第51話 それはない
「神逆のクラウン」の設定編集をしていたら、第1話なのに評価とブックマークされていました。ありがとうございます。
そして、個人的に思うのは読者さんはダーク系が案外好きなのかな~とまあ、面白いですからね。
魔族の二人のうちサバサバした方の一人が静かに語りだす。その内容はこうであった。
二人、いや、三人は小さい頃から王女様の傍仕えとして育てられ、王女様の身の回りのお世話をしていた。王女様は優しい方でいつも身分違いの三人を姉妹のように扱ってくれて、大切にしてくれた。
そんなある日、女王様が失踪するという事件が起きた。これは公には知らされず、内々で解決しようということになった。そこで多くのものが自身の手柄のために名乗り出たが、魔王様がそれを却下した。理由は明白でその名乗りを上げた人たちはいわゆる戦争を起こそうとする人たちで、この事件を口実に戦争をするつもりだったらしい。
そして、そのまま捜索隊が出ることもなく、一年の時が過ぎた。その理由はその人たちを抑えるだけで精一杯だったらしい。だが、このまま女王様が帰ってこなければ国が傾きかねない。そう思った王女様が魔王様に一言告げて、護衛をつけづに出て行ってしまった。そして、時間が流れるまま一年間、王女様は帰ってこなかった。戦争派の勢力はますます勢いを増し、ついに反戦争派と二分してしまった。そこで、魔王様から王女様の傍仕えであった三人が選ばれた。一番、王女様を見てきたという理由で。そして、傍仕え三人は王女様を探すための旅に出かけた。
旅に出かけて王女様が行きそうなあらゆる場所を転々としていった。だが、見つからなかった。そして、最後の望みで人族の本拠地に乗り込もうした矢先に魔物に追いかけられ、そのうちの一人がいなくなってしまったという。
そして、現在に至る。もちろん、王女様というのはセレネのことだ。
少女はひとしきり語ると大きく息を吐いた。それから、再び頭を下げる。
「「どうか、無理を承知で助けてください!」」
「ああ、いいぞ」
「まあ、大丈夫じゃね?」
「「......へ?」」
大輝と俊哉の楽観的過ぎる返答に二人は思わず呆けた声をだした。そんな二人を尻目に大輝は俊哉にアイコンタクトを送る。
「まあ、少し待て。確認するまでに時間がかかる」
「それじゃ、俺は助っ人を呼びに行こうかな」
「助っ人?」
「ああ、良く知る助っ人だ」
そう言い残したまま大輝は来た道を戻っていった。そんな大輝の姿を二人は未だ呆けた表情で見送った。
**********************************************
「「姫様ぁ~!!」」
「ちょっと、なんであなた達がいるのよ!?」
リリスに抱きつく二人の少女に少し煩わしそうにしながらも、その表情は懐かしさを感じているようであった。
大輝はセレネにまだ本題を伝えてない。伝えれば、迷惑かけまいと動くだろうと思ったし、ぶっちゃけこの反応が見たかったこともある。そして、ひとしきり楽しんだところで本題をセレネに話した。
話し終わるとまずため息を吐き、そして「迷惑かけてごめんなさい」と二人の少女に抱きつきながら謝った。二人の少女はそれだけで涙目である。
「......で、お前らも手伝ってくれるのか?」
大輝はそう言いながら、セレネの後方にいる三人と一匹に声をかけた。
「何、水臭いこと言って。当たり前でしょ?」
「そうだよ、大ちゃん。私たちの仲間だよ」
「うん、二人の言う通りだよ~」
三人は笑顔でそう答えた。その返答をセレネは聞いていたのか「ありがとう」と言うと丁寧にお辞儀した。すると俊哉から声がかけられる。
「お前ら、精霊が調査結果を伝えに来てくれたぞー」
「「せ、精霊!?」」
俊哉の言葉にまず反応したのは二人の少女であった。二人の少女は互いに何かを確認しあうと「まさか」という顔をしながら大輝たちを見やる。
「あなた達は、もしかして勇者一味ですか?」
「ああ、そうだな」
「「ええええええ!!!」」
大輝の返答に二人の少女は心臓が飛び出るぐらい叫んだ。それはそうだ、「物好きな人族がいるもんだな」と思っていたら、それがまさか勇者であるとは。まあ、風の噂で勇者の方が魔族に対する嫌悪感は少ないって言ってたし、だけどそれは風の噂であるから信用はあまりしてなかったし。そ、そういえば、二つ剣を持っていた男の一つの剣が伝承で聞いた聖剣の特徴に似てなくもなかったし、でもでも魔剣みたいなのも持ってたから違うかな~と思っていたら、まさか勇者であるとは!?
「それは聖剣であるフランが証明するぞ」
「魔剣のドリィも証明するなの」
「「け、剣がしゃべった!?」」
二人の少女は段々と目をグルグルと回し始めた。どうやら脳処理が追い付かなくなったらしい。そして、言うのはただ一つ。
「「姫様!なんてところにるんですか!?」」
「あ~、え~と......それは......」
その質問にセレネも言葉が詰まった。なぜならセレネ本人もたまたま助けを求めたらそれが勇者パーティであったからだ。だから、上手く返答できない。そこに二人の少女はさらに追撃の言葉を浴びせる。
「「それに、この人たち変態なんです!」」
「知ってるわよ、そんなこと」
「おい、何言ってんだ」
「俺たち何もしてないだろうが」
そんな大輝と俊哉の言い分も虚しく、この場にいる女性陣全員から冷たい視線が浴びせられる。なぜだろう。一気にアウェーになった。
この空気は耐えられんと大輝は俊哉に視線を送る。その意味を理解した俊哉は一つ咳払いすると話始めた。
「話を戻すぞ。それで、精霊からの連絡によると二人の仲間は生きているらしい」
「本当に!?」
「本当!?」
「だが、なにやら厄介な場所にいるらしい」
「厄介な場所って?」
「アイザルスの洞窟というところらしい」
「あ~、そこか。わらわは知ってるぞ」
俊哉の言葉に最初に反応を示したのはフランだった。フランはどこか懐かしいそうな声を出すとその洞窟について説明し始めた。
「アイザルスというのは主様の先代の勇者じゃ。アイザルスが最初に攻略したからそういう名前がついておる。それで、厄介というのはあのダンジョンは罠系ギミック中心なのじゃ。しかもその罠は魔法を相殺する魔法陣が付与されていてな。まず魔法では防げない。じゃから、全て避けなければならないのじゃ。しかも、それでいて無駄に階層が多くてな。その洞窟攻略難易度や魔物のレベル自体もそこそこに高く、そのダンジョンにある報酬も少ない。冒険者から嫌われているところじゃの」
......聞いているだけで、行きたくない。そんな旨味のない、むしろ苦みの方が多そうなダンジョンは。魔法で防げないって、なかなかに厄介だ。そして、階層が多いとはどこにいるかわからない以上虱潰しに探さないといけないわけで、下手すればかなり時間がかかる。その間に神託が下れば、目も当てられない。だが、手伝うといった以上手伝わないわけにはいかない。
大輝はその間に神託が来ないことを祈りながら、手早く済ませることを誓った。そして、そうするために二人の少女に言う。
「フランがそう言うぐらいだ。それだけ厄介なのだろう。なら、俺たちがその仲間を連れて来るまで待っていてくれないか?」
「それは出来ない」
「うん、頼んどいて任せっきりは申し訳ないよ」
「なら、私の命令ならどう?」
そう言って二人の少女を制止したのはセレネであった。セレネもそのダンジョン攻略は二人には荷が重いと感じたのだろう。そして、さすがに姫様に出てこられれば、二人は何も言えなくなった。セレネは「ごめんね。だけど、必ず戻って来るから信じて」と言いながら二人の頭を撫でる。その言葉に二人はただ涙ぐみながらうなずくばかりであった。
「それじゃあ、二人を安全な場所に居させなければね」
「なら、俺たちの屋敷でいいんじゃねぇか?俺が通行許可書にサインしとけば、通れるだろ」
「そうね。そうしてくれれば助かるわ」
大輝は空間宝物庫から二枚の紙を取り出すとサラサラと書いていく。そして、それを二人に渡した。それから、二人が聖霊国に向かって行ったのを見送ると大輝たちも動き出した。
「で、ドジってどのくらいだ?」
大輝たちはダンジョンに入るとすぐに一本道を歩いていた。まだ、罠というには引っかかっていない。そんな時、ふと別れ際に二人に言われたことを思い出したのだ。その質問に、セレネは過去の記憶を思い出すとそっとため息を吐いた。
「あの子はね~、正直言って良く分からないのよ。あの子は強運というか豪運って言っていい程運に愛されているのに、よくドジな行動をするのよ。しかも、ある日を境にね」
「それはまた個性的なやつだな」
「それについては同意するわ」
しばらくして、大きな空間に辿り着いた。そして、その空間の中央部には上へと続く階段があった。あからさまに怪しい。大輝は<気配察知>と<精霊の瞳>をつかって調べてみると上がったすぐ近くに反応があった。「怪しい......」そう思った大輝は他の仲間をその場に残して、偵察に出る。するとそこには......
「あっ......ん、ちょっとそこはっ////」
「......ほう」
階段を上がるとすぐになにやら触手みたいなので両手を頭上で縛られて、体をまさぐられている少女がいた。もしかしなくてもこの子だろう.......うん、エロい。
大輝は意図せず魅入ってしまう。それはもう鋭い目つきで。幸い、薄い本のような展開にはなってないが、だがギリギリアウトぐらいにはなっているのではなかろうか。
すると少女が大輝の存在に気づき叫ぶ。
「これを解いてください!」
「はっ!ああ、そうだな」
大輝はサッと聖剣で触手を切って少女を受け止めると下の階にいる仲間を呼んだ。そして、セレネの姿を見るとすぐに飛びついた。
「姫様ぁ~~~~!」
「嬉しいのは分かったけど、少し離れなさい!ぬるぬるしてんよ、レイは!」
レイという魔族の少女はセレネの胸元に顔をうずめるようにぐりぐりと頭を振る。その度にセレネがヌルヌルした液にまみれていく。レイの気持ちが分かっているだけに、セレネの表情はなんとも言えない感じになっている。
「あの変態がすぐに助けてくれなかったんですよぉ~」
「何を言っているのかわからないぞ?」
「あんた、とんだ勇者ね」
「大ちゃん、一発殴られよっか」
「大輝、ついにそこまで......」
「親友だと思っていたのに......クソ野郎が」
弁解の余地もない罵詈雑言。確かに、少し見てしまったことは認めるが、それは一分も無かった。だから、ここまで言われることはないのだが......どうやらこのパーティにおいての勇者の立ち位置は底辺らしい。勇者とは一体......
大輝はもう反論は火に油を注ぐと思い、黙って受け入れていたがそれすらも仲間からは火であったらしく。しばらくすごい言われようだった。
「落ち着いた?」
「はい......グスン、落ち着きました」
「ちょ、ちょっと大丈夫なの?」
レイはセレネから離れるとフラフラした動きをした。恐怖やら安心やらでまだ体が正常に動いていないのだろう。しかし、なぜだろう。嫌な予感がするような......最近、当たるんだよな~
「うわぁ!......ガタンッ」
「「「「「.....え?」」」」」
「ゴゴゴゴゴゴゴッ!」
レイが石につまづいて、尻もちをついた瞬間、なにやらギミックの発動音らしき音がした。そして、それは気のせいではなく、壁の片方の上部と反対側の壁の下部に人が二人通れそうな穴が開いた。そこからさらに別の音がする。
「ザアアアアアァァァァァ―――――――――――――――」
「「「「「わあああああぁぁぁぁ!!!」」」」」
「ザッパアアアアァァァァン!!」
その穴の上部から下部にかけて鉄砲水のような勢いで大量の水が流れてきた。大輝たちは思わず叫んだ。そして、逃れようとするが......しばらくして、水の勢いは段々と弱まり、やがて止まった。だが、その場に大輝たちの姿は無かった。
評価、ご感想、ブックマークありがとうございます。励みになります。
それではまた次回




