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12話 また会おうね!

 私はお母さんにゆすられながら徐々に目を覚ました。お母さんにこうして起こされるときは大体私がおねしょをしているときである。お母さんは千香に見られないようにいつも私を先に起こしておむつを変えてくれる。私はそんなお母さんに毎日感謝していた。

いつもは私の部屋でお母さんと私だけで行われるおむつ替えだが、今日は千香やお父さんが寝ている横で行われる。私はお父さんや千香が起きてしまうのではないかという緊張はあったがそんなことは起きずに無事に私のおむつ替えは終わった。


 それから千香もお父さんも目を覚まして、しばらくしてからおいしそうな朝食が部屋に運ばれてくる。運んできてくれた人の中には麻衣ちゃんもいて、昨日のことを思い出して私は少しドキッとする。麻衣ちゃんが私の前に料理の乗ったお盆を置いてくれた。

よく見るとその漆塗りのお盆の上には一枚の紙切れが置いてあった。

私はお盆に並んだ料理のお皿を少しずらし、つまむようにしてその紙切れを手に取る。

その紙切れにはメールアドレス的なものが書かれていた。

私はすぐさま、部屋を出ようとしていた麻衣ちゃんを見ると、麻衣ちゃんは振り向いて私にウィンクを返した。


 私は朝食を終えた後、すぐに麻衣ちゃんにメールを送信した。

すると、しばらくしてから私の携帯が一度なる。

”メールありがとう。いつまでこの旅館にいるの?”

そういった内容だったので、私は今日のお昼ごろに帰ると入力して返信した。

次に私の携帯が再びなるまでにほとんど時間はかからなかった。

”そうなんだ…”

そのメールの返信の速さと、点がついていることから、麻衣ちゃんが悲しんでいることがすごく伝わってくる。私もせっかく仲良くなれた麻衣ちゃんとお別れするのは少し寂しい。

私は昼ごはんの後にチェックアウトすることをメールで伝えた。

 

 昼ご飯を終えて、私達はスーツケースや各々の鞄に荷物を詰めて帰る準備をする。

お父さんチェックアウトを済まして、部屋のカギを受け付けをしている女将に部屋のカギを返す。車が旅館の前にすでに出されており、お父さんはスーツケースなどの荷物をトランクに詰めていく。私達を見送りに、女将さんだけではなく麻衣ちゃんも来ていた。


 私はお父さんの気をひくためにお父さんの肩を二回たたいた。

「次も絶対ここにしようね!」

その言葉は単純にお父さんに向けたものではない。私は麻衣ちゃんにも聞こえるようにあえて大きな声で言ったのだ。その時ちらりと麻衣ちゃんを見ると、麻衣ちゃんの目元がキラキラと輝いていた。その様子を見て、私の視界は少し潤んで歪んでしまった。


 私たちは車に乗り込んだ。千香は相変わらず助手席に座り、私はお母さんと後部座席に座っている。車が動き出し、私はとっさに車の窓を開く。

私は頭と右手だけを車の外に出した。私の髪が風で煽られてふわりとなびく。

そんな中で私は麻衣ちゃんに大きく手を振った。

「麻衣ちゃん! また会おうね!!」

「うん! 絶対だよ~!」

私の声も麻衣ちゃんの声も、少し上ずって震えていた。

私の目に映るのは、ただただ遠ざかり小さくなっていく、歪んで見える旅館と麻衣ちゃんと女将さんの姿だった。


 数時間が経ち車は、高速道路の渋滞にはまってしまい、全く動けなくなってしまっていた。

高速道路に入る前にも私は一応トイレに行っていたのだが、さすがに渋滞ではどうしようもなく、恥ずかしさを感じながらもおむつにおしっこをした。

おしっこはどんどんと私のおむつを膨らませていき、おむつ全体を濡らしていった。


 恥ずかしさと解放感でぼーっとしていた私を呼び戻したのは携帯の着信音だった。

予想した通り、その着信音の正体は麻衣さんからのメールだった。

”高速道路に入る前にちゃんとトイレに行っておもらししないようにね”

そのメールからとても大きな優しさを感じる。

私の胸はぽっと暖かくなっていた。

”もう、おむつにおもらししちゃったよ((笑))”

おもらししているのに笑っているだなんておかしいかもしれないが、実際に私の頬は緩んでいる。


 「お姉ちゃん、なんで笑ってるの?」

助手席に座っている千香が私の方を振り向いて、そう聞いてくる。

「お友達ができたからだよ」

私が千香に笑顔を見せながら反応を返していると再び私の携帯が鳴る。

”千香ちゃんにばれてない?”

”ばれてないよ”

私はすぐに返事を返した。


 「今日のお姉ちゃん、すっごく嬉しそう。お姉ちゃんが笑ってると千香もうれしい!」

また、私の頬が緩んでいたみたいだった。

「ありがと! 私も千香の笑顔大好きだよ!」

そう、この大好きな笑顔を守るために、隠さないといけないんだ……



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