第4話 エミュと冒険#1
「クソ!どこなんだ!」
大輝は迷っていた。正直言って仕方がない。目印もつけないで走り出し、どこまで走ったかもわからず、途中でさらに森の奥の方へ入りしばらく走った。だが、たとえ仕方がないことだったとしても大輝にとっては仕方がないでは済まされない。気配察知で探りながら、弱い反応を見つけては向かい、見つけては向かいを繰り返してるが、かれこれ10分も経つのに見つからない。
「まずいまずいまずいまずい!」
焦りだけがつのっていく。少女から離れてからの時間を考えると絶望的な時間だ。もしかしたら、もうとっくに間に合ってないかもしれない。たとえそうだとしても、1%でも可能性があるのだとしたら、それにかけたい。
大輝は走って走って走りまくった。肺がきつい。足も重い。気配察知は周囲の情報が一気に入ってくるので、頭痛がする。それも繰り返し使っているので少し頭がボーっとしてきた。のどが渇く。そういえば、昨日からなにも食ってないし、飲んでもいない。もしかしたら、それもあるかもしれない。大輝は立ち眩みがして近くの木を支えにする。ハアハア......まず......い。そして、大輝は倒れ――――――なかった。誰かが大輝の体を支えた。
「こんなところにいた、大丈夫?辛そうだね。とりあえず、これ飲んで。」
可愛らしい声がした。もしかしたら、あのときの少女かもしれない。少女は腰巻に付けていたひょうたんの形をした水筒を大輝の口に近づけ、ゆっくりと飲ませる。大輝の顔色が良くなった。まさに生きた心地だ。
少女はゆっくりと大輝を木にもたれ掛けるように地面に座らせる。大輝は少女の姿を見た。やはりあの時の少女だ。少女は大輝に目線を合わせる。目と目が合い、少女はニコッと笑う。やばい、惚れてまうやろ。
「良くなってよかったよ。」
「君はあの時の......」
「そうだよ、私はエミュ・ドラグニル。あの時助けてくれてありがとう。」
「いや、助けられたのは俺の方だよ。俺は月島大輝。さっきは助けてくれてありがとう。」
「いやいや、助けられたのは私の方だよ。あのとき、本当に危なかったんだ、ありがとね。」
「いやいやいや、俺の方こそ――――――。」
大輝が言い切る前にエミュは大輝の唇に人差し指を押し付け口封じをした。「それじゃ、お相子ね。」微笑みながら言う。か、可愛い。
大輝は突然の行動にドキッとした。唇から指が離れる。い、いまだに唇に指の感触が......あんまり浸ってるとまるで変態ではないか。完全否定はできないが、まだそこまでには至っていない。
大輝はゆっくりと立ち上がる。体力もだいぶ回復したし、頭痛も収まってきた。そしてなによりこの子が無事で何よりだ。......無事?あれ、今更だけどなんで無事なんだ?いや、なんで無事なんだって言い方もおかしいけど、確かにあの時一目でわかるほど衰弱していたはずだ。
「体調はその......大丈夫なのか?」
「ん?全然平気だよ。ほらこの通り。」
そういってエミュは力こぶを見せ、膨らませる、ちょこっとだけ。フフン♪鼻を鳴らしながらドヤ顔をしている。なにこれ、可愛い。加えて、エミュは実にエスニックの服を着ている。露出度が高いし、胸の主張がすごすぎる!目線が胸に吸い込まれる!まさにパーフェクトな体つきをしたエロと可愛さ、さらに元気っ子属性を兼ね備えた美少女だ。まさに異世界、ビバ異世界!!大輝は内心はしゃぎまくっていた。
「それにね。私、竜人族だから毒には基本的に耐性があるんだけど、あの時背後にいるの気づかなくて油断して噛まれちゃってホント危なかったんだよね。」
「えへへへ~」といかにも軽く済ませているが、それでいいのか?いやまあ、本人がいいならいいんだけどね。......ん?竜人?
「竜人!?」
「あれ?珍しかったかな?そういえば見たことない服着てるね、それにこんな森に人がいること自体珍しし。」
「ああ、それは......」
「大輝さんは、旅人さんかな?」
エミュは大輝の問いをさらりと流すとそのまま逆に大輝へと質問した。大輝はすぐに答えられなかった。「自分はこの世界とは別の世界から来たんだ。」といっても信じてもらえるだろうか。それに、下手に公言して厄介ごとに巻き込まれたら大変だ。エミュを信じないわけではないが、今はまだ得策ではない気がする。
「そういえばだけど、エミュさ―――――。」
「エミュでいいよ。」
「わかった、俺も大輝でいいよ。それでエミュ、君はここで何してたんだ?」
大輝は気にならずにいられなかった。この森は大輝のレベルで倒せるのが多いが、それは森の手前付近で現在は森のだいぶ奥にいる。気配察知で周囲を探っているが大輝が戦ったあの大蛇よりも明らかに強い反応がある。
エミュは竜人というが、ラノベや漫画の知識をあてにすると竜人は強い種族だ。とはいえ、どうしてたった一人でそれも少女でこんなところに。
「それは......」とエミュは言い淀む。心なしか表情も暗く見える。何か言いづらいことでもあるのだろう。なら無理して聞くこともないだろう。そう思うと、大輝は話題を変えた。
「なあ、エミュ、一緒に冒険してみないか?」
大輝はできるだけカッコよく言った。そうこれは大輝にとって重要案件!美少女と冒険する、これが異世界、これぞ異世界!地球のときの俺とは一味も二味も違うのだ!加えて、助けた―――――助けられもしたが―――――のでそれなりに好感度は稼いでるはずだ!行くのだ俺!美少女と冒険じゃあああ!!
「......ええっと......」
エミュはさっきより言い淀む。あれ?これは......
「ごめんね。気持ちは嬉しいんだけど......その......ここから出ることは出来ない。違う、出来ないんじゃないんだけど......と、とにかく森の出口知ってるからそこまでは送るよ。」
断られた。断れてしまった。いやまあ、確かにあんなラノベや漫画通りにはいかないよな......。だ、大丈夫だ。こんな美少女に断られるのはだいぶ堪えるが、しかたない、ちょっとレベルが高すぎたのだ、しかたがないことだ。大輝は吹っ切るように一度息を吐くと、大輝はそのまま右手を差し出した。
「?」
「エミュ、どのくらいかかるかわからないけど、よろしくな。」
「!、うん、よろしくね!!」
大輝とエミュは握手をした。どうせなら、とことん楽しんであいつらに会いに行こう。大輝はそう思いながら森を歩んでいく。
思ったより、会話が多くなりました。いや、これども短かったりするんでしょうかね。書いてると案外書きたいことが多くて困りもんですね(笑)
それではまた次回




