第84話 待たせた
5章終わりは後少しですね
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「くっ!この。放しやがれ!」
「ガガガガガ」
「うおぉ!」
ユリスのもとから強制的に離された大輝は空中から地面へと叩きつけるように投げられた。その勢いは凄まじかったが、<超加速>で勢いを相殺しながらなんとか上手く着地した。そして、二体のゴーレムも地響きを立てながら地面へと着地した。
「お前らを相手している暇はない」
大輝はすぐさまゴーレムに突っ込んでいった。まず狙うは杖ゴーレム。このゴーレムは見る限りの魔術師タイプであろうから剣ゴーレムへの支援、遠方攻撃をされるのは厄介だ。なら、先に潰すのが先決。しかし、やはりと言うべきか剣ゴーレムがその前に立ちふさがる。
「ガガガガガ」
剣ゴーレムはその体格に似合わず鋭い攻撃をしてきた。だが、それはここまで連れてきた時点でわかっていたこと。大輝はそれを魔剣で受けて聖剣で切りかかろうとするが――――――
「くっ!」
剣ゴーレムの自体の鉄の重さと勢いが乗った攻撃は簡単に大輝の膂力を超え魔剣だけでは受け止めきれなかった。なので、聖剣も使って攻撃を防いでいく。しかし、それでは攻撃が出来ない。すると大輝は自身の後方へと動く気配を探知した。杖ゴーレムだ。それは大輝の方へ杖を向けると剣ゴーレムに構わず高火力の炎弾を数十発放っていく。
「らああああ!」
大輝は足を大きく開くと力任せに剣を弾き、横へ飛んだ。すると同時に剣ゴーレムへとそれが着弾して大きな爆発と周囲を焦がすような炎が広がった。大輝は剣ゴーレムが動けなくなっているうちに杖ゴーレムへと接近していく。そして、聖剣を大きく手前に引くと突き出した。だが、それは杖で上手く逸らされる。
「あぶねっ!......!」
そして、一瞬の隙をついて杖ゴーレムが大輝の顔面目掛けて殴ってきた。それを首を傾けることで咄嗟に避けるが、その振り出された拳によって作り出された拳圧が大輝の頬を殴っていく。その一撃は重く大輝は思わず後ずさる。そしてその瞬間、大輝に思わぬビジョンが脳裏に映った。それは目の前の杖ゴーレムが大輝に光魔法で目くらましするとこの場にはいもしなかったオークが目の前に現れ切られるというものが。それは刹那に映ったビジョンであったが、異様な確信があった。
そして、目の前にいる杖ゴーレムは大輝の脳内に映ったビジョンに沿って、自身の背後に光の玉を作り出すと一気に発光させた。大輝は咄嗟に目を覆い、<気配察知>でその場を探った。すると自身と杖ゴーレムの間にビジョン通りに突如強い気配が現れたのだ。
「おらああ!」
「ウゴオォ!」
大輝はすぐに魔剣を振って斬撃を飛ばした。すると前からうめき声が聞こえた。大輝は発光が収まってからその声の主を見ているとそこにはビジョン通りオークが倒れていた。大輝は思わずその事実に驚いた。これは偶然じゃない。それは俺の直感が告げているだけだが、それはもう必然だと感じる。こんな未来予知みたいなビジョン、普通は見えるはずがない。俺の勇者としてのなにかが覚醒とかしたのか?分からないが、今は助かった。
大輝はオークの死体を通り過ぎて杖ゴーレムに向かっていく。が、後方から鋭い殺気が感じられて咄嗟に身をよじりながら避けると元居た場所に高速で剣が飛んできた。その方向を思わず見るとそこには体を焦がしながらも力強く歩いてくる剣ゴーレムが。そして、その剣ゴーレムは盾を構えるとそのまま突っ込んできた。
「さすがに当たるわけにはいかねぇ!」
「ガガガガガ」
「そっちもな!」
大輝は<超加速>で自身を空中へと持ち上げるとその突進を避け、さらに飛んできた魔法を剣で切り裂く。それから蜘蛛糸を杖ゴーレムに飛ばすと自身をそのゴーレムへと引き寄せる。
「このデカブツが!」
大輝は雄叫びを上げながら、両剣を頭上へと掲げると杖ゴーレムへと一気に切りつけた。
「!......がはっ!」
だが、大輝の強撃をもってしても杖ゴーレムの胴をやや切り込んだだけで、そのまま剣が止められてしまった。その一瞬の驚きが大きな好きとなり、大輝は横から剣ゴーレムの突進に直撃した。そして、凄い勢いで跳ね飛ばされていく。大輝は肺の空気が強制的に吐き出され、内臓も傷つけられたのか血も吐いた。
大輝はその勢いのまま数十メートル吹き飛ばされ、地面についた後も数メートル地面を引きずられる。そして、止まったところで大輝は何とかして立ち上がると両剣を地面に突き刺すと左手で支えるようにして右手を杖ゴーレムへと向けた。......よし、ダメージは食らっちまったが、俺の攻撃を警戒してか杖ゴーレムを護るように剣ゴーレムが盾を構えて、そのゴーレムの近くにいる。それに吹き飛ばされたことはある意味好都合。安心しろよ、攻撃すんのは俺じゃない。お前ら自身だ。
すると大輝の読み通り杖ゴーレムが遠方から大輝を攻撃しようと魔力を集中させた。その瞬間、周囲一帯を包み込むようみ目を潰すような光と鼓膜を破るような轟音を立てる大爆発がその二体のゴーレムを襲った。それは大輝が自身を杖ゴーレムへと引き寄せるときに飛ばした蜘蛛糸に一緒に括り付けていた聖魔石だ。本当は序盤のうちに災悪の居場所を伝えるために使おうと思っていたのだが、どうせだったら攻撃にも使ってやろうと考えていたのだ。
するとすぐ近くからも大きな爆発音のようなものが聞こえている。だが、それは聖魔石による爆発では無さそうだ、どちらかと言うと魔法でやりあっている感じだ。こちらを済ませて早くユリスのもとへ急がなければ......!
大輝は倒せているかどうか気配を探った。そして、ゴーレムであろう二体の気配を探知した。だが、それはまだいいわかっていたことだから。しかし、問題は目の前に広がる煙の中でなぜかどんどん気配が増殖しているのだ。それはまさにここに来る前に潰した召喚の魔法陣から現れる魔物のように。それを確かめるべく大輝は風魔法で煙を払った。するとその気配通り二体のゴーレムと魔物の軍勢が。
「嘘......だろ!?」
大輝は驚くことしかできなかった。二体のゴーレムには確かにダメージを与えている。しかし、あの大多数の魔物の数は一体何ののか。これはさっきのオークの時と同じでいつの間にか現れた。......まさか召喚魔法か。あの杖ゴーレムが召喚魔法を使えるという事なのか!?
その事実はあまりにショックが大きかった。ユリスから離されてだいぶ時間が経ってしまっている今は出来る限り早く倒して戻りたいところだ。なのにそれが出来そうにない状況に追い込まれた。だが.......だが、ここで諦めるわけにはいかない。
「なら、俺達に任せて先に行けよ」
大輝が考え込んでいるとふと後方からよく知る声が聞こえた。そして、大輝の肩に手が置かれる。その手の主は俊哉であった。それからクリシュナ達を除く全員がいた。
「クリスさんらは念のために村へ戻って警備にあたってくれている。だから、安心して向かうべきところへ向かえ。ここは俺達に任せろ」
「......わかった。任せた」
大輝はその言葉を嬉しく思い俊哉と拳を小突き合わせる。そして、俊哉から渡されたものを受け取るとユリスの方向へ走っていった。
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大輝が連れ去られてすぐの頃、ユリスはベリアルに対して鋭い眼光を向けていた。その表情には当然怒りをにじませている。
「私に用があるようですね」
「物分かりが良い嬢ちゃんは好きだぜぇ。その通り次はお前の体を貰う。もうこのしょぼくれた体は必要ねぇしな。それに嬢ちゃんにとっても悪くはない話だと思うが?なんせ嬢ちゃんの親代わりだったこのジジイと同じ結末を迎えられるんだぜぇ。弟子としてはそれほど名誉ある事はねぇだろう?」
「一体.....一体どこまでバカにすれば気が済むんですか!.....屈折光線!」
ユリスはもう聞いてられないとばかりに言い返すと多数の光の玉を作り出した。そして、腕を振るうと同時にその光の玉からベリアルに向かって光線が放たれた。ベリアルはその光線を後ろに下がって避けるとベリアルを追尾するように屈折しながら再びベリアルへと向かっていく。ベリアルはそれすらも避けていくが尚も追尾してくるので、痺れを切らしたのか魔法を使い始める。
「黒渦」
ベリアルが右手から作り出した黒い渦はブラックホールの如く追ってきた光線を飲み込んでやがて消滅させた。そして、今度はその渦に右手を突っ込むとそこから黒い剣を取り出した。
「あんまなめぇてると痛い目見るぜぇ。嬢ちゃんよぉ!......闇弾」
「なめてなんかいませんよ!......五属の剣!」
ベリアルは人間では出せないような速さで突っ込むと剣を構え、左手から先ほどの黒渦を凝縮させたような闇の弾丸を放った。それに対し、ユリスは自身の目の前に炎、風、氷、土、光それぞれの魔法で作り出した剣をマシンガンのように大量連続射出させた。
「通じるかよ」
「な!.......かはっ!」
ユリスは闇の弾丸が黒渦と同じようなものだと感じたのであえて相殺を避け、ベリアル単体を狙っていったのだが、ベリアルに向かっている剣は引力が働いているかのように闇の弾丸へと吸い込まれた。そのことに驚きが隠せないでいると接近していたベリアルに蹴り込まれた。
「だああああ!」
だが、ユリスはそれだけで怯むようなやわな鍛え方はしていない。こちとら接近戦も心得ている。そして、杖をこん棒のように振り回しながらベリアルへと攻撃を仕掛けていく。
「だから、あめぇっつてんだよ。切るまでもねぇ」
「ごふっ!.......ああああああ!」
ベリアルは左手でそのこん棒を掴むとそのままユリスの腹部を蹴り上げた。そして、そのこん棒を振り回してユリスを遠くへ投げると<闇弾>を放った。だが、ユリスとてやられっぱなしにはいられない。あの闇の弾丸が魔法を吸い込むなら吸い込み切れなくなるまで放ち続ければいい。こっちは魔力量には自信があるから。ユリスは向かって来るそれにとにかく魔法を撃ち続けた。すると予想通り暴発させることに成功。ただ全てではないが。
そして、そのうちの一発がユリスの左腕の近くを通った。それはユリスに肘を吸い込もうとしてやがて衝撃波を放って弾けた。その衝撃波は左腕を襲い、腕が砕けた。その痛みにユリスは思わず悶絶する。だが。その痛みばかり気にしてはいられない。今は空中、早く対処しなければ地面に激突してしまう。
「エア――――――――」
「させると思ったかぁ?」
「がはっ!」
ユリスは落下速度を抑えようと<風の翼>を発動させようとするが、その前にいつの間にかユリスの頭上にいたベリアルがその背中を蹴って叩きつけようとした。ユリスは思わずうめき声を上げるが、なんとか地面に着く前にもう一度魔法を発動させて直撃を防いだ。
「やるなぁ、それこそオレが見込んだ体だぁ」
「ああ!」
ベリアルは地面に着地すると地面に伏しているユリスに近づいて左手でユリスの顔を鷲掴みにした。そして、先のようなセリフを吐く。
「なあ、痛いか?怖いか?苦しいか?憎いか?それら全てはオレの好物だ。存分に味わえよ。お前がオレに体を乗っ取られその意識を失う一瞬たりともなぁ」
ベリアルは右手に持つ剣をユリスの首に当てると僅かに掠める。するとそこからはスーッと血が流れていく。
「お前がどんなに望もうとももうこの体にジジイの意識が戻ってくることはねぇ。お前がやっていることは全て無駄。オレにその身を献身的に捧げているようなものだ。どうだ屈辱か?そんな感情を抱いても何も事態は変わらないがなぁ」
「あなたに......あなたになにがわかるって言うんですか。全てが無駄?そんなことあなたが決めないでください!私の感情を勝手に否定しないでください!これは私だけのものです!そして、その体は村長のものです!}
「わめくな。変わらねぇって言って――――――――」
「それもお前が決めることじゃねぇよな」
「!」
ベリアルの言葉に遮るようにして現れたのは少年は、ベリアルをユリスから遠ざけるように切りかかる。そして、ベリアルが離れるとその少年はユリスを支える。その少年はボロボロになり、口に血の跡を残しながらも勇敢に立つ一人の勇者、いや.......
「待たせてな、ユリス。一番弟子が帰って来たぜ」
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