第56話 そうはさせない
本来の予定ならそんな長くならない感じでしたが、なんかバトルが伸びました(笑)
「レイ、お前は俺から離れろ。さすがに防ぎきれる自信はない」
「わかりました、私は隅の方でじっとしています」
レイは大輝から離れると壁際まで走った。そして、辿り着くとそのことに驚いていた。それは呪いが発動しなかったからだ。いつもならここに辿り着くまでに最低でも5回、酷いときは10回も不幸が訪れるはずなのだが......一回もなかった。もしかして変態さんのおかげで浄化された?
大輝はレイが離れていったのを尻目で確認するとスケルトン(特大)に体を向き直した。そして、仲間に体調を尋ねる。
「お前ら、まだ動けるか?」
「ああ、いける......って言わないとこっちがやられるしな」
「確かにもとより選択肢はないわね」
「もっと早い段階で魔力の消費を抑えるべきだったわ」
「しょうがないよ、そうしなきゃもっとひどいことになってたかもしれないから」
「私は~、魔法主体だから~、ちょっときついかも~」
「ウォン」
俊哉、セレネ、香蓮、エミュ、茉莉、レオの順に大輝の声に答えていった。そして、大輝はその言葉を聞いて茉莉に下がって、魔力ポーションを飲むように言った。茉莉に関しては仕方がない、あいつはこのパーティの唯一の回復要員であるから。ここで倒れてくれるわけにはいかない。
「よし、おそらくこれが最終戦だ!気張れよ!」
「「「「「おう!!」」」」」
大輝は<超加速>で一気に接近する。スケルトン(特大)は大輝を認識するとその拳を振りかぶった。
「ドゴ―――――――――――――――――――――ン!!」
「くっ!」
スケルトン(特大)の拳が地面に当たった瞬間、爆発のような衝撃が空気を震わせた。大輝は直撃こそしていないが、その爆風で吹き飛ばされる。
大輝は咄嗟に剣を地面に突き刺してそれ以上飛ばされるのを防ぐ。そして、その勢いが収まると再び進み始めた。
「こっち無視すんなよ!.......光焼の矢!」
「集中狙いはさせないわ!......雷光弾!」
「ウォン!」
俊哉は頭上に巨大な眩い光の矢を作り出しスケルトン(特大)に向けて放った。するとスケルトン(特大)は接近している矢に気づいたが、すでに目前へと迫っていたため避けることは不可。まともにその魔法を受けた。
「!!!」
スケルトン(特大)は声こそ出さないが、その動きは効いているようだ。スケルトンはアンデットで魔法属性で言えば闇、対して俊哉の魔法攻撃は光。スケルトン(特大)には効果的な攻撃だったようだ。
そして、立て続けに魔法は放たれた。香蓮の魔法は銃弾のように小さいがその数は無数とあり、その弾が一斉にスケルトン(特大)へと向かった。スケルトン(特大)はその数を防ぎきれず、その骨を微かに焼いていく。それから、巨大な斬撃が襲った。
「まだこんなもんじゃないわよ!......影縫い!」
「いけぇ、大ちゃん!......竜の吐息!」
スケルトン(特大)が攻撃を受けている最中にエミュとセレネはそれぞれ両サイドへと回り込むと一気に強襲した。
セレネはスケルトン(特大)の陰から多数の針の影を作り出すとその体を縛り始めた。そして、その直後その熱気だけで身を焦がすような火炎を放射した。その攻撃はスケルトン(特大)の半身を焼いていく。
「双虎砕刃ォォォォォ!」
大輝は完全に注意が逸れているのを感じ取るとスケルトン(特大)の真下まで行き、そこから一気に真上に上昇した。そして、聖剣と魔剣に風と炎をそれぞれ纏わせると肋骨に剣を突き立てながら思いっきり顎へとアッパーをかました。
その勢いでスケルトン(特大)の頭上に上がると大輝はあることに気づいた。それはスケルトン(特大)の肋骨あたりに赤い核のようなものが見えたのだ。今まではなかったものだ。
「フラン、あれがなにかわかるか?」
「おそらくじゃが、主様の思っている通りのもので間違いないじゃろ」
「ドリィもそう思うの」
「じゃあなんで今更になって弱点をさらしたんだ?」
「これもおそらくだけど、弱点をさらしてでも強くならないと勝てないと思ったからだと思うの。マスターたちはジリ貧と思っていたかも知れないけど、実はあのスケルトンの方も多大な魔力を消費していたの。だから、長期戦にはなるけどあのままならマスターたちは勝てていたと思うの」
「なるほど。ありがとな、ドリィ」
「はいなの!」
「むむ、わらわの見せ場が......主様、前じゃ!」
「......!」
フランが大輝に知らせた時にはもうすでに巨大な拳が眼前へと迫っていた。......嘘だろ!?復活までが早すぎる!!
大輝は剣を立てて防御態勢に入ると<超加速>へと思いっきり逆噴射した。いわば拳から逃げるような形だ。だが、それでも逃れることは間に合わない。
「あああああああ!」
大輝は雄叫びで気合を入れながらその拳をできるだけ受け流していく。だが、不意に腕に左腕に走る痛み。持っていかれたか。
「がはっ!」
そして、大輝は物凄い勢いで壁へと激突してその体がすこしめり込んだ。大輝以外の仲間がその凄惨な光景を目撃した。だが、呼びかけをさせてくれる時間など与えてくれるはずもなく......
「ドゴ―――――――――――――ン!!!」
「うわぁ!?」
「「「「「きゃあ!?」」」」」」
スケルトン(特大)はその巨大な両拳を天高く上げると地面をひっくり返す勢いで真下へと叩きつけた。その直後、当たった場所から地面が放射状に割れていき、そのまま隆起させた。俊哉たちはその隆起した地面と地揺れで体勢を崩した。
「!!!」
スケルトン(特大)はそんな俊哉たちに追撃とばかりに裏拳を放った。それも非戦闘員の茉莉の方に。茉莉はレオ(大)の背に乗っているからとはいえ、今はそのレオが動けていない。そして、茉莉は回復・支援の魔術師だ。対抗手段はない。故に必然的に無防備な状態に等しい。ここで茉莉がいなくなるのはかなり不味い。
「させるかあああぁぁぁぁ!」
「俊哉君!?」
だが、茉莉の前に一人の漢が立ちふさがった。俊哉だ。俊哉は<全力衝突>でその拳に突っ込んでいくと剣を両手で押さえてその拳を受け止める。
「ぐぬぬぬぬぬぬ!!」
俊哉はその勢いに負けじと踏ん張るため数十メートルそのまま引きづられる。だが、もう少し勢いを殺さなければ茉莉に衝突してしまう!
「おらああああ!」
俊哉は引きづられることしばらく茉莉の数メートル止まることに成功した。俊哉は思わず後ろにいる茉莉に「すごいだろ」といった笑みを見せる。茉莉はなぜそんな俊哉に「ありがとう~」と言って笑みで返した。
「!!!!」
スケルトン(特大)は俊哉に攻撃を止められたのが予想外だったのか、子供のようにバンバンと地面を叩いていら立ちを見せた。そして、すぐに狙いを変えた。
「「「「「うわあああああああ!」」」」」
スケルトン(特大)はその標的に攻撃する前に両腕を大きく開くとその場でグルグルと回転し始めた。そして、その回転は次第に勢いを増しやがて竜巻のような暴風を伴って周囲の砂を巻き上げ、自身の姿を隠した。だが、俊哉たちにそのスケルトン(特大)に警戒している余裕はなかった。なぜなら、暴風気によって巻き上げられたのは砂だけでななく、地面を破壊したときの岩のような破片も含んでいるからだ。それが凄い速度で俊哉たちを襲う。もちろん、俊哉たちは各々でそれを防ぐがもはや四方八方から来るそれを全て防ぐ手立ては今の俊哉たちにはまだない。その為、細かいかすり傷が増えていき、それにともなって出血量も増えていっている。
「......!」
セレネは不意にその竜巻の奥にいるスケルトン(特大)が動いたような気がした。姿は見えないので、第六感というやつか。だが、その感覚は正しかった。突如として、スケルトン(特大)が竜巻を突き破って目の前に現れたのだ。だが、セレネは自身を保護するだけで精一杯だ。
「!!!」
スケルトン(特大)がはセレネの前に手を突き出すとその手から一斉に細かい骨を射出した。不味い、当たる!
セレネは思わずその骨銃弾のように向かって来る骨が当たった時のことを考えてしまい、攻撃を防ぐよりも先に目を瞑ってしまった。しかし、その時同時に聞き覚えるの声を聞いた気がした。
「そうはさせません!」
「......レイ!?」
セレネが目を開くと目の前にレイが立っていた。両腕を大きく広げ、その攻撃を全て受け止めるかのように。そんなレイの姿にセレネは叫んだ。だが、レイは静かに首を横に振る。
「いいんですよ、姫様を守ること......これが私......いえ、私たちの仕事ですから」
「だからって他にもあったでしょ!」
「何と言いますか......とっさに動いた結果がこれでして。ということはこれが私にとって最善であると無意識に判断したんですよ。他にもきっとあったんでしょうが、バカな私には思いつきませんでした。どちらかと言うと考えるより、行動する派ってことですよ」
「何こんな時にバカ言ってんの!」
もうすでに死を悟りながらも笑みを絶やさないレイにセレネは怒った。そして、それを止められない不甲斐なさ、レイが消えてしまうという悲しさで涙がとめどなく溢れた。そんなセレネにレイは何も言い返さず、ただいつも見せるような笑みを浮かべるだけだ。
「さあ、来てみなさい、骸骨さん!私は一歩も引きません!」
「レイ!!」
レイに向かって無数の骨が突っ込んだ。レイは「これが最後の仕事」と思い、死を受け入れるように静かに目を閉じた。
「......?」
「レイ......?」
だが、体に痛みが生じることはなかった。そのことを疑問に感じ、静かに目を開けると......確かにその骨はこちらに向かっているなのに不自然なほど当たっていない。言うなれば、それが勝手にレイを避けているというか。これにはセレネも思わず目を見開いている。
「姫様、失礼します!こっちです!」
「ま、待って、レイ!」
骨の雨が止むとレイはセレネの手を引いてこの場を離れようとする。だが、スケルトン(特大)は逃すまいと拳を振るってきた。今度は確実に仕留めるために。
「レイ、来てるわよ!」
「姫様、信じてください!」
レイはセレネの言葉に構わず走り続けた。先ほどのことが奇跡でないならば、きっと大丈夫......ですよね、変態さん!
するとレイの思いを体現するようにその拳はレイに直撃する前に勝手に逸れた。そこにレイは走りながら拾った石をスケルトン(特大)に向かって投げた。するとその石はバタフライ効果という言葉を立証するように竜巻の回転の軌道に乗るとレイが投げた小さい石は少し大きな石に当たって軌道をずらし、その石はさらに大きい石に当たって軌道をずらし、それを繰り返してやがて巨大な岩石がその軌道をずらしてスケルトン(特大)の顔の側面に直撃した。
「!!!!」
それからスケルトン(特大)は何者かに攻撃されたのか大きく体を逸らすと体勢を崩した。
「おらああああ!無視すんなあああああ!」
するとスケルトン(特大)の頭上から大きな声が響き渡る。その正体は大輝である、大輝は無防備になっているスケルトン(特大)の頭に真っ逆さまに落ちていく。だが、フランとドリィはその行動を必死に止めようとしていた。
「主様、その体では無茶じゃ!」
「左腕が機能してないの!」
「だが、このチャンスを活かさないわけにはいかない!」
大輝はその制止の言葉に聞く耳を持たなかった。この隙を一気に決めるために。左腕をやられているのに左手に持つドリィを落としていないのはその表れか。
「大紅蓮炎斬衝!」
「!!!!!」
大輝は聖剣を掲げると聖剣を持つ自身の右腕をも燃やす勢いの炎をその聖剣に纏わせるとスケルトン(特大)の頭に叩きつけた。その攻撃の威力は凄まじく、大きな爆発とともにスケルトン(特大)の頭全体に大きな亀裂を走らせ、一部を欠けさせた。それからその頭を炎で包み込んだ。スケルトン(特大)は思わず顔面を両手で覆う。
「......!」
「!!!!!」
だが、スケルトン(特大)は燃えている頭をそのままにすぐさま大輝の方へ顔を向けた。大輝はその顔を見て思わず硬直した。ないはずの眼光がしっかりと大輝を射抜いていたからだ。そして、判断が遅れた。
「.......っ!」
大輝は無意識のうちに聖剣を前に突き出していたが、それを小賢しいとばかりにスケルトン(特大)は大輝を思いっきり殴った。大輝はその衝撃を声にも出せずただ吹き飛ばされる。大輝の右腕はだらんとしている。
そして、すごい勢いで壁に直撃しようとしていた。
「......!」
だが、その壁に当たることはなかった。なぜなら、微かな瞳で捉えたのは白く大きなもので、それは優しく、温かく大輝を包み込んだからだ。
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