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第53話 内緒話

意外な展開になると思います

 大輝とレイが一緒になった一方で、別の場所では俊哉と茉莉が一緒になっていた。


「う......ん?」


 俊哉は顔をなにやらペロペロと舐められる感触で目を覚ました。もちろん、舐めているのはレオだ。するとレオは突如として俊哉の両眼を自慢の肉球で隠した。


「れ、レオ!?なんだ、どうした!?」


「あ~、私が着替えてるんだよ~。流されて、濡れちゃったからね」


「なるほど、そういうことか」


「ウォン」


「私は見られても別に気にしないんだけどね~」


「いや、そこは気にしろよ」


 俊哉は思わずツッコんだ。見たいという願望はあるにはあるが、それはそれとして、年ごろの女子が見られても大丈夫とはさすがにどうかと思う。


 「もう大丈夫だよ~」という声で、俊哉はレオ(大)をどけて茉莉を見るが、どうやらその言葉は嘘ではないらしい。「兄弟に男でもいるのか?」と聞いたが、そうでもないらしい。


 俊哉はそのことになんとも言えないため息を吐くと立ち上がる。


「それじゃあ~、行こうか~」


「そうだな、よろしくレオ」


「ウォン」


 レオ(大)の先導により、罠を避けながら大きな一本道を歩いていく。途中、コボルトの集団に襲われたが、俊哉とレオ(大)にとっては問題は無かった。


 すると茉莉から声をかけられる。


「ねぇ、今の状況ってどうなってるの?」


「今の?まあ、特に襲われることもなく、順調に進んでいるな」


「そうじゃなくて~、あっちの話だよ~」


「ああ、なるほど」


 俊哉は茉莉の言葉を理解した。つまりは大輝関連の話か。だが、正直言って、なにも触れれることはないんだが。むしろ、触れた方が危ないと感じてもいるし。しかし、茉莉はその状況をあまり理解していないような顔をしている。あのどこにわからない要素があろうか。


「私ってね~、周りからよく空気がよめないねって言われるんだ~」


「要するに、人がなにを考えているかわからないと?」


「まあ、完全にじゃないけどそうだね~」


 何やら重い話に移行しているような気がしなくもないが、答えてやるか。と上から目線をしたいところだが、今ほどはっきりした状況以外の状況はわからないことが多いし、基本わからない。だが、藍野にとっては今の状況もわからないらしい。さて、これはどうしたものか。


「なら、今はどこまで状況をわかってる?」


 俊哉はまず茉莉の理解度を測ることにした。これによって教える範囲も変わるし、下手に言葉が過ぎることも減るだろう。


 その質問に茉莉は少し唸りながら考えると答えた。


「そうだね~。とりあえず、エミュちゃんの月島君に対する思いが強いってことぐらいかな~」


「まあ、それがわかってるだけ全然いいよ」


「あそこまで露骨......って言い方は悪いから~、アタックがわかりやすいとね~。さすがに私でもわかるよ~」


 「まあ、そのことを若干一名が気づかないふりをしているんだけどな」という言葉が出そうになったが、ひとまず飲み込んだ。それを言うか言わまいかの判断がまだできていなかったからだ。


 俊哉は次の質問をした。


「それじゃ、南のことはどれくらい?」


「みなちゃん?......う~ん、そうだね~、時よりぼんやりしてるかな~。話してる時もそんなことが多いし」


「それだけ?」


「それだけって~?」


「いや、なにも」


 「その表情を見て他に何も思わなかったのか」と思っても捉え方はひとそれぞれだ。それ以上こちらから言うのもどうかと思う。それに、たとえ聞いたとしてあの南のことだ。心配かけまいとはぐらかすに決まっている。第三者で一番相談しやすそうなセレネにすら話していないしな。......こうなればあえて言ってしまおうか。それでいて口止めしとけば、茉莉は言わないだろうし。


「実はな......南は大輝とエミュの距離感が気になっているんだ」


 俊哉はストレートには言わなかった。いや、言えなかった。なにしろ確証がない。こっちがそう思い込んでいて、そのつもりで下手に行動すれば香蓮だけじゃなく大輝の地雷も踏みかねない。


 だが、茉莉はその質問の核心をつく答えをした。


「それは要するに『好き』ってこと~?」


「あ、う~ん。まあ、そう見えてもおかしくないが、まだそうであるかはわからない」


「ふ~ん。やっぱ、気になるもんなの~?」


「そんなことは俺にはわからん。幼馴染なんて架空の人物だと思っていたし」


「ふふふっ、なにそれ~」


 「なにを呑気に笑ってんだか」と思わずため息がでる。身近にそのような人物がいればまだしも、女のおの字すらなかったしな。そもそも自分で言ったが距離感とは一体どういうことなのか。香蓮と大輝の距離は中学の時から変わってないように見えるし、エミュとの距離感と言われても元を知らないから比較することができない。


「藍野はさ、南の気持ちが知りたいか?」


「知りたいといえば知りたいかな~。こういう時の気持ちって私にはないからさ~。あ、そう考えるとエミュちゃんのも知りたいな。どうしてそう思ったのか~」


「そんなに自分の気持ちがわからないのか?」


「わからないって言うか~、どうしてみなちゃんはハッキリ言わないのかって思ってね~。エミュちゃんは月島君のことが好きってわかるんだけどさ~、それをはっきりと月島君に言葉では伝えてないじゃんね~。それがわからないんだ~」


「だから、知りたいと?」


「そういうこと~」


 「頭はいいんだけどな~」と思いながら俊哉は頭を掻いた。いや、これは頭がいい故に非効率的な行動だと思ってしまうのか。それとも著しくその経験に縁遠い環境にいたかのどちらかだな。はあ、どうしたものか。ああもう、大輝のせいだ。これが終わったら、無理やりおごらせてやる。


 するとレオ(大)の動きが止まった。そのことが気になってレオの見ている方向を見ていると開けた空間に出た。しかし、その空間は中央に大きな足場があり、そしてそこに行くまでの不安定そうな足場があるだけであとは底の見えない闇が広がっている。


「ここを通るのか......」


「それしか道はなさそうだしね~。ここまで一本道だったし~」


「ウォン」


「しゃあない、行くか」


 俊哉は「なんかこういうところゲームで見たことあるな~」と思って嫌な予感がしながらも、不安定な足場を落ちないように気を付けながら歩いていく。そして、大きな足場に辿り着くとゴゴゴゴゴゴと重いものを引きづるような鈍い音がした。


「ウォン!」


「「......!」」


 レオ(大)の声によって上方を見ると上からなにかが降ってきた。


「ギシュル」


「ギシャア」


「ギシシシ」


 降ってきたのはリザードマン、ダンゴムシの魔物、蛇の魔物だった。そして、通った足場と通るはずだった足場が崩れ落ちた。......まさか、これも罠っていうのか!?エグ過ぎるだろ!?南は非戦闘員に入るんだぞ!?


 だが、文句なんて言っている暇はない。すぐさま魔物たちは襲いかかってきた。


「チッ......このやろおおおお!」


 俊哉は走り出すとリザードマンに突貫した。この魔物だけが唯一剣の武器を持っているからだ。それに人型は他の動物の魔物に比べて知能がある。故の判断だ。だが、その俊哉の思考は読まれていたのか、こちらに向かってダンゴムシの魔物が転がってくる。


全力衝突(タンクボム)


「ギシッ!」


 俊哉のタックルに押し負け、吹き飛ばされたダンゴムシの魔物は足場の外(場外)へと出たが蛇の魔物によって引き寄せられ場内へと戻された。俊哉はそのことに思わず舌打ちする。やはりなんとしてでもリザードマンが優先だ。


「レオ、藍野を頼む!」


「ウォン!」


「うおおおおおお!」


「ギシャアアア!」


 俊哉は再び突っ込むと今度はリザードマンが迎え撃った。ダンゴムシでは荷が重いと思ったのか。いや、そんなはずはない。相手はもっと狡猾だ。


 俊哉はリザードマンにヤクザキックをして、無理やり距離をとるとその場でバク宙した。すると俊哉がその行動をしたと同時にダンゴムシの魔物がその場を通り過ぎた。そして、リザードマンとダンゴムシの魔物が衝突した。


「ギシャアアア!?」


「ギシシシシ!?」


 両方とも驚きの声を上げるとリザードマンが場外へと吹き飛ばされた。だが、またもや蛇の魔物が自身の体を伸ばしてリザードマンを助けようとする。


「レオ!」


「ウォン!」


 そうはさせないと俊哉は咄嗟にレオ(大)に呼びかける。するとレオ(大)はその意図を酌んでその蛇の魔物に斬撃を飛ばした。だが、リザードマンはそれを読んでいたのか蛇の魔物を逆に自身の方へ引き寄せるとレオの方向に思いっきり投げ飛ばした。


「あの野郎!」


 俊哉は一つ愚痴をこぼすとレオ(大)の前に立ち、蛇の魔物を切り伏せた。.....よし、これで残りいっ――――――――


「きゃっ!」


「ウォ!」


「......!」


 切り伏せた直後、後方から仲間の声が聞こえた。俊哉が咄嗟に振り返るとレオ(大)と茉莉が場外へと吹き飛ばされていた。そして、すぐ近くにダンゴムシの魔物が。おそらく状況的に捨て身の攻撃で、レオ(大)と茉莉を道ずれにしたんだろう。レオ(大)は蛇の魔物に注視しててダンゴムシの魔物の存在に気づくのが遅れ、茉莉はレオの後ろにいたから巻き込まれたと。


「クソおおおお!間に合えぇぇぇぇ!」


 俊哉は剣を放り投げると全力で走り出す。そして、ヘッドスライディングのように跳んだ。


「レオ、小さくなれ!」


「ウォン」


 俊哉は茉莉の手と小さくなったレオの手を掴むと足場の淵で鎖骨辺りまではみ出しながらもなんとか踏みとどまった。少し遠くでは、ダンゴムシの魔物は落ちて闇に消えていく。


「ふー、間一髪」


「ありがとう~、助けてくれて~」


「キャン」


「感謝の言葉はまだ早い。すぐに引き上げるから、とりあえず先にレオな」


 そうしてレオを簡単に引き上げ、空いた手で茉莉の手を掴むと一気に引き上げた。その勢いで思わず茉莉が俊哉の上に覆いかぶさった。


「助かったよ~、ありがとう~」


「どういたしまして。つーか、なんで油断してたんだ?」


 俊哉の疑問はもっともだった。ダンゴムシの魔物にタックルされる前に茉莉がレオ(大)を強化していれば、押し負けなかったはずだ。


 その質問に対して、茉莉の回答はごく単純なものだった。


「なんだかんだで鷹岡君がやってくれると信じてたから~、ここに来るまでの話が気になってつい考えちゃったんだよね~」


「信じてくれるのは男冥利に尽きるが、それは過信だ。俺も絶対じゃない。だから、次は気を付けてくれ」


「わかったよ~。それで話変わるけど、そこ見て」


「ん?」


 茉莉に指さされた方向を見るとそこには崩れたはずの足場が復活している。どうやら強制バトルイベントの罠であって、さらにここから動けない......なんてことではなかったようだ。それについては、俊哉は安堵の息を吐いた。まあ、それはそれとして......


「なあ、いい加減、どかない?」


 実はさっきから茉莉が上に乗ったままで、起き上がることもできないし。あまり良く見ることはなかったが、近くで見ると意外に可愛い。そのせいでか、俊哉の顔は必死に平静を装っているがわずかに上気していて、心拍数も若干上がっているような気も......


 茉莉はその言葉に「う~ん」と唸るとわざわざ乗っかり直し俊哉の顔の左右に手を置いた。いわゆる床ドンという姿勢だ。これには俊哉も焦る。


「ちょ、ちょ、ちょ、お前!?何やってんの!?顔近いって!!」


「私さ、考えてみたんだけど......」


「え?は?何を?聞いてやるから、まずどけ――――――――――」


「私たち付き合ってみない?」


「................は?」


 俊哉はそのあまりに衝撃的な言葉に動きも思考も停止した。ただ頭の中で壊れたラジオのように茉莉の言葉を繰り返していた。


「それで、どうかな?」


「あ、へ?いいんじゃね?......あれ?今、俺、何て言った?」


「それじゃあ、決まりだね」


 茉莉は俊哉の言葉を聞くと立ち上がってレオを抱えながらスタスタと足場に向かって歩いていく。一方、俊哉は未だに放心状態だ。


 すると茉莉はふと振り返ると俊哉に言った。


「あ、これ皆には内緒ね」


 そして、向き直すと再び歩き始める。


「......わけわかんね~」


 俊哉は大声でいいながら思わず寝そべった。

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それではまた次回

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