1話 私は隠し続けると決めたんだ
「ねーね、だーい好き‼ 千香ね、ねーねみたいな人になるの!」
一枚の写真をみて、私の脳内にそんな可愛い声が聞こえる。
私は部屋の片づけをしている最中だったが、ふと昔のアルバムを見つけて、見入ってしまっていた。
その中に、桜の木の下で、4歳の妹が中学1年生の私に抱き着いている写真があった。
まだ幼くて腕が短いので、私の胴体を妹の腕が一周することはなかった。
写真の中の私は左手を妹の背中に回して、右手を股の部分に添えている。
私はその写真を撮った時のことを思い出した。
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「はーい、取るよー。ねえ里穂、千香をじっとさせといてね」
「うん! 千香ここにおいで」
あたり一帯はお花見ムードで、お酒に酔った人や、騒ぐ若者でにぎやかだった。
でもべつに嫌いな雰囲気ではない。むしろ楽しくて仕方なかった。
桜がひらひらと舞い散る中、お母さんとお父さんが二人してカメラの画面を覗き込んでいる。
私は言われたとおりに千香をじっとさせるために、千香の後ろに回り左手を千香の左肩に置いて、千香の動きを止める。
私はこの時少しトイレを我慢していたため、右手はギュッと股に添えていた。
「はい、チーズ……」
機械音痴なお母さんはいつも、その一般的な掛け声をした後に5秒ほど遅れてシャッターを切る。
するとその5秒の間に、千香はくるりと私の方を向く。
「ねーね、だーい好き‼ 千香ね、ねーねみたいな人になるの!」
千香はそう言いながら私に抱き着く。
私は千香を支えるために左手を千香の背中に回し、千香を受け止める。
その時、ようやくお母さんがシャッターを切る音が聞こえた。
”ジョロッ”
千香をキャッチする方に意識が行ってしまい、一瞬おしっこを我慢するのを忘れてしまった私は少し漏らしてしまう。
ジトっと湿っぽくなった私のショーツが余計に私の股間に張り付く。
生暖かくて、じめじめしていて少し気持ち悪い。
そのころ、お母さんとお父さんは取れた写真をじっくり見ていた。
私は右手で股間を抑えつつ、その写真を覗きに行く。
その写真は桜の花びらが幻想的に舞っていて、とてもきれいな1枚だった。
「千香が動いてしまったけど、良い1枚になったからよかったよかった」
「そうね。それにこうやって楽しく笑ってる写真の方がいいわよね」
お母さんとお父さんはとても楽しそうに談笑していた。
私の心は”愛”で満ち溢れていた。
”ジョロッ”
また気を抜いてしまい、再びおしっこが少しだけ溢れ出る。
「お母さん、トイレ行きたい……」
私はカメラをもっていたお母さんの右手の袖をつまんで引っ張る。
お母さんはお父さんに持っていたカメラを預けて、私を近くのトイレにまで案内してくれた。
緑色の芝生の上に、淡いピンク色をした桜の花びらが積もっている。
私は芝生と、花びらをふみしめふみしめ、一歩ずつトイレへと向かう。
途中、ほかの花見客がたくさんいる場所があり、そのブルシートとブルーシートの間を、軽く会釈しながら、通り抜ける。
そのブルーシートの隙間を通り抜けると、50メートルほど先のところにトイレがあるのが見えた。
「もうすぐだから、頑張ってね」
お母さんが私の左手を握り、私を応援してくれる。
しかし、突然強烈な尿意が私を襲った。
私はお母さんとつないでいた左手を右手と合わせ、一緒に強く股間を抑える。
だが、なかなか尿意は収まらない。
「も、漏れる‼」
私は、周りにお母さん以外の人がいることも忘れて、そういってしまった。
周りの花見客がみんな私の方を見る。恥ずかしい、とても恥ずかしい。
はやく、トイレに行かないと‼ だけど……
私は、強烈な尿意と、周囲の視線でパニックになってしまっていた。
私は、目をつむり、最後に再び両手を強く股間に押し当てた。
しかし、その効果はほとんどなく、どんどんとおしっこが流れ出すのがわかる。
ショーツをびっしょりと濡らしたおしっこは、私の花柄のスカートも濡らしていく。
また、私の太ももを伝い、靴下や靴をびしょびしょにしていく。
漏れだしたおしっこの勢いは強く、花びらが積もる緑色の芝を豪雨のようにたたきつける。
太ももを伝った生暖かい感触は私の手にもあった。
前押さえをしている両手に、スカートの生地を超えたおしっこがあふれ出してくる。
私は30秒ほど、そのままでいた。一瞬目を開けて周りを見ると、大勢の人が私のことを見ている。
恥ずかしい。私は小さい頃からよくおもらしをしてしまう体質で、家ではおもらししてしまうこともよくあった。
しかし、外でのおもらしは久しぶりで、お母さんやお父さん以外に見られるのはほとんどなく、とてもつらい。
「皆さん、すみません」
お母さんが周りの花見客に頭を下げる。
「ほら里穂、着替えに行くよ」
私は無念にもあと50メートルほどで届かなかったトイレまで水滴を落としながら向かう。
お母さんは私を個室に入れて中から鍵を閉めさせた。
その後お母さんは私の着替えを取りに行った。
「私、小学6年生のお姉ちゃんなのに…… 千香のいいお手本にならなきゃいけないのに……」
気が付けば私は、一人トイレの中ですすり泣いていた。
「里穂開けて、着替え持ってきたよ」
お母さんの声がドアの向こう側からしたので、鍵を開けた。
その後、着替えやすいように、女子トイレの裏側にある多目的トイレに入った。
今日のおもらしは今まで以上にショックで、自分では着替えができず、ほとんどお母さんに着替えさせてもらった。
「ねえお母さん、千香におもらしのことバレちゃったかな?」
「多分、知らないと思うよ。私が里穂の着替えをとった時も、わからないように持ってきたし」
私はとても安心した。それと同時に決意した。
千香に私がおもらししているような悪いところは見せられない。
だって、私みたいになるっていってくれたんだから!
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私はアルバムを閉じた。
あの写真を撮った後も私のおもらし癖は治ることは全くなかった。
むしろ漏らすおしっこの量が多くなり、ひどくなった気がする。
しかし、お母さんの協力もあり、私が16歳の高校二年生になったいまでも、小学1年生になった千香が私のおもらしを見たことはない。
このままずっとバレずに、良いお姉ちゃんでいとかないと……