表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
好奇心で異世界への魔法陣に飛び込んだら青春を謳歌しました!  作者: 夜月紅輝
第5章 たとえ叶わないとわかっていても
88/177

第86話 聞いてください

こういうのって書いてる側もドキドキしますね(/ω\)


評価、ブックマークありがとうございます。励みになります。(*´ω`*)

「師匠!」


 ユリスは戦闘が終わってすぐに呼吸も整えず村長のもとへ向かった。大輝もユリスを追って村長へと駆け寄る。そして、ユリスが村長の体を支えるように抱えると申告な表情をしながら村長の肩を揺さぶる。だが、村長は力なく頭を振るだけで返事はない。


「起きて、起きてください!反応してください!返事をください!どうして何も答えてくれないのですか!?」


 リリスは涙ぐみながら必死に村長に声をかける。しかし、それでも反応することはない。だが、そんな事はユリスとてわかっている。わかっていながらも言わずにはいられない。言っていれば万が一にもなにか反応してくれるかもしれないから。だから、やれることはなんでもやる。無駄と言われようとも無意味と思われようとも。


 そんなユリスの顔を見て大輝は苦しそうな表情を浮かべる。関係が深い人の死は幸いにも立ち会ったことはないが、それでもユリスに気持ちがわからないわけではない。そして、村長と話し魔法も人格も凄い人がとわかっているからこそその辛さがダイレクトで伝わってくる。本来なら止めるのもまた優しさだったりするかもしれない。だが、俺はユリスが納得行くまで支えてやりたい。


 大輝は村長のすぐそばによると顔を見ながら言う。


「村長さん、俺は村長さんからも魔法を教わりてぇよ。だから、起きてくれ。それからユリスの声に耳を傾けてくれ」


「大輝さん......!」


 ユリスは優しく語りかける大輝を見た。そして、その優しさが染みた。その感情はユリスの涙腺を壊した。溢れ出る涙を拭うように大輝にしがみついた。反応して欲しい、声が聞きたい、笑ってほしい、もう一度魔法を教えて欲しい。そんなユリスの気持ちが涙を伝って大輝に響く。だから、大輝はユリスの背中を優しく触れる。


「ゆ、ユリス......か?」


「「!!!」」


 その時、奇跡が起こった。村長が目をゆっくりと開けた。ユリスと大輝は驚きながらもすぐに声をかけ直す。


「師匠!起きたんですね!」


「大丈夫ですか!」


「まあまあ、落ち着きなさい二人とも。儂はこの通りじゃ」


 村長は大輝とユリスに優しい笑みを浮かべながら軽く力こぶを見せた。あが、そのポーズはあまりにも力がなく、やたらと痩せていて骨ばっている。それにも関わらず村長はなんでもないような顔を見せることが心苦しく感じた。そして、ボロボロの村長にユリスが回復魔法をかけようと手を伸ばすと村長はその手を制止する。


「どうして......」


「無意味という言葉はあまり言いたくはないのじゃが......儂にはもう活性化できるほどの生命力がないのじゃ。そのほとんどが奴に座れてしまったからじゃ。だから、こうして死ぬ前にユリスの顔が見れたことが幸せなのじゃ」


「そんなこと......言わないでください......」


 村長はそっとユリスの頬に触れた。その瞬間、ユリスの目から涙がとめどなく溢れてくる。その涙は頬を伝って村長の手へと流れていく。そんなユリスを見ながら村長は笑って見せる。


「ユリス、儂はもう魔法を教えることは出来ない。じゃが、魔法以外もきっと教えられたことがあると思う」


「全然教えられてませんよ!私が勝手にこの村を飛び出してからは何も!」


「まあ、そう言うな。それはそれまでに教えられたという事じゃ。......儂にとってユリスが初めての()じゃった。じゃから、その当時は悩みも戸惑いもたくさんあった。じゃが、それ超えるぐらい嬉しさ、喜び、楽しさがあったがの」


「私はまだ......全然足りないですよぉ......」


 ユリスは溢れ出る涙を必死に拭いながら村長の顔を見ようとする。だが、涙で霞んで見えない。溢れて溢れて仕方がない。それはどこかでもうわかっているから。止められないと知っているから。でも、それでもまた昔のように会話をしていたい。これからも笑った時のしわくちゃな顔が見たい。だが、それはもうすぐ叶わないことは知っている。


「ユリス、いい加減泣き止んでおくれ。ユリスにはもう儂がおらぬでも大丈夫じゃろ?......村を出たことでいろいろな嬉しいことも辛いことも経験したはずじゃ。そんなユリスならこれからもきっと大丈夫じゃ」


「お父さん......」


「ほほ、久々に言ってくれたの......」


 村長はもう死ぬことを感じさせない微笑みながらユリスの頭へと手を置くとそっと撫で始めた。そして、語りかけるようにユリスに告げる。


「ずっと言いたいことがあった。ユリス......立派になったな」


「......!」


 それから大輝に口パクで何を伝えると村長の手は力なくユリスの頭から落ちた。そして、その目は満足そうにしながら閉じた。ユリスはそんな村長の表情を見て声を大にしながら、むせび泣いた。その声は静かになった森にはよく響いた。


「ユリス......俺達がちゃんとした所で眠らせてあげよう」


「うぅ......グスン......はい」


 大輝の提案にユリスは静かに返事した。


**********************************************

「ここ、師匠が好きだった場所なんです」


「奇麗だな」


 大輝とユリスが来ている場所は村長が時折来ていたと言われる丘であった。そして、そこの眼下に広がる光景は色とりどりのお花畑であった。そのお花畑が見えるようにお墓を建てた。それから少し離れたところで、ユリスはその目に涙の跡を残しながらも少しスッキリした表情でその光景を見ていた。すると大輝にそっと話しかける。


「私、実は師匠の本当の娘ではありません。捨て子だったらしいんですよ。それも森の中で捨てられていたみたいで、その時たまたま通りがかった師匠が拾ってくれたらしいんです」


「怒ってたりするのか?捨てた両親のことを」


「怒ってはいませんよ。顔も知らない両親を怒る気にもなれませんし、それにそうであったから辛い経験もしましたけど、それ以上に楽しいことや幸せなことがありましたから」


 それは物心ついた時のお父さんと魔法を使ってさまざまな遊びや実験を繰り返した日々。些細なことでケンカしたこと日々。村を出て経験した様々なこと。大輝さんと出会って初めて魔法を教えたこと。そして、仲良くなって好きになったこと。


 あの時の自分の感情はとても意外だった。なんせ村を出た時はそんな感情は必要ないと思っていたから。私も一人の研究者で研究と冒険に全てを捧げるつもりであったからだ。だから、最初は好意的な感情を持っていても気づかなかった。クリス達がいなければ。


 そして、またあの時が初めて村長の気持ちがわかったような気がした。それは人に何かを教える喜び。大輝さんが失敗した時や成功したときは一喜一憂を共感した。そして、最初の頃と比べて成果が出ると自分のことのように嬉しかった。もしかしたらその時の感情も含まっているかも知れないけど。


 でも、あの時の感情があったからこそまた普段の景色が違って見えたりした。自分の気づいていなかったことに気づいたこともあった。もし仮に私が村に出なければ、お父さんは死ななかったかもしれない。でも、それを後悔することはない。だって、お父さんの顔は後悔してなんかいなかった常に自分の幸せを願ってくれた。そんな師匠に対してこのことを引き吊り過ぎていたら、幽霊になって心配で戻ってくるかもしれない。......いや、お父さんのことだから大輝さんに頼っていたりして。


「私、師匠がお父さんでよかったとすごく思っています。師匠は融通が利かないところがあったり、頭がいいのに変に抜けていることがあったり、過保護だしで嫌いな時期もありました。そして、『本当のお父さんじゃないのにお父さん面しないで!』なんて酷いことを言ったりしたこともありました。けど、そんな感情もまた思い出の一つです。それに、また夜な夜などこかでコソコソと研究していたことも知っていますし」


「待ってくれ、それはどこか知っているか?」


「え?......えーっと、確かこの森の古びた小屋だったような.....」


「小屋......」


 大輝はその時一つのことを思い出した。それは結界の魔石を調べていた時のことだ。その近くの森で廃屋のような小屋を見つけた。そこで、手にした一冊の本。あれは村長のものであったかもしれない。それに俺に向かって発光した魔法陣もユリスならなにかわかる気がする。俺の未来予知のような感覚はきっとあれが原因だと思うしな。


 そして、大輝は<空間宝物庫(ストレージ)>からその本を取り出すとユリスに見せた。するとユリスはその本を見た瞬間、目を丸くした。そして、大輝から受け取ると中身を見る。


「これはお父さんの字です。しかもこれ古の時間魔法じゃないですか!?効果は一秒ほどですけど......まさかこれをあの小屋で見つけたんですか!?」


「ああ、そうだ」


「......ありがとうございます」


 大輝の言葉を聞くとユリスは嬉しそうに本を抱えた。その嬉しさが溢れ出るように目から一筋の涙がスーッと流れていく。そして、ゆっくりと話し出した。


「これはきっと私を驚かせるものだったと思います。昔、私が『もう少し時間があればなぁ』とぼやいたことがあるんです。そして、それをどこかで聞いていたお父さんは研究し始めたんだと思います」


「なるほど.......」


 大輝はその言葉であのかき消されていた一文がなんであったかわかったような気がした。あれがユリスのサプライズ用の文章で間違いない。それからこれは憶測だが、村長が消えた時にまだ意識を保っていた村長はこの魔法を俺に託した。きっとあの時ベリアルが言っていた「プロテクトがかかってる」とはそういう意味なのだろう。あの魔法()があったから俺達は勝てた。逆に言えばあの魔法()が取られていればまさに鬼に金棒。勝てるわけもなかった。


 それから大輝はもう一つ思うことがある。それはユリスに渡すはずだった魔法を自分が取ってしまったことだ。不可抗力とはいえ、これは隠しておくわけにはいかない。


「すまん、俺はその本の中身を見てその魔法を得ちまった」


「そうなんですか.......それは良かったです」


「え!?」


 大輝は少し苦しそうに言ったがユリスの反応は大輝が思っていたものを斜め上をいく反応であった。故に思わず呆けた声が漏れた。するとそんな大輝を見ながら涙を拭うと微笑んで言う。


「きっと私には使いこなせない魔法だったと思うからです。それに勇者である大輝さんが持っておくのはとてもいいと思います。それからお忘れじゃないですか?私がお父さん(師匠)の弟子であるという事を。これぐらい私でも出来ます、お父さんがで出来たんですから」


「......そうだな。俺もそう思っている」


 大輝もユリスに釣られて笑ってしまった。穏やかな時間が流れていく、先ほどの悲しみが嘘のように。そして、花畑を見る大輝を横目で見ながらユリスは決意する。そのせいか顔も耳も熱くなっていく。


「大輝さん、聞いてください」


「ん?どうした、ユリス?」


 大輝は顔を真っ赤にしながらも真剣な目をするユリスにやや驚きながらも体を向ける。するとユリスが軽く深呼吸をしながら告げた。


「私は大輝さんと出会えて事を人生で特別のような思い出として保存しています。大輝さんと関わった時期はあの村だけでエミュさんのように一緒に過ごせていませんが、あの時からこの思いは特別で決して薄れることはありませんでした。こんな気持ちを抱かせてくれた大輝さんには本当に感謝してます」


「......」


「そして、この気持ちはエミュさんにも負けてないという自負があります。ですから、聞いてください」


 大輝は思わず息を飲む。呼吸がやや速くなり、体温が上がっていくのを感じる。これはきっと勘違いなどではない。


「私は......大輝さんのことが好きです」

良かったら評価、ブックマークしてくれると嬉しいです(*´ω`*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ