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好奇心で異世界への魔法陣に飛び込んだら青春を謳歌しました!  作者: 夜月紅輝
第5章 たとえ叶わないとわかっていても
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第80話 頼みたいことがある

7月にも入ると別に暑くなくてもアイスが食べたくなりますよね


評価、ブックマークありがとうございます。励みになります(*´▽`*)

「大輝さん、しんどかったですよね、辛かったですよね......」


 ユリスは寝ている大輝のそばに座ると大輝の寝顔を見ながら、頭をそっと撫でる。正直、私一人だけこんな事をしていいのかと思ってしまう。他の三人は私を除いて現在もこの村を巡回している。そのことに罪悪感を感じる。それに他にも問題もある。それはエミュさんと香蓮さんのことだ。大輝さんがその二人と接している時だけ若干雰囲気が違う。それからその二人に関しては明らかにといっていいほどに。私はそんな二人の気持ちを知っていながらも、大輝さんに好意を持っている。


「人を切ってしまわれましたからね......」


 そしてもう一つの問題が、大輝さんに人を切らせてしまったこと。大輝さんは「人を殺せない」と初めて会って話した時に言っていた。それでたとえ勇者の仕事として人を切らなければいけないとしても、やはり人を切りたくなかった大輝さんが人を切ってしまったことにどうしようもなく悲しく思う。仕方ない、大輝さんもそれを覚悟していたしそれを考えることはもうする必要はないのだろう。でも、人を殺したくない人が人を殺すとは一体どういう気持ちなのだろう。


「こんな経験したくなかったですよね......」


 私もあの人を殺したくて殺したわけではない。だが、魔物を殺すことには慣れていた。しかし、大輝さんはもとの世界で生き物すら殺したことがないという。そんな人がたとえこの世界で魔物を殺すことを慣れたとしても1年も経っていないのに慣れるはずがない。それは経験した私だからわかること。それに今は災悪討伐という勇者の仕事のおかげで慣れていると思っているだけだ。体は慣れてなんかいない。だから、疲れがより出るのだ。もちろん、魔力消費を除いても。


「.....あれ、誰だ?」


「あ、起こしてしまいました......か!?」


 ユリスが変わらず頭を撫でていると大輝がふと目を覚ました。だが、大輝は寝ぼけているのかユリスをユリスだと思わず触って確かめようとした。そして、大輝の手がユリスの顔に......と思いきや腕が思ったより上がらなかったのかユリスの控えめなふくらみへと触れた。そのことにユリスは思わず言葉を失う。


「ん?......やわ......らかい?」


「な、なななな何をしてるのんですか!?!?」


「あたぁ!?」


 大輝の手がユリスの胸を揉み始めた瞬間、ユリスは声を張り上げ大輝の頭へとチョップを食らわせた。その攻撃に大輝は完全に目を覚ました。そして、額を抑えながら大輝はなぜユリスがここにいるのかと目を向けながら聞いた。


「ユリス、どうしてここに?」


「そ、それは......」


 ユリスは思わず口ごもる。言えない、実は邪な気持ちがあったなんて。いや、あったとしてもそれを実行する気はなかった。でも、それをライナに見抜かれてあれよあれよとこんな所まで連れてこられてしまった。そして、結局私はその現状を受け入れて、大輝さんの頭を撫でていた。だが、このまま黙っていても良くはないだろう。


「心配で見に来たんですよ。襲撃の前に話したことがあったじゃないですか」


「ああ、なるほどな」


 大輝はユリスの言葉に納得するとどこか安心した笑みを浮かべた。ユリスはその笑みを見てなんだか嬉しいような、騙して申し訳ないような複雑な表情になる。だが、こう都合よく勘違いしてくれたならこのまま押し通してしまおう。こっちが不利になる前に。それに今はこんな場合じゃないし。


「人を切る重さってこんなに重いんだな.....」


「そうですね、命を絶つわけですから。あの人たちは生きていて、災悪にされた。そして、その災悪は今もどこかに潜伏している。その災悪を討伐してその人達が生きたかった無念を晴らしてあげましょう」


「そうだな。ユリスはさすが俺の師匠だな」


「師匠......そうでしょう、もっと褒めてもいいのですよ?」


 ユリスは誤魔化すように笑みを浮かべて茶目っ気な言い方をした。だが、その内心はあまり晴れやかではない。大輝が自分をどう思っているのかが今の言葉で表されていたのだから。自分と大輝の関係はあくまでも師弟関係。年齢差があるからそこまでは思っていないだろうと思っていたけど、きっとあの村でいた頃の振る舞いに原因があったのだろう。


 するとそんなユリスの態度を見抜いたのか。大輝がそっと手を頭に乗せた。


「変に気持ちを押さえつけようとすんなよ。辛い時は辛い、苦しい時は苦しいと言っていいんだぜ?ユリスの周りには助けてくれる人たちがいっぱいいるだろ?俺だってその一人だ」


「......大輝さん......」


 ユリスは思わず目に涙が溢れる。その優しい手が、温かい言葉が体に伝わって、心に染み渡る。そんなどうしようもない嬉しさが込み上げてくる。そして、思わずその熱い思いを口から出す......わけにはいかない。この気持ちにケリをつけるとしてもその言葉を伝えるのは全てが終わった後だ。今は大輝にもこれからの事がある。その気持ちを鈍らせるようなことはしてはいけない。


「......大輝さん、師匠の頭をそう易々と触らないでください。それに大輝さんが助けてくれるなんてそんなことはわかっています。私の()()()()()ですから」


「ははは、そうか。そりゃあそうだな」


 ユリスの言葉を聞いて大輝は快活そうに笑った。そんな大輝にユリスはまた小さな嘘をついてしまったことに胸が苦しめられる。けど、今はまだそんな事をしている場合じゃないのだ。


 すると大輝がユリスにこんなことを訪ねてきた。


「ユリス、図書館のような場所はあるか?」


**********************************************

「ん?誰かしら?」


「俺だ」


「......勇者?」


 大輝とユリスの話があってから翌日。セレネの部屋がノックされた。それも声の主は大輝であった。しかし、こんな朝っぱらから一体何の用だろうか。もしかして昨日の件についてであろうか。それなら正直、心当たりはある。だが、それは大輝には言えないことだが。


 とりあえずなんとなく鏡を見て軽く身だしなみを整え、服装に不備がないか確かめると大輝を扉を開けた。一体大輝はどんな表情かと思っているといつになく真剣な表情で、思わずこっちがドキッとしてしまうぐらいだ。


「まあ、立ち話もあれだから。少し部屋に入っていいか?それに聞かれては不味いかもしれないし」


「え?......ああ、いいわよ」


 セレネはらしくない緊張を感じながら、部屋にある椅子に大輝を座らせ向かい合うようにベットへと自分が座った。そして、大輝は軽く深呼吸すると話始める。


「こんなところでこんなことを言うのは悪いとは思っているんだが......」


「え、ええ、何よ」


「魔族のセレネに頼みがある」


「はあ.......」


 セレネはその言葉を聞いて思わずため息を吐いた。なんだか妙に緊張してバカみたいだ。だが、それなら自分はどんな言葉を期待していたのだろう。このタイミングで告白とか?そんな考え馬鹿馬鹿しくて自分で笑ってしまう。この勇者は変態で優柔不断なところもあるけど、こんな時に意味の分からない行動をうほどバカではない。これはさすがに自分がバカだった。ほら、勇者も怪訝な顔を浮かべてるし。


「なんでもないわ。本題に入って」


「ああ、わかった。それで頼みというのはセレネの魔力を借りたい。だが、嫌だったら別にいい」


「嫌ってどこがよ?」


 セレネは大輝のその言葉の意味がわからなかった。だから、思わず聞き返す。すると大輝は驚いた表情をしながら、逆に聞き返す。


「嫌って、そりゃあ......まあ、先に話を聞いてもらってからの方が早いな。実は俺は簡単に言えば爆弾を作ろうとしている」


「ば、爆弾!?」


 セレネは思わず声が裏返った。それは仕方ないと思ってほしい、なんせ勇者が爆弾なんてものを作ろうとしているのだから。まあ、それを災悪相手に使う予定だろうから非道とは思わないけど。でも、なぜそんなものを作ろうと思ったのか。そこは気になるところだ。


「話を進めるぞ。とりあえず目的は二つある。一つ目は発光弾代わり、二つ目が単純な攻撃用。そして、その爆弾を作るためには俺の神聖属性を付与した魔力とセレネの魔族特有の魔力のいわゆる相反する魔力を掛け合わせる必要があるんだ。だから、俺は嫌だったらと言った」


「なるほどね、理解したわ」


 要するにあの勇者が言いたいことは魔族である私を利用するから断ってくれても構わないということだろ。魔族の魔力は人族やエルフ、獣人族とは若干異なる魔力を有している。だから、一番初めに「魔族である」なんて言葉を付け足したのだろう。そして、魔族である私を利用するのは今後になにかと問題が生じてしまうのではないかと思っての遠慮した言葉でもあったのだろう。しかし、何を今更遠慮することがあるというのか。一体何か月ともに過ごしてきていると思っているのか。その配慮は時には必要だけど、今の私には明らかに不要なものだ。


「別に構わないわ、手伝ってあげる」


「ほんとにいいのか?」


「今更遠慮なんてむず痒いわ。それにもとより私は母様を探すためにあんた達を利用している身。なら、私が利用されることも仕方がないと思うわ」


「ありがたいけど、その言い方はなんか嫌だなー」


 大輝は思わず体を仰け反りながら「それはないなー」といった表情をする。だが、その表情は明らかに先ほどよりも明るい顔つきに変わっている。セレネはそんな大輝を見て一先ずの安堵の息を吐いた。


「それで私は何をすればいいの?」


「単純な作業だ。ただ俺の魔力に合わせて少しずつ魔力を注いでってもらいたい」


「それだけ?ふーん、随分と簡単ね」


「俺もそう思う。俺が見つけた魔導書にはそんなことが書かれていたし」


「魔族とかかわった勇者が昔にもいたのね。というかどんな魔導書を見てそんなもの見つけるのよ」


「俺もさっぱりわからん。たまたま見つけたやつがそんなこと書いてあっただけだし」


 これも勇者という奇異な運命の巡り合わせというものだろうか。まあ、そんなことはどうでもいいか。それから余裕そうな笑みでセレネと大輝は作業に取り掛かった。そして、後悔した。この作業を甘く見ていたことに。開始してから約三時間半、互いの魔力をほぼ全て使って作り出した聖魔石という特別な魔石。それだけかけてやっと普通の魔石の大きさしか作れなかったのだ。

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