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好奇心で異世界への魔法陣に飛び込んだら青春を謳歌しました!  作者: 夜月紅輝
第5章 たとえ叶わないとわかっていても
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第72話 三人寄っても文殊になるとは限らない

評価、ブックマークありがとうございます。励みになります(*^-^*)

「はあ......なんとかなったな」


「そうね。一時はどうなるかと思ったけど」


「別の意味でもどうにかなると思ったよね~」


 セレネ、俊哉は机の上でぐで~っと脱力した。その雰囲気から疲労がいっぱいということが伝わってくる。そんな二人を見て茉莉は少し苦笑いを浮かべる。


 三人が言っていることはもちろん大輝と香蓮のことだ。この三人はこれで集まるのは三回目になる。一回目はセレネが俊哉と茉莉に焚きつけるよう言ったとき。二回目は大輝と香蓮の関係が崩壊して、どうすればいいか話し合い......というか反省会に近かったときだ。そして、今回三回目はというと.....


「とりあえず飲みましょう。こういう時はパーっといくもんよ」


「セレネが言うとなんかイメージが湧かないが、まあそうだな」


「思ったよりこういうことをしてないもんね」


 何もしてないが祝勝会。より伝わりやすく言うならば、ただの飲み会である。とにかく今はなによりこのパーティ内の雰囲気が良くなったことが嬉しいのだ。それも若干うざいぐらいだが、あの時よりも随分とマシだろう。というわけで、飲むのだ。今日は飲む。そして、寝る。


 セレネはあらかじめ買っておいたビールをコップに注ぐと一気に飲み干した。


「あー、染みるわー」


「なんかおっさんみないな感想だな」


「なににか問題でも?」


「いーや、なんにも」


「ふふふっ、肩の荷が下りると美味しいね~」


 セレネは食事そっちのけでグビグビと飲んでいき、やがてその頬を赤く染めていく。俊哉はちょくちょくセレネの様子を見て「酒弱いんだからもうよせ」というがセレネは聞く耳持たずといった感じで飲んでばかり。


「あー、もとはと言えば、あの勇者が全部悪いのよ。気持ちが察せれないわけじゃないくせに二人の気持ちを変になるまでに放っておくなんてどうかしてるわよ」


「いや、そうじゃなくてな。大輝は割とガチで南の気持ちは知らなかった。いや、知ろうとしなかったの方が正しいかな?まあ、そういうわけでああなるのはいわば仕方がないことで――――――――――」


「そんなこと知らないわよ。というか幼馴染なのに気づかないって何?ミリアも言っていたけど近すぎて遠いって何なのよ。意味はわかっても全然理解できないわ」


 セレネは大輝の愚痴を言始めると次第にヒートアップしていった。そんなリリスに俊哉は苦笑い。言っている意味はわかるのでなんとも否定がしにくい。これは一体どうしたものか。一番速いのは直接本人をぶつけることだが、あいつは最近スキルでも使っているのかというぐらい無駄に危険察知能力が高くなっている。それに、たとえそれを口実にしてここから出ようとするのは茉莉にも気が引けるし、そもそも逃げれるのだろうか。そこの自信が全く湧かない。


 そう思うと俊哉はひたすら聞き役に徹することにした。セレネが酔いつぶれるのが先か、俺が根を上げるのが先か。


「まあ、そう言うなって。俺も幼馴染なんて存在はいなかったからセレネの気持ちはよくわかるが、大輝と南にはなにか通じるものがあったんだろう。ミリアが知っているのはそれだけ人と接する機会が多かったからだろう?」


「ええ、そうよ。そのミリアがそんなことを言っていたのよ。けど、私も知り合いにそんな二人がいたのにもかかわらず全然わからなかった。そして、結果は今回みたいに上手くはいかなかったわ。むしろ今回の結果が驚きな結果ぐらいよ。でもそれはまだ最終結果には至っていない.....私の知っている結果はこの流れなら言わなくてもわかるでしょう?」


 リリスの言いたいことは伝わった。要するにほとんどの漫画や恋愛小説で出て来るような主人公に一番近くて届かないある種残念属性の部類に入る幼馴染というポジションは報われないと言いたいのだろう。そして、セレネはおそらく南はその報われない結果になってしまうのではないかと危惧している。きっとそれは南のことを思っての言葉だろう。もちろん、エミュもないがしろにしているつもりもない。


 俊哉はその質問に何も答えられなかった。いや、答えられる質問でもなかった。だから、沈黙を貫くほかない。


 そして、リリスは俊哉が思った言葉を呟く。


「幼馴染って報われないのかしら.....」


「ってことは、セーちゃんはみなちゃんに報われて欲しいってこと~?」


 リリスの呟きに茉莉が核心を突くような質問をした。だが、それは俊哉としても聞きたいとこではあった。最初は大輝と香蓮の仲を取り持つといった感じだと思ったら、次第にどこかそういう風になって欲しいと願っているようにも聞こえる。いや、もはやそう言っている方が近いか。


 茉莉の質問にセレネはすぐには答えなかった。そして、少しの沈黙の後ゆっくりと答え始める。


「......正直、わからないわ。どこかそうなって欲しいと思う割には、割と他人事のようにそのことを捉えているのよ。そして、そのどちらが私の本心なのか私自身もわかっていない」


 セレネは先ほどよりもゆっくりな速さでビールを飲んでいく。胸に抱えているもやもやを押し流すように。そして、飲み干すと再び口を開く。


「もうここ最近ね、ぐちゃぐちゃしたことが多いのよ。エミュのことだったり、レイの言葉だったり、私の同胞の問題だったり、解決したはずの香蓮のことだってなぜか胸の内側にこびりついて離れないのよ。それがなんなのか探っても全く手掛かりが見つからなくて。休んでいるようで、全然休めてないの。精神が摩耗してこうでもして無理やり発散してやんないとダメになって来てるのよ」


 その言葉に俊哉は納得した表情を見せた。実は今回の飲み会の立案者はセレネでもとは少し話して互いに労いの言葉をかけあったらそこで終わる予定だった。だが、セレネは俊哉と茉莉を無理やり引き連れるとこれでもかと酒やつまみを買っていったのだ。その訳を俊哉はずっと知りたがっていて、やっと本音が聞けた気がした。


「大輝に言うことはしないのか?ああ見えて、結構役に立つぞ?」


「そんなことはもう知ってるわ。でも、なぜか私の心と体が正反対の向きに動こうとしてるのよ。きっと迷惑かけまいとしてるのね。......あんた達はまだこうして愚痴が言えるのに......どうして......かしら」


 セレネはその言葉だけ言うと酔いつぶれて寝てしまった。俊哉はセレネの言葉を正確には捉えきれなかったが、おおよその推測が出来た。そして、これはまた一山の難がありそうだとため息を吐いた。


 そして、俊哉と茉莉の二人の時間が流れる中、俊哉が口火を切った。


「そういえば、南を見てなにか変化に気づいたか?」


「さすがにわかるよ~。あれだけ明らかだとね」


「それは逆に明らかでないとわからないって言っているようにも聞こえるのだが.....」


 俊哉はつまみを手に取るとビールを飲みながら茉莉に再び問う。


「なら、どういう風に変わったかわかるか?」


「そうだね~。簡単に言うとエっちゃんみたいになった感じかな~。それに自身もついたような気がする~。そんな感じで合っているかな~?」


「まあ、前に比べれば上出来だな」


 俊哉はビールを口だけ含む。そして、茉莉の成長を少し喜ばしく感じた。というのも茉莉があのダンジョンでとんでも発言してから思ったりより時間は過ぎているのだ。そもそも女神様からの神託はそう連続で来ることはない。むしろやっとかといった感じだ。そして、その間に俊哉は茉莉と何回か互いを知るためのデートをしていた。それでそれからわかったことは、茉莉は深く捉えすぎることにより逆に見えていないということだった。


 茉莉は俊哉が思っている以上に人のちょっとした言葉遣いの変化や仕草、目の動きと細かい所まで......いや、細かすぎるところまで見ているのだ。さすがにそこまで見るのは心理学者ぐらいだろう。もちろん、茉莉は学者タイプではあるが、学者そのものではない。故に見てもわかるはずはない。だが、先の茉莉の言葉で俊哉の基準を超えたのでこの関係を続ける必要はないと思った。


「俺はもうその時点で充分だと思っているが、茉莉はどうするんだ?」


「うーん、そうだね~。私的にはまだ全然なんだよね~。というか俊哉君の基準が前よりも低くなっているような気がするんだけど~」


「それは仕方ないだろ?もとが高すぎたんだ」


「でも、それって普通当事者の私が決めることじゃない~?」


「......」


 俊哉は茉莉の言葉に思わず押し黙る。なんせ茉莉の言っていることの方が正しいから。この問題は茉莉が良しと思わなければ終わらないがはずなのにいつの間に自分基準になっていたのか。そこまでして早く終わらせたかったのか。......さすがにそれは茉莉に失礼な態度だろう。前はそんな気持ち方が大きかったが、今は案外そうでもなくなってきている。これは一種の慣れって奴なのだろ。ならば、もうそろちゃんと手伝ってやってもいいんじゃないか?


 そう思うと俊哉は一回軽く深呼吸する。こころの雑念を取り払うために。


「確かに俺が間違っていた、すまん」


「大丈夫だよ~。私はあんまりというかすごく怒りの沸点は低いし~」


「ってことは、これまで本気で怒ったことはないと?」


「そうだね、そうなるね~」


 俊哉は思わず冗談でも言って切り返すことが出来なかった。なぜか茉莉の言葉がやたら重く感じたのだ。そして、そこにはなかなかに深そうな闇を感じた。そもそも怒ることがないなんてことはありえない。それは優しい風にも聞こえるが、逆に言えば自身の主張することがなくて流されているって言っているようなものだ。自分の絶対に守りたい何かがないなんてあまりに可哀そうだろう。少なくとも俺はそう思う。だが、これは結局のところ俺の一個人の意見でしかないから、ここで俺の主張を押し付けても迷惑だろうし、なにより意味がない。


 俊哉は思わずため息が漏れる。自分の不甲斐なさに。これまでの時間で茉莉のことをそれでもわかっていたつもりだったが、それは全て見えている仮初の部分でしかなかった。なんにも本質には触れていなかったのだ。......なら、これからそれを見つけるか。もういっちょ、付き合ってやるか。


 そう思うと俊哉は茉莉に別の話題を振った。


「茉莉、ここで一つこのお題について話さないか?ずばりお題はこの関係からお互いが得たいものだ」

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