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14話 千香が廊下で

 私達がご飯を食べていると次第に外の雨風の音が強くなってきていた。

時々風が窓に垂直にあたり、窓から音がすることもあった。

「台風強くなってきたわね。停電しないといいけど……」

お母さんのその言葉を聞き、千香の表情が少し暗くなったことに私は偶然気が付く。

千香は生まれてからずっと暗いところが苦手で、今でも夜は一人でトイレに行けないほどだ。


 突然大きな雷鳴が白い光とともに私を驚かす。

その数秒後に、私の視界は突然真っ暗になった。それは停電だった。

私は驚きが重なってしまい、ためていたおしっこが漏れ出してしまいそうになる。

私はとっさに頭に巻いていたタオルを手に取り、パジャマの上から股間にあてた。

おしっこがどんどんと出てきて、ショーツを突き抜け、パジャマの薄い生地も抜けてタオルに吸収されていく。暗くて何にも見えないが、白かったタオルが黄色に染まっていくのが目に浮かぶ。


 おしっこを全部出し終えると私の手元にはずっしりと重くなったタオルがあった。

少しでも圧迫すれば、タオルからおしっこがしみだしてきて床を濡らしてしまいそうだ。

暗闇の中で徐々に目が慣れてきて、目の前のテーブルと料理位なら見えるようになってきた。

すると、突然私の腰回りに抱き着く感触があった。

私は体に伝わるその感触の大きさからすぐにその正体が千香であるとわかる。

しかし、千香の左手は私のパジャマの濡れている部分にちょうど触れていた。


 「お姉ちゃん、なんでパジャマ濡れてるの?」

「雷に驚いてお水こぼしちゃったの」

私がまた千香に嘘をついた直後に、千香がじたばたしだしだした。

私はすぐに千香にどうしたのか聞く。

「おトイレ行きたい! けど怖いからお姉ちゃん一緒に来て!」

その言葉とともにパジャマの濡れた部分にあった左手が離れ、右手が私の左手をつかむ。

私は千香の苦しむ顔が見たくない。だから私は何としてでも千香を無事にトイレまで連れて行ってあげなくてはならないのだ。


 私は右手に持っていた、おしっこをたくさん吸ったタオルを自分の椅子の上に置き、千香の手を引っ張ったままリビングを出た。

ほとんど何も見えないので、私はあいている右手で壁を伝いながらトイレまで行く。

さすがに何年も住んでいると、家の間取りが感覚的にわかるようになってきていた。

私の左手には千香がおしっこを必死に我慢している振動が伝わる。

千香の右手が少し下がったり、私の手を時々強く握ったりと、常日頃からおしっこを我慢している私には、千香がどんな姿勢でどんな状況なのかがよく伝わってくる。


 ゆっくりと廊下の壁をつたい、トイレまでリビングからあと半分のところにやって来た。

「千香、あと半分だよ。我慢できる」

千香からの言葉での返事はなかったが、微かな光の中で千香がうなづいているのが若干分かった。私はそのまま千香の手を引っ張っていく。

そしてとうとうトイレまであと1メートルというところまでやって来た。


 しかし、突然今歩いている廊下の奥にある窓から、白い光が白いカーテンを超えて、強烈な音とともに私達を刺激する。

「お化け!!」

千香が突然高い声で叫んだ。

すると、私の左手を握っていた千香の手が突然緩む。

私は千香がおもらししてしまうと、とても心配したが私もそれどころではなかった。

雷に驚いたはずみで、さっきのおもらしからまた少し溜まっていたおしっこが流れ出してきたのだ。


 私の股間から再びでてきたおしっこは、私のショーツとパジャマの濡れた部分を温める。

しかし、どちらも薄い生地なせいで吸収しきることはできずに床にぽたぽたと水滴を作っていく。だが、現在隣では千香がおもらしをしていて私のおもらしの音はかき消される。

すると再び雷が鳴り、一瞬辺りは明るくなった。

私はその一瞬のうちで二つのものを見た。


 一つは私たちのおしっこによりできている水たまりだ。

もう一つは、千香が言っていた幽霊だった。

幽霊といっても本物ではなく、白いカーテンに雷光があたりカーテン自体が明るく照らされるのだが、一部分には影ができていて、おそらくその影が幽霊に見えたのだろう。

その影の正体はカーテンの裏にある植木鉢で、一目見てパニックになってしまった千香には幽霊に見えてしまったのだろう。


 そんなことを考えているうちに、千香のおしっこが私の足を濡らしていく。

足に伝わる波の振動がなくなったのは、千香のおもらしが終わったのを知らせるサインだった。

「千香、着替えにいこうか」

「お姉ちゃん着替えさせて」

私は隣にいる千香の頭を優しくなでてあげた。でも私はすでに食事中に漏らしていたし、今も雷に驚いておもらししてしまっていたためそんなことができるような立場でもなかった。

だけど、私はお姉ちゃんとして千香の笑顔を誰にも奪わせないようにしなくてはならない。

勝手だが私はそんな風に使命を感じていた。


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