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好奇心で異世界への魔法陣に飛び込んだら青春を謳歌しました!  作者: 夜月紅輝
第5章 たとえ叶わないとわかっていても
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第87話 許すことも必要

Twitterの件は「神逆のクラウン」の方の前書きを見てくれるとありがたいです。


評価、ブックマークありがとうございます。励みになります。

「主様、あのような返答で良かったのじゃ?」


「なんか少し心苦しかったです」


「仕方ないだろう。ああいうのは、嘘なく伝えるのが一番なんだよ。まあ、正直戸惑ってはいたがな」


 大輝はユリスとの話の後今だ一人でこの丘にいた。それから人型になったフランとドリィと話している。


 そして、大輝はそう言いながら少し複雑な表情でその時の状況を思い出す。結果的に言えば俺はユリスを振った。俺にはユリスがそういう感情を抱く存在として映っていなかった。いや、もっと正確に言えば師弟関係という口実を利用してそういう感情を抱かないようにしていた。......俺もユリスのことを嫌いじゃない。ここで「好きだ」と思わず「嫌いじゃない」と思っている時点でそういう事なのだろう。俺はきっとどこかで一線を引いているのだろう。そして、その一線を超えないようにユリスと接してきた。


 おそらく振った理由はユリスをそういう風に捉えていたというのもあると思うが、今だとこれ以上余計なことを増やしたくないという気持ちがあったのだろう。ユリスの気持ちを余計なというのはあまりにも失礼だが、エミュと香蓮のことがある以上悩みの種を増やすにはいかなかったというのが本音だ。ユリスの気持ちを蔑ろにするつもりはない。だが、事態を複雑化にさせたくないという気持ちがあった故の言葉であったんだろう。もう今更何を考えても後の祭りだが。


「そういえば、改めてありがとなドリィ」


「大丈夫なの。自分で決めたことだからなの」


 大輝はその言葉に安堵の笑みを浮かべる。なぜならドリィの存在はあのベリアルとの戦いで必要不可欠であったからだ。近接戦の時も、最後の魔法攻撃の時も。だからこそ、あの時のドリィの言葉は俺にとってとても心強い言葉であったから。


「だが、出来ればもう勘弁だな。今回が初にして相手が相手だったから余計に精神が疲れた」


「仕方ないのじゃ。主様は生まれたことからこの世界にいるわけではない。それに人を殺すなどこの世界の者達でもやりたくないことじゃ。あくまで主様がいた世界よりも肯定的にあるだけでなのじゃ」


「この世界は狩りをメインとしてるからそう映るだけなの。けど、マスターのもとの世界は行ってみたいと思うの。どれだけこの世界と違うか見てみたいの」


「そっか。俺も連れていけたらと思う。全然違うからな。見る限り人がうじゃうじゃいるぞ。けど、俺的にはこっちの方が良い心地が良かったりするんだよな。目の前にある花畑だってないんだぞ?」


「それはなんだか味気ないの」


「つまらないの」


 大輝の言葉にフランとドリィは退屈を表情に表したような顔をした。大輝はそんな二人の様子を見て思わず笑いが噴き出してしまう。「どれだけたのしみにしていたんだ」と。まあ、それだけ楽しみにしていてくれているとなんだかこっちまで嬉しくなる。


「さて行くか......あ」


 そして、十分に花畑を堪能して振り返った所で一人の女性と目が合った。その女性はあの小屋であった。その女性は複雑な表情をしながら大輝のもとへ来ると丁寧にお辞儀した。


「この度は本当にありがとうございました。このお礼を何と言ったらいいか」


「気にしなくていいよ。それに村長は君のことを気にしてはいないようだったよ」


「そうなですか!?」


 その女性は驚いた声を出した。それはそうだ、なんせこの原因を作っておいて村長に庇ってもらったのだ。そして、ここに来る途中で見かけた墓で全てを悟った。なら、恨まれても仕方ないし、むしろ当然の権利だと思う。だからこそ、勇者がそういう言葉を言ったことには素直に驚いた。だが、そう言われても気分が晴れることはない。結局、自分のせいでこんなことになってしまったことは変わらないのだから。それはもはや自分が殺したと変わらない。


 すると大輝はそんな女性の心中を知ったように告げた。


「もしかして『自分のせいで』なんて思ってないだろうな?まあ、思ってしまっても仕方がないとは思うけどそれは村長が喜ぶ気持ちではない。それは確かだ」


「ですが!......ですが、仕方ないじゃないですか。現に師匠は死んでしまっているんです。その原因は何かと掘り返せばその原因は私なんです。勇者様がこんな所で嘘をつくとは思えませんが、それでも師匠は恨んでいると思うんです」


「君は本当は恨んで欲しいんじゃないか?」


「!」


 大輝の言葉にその女性はハッとした顔をした。大輝はその表情を見て図星だなと感じた。あの時話した時もそうであったが、この女性は自分で自分を追い込もうとしている。あの時もこの女性は罰を求めていた。つまりはそういう事なのだろう。罰が無ければ、自分が自分を許せない。罰があるからこそ初めて普通の暮らしに近いことが出来る。そうしないと自分が他の人達と関わっていくにはあまりにも場所が違うから。罰があって他の人達と同じになれる。


 だが、村長はそんなことは求めていない。村長は口パクで俺に伝えていて、俺にはその動作が「儂は恨んでなどいない。無事であったなら良かった」と伝えているような気がした。もちろん、俺に読唇術や相手の気持ちを読み取る能力はない。それに俺の勝手な想像からの解釈が食い違っている可能性があったりする。だから、正直言って自信はない。それに勝手な解釈で事実を捻じ曲げてしまう恐れがある。しかし、これは言った方が良い気がする。


「やはりそうなんだな。自分で自分が許せないからこそそう思う。けど、あえて言わせてもらう。村長は君が無事でいることを最後まで喜んでいた。だから、そんな村長の気持ちを汲み取るならば、君は自分で自分を許す努力すべきだ」


「自分で自分を許す......」


「ああ、君は俺と違って努力が出来る人だ。俺は一人の人間としてそのことを尊敬している。だから、俺は君が自分を許せる日がくることを願っている」


 この言葉は少し卑怯だと自分でも感じた。なんせ勇者という事を相手もわかっていながら、その立場を利用して言っているようなものなのだ。そのくせに相手に考えを丸投げしているような気がして......正直、嫌な気持ちだ。だが、このまま悩み続けて病んでいってしまうことはもっと悲しい。だから、こんな言い方をしてでも俺は止めたい。この女性をも努力の才がある人だから。


 すると大輝の願いが通じたのか女性は泣き出しながら、返事した。


「......はい、努力してみます。この度は本当にありがとうございました。これはお礼の品です」


 そう言って渡してきたのは一つのペンダントであった。形は不格好で、特に何か魔法が付与されているということはないが、それに触れると温かい気持ちになる。


「これは師匠にプレゼントしようとずっと持っていたものでしたが、渡す勇気もなければ自信もなかったので結局渡せずじまいで.......だから、代わりに勇者様が受け取ってください」


「ありがとう。大事にするよ」


「はい、ありがとうございます」


 そう言ってその女性は去っていった。大輝はそんな女性の姿が見えなくなるまで見送った。そして、動き始めようとすると別の方向から声をかけられた。


「勇者っていうのは女ったらしなのかしら?」


「今度はセレネか......」


「なに疲れたような顔してんのよ。まあ、勝手に二人の会話を聞いてしまっていたのは自分でもどうかと思うけれどもう少しシャキッとしなさい」


 セレネは大輝に近づくと促すようにバシッと背中を叩いた。そんなセレネに大輝はため息を吐くと告げる。


「言っておくが女ったらしになったつもりはないぞ。まあ、今の現状を言ったところで説得力はないがな」


「それに関しては私はどうこう言うつもりは無いわよ。私だってエミュと香蓮の二人のことはわかっているつもりだし」


 セレネはそう言いながら眼下に広がる花畑を見て「奇麗」と呟きながら感動した表情を見せる。そんあ表情を見て大輝は微笑むとセレネに問いた。


「それで、何か言いたいことがあるからこんな所にいるんだろ?」


「さすがにわかるのね......まあ、あんたは察しは悪いけど、悪すぎることはないもんね。」


 するとセレネは軽く深呼吸をすると大輝に向き合った。そして、頭を下げた。


「ごめんなさい、ずっと黙っていたことがあるの。それは悪魔に関すること。その悪魔は私達、魔族が原因だわ」


「魔族が?......まあ、聞きたいことがあるからとりあえず頭を上げてくれ。そのままじゃ話しづらい」


 大輝がそう言うとセレネはその言葉に従って頭を上げた。そして、大輝にどうして悪魔がこの世界に出現したのか話始めた。そして、全てを聞き終わった大輝は少し考え込むように俯く。


「つまりは今回の悪魔はセレネ達魔族の反乱分子がやったという事なのか?」


「反乱分子とは言い難いけど、私がまだ自国にいた時と同じならばこんなことはするはずないわ。魔族の中でも私達王族がやっと使役できる悪魔をそう易々と召喚するはずないし、そもそも王族であっても悪魔を召喚することは禁忌よ。普通ならばするはずがないわ。だから、私は反乱分子(そういう人達)がいるんじゃないかと思っただけ。ただでさえ、私が国を出る前からも荒れていたんだし」


「.....なるほど」


 大輝は何かを考えながらセレネの方をチラッと見るとセレネは深刻そうな顔をしていた。もしかしてセレネもまた自分を攻めているのだろうか。それとも俺がそのことで罵倒するとでも思っているのか。まあ、セレネ自身も罵倒される理由がわかっているからこそそう言うこと言ったのだろう。それに本来ならあのダンジョンでの巨大スケルトンにとりついた悪魔の時にこのことは言えたかもしれないし。


 だが、たとえ言われていたとして今回に限っては仕方がなかったと思う。なんせまだ女神の能力が回復しておらず予知することが不可能だったからだ。だから、俺が言うことはこんな程度だろう。


 そう思うと大輝はセレネの頭に軽くチョップした。その不意な行動にセレナは痛がりながらも驚く。


「ちょっと何すんのよ」


「セレネがらしくない辛気臭い顔をしてるからだよ。その原因が魔族としてもセレネ(魔族の王族)側じゃないんだろう?だったら気にし過ぎても仕方がないじゃねぇか。なら、セレネこそシャキッとしろよ」


「あくまでそうじゃないかと思っているだけよ!?......でもまあ、確かに私らしくないわね。だから、勇者にチョップされたことは不問にしてあげるわ」


 そう言うとセレネは少しスッキリしたような顔をした。心も軽くなった気がした。心なしか顔が熱く、体温も高いような気がするけど......まあ、気のせいだろう。だからまあ......お礼ぐらいは言ってあげようかな。


 そう思って立ち止まって後ろを向こうとするとふとその行動が急に恥ずかしく感じてきた。なぜだかわからないけどなんかあの勇者と顔を合わすのが恥ずかしい気がする。そして、その感謝の言葉を言うのも恥ずかしい。いいや、それぐらいやらなければ王女の恥よ。やりなさい、私。


「なんというか、その......ありがと」


「お、セレネがデレた」


「だから、なんで一言余計なのよ!素直に受け取りなさいよ!」


「ぐふぉ!」


「主様―――――――――!」


「マスター―――――――――――!」


 セレネは照れ隠しから思いっきり大輝の腹部を蹴った。すると無防備だった大輝の腹部にジャストミートして大輝は丘から花畑へと飛んでいく。そして、フランとドリィはそんな大輝を見ながら叫ぶのであった。

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