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第70話 変わらないこと

第4章ラストです。どうでもいいかもしれませんが、この作品のテーマは異世界ギャルゲって感じですかね。


評価、ブックマークありがとうございます。励みになります(*^-^*)

「ん~、良く寝た」


 大輝は大きく伸びをすると陽が刺す窓を見た。いい天気だ。それに、体調も悪くない。あれだけ血をが吐いた時はさずがに目を疑ったが、おそらくあいつらが助けてくれたんだろうな。あいつらにはなにかお返ししなきゃいけないな。特に倒れた俺を護ってくれた功労者の香蓮にはとりあえず、着替えて獣王に会いに行くか。


**********************************************

「良かった。無事であったか、大輝殿」


「ご心配おかけしました」


「なんてことはない、無事であればいいのだ」


 大輝はソファに座りながら深々と頭を下げた。それに対し、獣王は気にすんなといった感じで口を大きく開けて豪快に笑った。


 現在、大輝がいる場所は王の間ではなく、客人を対応する応接室にいる。理由は単純で獣王が王の間(そこ)に行くのがめんどくさいとのこと。これに関しては、大輝も大事にしたくなかったのでありがたいと思っている。


「それにしても聞いたぞ。まさか一人で災悪を倒してしまうとは!」


「一人......ですか......」


 獣王は少し興奮したように大輝に言った。それだけあの猿軍団を脅威と思っていたのだろう。しかし、大輝はその言葉を素直には受けれなかった。確かに災悪は()()()()()一人で倒すことが出来た。だが、あの場にいたのは一人ではない。香蓮もいたから力がでたんだ。香蓮の声援があったから、気合が入ったんだ。だから......


「いいえ、違います。()()()()倒してませんよ」


「......そうか」


 大輝のどこか誇らしげな顔に獣王はなにかを察したように優しい笑みを浮かべながら返事をした。


「なら、今すぐ自室に戻ることだな」


「え?」


「大輝殿にはまだやるべきことが残っているということだ。今夜、祝勝会を開く予定だったが、それは明日でも良かろう」


 獣王はそう言うと大輝に早く自室に戻るように促した。大輝は獣王に背中を押されるまま応接室を後にして自室に戻った。しかし、戻っても特にやるべきことは見つからない。獣王は一体何が言いたかったんだろうか。するとその時、ふとドアがノックされた。


「大輝、いるかしら?」


「香蓮か、どうした?」


「いるなら入るわよ」


 そう言って入って来る香蓮を見た瞬間、大輝はドキッと胸が高鳴る音が聞こえたような気がした。香蓮は普段と変わらない衣装なのだが、心の憂いが晴れたからか顔色は明るく、清楚で美しいといった雰囲気が伝わってくる。なぜだか、いつも以上に話しずらい。言うなればあの山の中での無言の時間の時よりも。


「ん?どうしたの?」


 香蓮は微笑みながら大輝の尋ねる。その一つ一つの動作が魅力的に見えて、大輝の調子を狂わせる。......きっと俺も香蓮に対する思いを認めたからなのだろうが、実に「変になるのは、お前のせいだ」と言いたい。


 すると香蓮は大輝にいたずらっぽい笑みを見せる。


「もしかして......私のせい?」


「......違うわ、バーカ」


「ふふふっ」


 大輝は思わず顔を逸らして照れ隠しにその言葉を口にした。だが、香蓮には見透かされたように笑われる。それにいつもなら「わかってるわよ、冗談よ」というはずなのだが、それを言わないことが余計にそう感じてしまい、無性に悔しい。


「あ、そうだ」


 ここでふと大輝はあることを思い出した。だが、それは下手したら香蓮に嫌なことを思い出させてしまうかもしれない。けど、なぜだかこれは香蓮に渡した方がいいと思う。そう思うと空間宝物庫(ストレージ)からたくさんの紙袋を取り出した。それを見た香蓮は思わず目を大きく開いた。


「これって......」


「嫌なこと思い出させたらすまんな。でも、これは渡した方がいいと思ったんだ」


「ずっと持っていてくれたんだ、嬉しい」


「......!」


 香蓮は大輝が取り出した紙袋の一つを手に取ると大事そうにギュッと抱きしめた。その反応が大輝の予想外すぎてもう調子が狂いっぱなしだ。まさか香蓮と話すだけでこんなにも体力を消費する日がくるとは思いもしなかった。これは今後の課題であろう。


「ねぇ、大輝。これ、着ていいかしら?」


「まあ、いいぞ.......ってここでか!?」


「なに今更照れることがあるのよ」

 

 そう言う割には香蓮の顔はほんのり赤い。そしてついには「後ろを向いてて」と大輝に言い始めた。あまりの急展開に思考が回っていない大輝はすぐには動けなかった。するとそんな大輝を見て香蓮が一言。


「向くんじゃないわよ、えっち」


「な!?」


 急な言われように大輝は素っ頓狂な声を出した。そして、香蓮が服を脱ぐような動作をし始め、咄嗟に後ろを向いた。クソッ、なにがどうなってこうなんだ!?わからん。わからんが、ここに来る前のことを思い出せ。俺は周りからエロの伝道師という健全な男子なら名誉ある称号を持っている男だ。このままやられっぱなしも癪だ。......たまたま、たまたま見えてしまったなら許されるはずだ。いっけー!」


「後ろ向いててって言ったでしょ、エロ大輝」


「ぎゃああああ!目がぁ、目がぁ!」


 勢いよく後ろを向いた瞬間、目の前には着替え終わっていた香蓮がいて二つの指で目つぶしされた。大輝は痛みに目を覆いながら床をゴロゴロと転がる。そんな大輝を香蓮は呆れたため息を吐きながら見つめた。


「で、これどうかしら?」


「ん?.......ああ、似合ってるぞ」


「......!」


 香蓮はあのデートの時買った服を着て見せて大輝を照れさせて茶化そうと思たのだが、予想外の即答に思わず顔が熱くなる。こ、これがカウンターっていうやつかぁぁぁぁ////


 香蓮は一回咳払いをして、気を取り直すと本題に入った。


「ねぇ、大輝。デートの続きをしない?」


「......へ?」


**********************************************

「二人だけ楽しもうとは許さんのじゃ!」


「ドリィも遊ぶの!」


「なんか悪いな、二人がどうしてもって」


「別に良いわよ......私もやっぱ攻め過ぎたと思ってたし」


「ん?すまん、今の聞き取れなかった」


「聞かなくていいことよ。さあ、どこから回ろうかしら」


 香蓮は大輝が聞いてなかったことに少し安堵すると辺りを見回し始めた。そして、露店を見つけるとその店でケバブのような食べ物を買ってきて全員に渡した。


「美味いな」


「肉、最高なのじゃ」


「ジューシーなの」


 それを食べた三人がそれぞれそ笑みを浮かべながら感想を述べていくのを見て香蓮は思わず自分のことのように喜ばしく感じている。これは今までは感じなかったことだ。ならこう感じるのは恋をしたからなのかな?そう思えることは大輝に感謝しなければならないけど、これはチョロいって言われないか?


 香蓮はそんなことを思ってしまったが、「別にそれで何が悪いのか。好きだから仕方ないじゃない」と思い直すことにして口いっぱいにケバブを頬張った。うん、凄い美味しい。


 そして、香蓮は予定時間近くになるまでいろんな美味しい店に行ったり、ここでしか売ってない服を買いに行ったり、お土産を買いに行ったりとにかくいろんなものを見たり、知ったり、経験したりした。けど、さすがに猫耳は恥ずかしかった。


 それから大輝たちは香蓮に案内されるままとある高台にやって来ていた。そこは水平線が良く見える場所であった。


 時刻は19時57分、空が朱色から星々が見える暗さになった頃、一心不乱に食事をしているフランとドリィの頭を撫でながら香蓮は大輝に話しかけた。


「ここはね、獣王様が教えてくれたのよ。ある光景が良く見えるからって」


「ある光景って?」


「それはもう少しのお楽しみ」


 何かを楽しみにしている香蓮を見ながら大輝はただ静かな時を過ごした。会話はない、言葉なんて以てのほか。しかし、そんな時間が懐かしく感じる。大輝は「こんなこと、昔もあったよな」と思った。それはまだ大輝と香蓮がであって間もない頃、大輝は香蓮を連れて学校の裏山へと連れてった。そして、暗さは今と同じぐらいで、そこで打ち上がる花火を眺めたものだった。......まさか!?


「時間よ」


 香蓮がそう言うと同時に一筋の光が天へと上り、大きく花を咲かせて弾けた。そして、それに続くように色とりどりの花が暗い夜空を明るく染め上げていく。そんな光景に大輝は見惚れ、フランとドリィは食事を止めて感嘆な声を漏らした。


 すると香蓮が大輝にそっと話かける。


「驚いた?この世界にも花火があることが」


「ああ、案外この世界も俺たちのもとの世界と近しいものだったりするかもな」


 花火であったり、食べ物であったりと他にもいろいろ。だから、苦にならず生きやすいのだろうか。いや、それは仲間がいるおかげでもあるか。


「それに、昔のことも」


「......ああ、しっかりと覚えてる」


「そっか......」


 香蓮はそのことに優しく笑みを浮かべた。自分が大輝に振り向くきっかけの一つでもある思い出の光景を覚えていてくれたことが。それもしっかりとて。ああ、認めてしまうとこんな小さなことで悩んでいたと思ってしまうくらいに心がスッキリとしている。大輝の言葉が一つ一つ心に届いてくる感じ。それがどことなく気持ちよかったり。


「大輝、変なこと聞くね」


「いいぞ」


「大輝には特別な相手が()()いるわよね?」


「!......ま、まあ、そうなるのかな?」


 大輝は思わずはぐらかすような言い方をした。だが、顔を見れば一目瞭然で嘘だとわかるぐらい顔を赤くしている。幸い、花火へと香蓮が顔を向けているので見られることはなかったが。しかし、同時に自分の優柔不断さに嫌気が刺す。香蓮の言った通り今の心には二人いる。それは思いは違えど確かに特別な思いだ。だからこそ、香蓮の言葉は心を抉った。


 そう思って少し暗い顔をし始めた大輝に香蓮が意外な発言をする。


「私ね......それでもいいと思うの」


「......え?」


「もちろん、いずれは決めないといけないことだとしても今はまだ私の時のようにたくさん悩んだりした方がいいと思うわ。それが最良の結果に繋がる。......私はそう思うわ」


「だが、香蓮―――――――――――」


 大輝が何かを言いかけたタイミングで香蓮は大輝の方に顔を向けた。その笑みはどこかエミュと似たような華々しい笑顔だった。


「今が今じゃないわよ、それは。正直、大輝がそう思う理由もなんとなくわかるから。でも、これだけはわかっていて私は......」


 そう言いながら大輝の方に体も向ける。そして、大輝の目をしっかりと見て口にする。


「――――――――――――」


「.......え?」


 その言葉は花火の音にかき消され、聞き取ることは出来なかった。いや、聞き取ることが出来ないのは当然だ。なぜなら、香蓮は()()()その言葉を声に出して言わなかったのだから。


 『大輝、あなたが好きよ』


 この言葉を大輝に届かせるまでにはまだ少し距離が足りない。でも、溢れ出る気持ちは止めたくなかった。だったら、ごまかしついでに大輝をからかってやろう。そんな照れ隠しの一端からでた行動だった。正直、これがどういう結果を招くのかはわからないし、またずるずると引きずってどうしようもない結果になってしまうかもしれない。でも、これが今の自分にできる大きな踏み込みの一歩だった。幼馴染という枠から外れ、恋人という枠へ近づくための。


「ほら、なに呆けてるのよ。一緒に見ましょ?」


「ああ、そうだな」


 大輝は香蓮の言葉に若干どもりながら返事をした。そんな二人の耳は花火の色に負けないくらい赤く染まっていた。

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