13話 雷で
麻衣ちゃんと出会ったあの家族旅行から数か月が経ち、雨や台風が多い季節となった。
あれからも私は幾度とおもらしをしてきたが一度も千香におもらしがばれることはなかった。
天気の悪い日が多くなり、洗濯物がなかなか乾かないこの梅雨の季節。よくおもらしをしてしまう私が大嫌いな季節だ。なぜなら、おもらしやおねしょをしてしまえばその服を部屋の中で干さなくてはならず、千香に見られる可能性がぐんと上がるからである。
そのため私は、洗濯物を減らすことと兼ねて、この時期は日中ずっとおむつを着用していた。
だけど、この時期におむつをしていなければならない理由はほかにもある。
いつもは自転車通学の私も、この時期はいつ雨が降ってきてもいいように徒歩通学にしていた。すると、私の体を一滴の水が濡らす。
「せっかく今日はいい天気だと思ったのに」
なんて一人で愚痴をつぶやきながら私は鞄から折り畳み傘を取り出そうとするが、鞄の中に突っ込んでいる私の手が折り畳み傘に触れることはなかった。
徐々に雨が強くなっていき、私の服や髪やカバンにしみこんでいく。
雨が何度もアスファルトをたたき、音を奏でる。
そんな中で、せわしく私の足がアスファルトを強く蹴る音も入り込んだ。
私が走っているのはただ単に雨が降ってきたからだけではない。
徒歩通学になり、学校までかかる時間が格段と増えたせいで、元からあまりおしっこを我慢できない私にはギリギリだった。
いざという時はおむつがある。でもそう簡単に頼っていては駄目なような気がする。
私はおしっこできるだけ我慢するためにぎゅっと股間を抑えながら家まで走る。
足がアスファルトに当たり、再び跳ねる。その都度、私はついおしっこを我慢できずにちょっとだけ出してしまう。
私の家の屋根が目に入る。
「もう少し……」
でもこのころには幾度と重なるおちびりのせいで、おむつはあたかもおもらししてしまったかのようになっていた。脳裏には旅行に行く前日にしてしまったおもらしがよみがえる。
家について急いで鍵を開ける。玄関には小学生が使うような小さい靴と小さい傘があった。
私がドアを開け閉めする音を聞いてその持ち主が廊下の奥から現れる。
その時だった。
私の背後にある玄関のすりガラスから、強く白い光が差し込む。
そして、待つ暇もなく大きな音が私の耳を、体を刺激する。
ビクッと私の背筋が硬直していた。驚きすぎていて私は声を出すこともできない。
激しい音が少しの余韻を持たせつつ徐々に消えていくとともに、私の背筋の硬直も解け体が脱力していく。
始めは全くその感覚はなかったが徐々に下半身に広がる湿っぽさとぬくもりを感じる。
おもらししちゃってる。
私はおむつをしていることも忘れて、股間に強く手を当てた。すると、現在進行形でおしっこの排出される振動がおむつを通して私の手に伝わる。
おむつをしているということに気が付き少し安心するが、千香の目の前でおしっこをしていることには何の変りもなく、とても恥ずかしい。
「お姉ちゃん、雷嫌いなの?」
「突然だったからちょっとびっくりしただけだよ」
突然の雷に驚いて強がることを雷が嫌いというのではないのか。
そんな考えも私の頭には浮かんでいたが、私の脳内の大半を占めていた思いは、千香に弱いところを見せてはいけない、立派なお姉ちゃんでいないとという気持ちだった。
「千香はリビングでテレビでも見てて、お姉ちゃん濡れちゃったからお風呂に入ってくる」
「千香も一緒に入りたい!」
あの時のおもらしとかなり状況が酷似しているので、こうなることも少し考えいた私は動じなかった。
「分かった。じゃあパジャマ持ってくるから先に脱衣所行ってて」
千香は大げさに頷いて、脱衣所のある方に走っていった。
私は自分の部屋に戻り、まずおしっこで濡れたおむつを脱ぐ。大量におしっこを吸ったそのおむつの重みは数か月前と何にも変わっていない。
私成長してないんだなぁ
なんて思いつつ、パジャマを腕に抱えて部屋を出る。
私は千香の部屋にもより、千香のパジャマを私のパジャマと合わせて腕に抱えた。
そのあと私は週何日かあるように、千香と一緒にお風呂に入り体を洗い合った。
お風呂を上がった後におもらしをすることは少なかったので、私はおむつを付けずにショーツを履いた。
その後お母さんが帰ってきて、そのまま晩御飯の準備に取り掛かる。
私が千香の相手をしながらテレビを見ていると、バラエティー番組が突然終わりニュース番組に変わった。テレビにはアナウンサーが風雨にさらされながらもリポートする場面が流れている。今回の台風は今までとは比べ物にならないほど強く、一部地域ではすでに特別警報が出ているほどだった。次にテレビは予報円のグラフが映る。どうやら私たちの住んでいるところには、今から1時間後の8時ごろにピークが来るらしい。
雷がなければいいんだけど……
食卓にシチューの匂いが広がる。
梅雨の時期なのにシチューなんて珍しいなとも思いつつ、私はお母さんの作るシチューが好きだったので、普通に夜ご飯を食べていた。
突然窓から白い光が差し込む。私は次の音に備えて身構える。
2秒ほどしてから少し離れたところで雷の音が聞こえてきた。
しかしその特徴的な重低音は来るとわかっていても怖く、少しだけおしっこを出してしまった。私はテーブルと体の間を覗き込み、パジャマの様子を見る。
パジャマが薄い生地でできているということもあるが、直径6センチほどのしみができてしまっていた。濡れたパジャマとパンツが鼠径部や股間に張り付き、私が少し漏らしてしまったことを直に私に伝える。
今日一晩乗り切れるかなぁ……