第50話 二人の魔族
50話記念でもう一作品投稿します。良かったら読んでくださいね。
「ここに魔物の巣があるのか?」
「みたいだな。まあ、問題ない相手だと思うけど」
現在、大輝と俊哉は森のある洞窟へと向かっている。これはギルドの依頼でなにやらこの洞窟周辺に多数の魔物の足跡があったらしく、その調査及び討伐を頼まれたのだ。
その洞窟は見たところ何の変哲もない洞窟で中が迷宮になっているということもないらしい。だが、その中にいる魔物の種類がわからない以上、種類が多ければそれだけ戦い方も変わってくるということで単体でオールマイティーに戦闘をこなせる勇者の出番という訳だ。
大輝たちは中に入ると数十の気配を確認、だが災悪の脅威を知っている大輝たちにとっては油断しなければ何も問題ない相手だ。
「グルルルルル」
「ガァ――――――――!」
「ウゴォ―――――――――!」
「「うわぁ~~~」」
分かっていたはいたが、それでも多種多様な魔物の群れに大輝たちは思わず嫌そうな声が漏れる。そんな二人の心情など露知らず、魔物たちは襲い掛かってきた。
大輝は剣を引き抜くとまず襲い掛かってきたオークの斧の攻撃を剣で受け流し、そのオークを置き去りにしてオークの巨体の後ろで攻撃の機会を伺っていたゴブリンの三体を切った。
「バレバレ」
「ウガァ―――――――――!」
その直後、大輝は剣をしまうように後ろへと剣を向けると飛んできた矢の攻撃を防いだ。そして、瞬時に後ろを振り向くと<風乱舞>を使って、その矢を飛ばしてきたコボルトへと走り出した。だが、その道を阻もうとする多くの魔物の群れが立ちふさがる。
横から噛みつこうと飛び掛かって来る狐の魔物には剣でその攻撃を防ぎ、地面からこっちに向かってきたモグラの魔物と空中から襲い掛かってきた鷹の魔物には空中で半身になりながら、同時に避けていく。そして、上手く着地すると半歩後方へ下がり目の前で振り落とされた斧を避け、下から上にかけて剣を振っていきその腕を切り落とした。
それから、その場でしゃがみ込むと片足を伸ばして一回転。足払いによって五体のゴブリンを死に体にすると立ち上がってさらに一回転してその五体を切り飛ばした。そして、見えたコボルトまでの直線道。
「超加速」
「ウォ――――――――――ン!」
「ウギャ―――――――――――!」
大輝は一気に加速して間合いを詰めると壁際にいたコボルト達を一掃した。そして、壁を蹴って宙に舞い突撃してきた牛の魔物を避けるとその魔物の頭上へと剣を突き立てた。
「さすがに多いな......炎裂刃」
大輝は魔剣と聖剣を同時に振るうとそこから炎の斬撃が魔物の群れへと向かって行き、多くの魔物を焼き殺した。そして、再び<風乱舞>でまだ生き残っている魔物に詰め寄ると次々と切っていった。
「これでラスト」
「ウォォ――――――!......バタンッ」
大輝が聖剣をオークの胴体から引き抜くとオークはそのまま前のめりに倒れて動かなくなった。そのことを確認すると大輝はフーと肩の力を抜いた。ざっと周囲も確認してみるが、魔物の反応はない。
「終わったな」
「みたいだな。久々にこんな動いた気がする」
「しょうがねぇな、それは。ここしばらく神託が来てないんだから」
「そんじゃ、帰るか」と今にも来た道を引き返そうとする俊哉に大輝は待ったをかけた。
「どうした?」
「それがな、魔物以外の反応もあるんだよ」
「魔物以外?......まさか襲われた人が!」
「他の肉食系の魔物がいたから断定はできないが確かめた方が良いと思う」
そう言い切ると大輝はある場所の壁に向かった。
今更だが、この洞窟は大輝たちがいる空間まで他に分岐したような道はなく、大輝たちだいる空間からも他に行けるような道はない。つまりここが洞窟の最初の層で最後の層なのである。だから、大輝はこの反応を人以外の何かがいるんじゃないかと思った。
そして、その壁まで辿り着くと土魔法でその壁を変形させ、その壁を掘った。するとそこには空間があり.....
「キャアッ!」
「な、なんでバレた!?」
二人の少女がいた。青髪の少女と紫髪の少女だ。その少女二人は警戒心をむき出しに大輝たちを見る。だが、そういう大輝たちも驚いていた。少し尖った耳に一般市民より多くの魔力を所持している.......
「魔族!?」
「「!!!」」
二人の少女は思わず大輝たちから離れるように距離を取る。ここにいては危ない。速く逃げなければ。
だが、大輝は逃さないようにその二人の足を土魔法で固定した。それは聞きたいことがあったからだ。セレネは母親を探すために危険を冒してまで人族の領域に足を踏み入れているが、それはそれをするためのちゃんとした理由があるためだ。それも国全体に関わることで。目の前にいる少女はそういう理由があるようには見えない。もちろん、そう思っているだけかもしれないが、それにしては人数とレベルが足りなさすぎる。もっと他の何かがあるように思えたのだ。
大輝に捕まった少女の一人が大輝の方睨むとこう聞いてきた。
「何をするつもりだ!私たちを殺すのか!?」
大輝はその質問にため息が出た。......きっと人族との抗争を未だに引きずっての言葉であろう。俺と同い年くらいの子が言っているってことはそれだけまだ根が深そうだな。
「いやいや、なんでそんなことする必要が?」
「そうさ、俺たちは人殺しになるつもりはない」
「......なるほど、わかりました。つまりは私たちを美味しくいただこうというわけね」
「「全っ然、わかってない!!」」
大輝と俊哉もさすがにそれには反論した。全く、人族とはいえ俺たちをなんだと思っているのか。なんだ?俺たちは強姦魔か何かか?.....まあ、男二人に捕らえられた少女二人という絵面はなんともひどいものだとは思うけど。
「それが分かっているだけで、あなたたちは変態よ!」
「普通わかるわけないじゃない!」
「「お前らの知ってる男はどんだけ純粋なんだよ!?」」
まずい、立場的には明らかにこっちが主導権を握っているはずなのになぜ握られているのか。このままでは分が悪い。早く話題を変えなければ。
「それで、なんでお前らがここにいるんだ?危険だって分かってるだろ?」
「それはそうだけど......」
「あんたらに何が分かるっていうのよ!?私たちが仕えていた王女様が突然消えてしまったことが!そして、探しに来れば仲間が消えてしまったことが!」
「.....なるほど、そういうことか」
大輝は納得すると少し考える。......これはアイツ関係の話だな。まあ、もともと魔族って時点で相談しようとは思っていたが、これはあまり大事にすべきではないよな。魔族が人族の領域が知られれば二人の命に関わる可能性もあるし、勇者が魔族と繋がっていると良からぬ噂を立てられる可能性もある。......だがな~
「なあ、このままにしないよな?」
「まあ、そうだな。別に俺たちは敵対してるって感じでも、意識してもいないしな。」
「なら、決まりだな」
「な、なにをするつもりよ」
「まあ、少し話そう」
大輝たちの会話を不審に思って警戒を依然緩めない二人の少女に大輝たちはおもむろに地面に座り始め、そして拘束を解いた。その行動にキョトンとする二人の少女に大輝は一言。
「仲間を探すのを手伝おう」
そう告げたのだ。これには二人の少女も「え?」という言葉が漏れる。そう思うのもしかたない。魔族と人族は今は目立った争いがないだけで、過去何百年と衝突し続けたのだ。故にもはや人族には魔族に対する嫌悪感を抱くという遺伝子を持っているというのが魔族側の見解だ。なので、そう言われてもすぐには信用できるはずがない。だが、目の前の二人からは敵意や戦う気が全く感じられない。
なにやら反応が悪い二人に大輝たちはさらに大胆な行動をした。自身から少し離れたところに剣を置いたのだ。この行動にはさすがの二人も言葉にした。
「バカじゃないの!?どうしてそこまでするのよ!?」
「私たちが信用したと見せかけて攻撃するかもしれませんよ!」
その言葉を聞いた大輝と俊哉はおかしく笑った。
「だってよ、俊哉」
「さすが、アイツの傍仕えだったことはあるな」
「「......?」」
「なんか分かってないようだけど、俺たちは話をするために座ったんだぞ?なのに武器が必要か?」
「それに、攻撃を仕掛けようと思うならいつでも良かっただろ?なのにしない......ってことで俺たちは二人が信用に値すると思って剣を置いたんだ」
「それはあまりに安易な信用よ!」
「そう思うなら、今攻撃して逃げることもできたかも知れないだろ?」
そう大輝が言うと二人は押し黙った。そのその反応を見て大輝は少し嫌な言い方をしたかなと思ってしまった。
この世界のレベルという概念は自分の攻撃が相手に通用するかどうかの基準であり、そのレベルがあまりに離れているとそのレベル差を戦わなくてもレベルの低いものは肌で感じてしまうらしい。なので、二人は攻撃しなかったではなく攻撃しても意味がないと思ったかもしれない。そう考えるならば、今の状況は脅迫と捉えられても文句は言えない。それは俊哉も分かっていて乗ってくれたのであろう。だが、ここはどうしても引き留めたかった。そっちの方が二人の目的の一つにも沿うだろうし。
しばらく黙っていた二人は大輝たちに聞こえない形で何かを話し合うと終わるとすぐに大輝たちの目の前まで来て、座った。
「「話を聞いてくださいませんか?」」
二人はそう言って頭を下げた。
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それではまた次回




