後の一滴までをタオルで吸い取り、バケツにたまった私のおしっこをトイレに流し、タオルを軽く水洗いした後に洗濯機に入れる。
そしておしっこで濡れた衣類とともに洗う。
いつもどおりのおもらしの後始末を終えた私には謎の達成感があった。
私はリビングに戻り、それから千香と一緒にテレビを見ていた。
一つの番組が終わり、私は千香に目を向ける。
すると千香は目をこすりながら、可愛くあくびをしていた。
「千香、そろそろ寝た方がいいんじゃない? 私ももう眠いし」
「今日はお母さん居ないから、お姉ちゃんと寝たい」
千香は私の袖を引っ張って、私の部屋へと向かう。
「千香、寝る前にトイレ行かなくて大丈夫?」
私がそう聞くと、千香はこくりと頷いた。
「じゃあ私は、トイレに行くから少し待っててくれる?」
すると、千香は再び頷いた。
私はトイレに入り便器に座りながら、深く考え込んだ。
私はおもらしと同様に、三日に一度ぐらいの頻度でおねしょをしてしまう。
なのでいつもはお母さんにおむつを付けてもらっているのだが、今日はまだお母さんが帰ってきていない。
「今朝おねしょしたばっかりだし、さすがに今日は大丈夫だよね。それに、お母さんが帰ってくるまで起きていればいいんだし」
考えを決めた私は、たまっていたおしっこを出しきって、トイレットペーパーで股間を拭く。
トイレを出ると、千香が眠たそうな目をこすりながら私のことを待っていた。
「ごめんね、おまたせ。ねよっか」
千香はこくりと頷き、私たちは私の部屋のベッドに一緒に入る。
小学生の体温は私の体温よりもずっと高く、いつもはなかなか温かくならない布団が、すぐに温かくなった。
その温かさのせいで、お母さんが帰ってくるまで起きていようと思っていた私もつい、うとうとし始める。
「たぶん、大丈夫だよね……」
私はそう一言だけつぶやいて、眠りについた。