第79話 約束の確認
ウオオオオオオォォォォ\(゜ロ\)(/ロ゜)/
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「くっ......らあああ!」
大輝は掲げた聖剣から魔力を放出して必死に結界が破れないように踏ん張る。これは大輝がこの村にある魔石に魔力を当てた時に次いでと思って結界の魔法陣を付与していたのだ。そのおかげで今はこうして耐えれているが、勇者である大輝で精一杯の火力の炎魔法がこの村を消し炭にしようと覆っている。
「主様、これじゃあ魔力が足りないのじゃ!」
「マスター、ここで魔力解放すべきだと思うの!」
「くっ!......魔力解放!」
大輝はドリィから解放した魔力を一気に聖剣から放った。すると負担が少し減ったような気がした。あくまで気がしたであるが。だが、それだけでも心の持ちようは変わってくる。どうせだったら前向きに捉えようではないか。しかし、問題は別にもある。
「師匠、しっかりしろ!こんな時こそ冷静にだ!」
「!......すいません、私としたことが。しかし、これは一体......」
「師匠、お願いがある!この場は俺に任せて他の人達を護ってくれ!」
「ですが......」
ユリスは大輝の辛そうな表情を見て、なのか?「この場から離れても大丈夫なのか?」と思ってるようでなかなかこの場から離れようとしない。この襲撃で他の仲間たちが動いてくれているが、それだけではおそらく足りない。なら、ユリスも加えて出来る限り助けてもらった方が良い。そう考えた大輝は余裕そうな笑みを浮かべてユリスに言う。
「さっき言っただろ?任せろって。大丈夫だ、必ず守る」
「......そうでしたね。それではお願いします」
ユリスは全てを託すように強い口調で言うとこの場から走り去った。それを見送った大輝はすぐに表情を変え、多くの汗が流れ、体に倦怠感が襲った。段々と息を荒くして、体に残る魔力もそう多くは亡くなってきた。なのに攻撃が止まる気配がまるでしない。一体どうなっているのか。根性論は嫌いじゃないが、これは根性でどうにかできるかも怪しい。
「おらああああ!」
だからといって止めるわけにはもちろんいかない。そうなれば俺だけではなくこの場にいる人たちも死んでしまうし、その後に現れた災悪によってこの世界が終わってしまう可能性だってある。それだけはなんとしてでも阻止しなければ。
「主様、敵の気配じゃ!」
「こっちに向かって多くの敵が向かってきているの!」
「クソッ!踏ん張れ俺ええええええ!」
大輝は自分を鼓舞しながら、<気配察知>で確認した位置に目を向ける。するとそこからまるでゾンビのように死臭を漂わせて、虚ろな目をし、口をだらしなく開けた村の人々がこちらに向かって走ってくる。それを見た瞬間、大輝は一瞬怯む。なぜなら敵がまんま人の姿なのだから。いくら人を切ると覚悟しても、決意しても心に辛く重いダメージが来る。だが、そんな経験を自分よりもっと幼い頃にユリスが乗り越えたのだ。なら、自分も乗り越えなくてはならない。
「だあああ!!」
大輝は気合と自分の迷いを紛らわすように今のも向かって来る人たちに向かって炎の魔法を放った。すると着弾した人たちから全身を炎に包まれる。
「熱い、熱いよ!」
「たす.....け......て......」
「......!」
その人たちはもとの人の状態に戻ったかのように苦しそうな声を上げる。炎を消そうとあちらこちらをうろうろと動き回ったり、喉が渇くのか喉元を掻きむしったり、地に這いつくばりながら大輝に必死に手を伸ばしながら助けを求める者もいる。そんな人たちを見て大輝は思わず目を背けたくなる。だが、この人たちを殺す。その罪を背負うことから逃げてはいけない。
「主、ぼさっとするでないのじゃ!」
「マスター、しっかりして!」
「!......くっ!」
その人達に注視しすぎるあまり大輝は後方から襲ってくる敵に気づかなかった。だが、フランとドリィの声によって我に返るとすぐに後方に向かって蹴り飛ばす。その敵は苦しそうにうずくまる。大輝は苦虫を噛み潰したような顔で風魔法を放って敵の首を撥ねる。そして、その敵の後方から襲ってきた敵に向かって土魔法の弾丸を放って頭を破壊する。
「こんなことがあってたまるかあああ!」
大輝は今の状況に愚痴をこぼしながら、こんなことをする災悪に怒りを抱きながら敵を次々と魔法で処理していく。そんな中、疑問を抱く者、いや、剣が一本。
「マスター、どうしてドリィを使わないのなの!」
「......」
ドリィはさっきからずっと魔法で戦う大輝に思わず聞いた。理由はわからないが、なぜかずっと魔剣を使おうとしない大輝。敵も多く何体かが大輝に接近してくるのにも関わらず、大輝は殴ったり蹴ったりして吹き飛ばすだけで一切魔剣を使おうとしない。そして、ドリィの言葉にも反応しない。戦いに集中していて気づいていないだけか。それとも意図的に無視しているのか。
「これでラストおおおお!」
大輝は敵の一体に蜘蛛糸を飛ばして引っ付けるともう一体の敵にぶち当てた。そして、その敵が動かなくなるのを確認すると膝をついた。先ほどから聖剣を頭上に掲げ続けていて腕が限界になってきているし、敵と戦っていたことで魔力をもっと多く消費してこちらも限界が近い。「早く、早く終わってくれ」と今は願うほかない。
するとその願いが通じたのか村を襲う炎の勢いは段々と収まってくる。それからやがて炎が完全に消し去ると大輝は結界を解除して、前のめりに倒れ込んだ。
「はあはあは......」
「主様、大丈夫かじゃ?」
「マスター、しっかりしてなの」
大輝は呼吸を荒くしながらその場から動かない。いや、動けない。体の気だるさが今までにもないほど溜まっている。これは出来れば一度寝たいぐらいだが、そうは言ってられないだろう。
そう思うととりあえず大輝は仰向けに姿勢を変えた。少しでも多くの空気を吸って呼吸を整えなければ。するとドリィが大輝の顔を両手で押さえると覗きこむようにして見る。そして、大輝に聞いてきた。
「どうして魔剣を使わなかったのなの?」
「それは......約束したからだ」
「約束......なの?」
「ドリィとの『人を殺さない』という約束だ」
「.....!」
ドリィは大輝の言葉に目を見開く。それは自分でさえも忘れていた大輝との約束だったからだ。自分と大輝との契約内容は人を殺さない。人を殺す目的として造られた自分は文字通り人を殺しまくった。そして、そのことが嫌になり、大輝にそんなことを言たのだ。そして、そのことを大輝は覚えていてくれた。そのことがとても嬉しい。
ドリィの顔はその感情で一杯なり思わずその顔を上気させる。すると大輝が真剣な目でドリィに告げた。
「ドリィ、聞いてくれ。俺はこの討伐で人を殺した。魔剣を使ってではないけど、どうあがいても災悪と戦う時にはドリィを使わなくてはいけない状況になる。だから、決めてくれ。この場で俺との契約を解除するかどうかを」
「ど、ドリィは......」
ドリィは思わず言い淀む。この場で迷いが生じた。大輝とはこれまでも一緒に旅を続けたい。だが、そうすると過去の無残な記憶が蘇る。助けになりたい、でも怖い。そんな複雑な葛藤がドリィを襲った。するとフランがそんなドリィに口を開く。
「ドリィ、お主はどうしたい?主様の助けとなりたいのか、それとも自分の恐怖にまた怯えるのか?それは所詮過去でしかない。今まで体験してきたことを思い出すのじゃ。お主はこの旅で何を知って、何を見てきたのじゃ」
「......!」
ドリィはその言葉で大輝と経験してきた全てを思い出した。あの村での経験、初めての討伐、美味しいご飯の味、それら全てが大事な思い出。
ドリィはそっと目を閉じる。そして、開いたころにはドリィの目は強い眼差しに変わっていた。
「マスター、契約は解除しないの。そんなことさせないの。これはドリィの意思で決めたの。だから、マスターはドリィを使って敵を倒して。それがたとえ人であろうともドリィは剣であり続けるの」
「......そっか、わかった。なら、一緒に手伝ってくれ。俺にはお前の力が必要だ」
「はいなの」
大輝の言葉にドリィはにこやかな笑みを浮かべた。その表情を見て大輝は驚いた。そんな表情をすることもあるのかと。これも一緒に旅を続けてきたからわかったことか。それならこれからもいろんな表情が見られるように頑張ろうではないか。
ドリィと話しているうちに呼吸が安定したのか体が少し軽くなった。それから上体を起こすとゆっくりと立ち上がる。そして、ふらつきながらも村長宅に向かって歩き始めた。
大輝がその場所に辿り着くと俊哉達やユリス達がすでに集まっていた。そして、総じて暗い顔をしている。仕方ない、あんな経験をしたのだから。俺も全てを受け止めきれたわけじゃない。ただその重みを背負って耐えているに過ぎない。
「お前ら、大丈夫か?」
「大輝か......ああ、とりあえずな。だが、さすがにこれはきついぜ」
俊哉は軽い口調で言うが、その笑みは明らかに不格好だ。きっと俺と同じくその重みを耐えているのだろう。
「大輝君、助かったわ。あなたの結界のおかげでこの村は救われた」
「クリスさん......はい、どういたしまして」
「で、今すぐに情報を共有したいところだが、このままでは非効率だな。それじゃあ、大輝達、勇者組は先に寝ろ。この場の警戒は私達がしておく」
「ですが―――――――」
リズベットの言葉に大輝は思わずなにかを言いかける。リズベット達も今までにないほど精神にダメージが来ているがはずだ。なのに自分達だけ先に疲労を回復させることなどあっていいのか。だが、そんな大輝の言葉を遮るようにリズベットが言葉を付け足した。
「お前達は勇者だ。そして、その目的は災悪を討伐すること。それはお前達がいなければ達成できないものなのだろう?なら、お前達を優先するのは当然だ」
「そうそう、ここはわらしらしに任せれおきなさいっれ。わらしらしは先輩らよ?(私達に任せておきなさいって。私達は先輩よ?)」
「.....わかりました。お言葉に甘えさせていただきます」
大輝はリズベットの言葉に静かに同意した。そして、大輝達は先に部屋に戻った。
「さてとここからどうするか?」
「そうね......一先ず私も休みたいかしら。もちろん、寝るわけじゃないけどね」
「確かにそうですね。ですが、慣れてないあの方達は寝ることができるのでしょうか。私は初めての時、まず寝れませんでしたよ?」
ユリスはその時のことを思い出して、思わず両腕を抱えるように掴んだ。悲しみ、苦しみ、辛さ、その他にもありとあらゆる負の感情がその時の自分を襲った。そして、殺した時のことがフラッシュバックして、しばらく眠ることが出来ずに魔法で強制的に寝たりもした。それだけの経験を大輝達もしなければならない。それがどうしようもなく辛い。出来ればそばに居てあげたい。
「なら、ユリスがらいきのそばについれあげらら?(大輝の傍についてあげたら?)」
「な!」
「ふふっ、それはいいかもね」
「確かに攻め時だな」
「ちょっと何を言って......ってうわあ!?」
ユリスがライナリーゼの急な提案に抗議しようと口を開くが、すぐに強制的に体を拘束され大輝の部屋へと運ばれる。そして、ライナリーゼが盗賊の職業を使って大輝が寝ているのを確認するとユリスを部屋へと押し込んだ。
「それじゃあ、頑張ってね」
「え.......ええー」
三人はにこやかな笑みを浮かべてユリスにファイトと送ると扉を閉めた。ユリスはそんな三人をどうしようもない人を見るような目で見送った。
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