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11話 真実を隠す痛み

 それから私たちはぽたぽたと水滴を垂らしながらも麻衣ちゃんの部屋まで歩く。

麻衣さんの部屋に入り、私たちは軽く羽織っただけだった浴衣を脱いで、裸になった。

下半身をおしっこで濡らした裸の女子高生が二人いるその空間はどこからどう見ても異様な光景だろう。

「じゃあまず、私が里穂ちゃんにつけてあげるね。さっきみたいに寝転がって」

言われたとおりに、私はおむつ替えシートの上に寝転がった。


 麻衣ちゃんに覆いかぶさられる記憶がよみがえる。私は少しドキドキしつつも期待していた。しかし、今度はそういったことが起こることはなかった。

麻衣ちゃんが濡れたタオルでおしっこにより濡れた私の下腹部を拭いていく。

足、ふくらはぎ、膝、太もも、そしておしっこの排出源である私の股間。

濡れタオルが私の太ももに触れたとき、私は少しのこそばゆい感覚を得た。

そのこそばゆい感覚はタオルが私の股間の方に触れていくにつれて、より大きなって行く。


 タオルが私の股間に触れたときだった。水道水を吸って冷たくなったタオルが私の感覚を刺激する。

「あっ」

思わず私は声を出してしまったことに恥ずかしくなるが、その次におしっこが噴き出てきてしまった。それはおもらしの後にはすぐにまたおしっこがしたくなるという、よくある現象のせいだ。出てきた黄色いおしっこは中学数学で習うような放物線のグラフを描き放出される。

頂点に達したおしっこは落ちていき、麻衣ちゃんの部屋をびしょびしょに汚していく。


 あぁ……

とても恥ずかしい。頬が赤らんでいくのが鏡を見ずともわかる。

「里穂ちゃん、おもらししちゃってる。いいんだよ最後まで出して」

私はそのまま麻衣ちゃんにみられながらもおもらしをした。


 私のおもらしが終わり、先に水たまりを片付けようと思っていたが、麻衣ちゃんに言われてまず麻衣ちゃんのおむつを付けてあげることにした。

麻衣ちゃんは私よりも10センチメートルほど背が高く、体型もモデルさんのようだった。

そして艶のある長い黒髪を背中の下にしながら、寝転んだ。

裸の下半身が麻衣ちゃんの部屋の照明に照らされて、きれいに輝く。

それはところどころについているおしっこの水滴のせいだった。


 私は麻衣ちゃんがしてくれたように、タオルで麻衣ちゃんの下半身を足から拭いていく。

麻衣ちゃんの恥ずかしがっている表情が私の目に入る。

口を半開きにし、頬を赤く染めて、目をトロンとさせている。

この時、私に何が起こったかわからないが、気が付けば私は麻衣ちゃんの上に覆いかぶさっていた。麻衣ちゃんの方が背が大きいので私は麻衣ちゃんの太ももの間に膝を置いて覆いかぶさる。

恥ずかしさで乱雑になっていた麻衣ちゃんの吐息がさらに乱れて、私の顔に当たる。

シャンプーのいい匂いとおしっこの臭いが私の鼻をくすぐる。


 気が付けば私は、顔を麻衣さんに徐々に近づけていて、キスしようとしていた。

女の子同士だなんて……

そう思いながらも、私の唇が麻衣ちゃんの唇に触れるのに対して時間はかからなかった。

私が麻衣さんの唇を奪った数秒後、私は太ももにぬくもりを感じた。

間違いなくおしっこのぬくもりだった。しかし、私はすでにおむつをしているので私のおしっこではなく、麻衣さんのおしっこである。

私は首を内側に曲げて、二人の体の間を覗き込むようにして、下半身の状態を見る。


 麻衣さんの股間から黄色いおしっこが排出されて、放物線を描き、私の太ももに直接かかる。なんとも言えない気持ちが私を襲う。

それは気持ちよさもあり、罪悪感もあり、恥ずかしさもある気持ち。

自然と体から力が抜けていくような感じで、覆いかぶさるため立たせていた腕が脱力して私と麻衣ちゃんの上体は密着する。私は麻衣ちゃんの豊満な胸の上に頭を置き、心臓の鼓動を感じながら寝てしまっていた。


 「里穂ちゃん起きて、もう11時45分だよ」

私は10分とちょっと程寝ていたらしく、ずっと麻衣ちゃんに覆いかぶさっていたようだった。

私は上体を起こして、先ほど中断されていた麻衣ちゃんのおむつ替えをする。

「ねぇ、里穂ちゃん。里穂ちゃんって千香っていう妹がいるの?」

その質問はおむつ替えをしている最中に唐突にされた。

「いるよ」

私は当たり前のことのように麻衣ちゃんに説明する。


 「実はさっき里穂ちゃんが寝言で、”千香にはおもらしを見せて幻滅させちゃいけない”って言ってたの。もしかして千香ちゃんに隠してるの?」

麻衣ちゃんがどうしてそんなことを聞いてくるのかわからなかったが、私は何も言わずに頷いた。ちょうどその時麻衣ちゃんのおむつ替えが終わり、私たちはお互いの下半身を拭いてあげる。

「もうつらいでしょ? 千香ちゃんに言った方がいいんじゃないかな? たぶん幻滅されないよ」


 正直私はつらかった。ばれそうになった時にはいつも千香に嘘をついて、おもらしを隠す。

最近になってはおもらし自体に幻滅されるのではなく、今まで嘘をついていたことで千香からの信用を失うのではないか。私はそうも考えていた。

でも、どのみち私は幻滅されてしまう。だから私はもう引き返せないのだ。

私はそのことをすべて麻衣ちゃんに言った。

すると、麻衣ちゃんは私の頭をなでて励ましてくれた。


 おむつ替えや、水たまりの処理、そして相談を終えた私は自分の部屋に戻った。

部屋についている時計を見ると短針も長針もちょうど真上を刺していた。

みんなすでに寝静まっていて、私も後から布団に入る。隣には千香がいて、可愛い寝息を立てながら寝ていた。私は思わず千香の頭を二度優しくなでる。

「お姉ちゃんはおもらしなんかしてない」

その言葉は一瞬私をドキッとさせるが、その次の寝息で寝言だったのだと分かり、私は安心する。しかし、その言葉は私の心臓をぎゅっとつかんだ。私はその苦しみを感じつつも眠りについた。

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