第62話 デート当日
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「ん......ん~~~~はあ.....」
香蓮は大きく伸びをするとそこから疲れたような顔をしながら一つ息を吐いた。ここ最近、寝ても疲れが取れない。そもそも寝つきもよろしくない。一人でに離れていく大輝を追いかけるという夢を繰り返し見てしまう始末。もう無理かもしれない。
「コンコンコン。香蓮、起きてるか?」
「ん?......大輝!?どうしたのこんな朝から!?」
扉がノックされたかと思うと思わぬ来客で思わず声が裏返ってしまう香蓮。そして、「ちょっと待って」言うと思考よりも先に着る服の選別やら部屋の掃除をするといった行動をしていた。そして、パっと見で自己評価でOKが出ると扉を開けた。
「ど、どうしたの?本当にこんな朝から?」
「ああ、どうやら起こしちまったみたいだな。すまん」
「大丈夫よ、もともと起きるのはこのぐらいの時間だし。それよりも大輝がこの時間に起きている方が珍しいわ」
「ああ、そのことなんだが......」
香蓮は場を明るくしようと少しおどけて見せた。だが、予想していた反応とは違い、大輝の反応は酷く
緊張した面持ちであった。どうしたのか。いつもの大輝らしくない。
すると大輝がなにやら覚悟した目で香蓮に言い放った。
「香蓮、俺とデートしないか?」
「...............ふぇ?」
香蓮の思考と顔は停止して思わず変な声が漏れた。まさに青天の霹靂。変な声がでることは仕方がないことだろう。そして、徐々に思考が追いついていくとともに顔が熱くなるのを感じる。いいいいい、一体何を言い出してるのやら。
大輝は反応がない香蓮になんかの冗談と思われているのかと思ってもう一度言う。
「香蓮、俺は本気だ」
「わわわわ、わかったから。わかったから!」
香蓮は手を振りながら大輝を遠ざけながら顔を思いっきり逸らした。もう表情筋が緩みっぱなしだ。顔もさらに熱い。しかし、まさか茉莉に相談した後にこんなことになるとは。ある意味好都合ではあるが、なんだか怖いぐらいだ。「もしかして裏があるのでは?」と思ってしまうが、大輝に限ってそれはないだろう。なら......
「大輝、10分......いや5分頂戴」
「ああ、いいぞ」
そうして香蓮は勢いよく扉を閉めると改めて服を選別し始めた。普段通りでいいはずなんだけど、なぜだかそれではいけない気がする。
そして、きっちり5分後、香蓮は支度を整えると「行きましょう」と言って歩き始めた。その歩きからはロボット歩きとは言わないが、実にぎこちない歩き方で何もない段差で躓いたりしている。大輝は「香蓮、まじで調子悪そうだな」と呟きながら歩き始めた。
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「いい匂いがするわね。朝から開いている店って案外あるのね。少し食べていかない?」
「いいぞ、俺も丁度腹減ってたんだよな」
「それは朝っぱらから尋ねてくる大輝の責任でしょ。なんなら私のお腹が空くのも大輝の責任だわ」
「それは理不尽だ.....」
大輝のその反応に香蓮は微笑すると食べ歩き用のパンを買いに行った。.....そういえばさっきから普通に喋れているような。それに心も軽く感じて、普段感じる肩の荷が下りたような感覚だ。それから今日ってこんな明るかったっけ?
「うばいな」
「こら、口に含んだまましゃべらないの。でも、そうね、確かに美味しいわ」
口一杯に頬張った大輝をどこか子供のような扱いをしながらもそれを懐かしく感じている。そういえば、大輝と会ってからこんな世話役ことがなくなったからなぁ。まあ、私自身が勝手に世話を焼いているという方が正しいかもしれないが。でも、やっぱ何かあったら心配だし、でもでも大輝が楽しそうにやっていたらそれはそれで嬉しいし。けど、そんなことを思うことがこの世界に来てから減ってしまった。大輝が自立した行動をしているのは嬉しいのがだ、やはり寂しいものもある。
「大輝、遠くに行ってしまったわね」
「ん?何言ってんだ?近くにいるじゃねぇか」
「比喩的な表現よ」
「それを含めてもだ」
「.....!......そう」
香蓮は思わず緩みそうな顔を必死に抑えた。しかし、どうして大輝の言葉一つ一つにこんなにも心動かされるのだろうか。これが勇者の実力とでもいうのだろうか。
今までにはない心の動きに香蓮は戸惑いを隠せない。だが、不思議と悪い気分にもならない。なら、深く考える必要はないか。今日という日を存分に楽しもうではないか。
「大輝、荷物持ちになってくれない?」
「強制だろ?まあ、いいけどよ」
「言うまでもなかったわね」
香蓮はニシシと笑いながら辺りを見回していく。まるでエミュみたいだ。大輝はそう感じながらも香蓮がリフレッシュできていることに嬉しく感じている。
「ここね」
「お、おう......一発目から高くつきそうな服屋だな」
「全部が高いわけではないわよ。それはむしろ一部の商品よ」
「そんなもんなのか」
「そんなもんよ」
香蓮は店に入っていくとさまざまな可愛らしい服を選別していく。やはりこういうのを見ると心躍るもので、様々なものを手に取っていく。
「ねぇ、大輝。これどっちの色の方が似合うかな?」
「......そうだな」
大輝は思わず困惑の表情を浮かべた。大輝が提示されている色は白だ......二つとも。もはや同じ色にしか、いやハッキリ言わせてもらうなら全く同じ色だ。だが、大輝は女の人にはそれが若干違って見えているというとを昔友達から借りたギャルゲーで知っている。そして、こんな時は「どっちって同じ色だろ」とは言ってはいけない。それはギャルゲーでその選択肢を選んで今後のフラグを折った経験があるから。......思い出せ、俺!あの時の選択肢を!確かあの時は......ダメだ!右か左かどちらかを選ぶ選択肢しかなかった!まずい、あまり時間をかけるのもよろしくないだろう。見分けろ!見分けるんだ、俺!
大輝はただ目力を強くして二つの服を見比べる。だが、どちらを見ても違いがわからない。すると時間をかけ過ぎたのか香蓮が言葉を発した。
「あ、あ~、やっぱいいわよ。自分で選ぶから」
「すまんな、答えられなくて......ってなんで顔が赤いんだ?」
「へ!?そんなわけないじゃない、気のせい。気・の・せ・い」
香蓮は二つの服のうち一つをパっと選ぶと大輝から距離を取った。......焦った~。大輝があんなに見つめてくるから思わず照れてしまった。もちろん、服を見ていたってのは分かるんだけど、それでもやっぱり大輝の脳内で私が着せ替えれていると思うと......うぅ~、これ以上は考えないようにしよう。
だが、そのくせ大輝には見てもらいたいという気持ちはあるのかある程度服を選ぶと試着室に入った。
一方、大輝は初めて彼女の買い物に付き合う男の気持ちがわかった気がした。
「彼氏さんですか?」
「え?......ああ、違いますよ。幼馴染なんですよ」
「そうなんですか。でも、幼馴染のそれも異性の方と一緒に来られるなんて仲がよろしいんですね」
「まあ、言われてみれば確かに。あんま人の目は気にしたことないですね」
大輝はそう言うとふとこれまでを振り返った。香蓮と一緒にいるとき人の目を気にしてないというか気に入らないというか。まあ、深く考えたことがないって言うのが本音だが、深く考えることもないというか。そう考えるともとの世界にいた時もこんな距離感だったよな。まあ、一部こういう距離感で保っているというのもあるけど。
しばらくすると香蓮が試着室のカーテンを開けた。香蓮が着ている服の一つには先ほど大輝に意見を尋ねたあの白い服も含んでいた。
「......どうかな?」
「......ああ、似合ってるよ」
「......!」
香蓮は少し照れながら大輝に意見を尋ねると大輝はストレートに意見を返した。純粋に見惚れた。そして、はぐらかす前に本音が漏れてしまった。だが、その言葉があまりに香蓮には衝撃で思わずバッとカーテンで自身の姿を大輝から隠した。そして、熱くなる顔を手で仰いでなんとか冷まそうとする......と同時に気づけば二着目に手を出していた。
「......いっぱい買ったな」
「大輝の意見もあったけど、個人的も気に入ってね」
香蓮はそう言うがその割にはあまりに多くの服を買った。もちろん個人的に気に入ったものの方が多い......はい、嘘です。大輝の意見が8割でした。やっぱ、気に入ってもらえるのが嬉しいし......ってあれ?なんでこんなに大輝基準なんだ?
香蓮はそのことを考えようとしたが、やめた。なんとなく触れたくなかったから。
「ん?」
「どうしたの?」
「なんか、鼻になにか水っぽいものが落ちたような」
「え、そうなの?......まあ、雲行きは確かに怪しいけど――――――――――」
香蓮が言いかけていたその瞬間、ゲリラ豪雨のような雨が降ってきた。帰る途中だった大輝と香蓮は急いで近くの公園にある東屋へと避難した。
「結構濡れちゃったわね」
「ああそうだ......な!」
大輝は何げなく香蓮の方を見ると雨のせいで服が濡れてブラ線が。大輝は思わず目が釘付けになる。その視線に気づいた香蓮は身をよじらせて上手く見えないように隠す。
「大輝はあいわらず変態ね......」
「男はこんぐらいが健全なんだ」
お互い照れてしまって言葉に説得力が生まれていない。それにこのままでは間が持たない。なにか話題を変えなければ。そう思った香蓮はふと大輝に聞きたくなった。エミュのことを。今なら心も落ち着いてるし、冷静に聞けるかもしれない。けど、本当に聞いていいのか。聞いて後悔はしないか。そんなことが頭をよぎる。......けど、諦めないって決めたから。
「ねぇ、大輝。あの森での私の質問覚えてる?」
「質問?」
「......『エミュのことどう思ってる?』って質問。大輝は『大切な仲間』って答えたけど、それは一体どこまで大切なの?」
香蓮は真っ直ぐな瞳で大輝に問いただした。
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