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第90話 香蓮は知る

評価、ブックマークありがとうございます。励みになります(*'ω'*)

「ねぇ、今日は何食べたい?」


「グラタンじゃ!」


「お好み焼きなの!」


「見事に和と洋に分かれたわね」


 香蓮は何を食べたいかで取っ組み合うフランとドリィをいさめながらも今日の献立を考える。全く、この世界に来てこのことは結構上位に来る驚きだと思う。


ミリアが計らいとしてシェアハウス的なの屋敷を提案してくれて、その時は迷惑かけるのが申し訳なかったというのもあったからその提案に乗ったのだが......正直、今更だが全てを身の回りを手伝ってもらった方がありがたがった。


 まあ、この選択をしたのは私だし、セレネのこともあったからこっちの方が良かったかもしれないけど、何がめんどくさいかと言うとそれは料理。それもシェアハウス故に人数分を用意しなければならないということだ。だが、毎回してないだけ楽だが(結局、料理や片付けを手伝ってしまっているけど)。


 しかし、何だかんだ言って料理している回数は多い気がする。まあ、それは大輝と鷹岡君に料理をさせていないからだけど。二人は出来ないんじゃない。出来るが男料理というのか塩気が多くて、私達とは味覚が合わないのだ。


だがら、よっぽどのことがない限りさせることはない。そういうわけで、その二人を除く四人が出来るのが大変ありがたい。


 それから、このことを経験するようになってから母の苦労がわかった気がする。まあ、さすがに戦って料理作ってというのはないだろうけど、パートで働きながら家事をするのは案外似通ったところがあったりするかもしれない。


 そして、何より苦労がわかるのが料理の献立だ。初期の頃はバランスを考えてとか一応していたけど、そうそうに続かなくなった。ぶっちゃけて言えば、かなりめんどくさい。だから、今はもうしていない。しかし、献立に関してはそうはいかない。


 私の場合だったらあまった料理でもあれば、いくらでもずぼらになれるけど、そうならない人もいるかもしれない。そのことを考えるとその人のために作った方が良いかなと思ったり、それに人数的なこともあるから結局ずぼることは出来ないけど。


 最終的に何が言いたいかと言うと母は結構凄かったんだなってことだ。一人暮らしという訳ではないが、それでも自立させるような事柄が増えてからは余計にそう思った。料理から家事の何から何まで手伝いはしていたけど、全然足りてない。今なら母が私の手伝いに関して感謝している気持ちがよくわかる。ほんと大変。


 けど、同時に嬉しさもあったりするのかもしれない。それは例えば作った料理を美味しそうに食べてくれること。大輝はあまり作った料理に関して言ってくれることはないけど、その分行動で示してくれる。


美味しいときは大抵おかわりして、特に大好物が出た時はそれに加え水を飲むように食べていく。「もう少し噛んでゆっくり味わいなさいよ」と思うが、内心ではガッツポーズを全力でしている。


だからこそ、「これが母の気持ちか」と思ってしまう。大輝の母......いや、大輝の嫁......って何考えてるんだ私わ!?それはちょっとまだ心の準備が......って全然変わってないじゃん!ま、まあ、願望がないと言えば嘘になるけど、それはまだ全然早いじゃん?告白もしてないわけだし。


それに大輝のことを考えてたもんだからフランとドリィがその子供に見えて仕方がない。もしかしたら大輝の次に可愛がっている理由がそんな感じがしてとても恥ずかしくなる。


「香蓮、どうかしたのじゃ?」


「物思いにふけってるの」


「い、いや、大したことじゃないのよ?全然」


自分にとっては結構大したことなのだが、フランとドリィにいらぬ心配をさせないために、明るい声で装った。とはいえ、妄想のせいで顔が赤くなっているのか。二人からは怪訝な顔で見られる。


 最近......というか、あの日以来何かとこんな感じだ。妄想が絶えないというかなんというか。別に意識していないのに例えば珍しい品を見つけたならば、これを見た大輝はどんな反応をするのか考えてしまう。そして、それに気づいて一人で顔を赤くする。


 全くこれでは恥ずかしさで精神が持たない。ただでさえ自分のステータスが女神様に弄られているというのに。そう思いながら改めてステータスの職業欄を見る。


『剣士/恋する乙女』


 それを見て香蓮は恥ずかしさで顔を赤らめながらため息を吐く。まあ、実際間違っていないから否定がしにくい。しかし、時折ステータスで能力値を確認するたびにそれが目に入って仕方がない。とはいえ、女神様に文句は言えないので、こちらから諦めるしかない。


 もう考えるのはよそうと何とか別のことを考えながら、フランとドリィに話す。すると前方に最近よく見る二人組を見つけた。その二人とは俊哉と茉莉のことだ。この二人は何かと話していることが多く、これは何かあるのではないかとセンサーが反応したのだ。


「気になるし......ちょっとぐらいなら大丈夫よね?」


 香蓮は少し罪悪感を感じながらもその二人の後をつけてみる。その際、フランとドリィには駄賃をあげて、先に戻ってもらう。


 そして、追っていくと二人は普段と変わりなく話しているようにも見えるが、普段よりも若干距離が近い気がする。まあ、気のせいと言えばそうとも思わなくもないが。


 それから二人はどこかの店に入った。香蓮もそこに行ってみると特に変わりない普通の服屋だ。......もしかして、これはただ単に自分の勘違いではなかろうか。二人がよく話しているところを見るのが本当だが、そういえば二人が照れたり、楽しそうにしている様子はあまりない。だが、雰囲気が悪いという事もない。近くもなく遠くもないという不思議な距離。


 やっぱり、勘違いではなかろうか。この服屋に入ったのも単に荷物持ちとして連れ出しているだけではなかろうか。レオだと何かと目立つし。しかし、そう考えると随分と恥ずかしい。未だ煩悩が抜けてないようだ。このままでは危うく早とちりで自滅するところであった。


 しかし、どうにも疑いが抜けない。その判断を下すためにももう少しついていってみようかな?そう思ってその場に待機していると二人は紙袋を持って出てきた。そのことに「やはり勘違いか」と尾行を止めようとした時、二人は大通りを避けて路地へと入っていった。


 香蓮は思わず二人が入った道へと向かっていく。そして、その道をこっそり覗いてみるとその道は行き止まりで二人の姿は見えない。香蓮は思わず怪訝な表情は浮かべる。......もしかして、バレてた?


「おい、南。尾行とは感心しないな」


「まあ、視線が強すぎてバレバレだったけどね~」


「きゃあ!?」


 するとその時、香蓮の肩に手が置かれた。その手に驚いた猫のようにバッと飛び跳ねる香蓮。そんな香蓮に俊哉は苦笑い、茉莉は面白そうな顔をしている。


「何の用だ......ってまあ、どういう理由で尾行していたのか大体わかるけどな」


「私達の関係性のことだよね~」


 俊哉と茉莉は香蓮の考えを見透かしたように香蓮に告げた。香蓮は「この二人にここまで考えを読まれるのも珍しいんじゃないか?」と思いながらも肯定的な頷きで返した。それから、三人は大通りを出ると香蓮がぶっちゃけたことを聞いた。


「ねぇ、もしかしてずっと前から付き合ってたりしてた?」


「いや、それはねぇぞ」


「案外最近の方だから~」


「へ~、そうなん.......え?今なんて言ったの?」


 香蓮は茉莉の言葉に思わず聞き返した。それはそうだろう。俊哉の言葉はてっきり否定する内容とばかり思っていた。なんせ茉莉とかはそういうのずっと興味無さそうだったし。だから、正直言ってとても意外だ。なのでこういう時は何と言えばいいのか?ただ、俊哉がため息を吐いているのは気になるが、とりあえず......


「おめでとう?」


「いやいやいや、待て待て待て。そうだけど、そうじゃないんだ」


「どういうこと?」


 俊哉の言葉に思わず香蓮は聞き返した。俊哉の言っていることは「付き合ってるけど、付き合ってない」ということ。それは結局どっちなのか?それとも何か訳ありなのか?


 すると俊哉が他言無用ということでそのことを香蓮に話した。香蓮は怪訝な表情を浮かべながらもその話に納得した。


「なんだか面倒なことになっているようね」


「やっぱ、そう思うだろう?だがまあ、茉莉のためにもやっているだけだ」


「それでも何だかんだ様になっているわよ」


「まあ、最近って言ってもそこそこに立っているしね~」


 茉莉は嬉しそうに答えた。そのことに香蓮は僅かに驚きを感じる。それは茉莉の表情が作り笑いではないからだ。いつも作り笑いという訳ではないが、もとの世界にいた時から場の空気を壊さないように、なにかと作り笑顔は多かった。それはこの世界に来た時も変わりわなかったのだが.......その茉莉の表情が随分と柔らかい。


 香蓮はチラッと俊哉を見る。俊哉もめんどくさそうにはしているが、なにかと悪い気はしていない感じである。意外や意外。これは案外ある可能性はあるよね?


 そう思うとなぜだか自分のことのように嬉しくなった。茉莉はもとの世界でも仲良くしていた友達だ。その友達が幸せだというのは嬉しいことである。まあ、これも考え過ぎだったりするかもしれないけど、これは思ったより脈はあるかもしれない。とにかく今は様子見に徹するべきか。邪魔しちゃ悪いしね。


「南、どうした?嬉しそうな顔をして?」


「いや、別になんでもないわ。ただ、少し楽しみが増えただけ」


「おい、俺的にはその内容がわかるんだが?」


「気にしない、気にしない」


「ふふっ、みなちゃん。今も随分と楽しそうだよ~」


 そう言う茉莉も香蓮と同じく楽しそうな様子だ。俊哉はそのことに思わずため息を吐いた。「これは言わずに誤魔化した方が良かったかもしれない」と。......まあ、南は言いふらすタイプではないので、その点に関しては心配してない。ただ、なにかの拍子で大輝に伝わるのだけはなんとなく避けたい。


 そして、俊哉はそのことを願いながら香蓮と茉莉の歩くままについていった。

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