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第63話 決壊

評価、ブックマークありがとうございます。励みになります(*^-^*)


ユリスの仲間にライナリーゼというとても滑舌が悪い子がいるのですが、基本的にタ行・ダ行はラ行になっているのでお気を付けください。

「どこまでって.....」


 大輝は思わず口ごもる。それはなぜか酷く言いづらかった。俊哉と話した時にエミュに対する気持ちを自覚した。だが、同時に俊哉からは香蓮に対して未練を持っているとも言われた。この胸に残り続けるしこりがそれだと。だが、確かにそうなんだと今感じた。俊哉の言っている意味が今になって分かった。実に最悪なタイミングでだが。だからこそ口が重い。俺は......結局どうしたいんだ?


 答えが出ない大輝に対し香蓮は痺れを切らしたのかさらに問いた。


「答えられないほどってこと?」


「いや、違うんだ......ただ、わからないんだ」


「逃げるの?」


「......!」


 香蓮は今の一言は実に最低な言葉だと自覚している。自分が散々してきたことを大輝にはさせないつもりなのだから。心が締め付けられるように痛い。辛い。苦しい。気持ち悪い。自分への嫌悪感で吐き気がしてくる。だが、それほどまで聞いてみたくなったのだ。もはやこれは()()()()()()()()()だ。大輝の気持ちを知りたがっている方の私だ。


 香蓮は大輝から目を逸らしたがっている自分を叱咤しながら大輝を見る。気持ちを知るまでもう逃げない。


 一方、大輝も心苦しかった。なぜかそう思う。いや、知っている。断ち切って捨てたはずの香蓮への特別な気持ちだ。それが今になって膨れ上がっている。ふざけんな!お前はもう俺の心から消えたはずだ!どうしてまだいるんだ!......香蓮は凄い奴だ。そんな香蓮と幼馴染であることを俺は誇りに思っている。そして、どうあがいても釣り合わないと分かっている。だから、俺はほどよい距離感でふと隣に居られればいいんだ。香蓮が助けを求めてきたときに一番に助けていけるように。そして、俺の誇れる香蓮がもっと幸せになれるように。......だから、もうこの気持ちとはケリをつけよう。それが今だ。


「そうだな......本音で言えば特別だよ。この世界に来てゼロから一緒に過ごしてきたんだ」


「......そう」


 香蓮は短く返事した。ただ、その心の内ではわからない気持ちが溢れたがっていた。わかっていた。そんなことぐらい。でも、やっぱ聞くとなるととても苦しい。もう嫌!逃げ出したい!でも、もう後には引けない。


「私と比べたら?」


「香蓮.....と.....」


そんな言葉聞いた時から答えは決まっている。香蓮の方だ。小さい頃から一緒というのもあるが、思い出の数があまりに違う。確かにこの世界は危険でもあるけれど、剣や魔法があってとても色濃く、楽しい。しかし、やはり比べ物にならない。だが、ここでそう答えてしまうと。俺の未練はいつまで経っても断ち切れそうにない。俺は香蓮が幸せになって欲しいと願う。俺とではなく別の誰かで。そいつが香蓮に相応しいか父親目線で見極めてやるほどに。だから、俺の答えはこうであってはいけない。


「そう.....だな。同じぐらいだと思う」


「.......!」


 その時、香蓮の歪でヒビの入っていた心はついに決壊した。そして、自然と涙が目から溢れ勝手に流れていく。......あれ?おかしいな。全て受け入れると決めたはずなのに。もう大輝が霞んで見えないよ。どこにもいない。そして、自分の心も。なんで......どうして?


「か......れん」


 大輝はそんな香蓮の様子を見て自分を殴りたくなった。自分の都合ばかり見ていて香蓮のことを見ていなかった。


『相手のことばっか見ていて自分を見ていないから、相手のことが見えていない』


 大輝はレイが言った言葉を思い出した。そして、言っている意味を理解した。......俺は香蓮のことをずっと見ていた。香蓮のためにできることをやっていた。俺自身の香蓮に対する気持ちを無視して。それは自分に向き合ってないのと同じだ。レイが言っていたのはこれだったのか。そして、俺は自分の心に向き合うのが遅すぎた。そのせいで目の前にいる香蓮の気持ちを知るのが、見るのが遅れてしまった。俺は香蓮のことを見ているとつもりになっていただけで、実際にはこれっぽっちも見えていなかった。そして、自分本位でやった結果がこれだ。......最悪だ。


 香蓮は流れる涙も拭わず立ち上がると何もかもを置いて土砂降りの雨の中を歩き始めた。その行動は大輝は制止しようと追いかける。


「香蓮!」


「来ないで!.......ついて来ないで」


「......」


「大輝にはさ、私も幸せになってもらいたいのよ。だから――――――――――――」


 香蓮は振り返ると大輝に笑みを見せた。あまりに不格好で歪な笑みであっとことは香蓮自身も自覚していたが、これが一番なんだと()()()()()


「ちゃんと気持ち、ハッキリさせなさいよ」


「おい待て、香蓮!」


 香蓮はその言葉だけ大輝に言うと走り出した。だが、大輝にはそれを追いかけることも出来なければ、資格もなかった。あまりに自分都合なバカな発言によってこれまでの楽しかった距離感が一気に音を立てて崩れ去った。修正不可能なほどに。


「クソッ!クソクソクソクソクソクソッ!」


 大輝は自暴自棄になり近くにあった木に頭を何度も何度も思いっきりぶつけた。額を切って血が出ても、それがどうしたとばかりに。それほど今の自分が大っ嫌いだった。いっそのことなら死んでしまえと。もう二度と自分を許せないだろうことを俺は大事な幼馴染にしてしまった。こんな罪は拭っても拭いきれるものではない。


 大輝の目から涙が溢れだしてくる。鼻水もこれほどまでにというぐらい。悲しさ、寂しさ、苦しさ、そして醜さが心をゴリゴリと削っていく。これまであった自身も今や風前の灯火。


「大輝さん、何やっているんですか?」


 その時、大輝に声がかけられた。大輝はその方向を見るとそこにはユリスがいた。


**********************************************

「......落ち着きましたか?」


「......」


 現在、大輝はユリスに連れられて宿にいる。そして、そこにはユリスの他にクリシュナ、リズベット、ライナリーゼがいた。


 大輝はユリスに連れられて、治療された後も呆然自失といった感じで、先ほどから何を言っても反応がない。なにがあったかわからないが、今までに見たことない大輝の様子に戸惑いが隠せない。するとベットに座っている大輝のそばにユリスが座るとやや緊張しながら大輝の手をとって尋ねた。


「何があったか、師匠に話してくれないですか?」


「......!」


 その時、大輝が初めて反応した。ここまで来てやっとユリスたちの存在に気付いたようだ。するとそのことに安心したのか一筋の涙が勝手にこぼれ落ちた。


 やはり異常事態。ユリスはもう一度ゆっくりと話しかける。


「何があったか、話してくれないですか?」


 その言葉を聞いた大輝は時間をかけながらもゆっくりとしゃべり始める。その顔は憎い相手を見ているようにも見え、今にも死にたそうな顔にも見えた。


「俺......自分勝手な都合で、相手のことを見てないで傷つけてしまった......大切な存在を」


「大切な存在......ですか......」


 ユリスはその言葉に僅かに唇を噛んだ。心がどこか痛い。でも、私は師匠である。師匠ならば弟子の気持ちに寄り添うのは当然だ。


「どうしてそんなことを?私は......私の知っている大輝さんは良くも悪くも人のことは見れていたはずです」


「......俺は自分自身の気持ちにケリをつけるために嘘をついたんだ。けど、俺は甘く見てた......相手の気持ちを。そして、相手の反応を見てふと我に返った時はもう手遅れになってた」


 香蓮の涙は当然だ。俺でさえあんな言葉を言われたなら傷ついて同じような行動をとってしまうだろう。それを俺はしたのだ。嫌われて当然だし、もう顔も合わせてくれないだろう。


 大輝は再び自分を傷つけたくなった。拳を血が出そうなほど握りしめる。もう自分が許せそうにない。その実感だけがふつふつと湧いてくる。


 ユリスはそんな大輝の姿を見て自分のことのように胸が苦しかった。


「追いかけることは叶わなかったんですね」


「俺にはそんな資格はない」


「大輝さんはそう思っているかもしれませんが、その相手はもしかしたらそうは思ってないかもしれませんよ」


「.....え?」


 ユリスの言葉が意外だったのか驚いた表情をする大輝にユリスは立ち上がって、大輝の目の前に立つとその場でしゃがんだ。そして、再び大輝の手を取ると大輝の目をしっかりと見た。


「これは私の自論になりますが、その相手は追いかけて欲しかったんだと思います。引き止めて欲しかったんだと思います。否定して欲しかったんだと思います。......ですが、それは叶えられなかった。そして、自分で止められない所まで来てしまって、今更振り返ることも出来なくて()()()()()()()んだと思います」


 実はユリスは大輝が言わない相手が誰であるか見当がついていた。大輝がまだ村にいた頃、世間話の一つで大輝の目的を聞いていたのだ。その時に出てきた人の名前。そして、今も勇者パーティとして一緒にいる人で先ほど公園から走っていった人。そうかあの人が.......


 だが、ユリスは自分の心を押し殺した。今かける言葉は大輝に重ねた自分に対する言葉かもしれない。本当はもっと違う言葉をかけたい。でも、大輝とのは師弟関係。これ以上は許されない。


 ユリスは大輝の手から自分の手を離すと大輝の頬に触れ、親指で涙を拭った。そして、強い口調で大輝に言う。


「大輝さん、しっかりしてください!その人は大輝さんの助けを待っています!まだ間に合います!大輝さんがこんな調子では本当に取り返しのつかないことになりますよ!」


「俺は......」


「大輝さん、歯をくいしばってください」


 いまいち踏ん切りがつかない大輝に業を煮やしたユリスは立ち上がると右手を大きく上げ、思いっきりビンタした。そして、言葉を続ける。その言葉をずるいと思いながら。


「私の知っている弟子はこんな所で燻ぶっているような人ではありません!ですが、もしそうであるなら今すぐにでも破門します!」


「.....!」


 大輝は大きく目を開かせた。先ほど香蓮と関係が崩壊したのに、ここでもユリスとの繋がりが切れてしまうのかと。それはたまらなく怖かった。それだけは防ぎたかった。だから、自分を叱咤した。エミュが奪われそうになった時の激情を自分自身にぶつけて。


「ありがとう、師匠。時間はかかるかもしれないけど、ちゃんとやってくるわ」


「はい、私の弟子なんですから出来て当たり前です」


「そうだな......皆さんも迷惑かけてすいません」


「大丈夫よ、むしろ昔のことを少し思い出したわ」


「大輝、君は真っ直ぐな精神をしている。それを曲げるんじゃないぞ」


「青春しれるね~」


 そして、大輝が部屋から出ていくとクリシュナはユリスに問いかけた。


「あれで良かったの?」


「仕方ないじゃないですか。私と大輝さんは師弟ですから。まあ、無理だと思っても村にいるときに思いだけでも伝えればよかったんですかね......」


 その返しに三人とも呆れたため息を吐いた。そんな三人を見たユリスは思わずムッとする。


「なんですか、その反応は!」


「いやー、我が仲間ながらこんな弱いメンタルしてたかなーと」


「そんな言われてもわからないですよ。これは闘いじゃないんですから」


「あら、そんなことないと思うわよ?」


 ユリスの言葉を真っ先に否定したのはクリシュナだった。クリシュナは足を組み替えると大人の余裕という雰囲気を醸し出しながら告げる。


「このどこが闘いじゃないって?ただ、物理戦から心理戦になっただけじゃない。それだけのことよ」


「それだけって......」


 今度はユリスが呆れたため息を吐いた。全く、人の気持ちをなんだと思っているのか


 するとライナリーゼがニヤニヤした顔でユリスに告げる。


「それにさ、いつ終わっらのさ。まら、何にも思わっれないろ思うけろ?」


「そうですね......なら、次会う時にちゃんと伝えますよ」


 その言葉には三人は嬉しそうな笑みを浮かべ......


「「そうでないと」」


「そうれないろ」


元気よく答えた。それは嬉しそうな声色で。


「それじゃ、祝勝会よいくか」


「ふふふっ、いいわよ」


「賛成ー!」


「ちょ、まだ早すぎますよ!」


 そして、四人は夜の街に繰り出していった。

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それではまた次回もよろしくお願いします(*'ω'*)

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