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第92話 それはなにより

評価、ブックマークありがとうございます。とても励みになります。ヽ(*´∀`)ノ

「さっぶ!」


「ほら、早く火出して。この場、温めて」


「セレネ......なんか俺に当たり強くない?」


 大輝はそう呟くきながらも空間宝物庫(ストレージ)から木を取り出すと火をつけた。


 大輝たちは今、近くで見つけた洞窟にいる。そして、そこで夜を明かそうと留まっていたのだ。高校の地理の授業で砂漠は気温変化が大きいと聞いて、寒くなるとは知っていたが、まさか身をもって体験することになろうとは。


 それから、食事を済ませると砂漠が一層冷え込んできた。


「大輝、わりぃ。火力上げてくれ」


「マジか、俺もうちょいで電池切れそうなんだけど」


 俊哉はとにかく寒そうに両腕を抱えるようにして擦りながら、大輝に言った。大輝はそれに対し目を擦りながら、答える。だが、大輝はもう朝、昼、晩と魔力を使い続けており、倦怠感が物凄いことになっている。例えるなら二徹ぐらいの気だるさだ。加えて、食事をとったこともあり、それ故に非常に眠い。今も時折うたた寝を繰り返している。


 エミュと香蓮は出来ればそれを眺めていたいところなのだが、この中で唯一の火属性魔法が使える大輝がここで寝てしまうと最悪凍えてしまう。なので、寝させてあげたいのに寝させてあげることが出来ないという心苦しさを感じている。


 大輝はなんとか火を出してたき火の火力を上げようとするが、眠すぎて集中力が続かず火も安定しない。というか今にも落ちそうだ。すると大輝はついに電池が切れたのか横にぶっ倒れた。


「ちょ、ちょっと何し......ん、んん!?」


「セレネちゃん、このままにしてあげて。この砂漠は大ちゃんが元気じゃなきゃ、乗り越えられないんだから」


「そうね。砂漠だったら大輝がいれば大丈夫だと思っていたけど、ここまで負担が大きいなんてね。少し大輝に頼り過ぎていたわ」


「確かにな。大輝のおかげで暑さしかない日中の砂漠でも風の涼しさを感じることが出来、夜の凍えるような寒さでも火の温かさを感じできる」


「これは大輝君が何かを頼んだら断りづらいかもね~」


 大輝が寝落ちした今、四人は各々大輝のありがたさに感想を述べていた。だが、その中でただ一人落ち着かない様子の人物もいた。それはもちろん、セレネだ。セレネは口を覆っているエミュの手を引きはがすと自身の足元を見た。その膝の上には爆睡中の大輝が。


 大輝は寝落ちしたときにセレネの膝上へと寝転がったのだ。それだけで、心臓の脈動が早くなっているし、それからエミュと香蓮から羨ましそうな視線を送られるのも困る。だから、動かそうとするとそれはその二人に止められる。つまりどうしようもできない。


 しかし、いつからかこんなに勇者を意識しているのは。推測するに勇者の師匠の村の時に話したのがキッカケである可能性がある。だが、あれは私が少し弱っていたから余計勇者の言葉が響いたに過ぎない。なので、いつも通りに接しているつもりなのだが、勇者からは「当たりが強い」と言われてしまった。言われた本人がそう感じているのだからそれは本当なのだろう。


 だが、こういつまでも膝の上にいてもらうと今度はこっちが休まらないし、正直邪魔である。なので、二人には悪いが勇者はどかせてもらう。そして、二人にはめんどくさいから先に寝てもらうようにした。


「あんたのせいよ、バカ」


 セレネはそう呟きながら大輝の額を軽く指で弾いた。そして、たき火の温かさに心を落ち着けながら、夜が明けるのを待った。


 それから、数日をかけてやっと一つの村へと辿り着いた。


 その村は日差しを避けるような作りの家が多く、砂漠に住む人達の特徴が詰まった家々が多く点在した。だが、それ以上に注目すべき点は大人に対しての子供の圧倒的な多さだ。大人全員がビックダディーのような大家族でなければいないような子供の数だ。


 とりあえず、今日はここで過ごすためにこの村で宿がないか探してみると一応あるみたいだ。なので、その宿へと向かおうとすると一人の老婆に話しかけられた。


「おや、こんな所まで大勢で来られるなんて珍しいねぇ。何か用なのかい?」


「ええ、実は依頼を受けまして。それで目的地まで向かう前にここで一つ休んでいこうと立ち寄ったんですよ」


「そうかい、そうかい。それはありがたいねぇ。あまり何もないところだけど、十分に休んで行くといい」


「ありがとうございます」


 大輝は老婆の温かい言葉に感謝を述べた。するとその老婆が大輝の思ったことを見透かしたようにこの村でのことを聞いてきた。


「ところで、この村で異様に子供が多いと思わんかね?実はあの子供はほとんどがどこから来たかもわからない子供たちなのねぇ。それも定期的にこの砂漠でさまよっているところが確認されて、だからこうして保護しているだよ」


「それはいつ頃からですか?」


「随分と前からあった。けど、ここ最近は異様に増え続けておる。前は育てきれなくなった誰かが捨てていったと思うたんだが、そうでもない感じでねぇ」


 この話を聞いて大輝は思ったことがある。それはこの災悪はもしかしたら女神の予知以前から存在していたのではないかということ。女神が予知できいなかったというよりは、予知する以前はそこまで強くなかったから。


 俺達が相手をしている災悪という存在はあくまで俺達しか倒せないという強さの基準で測っている。なので、冒険者がなんとかでも倒せるレベルであれば、女神様の索敵から逃れられたのかもしれない。そして、そのレベルが俺達が相手するレベルまで強くなった。


 これは存外厄介な相手かも知れない。それにただでさえこの砂漠という地だ。その災悪は俺達よりも地の利がある。これは気を付けた方が良いかもしれない。そう思って後ろにいる仲間達に目線を送ると全員も同じ気持ちのようで頷いた。


「そのお話、していただいて助かりました。移動したときに見つけたらこちらでも保護したいと思います」


 そう言って感謝の言葉を述べながら大輝はその老婆との話を終えた。そして、その村で唯一ある宿に向かうと事件が発生した。


「鍵がないですか?」


「はい。私の宿はペンダントを鍵として従業員室に入れるんですが、そのペンダントが大きな鳥に持っていかれてしまって入れないんです。ですから、もう宿を開くことは出来ないんです。申し訳ございません!」


 その若い女性は深々と頭を下げた。大輝はそんな女性に「気にしなくていい」というが。正直ここまで来て野宿は辛い。なので、その女性に大きな鳥とやらの特徴を聞いて、どっちの方向に飛んでいったか教えてもらった。


 ここまで来たら眠いとか言ってられない。それにこれで持ち帰ったら、もしかするとタダで泊まらせてもらえるかもしれない。勇者である以前に俺はもとの世界ではまだ高校生である。なので、タダに出来る可能性があるならそれにかけるのは当たり前。せこくて結構。


 そして、大輝と俊哉は索敵を開始した。


「......痺れてる?」


「俊哉君、どうかした?」


「い、いや、なんでもない」


 俊哉は自身の手から微かな痺れを感じていると茉莉から様子を尋ねられた。だが、俊哉は平静を装った。とはいえ、俊哉は自分の症状に困惑の顔をする。


 実は俊哉の手がしびれるという感覚は少し前から定期的に起こっているのだ。それもその時によって、痺れの大きさが違う。一度、酷い時には腕全体が痺れたこともあった。そして、問題は......


「これなんだろうな......」


 俊哉は右手首にある黒い紋様ようなもの。これは前にはなかったものだ。だとすると、どこかでこれを付けられるようなことをしたという事。それで思い当たるのは、あの黒いドレスを着た女だ。だが、その女に直接触れられるようなことはしていない。こういう魔法陣にしても、紋様にしても触れないと始まらないから。


 だからこそ、不可解なのだ。しかもこの紋様は徐々に拡大して言っている気がする。いや、気がするではない。そうなっている。前は小さめのピアスのような大きさであったが、今では手首を一周するように紋様が広がっている。そのことに俊哉は不安が拭えなかった。だが、こんなことで仲間に迷惑かけるわけにはいかない。


「―――――――――」


「......OK。そこにいるんだな」


 すると俊哉に精霊の声が聞こえた。どうやらそのペンダントを盗んだ奴を見つけて来てくれたらしい。相変わらず優秀な精霊だ。これはあとで褒美をやらねば。そして、精霊から聞いた場所を大輝達に伝え始めた。


 そして、その場所に向かってみるといたのは多くのハゲタカのような魔物。「空中戦か、俺には不向きだな」と俊哉が思っていると空中でも対抗できる大輝、セレネ、茉莉が動き始めた。


 大輝は<超加速(ブースト)>で勢いよく飛び出し、セレネは羽を出してはためかせた。そして、茉莉は弓を構え、狙いを定める。


 この時点でやることがなくなった。俊哉はそれを見ながら隣にいるエミュへと話しかけた。


「なあ、大輝っていつの間に飛べるようになってたんだ?」


「結構前かららしいよ。こっそり練習していたのをたまたま見つけちゃったんだ。でも、そんなことをしなくても私が空へと連れてってあげるのに......」


「それがな?男にとっては案外それはそれ、これはこれなんだよ。竜に乗って空を飛ぶのも夢の一つであるが、自分で飛べるようになるのも夢なんだ。だからこそ、練習していたんじゃないか?まあ、まだ自由自在に使いこなしている様子では無さそうだけどな」


 そう言いながらその戦闘を眺めると大輝は時折バランスを崩してふらついている。落ちたりはしないだろうが、それでもまだ危なっかしさが残る感じだ。


 するとその時、エミュがサラッと聞いてきた。


「それで茉莉ちゃんとは良好なの?」


「!......りょ、良好とは?」


「そのまんまの意味だよ。わかると思うんだどなー」


 エミュはあえてはぐらかしたように言っているのかただ笑みを見せるのみ。俊哉はその笑みに嘘が思い浮かばず、諦めるように正直に話した。


「良好と言えば、良好なのかもな。ただ、思っているような関係じゃないぞ?あとこれ他言無用な」


「わかってるよ。それを邪魔するほど野暮じゃないし、それに茉莉ちゃんも楽しそうだしね」


「楽しそう......か。まあ、それはなにより」


 俊哉はエミュの言葉に静かに驚きながらも少し嬉しそうな顔をした。茉莉が楽しそうであるなら、これまでやってきたことも意味があるという事だ。そう思いながら俊哉は三人の戦闘を見届けた。

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