第67話 変えるとき
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「ふふんふっふふ~ん♪」
「随分とご機嫌ね、これから災悪討伐というのに......いや、そっちじゃないか」
リリスは隣をスキップしながら歩いていくエミュを見ながらため息が漏れた。あの勇者と香蓮の組み合わせはある意味数奇な運命を辿っているかもしれない。いや、それを言うなら召喚された時点でそうか。
「私、余計こじれそうな気しかしないんだけど?やっぱり、固まって動いた方が良かったんじゃない?」
「それは皆で決めたことだし、こうして動いている時点で無理だよ。まあ、私的にはいい方向に向いたと思うよ。それにこじれることはないよ。私は大ちゃんを信じてるから」
「そ、まあ、いいけど」
一体どうやったらそんなに信じられるのか。いや、好きだから信じている。ある意味エミュほどわかりやすい人物はいないか。たとえエミュが信じやすいということを無視しても。
すると今度はエミュからセレネに話題を振った。
「そう言えば、セレネちゃんもいつまで一人で考え込むつもりなの?」
「!......なんの話?」
「なにか言えないことを隠してるんじゃないかなって」
セレネは思わず押し黙る。そして、エミュから目線を逸らした。その何もかもを見透かしたような目が怖かったから。正直、隠していることならある。それは悪魔召喚のことだ。これは言い訳のしようもなく自国のものによる仕業。見方を変えれば宣戦布告しているようなものだ。となれば今ある関係は崩れ、敵対関係になるやもしれない。それだけは防ぎたいのだ。
「それは誰にも相談できないこと?」
「それは......」
「大ちゃんでも?」
「そこでどうしてあの勇者が出てくるのよ。今の『誰にも』はその勇者を含めてのことじゃなかったの?......まあ、出来ないことはないわよ。あの勇者だったらおそらく信じてくれると思うし」
「なら、どうして?」
そんなこと決まっている、迷惑をかけたくないからだ。これから戦っていくを災悪を作り出しているのが自国のものだったなら、魔王の娘として見過ごすことはできない。だが、その悪魔召喚がはぐれ魔族だったら話は別だ。私たちは自国を害する裏切り者は許さない。それを見分けるまで相談などできない。
だが、セレネはすぐにエミュの質問に答えることは出来なかった。そのような思いもあったのも事実だが、なにか別の理由もあるような気がする。
エミュはそんなセレネのなにかを感じ取ったのか話題を変えた。
「それじゃあ、前から思っていたけど、どうして大ちゃんのことを名前呼びをしないの?としちゃんはしてるのに」
「それは単純よ。あいつが勇者だから。それ以外に理由は必要?」
「うーん、さすがに必要かな。かなり強引な理由だたったし」
「はあ......わかったわ。そうね別の理由としては......」
そうしてセレネは別の理由を思い出そうとするが、何も出てくるとはなかった。自分でも不思議に思うくらいに。勇者という呼び方が楽なのはあるが、それで肝心な大輝を勇者と呼ぶ理由がどこにも見当たらない。ただなぜか名前呼びに抵抗があるだけ、認めたくない何かが。
「まさか!」と思ってセレネは胸に手を当て心音を測ってみたが、正常な脈拍をしていて思わずホッとした顔をする。ここで、知らず知らず自分も実はとなっていたら目も当てられないところであった。だが、結局理由らしい理由は見つかっていない。なので、正直に白状することにした。
「ごめんなさい、見つからないわ」
「そっか、それは仕方ないね。そっかそっか」
「なんでエミュが嬉しそうな顔をするのよ?」
セレネの言った通りエミュはセレネの返答になにか良いことを聞いたような顔をした。セレネはそんなエミュに思わず怪訝な顔を浮かべる。そして、「また何か良からぬことを企んでいるのではないか?」と疑ってしまう。エミュには前科があるから。主に今回のことで。だが、深く考え込んでもこっちが無駄に消耗するだけ。この場はやり過ごすべき。
「セレネちゃん、危ない!」
「え?......きゃあ!?」
突然、エミュがセレネに叫びながら抱きついてきた。セレネは思わず素っ頓狂な声を上げるとセレネが居た位置に矢が飛んできた。エミュのおかげでセレネは事なきを得たがエミュは左腕を掠めた。
「エミュ、大丈夫!?」
「うん、平気。でも、気を付けてあの矢、毒が塗ってある」
「そのどこが平気なの!?」
セレネはエミュの発言に困惑するが、エミュはそんなセレネを無視すると俊哉達と同じ猿の魔物の集団を見た。一匹の猿(大)は弓を持ち、もう一匹はモーニングスターを持っている。
「キキ――――――――!」
「来るよ、セレネちゃん」
「ええ、わかってるわ」
弓を持った猿(大)がまるで熟練の狩人のように連続で矢を放ち、その矢に続いて小さい猿が向かって来る。エミュはその矢に自ら向かって行くとガントレットで弾きながら、猿(小)をぶっ飛ばしてく。そして、宙に浮いたその猿をセレネが<影の手腕>で掴み取ると猿(大)に向かって投げ飛ばした。
「ウキャ―――――――――!」
「「!」」
するとモーニングスターを持った猿(大)がもう一匹の猿(大)の前に立ち、その猿をエミュとセレネに向かってそれで打ち返した。その行為に二人は思わず目を見開き、エミュは苦虫を潰したような顔をした。
「許ない.....」
「エミュ!?」
エミュはその一匹に向かって走りだした。その行為はまさに竜の逆鱗に触れたのだ。竜人族は仲間意識がとても強い。一体が攻撃受ければ、集団でやり返すほどに。故にたとえ敵であっても仲間を傷つけるよなあの行為が許せなかったのだ。だから、エミュは滅多に見せない怒りの表情をする。その顔を初めて見たセレネは思わず動けなかった。
エミュは竜人族の身体能力を最大に活かして、モーニングスターを持った猿に竜の腕に変化させた拳で殴りかかる。その攻撃にその猿(大)は横へ避けるとその後ろには矢をつがえたもう一匹の猿(大)が。
「くっ!」
その猿はエミュに連続で矢を射出していく。それをエミュはもう片方の手で側転しながら避けると同時にもう一度今度は弓を持った猿に殴りかかる。が、足元に纏わりつく小さい猿達が。そのせいでエミュの挙動は遅れ、モーニングスターを持った猿にぶっ飛ばされた。
「エミュ、少し落ち着きなさい。いつものあんたらしくないわよ」
セレネは飛んできたエミュを咄嗟に影の手でキャッチするとすぐにエミュに叱咤した。その言葉で冷や水を浴びたのかエミュは「ごめんね」と言いながら、冷静さを取り戻した。
「あいつらの連携、厄介ね」
「それに思うけど、おそらくあれは災悪じゃない」
「でしょうね。けど、だからこそ厄介よ」
そう言いながらもエミュとセレネは拳を構えた。ならば、できるだけ早くこの敵を倒して災悪のもとに急がなければ。
「行くよ」
「そうね、行きましょ」
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エミュ、俊哉、セレネ、茉莉の四人と別れてすぐの頃、大輝は非常に気まずい思いをしていた。それはなぜか。理由としてはいくつかあるが、特に上げるなら三つだろう。まず一つ目は香蓮と一緒のペアになっていること。これに関しては言うまでもないだろう。そして、二つ目はケンカしてからずっと話していないこと。つまり現在までずっと無言のまま辺りを見回しているということだ。最後に三つ目、これがいつ番問題だ。何が問題って問題しかないこの衣装だ。ケンカした相手と何も話さず、しかもその相手は女装している。軽く頭が逝っている気がする。
だが、このままではいけない。俺は香蓮と関係を(どこまで戻るかはわからないが)戻したいと思ってる。せめて気軽に話せるぐらいには。たとえ......たとえこの恰好であっても。
「きょ、今日はいい天気だなー」
「......」
「ど、どうだこんな日に動けて、気晴らしになるだろ」
「......曇ってるし、気晴らしにはならないと思うけど」
「......」
......答えてくれた。答えてくれたが、どう話しかけたらいいかわからなくて完全に話題のチョイスをミスっている。これは完全に俺の過失で、再び無言になってしまった。これは早急に解決せねば。
「そ、そういえば、見てくれよ、この恰好。災悪に近づくにしてもこの恰好はないよな?」
「効率的なんだからいいじゃない」
「そ、そうですよねー」
ダメだダメだダメだ全っ然会話のキャッチボールができてない!香蓮のボールが速球すぎて全く拾えない!どうすればいいんだ~!大輝は混乱している。すると小さな魔物気配が近くまでやって来ているのに気付いた。そして、その気配がする方向を見ると香蓮に向かって石が投げつけられている。そのことに香蓮は気づいていない。
「香蓮、下がれ」
「え、あ!」
大輝は咄嗟に剣を抜くと香蓮の前に掲げて直撃を防いだ。そして、<超加速>で急接近すると一体を残して一気に殲滅する。それから残りの一体には極細の蜘蛛糸を飛ばした。蜘蛛糸がつけられた猿はそのことに気づかず一目散に逃げていく。
「大丈夫か?」
「ええ、ごめんなさい」
香蓮は気まずそうな顔をする。その表情に大輝も何とも言えない顔をした。香蓮は明らかに集中力を欠いている。いつもなら香蓮の職業柄気づけないはずがない。それに「ごめんなさい」という言葉。いつもなら礼儀正しい香蓮のことだ助けられた感謝の言葉を述べるはず。別にその言葉を期待して言ったわけではないが、それを言わないということは心ここにあらずって意味だ。
「ん?......雨だ。香蓮、どこかで雨宿りしよう」
その言葉を言った瞬間、香蓮は何かを思い出したように悲しそうな顔をした。そして、「そうね」と答えるだけでよろよろと歩き出す。.....きっとこのにわか雨であの時のことを思い出したのだろう。香蓮がその態度だとこっちまで接していいのかわからなくなってくる。だが、ここは根気強く続けるしかない。
そして、大輝達は近くにあった洞窟へと避難した。このまま先に行くということも出来たが、それはあくまで香蓮が正常な時だけだ。このまま進んでも危険が増すだけ。
「もうこれは意味ねぇな」
大輝はそう呟きながらいつもの装備に着替え始めた。雨が降ったことで、大輝の匂いを消していた香水が消えてしまったのだ。それにもうこの恰好は無理。
「なあ、香蓮。もう一度話さないか?」
「......」
「香蓮が辛いことはわかっている。けど、このままは俺は嫌なんだ。この距離は俺も辛い」
「......!」
その時、香蓮が初めて違う反応をしたような気がした。だが、それでも答えることはなかった。何か言いたそうなにしているのに、それを押し殺したようなそんな顔。
「行くか」
「......ええ」
大輝はそっと呟く。それは大輝が先ほど猿につけた蜘蛛糸が緩んでいることに気づいたのだ。おそらく雨が降ったことで自身の足に結びついている蜘蛛糸に気づいたのだろう。だが、この蜘蛛糸を辿れば大体の位置は掴める。
そして、大輝が洞窟を出ると香蓮もその後に続く。ただ、その背中を複雑に見つめながら。
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