第57話 届け
ここぐらいから少しづつ物語は加速していきそうですね
大輝がスケルトン(特大)の攻撃を受ける数分前、エミュはスケルトン(特大)の作り出した竜巻の渦中にいた。
「くっ!」
とにかく当たればダメージが大きいだろう破片は片っ端から殴って壊していく。だが、そればかりに集中しているため細か破片は防ぎきれない。そして、荒れ狂う暴風によってほとんど動くことも叶わない。視界に広がるは巻き上げられた砂ばかりで何も見えない。だが、このままではいけないと思い、両腕で顔を覆いながら無理にでも歩いていく。
「......香蓮ちゃん、大丈夫!?」
「ええ、なんとか。でも、序盤に魔力を使い過ぎたせいで全て覆うことは出来なかったわ」
エミュが進んでいくと見覚えのあるの影を捉えた。そして、その影に向かって行くと香蓮がいて、香蓮は氷の壁を作り出して吹き荒れる風に乗った破片を防いでいた。だが、香蓮の体には無数の傷跡が。その傷を見てエミュは思わず叫んでしまった。しかし、香蓮は「これは氷の壁が壊された時にできた傷だけど、かすり傷よ」と余裕な笑みで言って返す。......あ、また無理している。
「とりあえず、これを」
「ありがとう、いただくわ」
香蓮はエミュに渡された回復ポーションをグイッと飲み干すとすぐさま細かな傷が塞がっていく。
「何度見ても不思議なものね」
「飲んだだけで傷が治っていくことに?」
「そうよ。こんなものもとの世界にはなかったから」
「まだまだ不思議なことはいっぱいあるよ、だから今はこの場を乗り切ろう」
「ええ、そうね」
香蓮とエミュは立ち上がるとこの場を切り抜ける方法を考えた。だが、それで思いついた考えはどれもこれもこの暴風を突破することが前提であった。......であれば、しかたない。
「いくよ、香蓮ちゃん!」
「わかったわ、エミュ!」
「竜の炎連弾!」
「一刀流.....轟雷鳴!」
エミュが大きく息を吸うと一気に溜めた空気を炎に変えて吐き出した。多数の陽炎を発生させるほどの炎弾がスケルトン(特大)へと向かって行く。
香蓮は一度刀を鞘にしまうと一気に引き抜いた。そして、刀を振り払ったことでできた雷の一閃はブウ風の中を突き抜けてスケルトン(特大)にめがけて飛んでいく。
「ドゴ―――――――――――――――ン!!」
「!!!」
スケルトン(特大)は大きくその体を仰け反らせた。同時に暴風も収まった。するとその時そのスケルトン(特大)の頭上から大きなガ聞こえた。二人は思わずその方向を見ると思わず声が漏れた。
「大輝!?」
「大ちゃん!?」
スケルトン(特大)の頭上には大輝が巨大な炎をたなびかせそのまま落下している。そして大きな爆発音とともに大輝の姿は煙で見えなくなった。だが、スケルトン(特大)の攻撃モーションは見えていた。そのスケルトン(特大)が燃え盛る顔をそのままに殴りかかっていることを。
「大輝、避けて!」
「大ちゃん!」
しかし、二人の声も虚しく大輝は凄い勢いで煙から出てきて、壁へと一直線に向かっていた。その時、同時に走り出している人物もいた。エミュだ。エミュはとっさに動けなかった香蓮をそのままに大輝を追って走り出した。
「くっ!」
エミュは届くはずもない手を必死に伸ばしながら、ただ走る走る走る。息が切れようと体に痛みが走ろうとその一切を無視してただ走った。
だが、無情にも大輝と距離は開くばかり。それでも諦めずに少しでも速く。間に合うように。もう逃さないって決めたから。
速く!
初めて出会った時の気持ちも!森を冒険したときの気持ちも!私の過去を聞いて手伝いたいって言ってくれた時の喜びも!一緒に冒険者活動をした時の楽しさも!他の女の人と話している時の嫉妬も!大ちゃんからもらったプレゼントが壊された時の怒りも!近くに大ちゃんがいない寂しさや悲しさも!そして、大ちゃんが私のために戦って勝利したときに感じた胸が張り裂けそうな大好きって思いも!
「まだ.....まだ、全然伝えきれてないから!」
速く!!
「もっともっと嬉しいこと楽しいこと、全部一緒に感じたいから!」
速く!!!
「だから......」
速く!!!!
「私の思い......」
速く!!!!!
「とどけぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
その瞬間、エミュの体は神秘な光に包まれた。そして、その光は体積を徐々に大きくしていく。するとその光から純潔な白いかぎ爪のある大きな腕が生え、そして優しくたくましい白い足に、汚れを知らない白い尻尾に長い首、それから威厳を放つ瞳。
「ウオオオオオオオオォォォォォォ!!」
そうしてその光から現れたのは真っ白い竜鱗に覆われた白竜であった。その白竜は翼を一度はためかせると凄まじい速さで大輝のもとへ向かった。
「捕まえた」
そして、大輝が壁に激突する数メートル手前で大輝を捉えることに成功すると両腕と翼で大輝を優しく包み込んだ。
「ドガアアアアァァァァン!!」
大輝と白竜が壁に突っ込むとそこはどうやらただの壁ではないらしく広い空間にでた。そして、しばらく転がりながらも止まると大輝を抱えるようにしながら白竜は覗き込んだ。
「うぅ......」
「大ちゃん、大丈夫?」
「エミュ......?......ってエミュなのかぁ!?......あいたたた」
「無理しちゃダメだよ、両腕とも折れてるっぽいし」
エミュは大輝をそっと地面に寝かせると心配そうな表情をした。だが、大輝はとても嬉しそうな顔をしている。そのことにエミュは不思議に思ったが、次の大輝の言葉でそれが喜びに変わった。
「良かったな、エミュ」
「......!」
大輝の言葉はそれだけだったが、それだけで十分だった。もう張り裂けそうな気持ちは弾けてしまっている。今にも抱きついてその喜び、嬉しさ、そして愛を全力で伝えたいがそれが出来ないのがもどかしい。
すると大輝がふとこんなことを聞いてきた。
「エミュはこの戦いが終わったら......どうする?」
エミュはそっと目を閉じる。大輝の言わんとしていることはつまり祖国へ帰るかどうかだ。もともとこの世界のいろんなものを見たり、知ったり、体験して竜化できることが目的で大輝と一緒に旅をしていた。だが、いまここにその目的は達成されてしまった。でも、決まっている。後悔しないように生きるなら、ずっと前から。好きだからもっと一緒にいたい。好きだからもっと近くに寄り添いたい。好きだから離れたくない。好きだからもっと知りたい。だから......
「......大ちゃんはずるいや」
その質問はもとより一択しかない。「離れたくない、一緒にいたい」それを言うのはすごく照れくさい。だから、思わずはぐらかしちゃった。もう伝えられるかもとか思っていたけれど、まだまだ全然覚悟が足りなかったみたい。これは......人のこと言えないかもな~。
大輝はエミュの言葉に「どういうこと?」と思わず聞き返すが、エミュはそっぽ向いたままこちらに顔を合わせようとしない。わかりずらいが、ほんのり顔が赤くなっているような......
「月島君、来たよ~!」
「ウォン、ウォン!」
大輝がそんなことを思ってると茉莉とレオ(大)の声が聞こえてきた。そして、茉莉が大輝のところへやってくるとすぐさま腕の治療を始めた。
「月島君、むちゃし過ぎだよ~」
「ウォン!」
「すまん、チャンスだと思ったんだ」
「それでも、だよ!大ちゃん!」
「ほんとすんませんでした」
どうやら笑って流せるほど軽い話にはならなかったようだ。まあ、心配させたことは確かだし、生rんだし、ほんと何も言えない。
大輝は腕が回復すると曲げたり伸ばしたりして動きを確かめた。そして、異常がないことがわかって立ち上がった時、ふと茉莉が見たことない弓を持っていた。
「藍野......それは?」
「あ~、これ?これね~、さっき来る途中に宝箱のようなもの見つけてね~。なにか手助けになるものが入っていればと思って開けてみたらこれが入ってたんだ~」
「な、なるほど」
ボスを倒し終える前にボスを倒した後の報酬はなんとも邪道ような気がするが、ここはゲームの世界ではない。妙にしっくりしないところがあるがそれは無視しよう......でもやっぱ、俺が開けたかった!
大輝はパシンッと両頬を一回叩いて気合を入れ直してスケルトン(特大)のもとへ行こうとするとエミュがこちらに背を向けてしゃがみ込んだ。そして、大輝に言った。
「大ちゃん、乗って」
「え?」
エミュは大輝に背中に乗るよう促した。これは本来竜人族にとってはあり得ない行動だ。相手を心の底から認めない限り竜の姿で背を見せるなんてことは絶対にない。ましてや乗せることなんて。だが、大輝に限ってはその場限りではない。エミュの気持ちは分かっているからだ。
大輝はその行動に驚きはしたもののすぐに興奮が勝った。まさか、竜の背に乗って空中を飛べる日がこようとは!!
「よろしく、エミュ」
「うん、大ちゃん!」
エミュは大輝が背に乗ったのを確認すると大きく翼をはためかせ、一気に飛び出した。大輝は飛ばされないように踏ん張っていたがそんな必要もなくとなされることはなかった。「あれ?」と大輝が思っているとエミュが答えた。
「私が魔力障壁を張っているから飛ばされることはないよ」
「なるほど」
大輝はその言葉にうなずくとスケルトン(特大)を見据えた。するとスケルトン(特大)もこちらの存在に気づき、優先的にこちらを狙ってきた。
「おらああああ!」
大輝は聖剣を魔剣をとにかく振りながら風の斬撃と炎の斬撃を乱射した。その攻撃に合わせるようにエミュが<竜の炎連弾>を撃っていく。
「ドガガガガガガガガガガガガン!」
「ガラガラガラガラガラ!」
スケルトン(特大)はその攻撃を腕で防いでいくが、全てを防ぐことが出来ずその攻撃の一つが中心にある赤い核に当たった。その瞬間、悲痛とも聞こえる声を上げた。そして、ひるんだ。
「あそこが弱点だ!一気に畳みかけるぞ!」
「「「「「おう!!!」」」」」
大輝の言葉に全員が一つになった。そして、まず動き出したのはセレネだった。
「私の可愛い友達にあんなセリフを言わせるんじゃないわよ!.....食らいつけ闇の捕食者!」
セレネの魔法によって作り出された影の2体の巨獣がスケルトン(特大)を動かさまいと両腕に食らいつく。
「あんな弱っちい拳で俺が潰せると思うなよ!......太陽光線!」
俊哉は剣先を動けなくなったスケルトン(特大)に向けると剣先に光と精霊の力を収束させ、一気に解き放った。そして、その光線は真っ直ぐ突き進むと核に直撃した。
「......大輝に......大輝に無茶ばっかさせるんじゃないわよ!......一刀流柳の型、氷龍閃!」
香蓮は刀を真っ直ぐに頭上へと掲げると胸に秘めたる怒りをぶつけるかの如く一気に振り下ろした。その瞬間、香蓮の刀から氷でできた東洋の竜がスケルトン(特大)を襲った。その龍を見たエミュは思わず「キレイ......」と言葉が漏れた。
「レオちゃん、いくよ~!」
「ウォン!」
茉莉はレオに合図をかけるとレオは元気よく返事した。そして、茉莉はスケルトン(特大)に向けて弓を向けると弦を思いっきり弾く。それと同時にその弓には茉莉の魔力でできた矢が作り出され、その矢を解き放った。
レオは口を大きく開けるとその口に魔力を収束させていく。そして、咆哮するかのごとく放った。
二人の攻撃が核に直撃する。
「ガラガラガラ!!!」
スケルトン(特大)は苦しみ悶えるように身をよじらせる。
「エミュ、準備はいいか?」
「もちろんだよ!」
「フラン、ドリィ......少し乱暴に扱うぞ」
「それで倒せるなら問題ないのじゃ」
「でも、終わったら甘いもの食べたいなの」
「わかった、好きなだけ食え」
そう言うと大輝は聖剣と魔剣の柄の頭を合わせ、蜘蛛糸をグルグルと巻いて固定した。形的には槍のようだ。そして、それをさらにやり投げのように構えると左手を伸ばして、標的を定めた。
「魔力全解放!能力増幅!神聖属性付与!......いっけええええぇぇぇぇ!!!」
大輝は叫びながらスケルトン(特大)の核に向かってぶん投げた。
「!!!」
「待ちなさいってぇぇぇぇ!」
スケルトン(特大)はあの攻撃だけは絶対に当たるわけにはいかないとセレネに拘束されながらも無理やり体を動かして、その攻撃をギリギリで避けた。これには大輝も思わず呆然となる。だが、まだ諦めていないものがいた。
「大ちゃん、私を信じて」
「エミュ......ってわああ!?」
エミュがそう言った瞬間、大輝を一人空中に残してその槍を追った。竜の姿の加速を存分に活かすと槍の所まで追いついた。そして......
「そんりゃあああああ!!!」
尻尾で思いっきり跳ね返した。その槍はスケルトン(特大)を通り抜けて、直線状にいる大輝に向かって行く。そのエミュの行動で全てを大輝は理解した。
「これで終わりだああああぁぁぁぁ!!!」
大輝は向かってきた槍の柄を持つと<超加速>を使って勢いをできるだけ殺さず一回転。遠心力も活かして再びスケルトン(特大)の核にぶん投げた。そして、その槍は核に当たるとそのまま貫通した。
「アアアアアアアアアアアアアア!!!」
スケルトン(特大)はこれまでに聞いたことないような声を上げた。そして、体に纏わりついていた黒い靄が霧散していきバラバラに崩れ落ちた。
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それではまた次回




