第44話 初陣#3
バトル編最後です。そして、2話投稿にしました。
「し、死ぬかと思った.....」
大輝は数秒助けられるのが遅かったらと思うとゾッとした。
大輝たちは今、繭の上方にある蜘蛛の糸でできた足場にいて、それぞれ腹部には白い糸が巻き付いている。そして、その糸が伸びている先をたどるとそこには蜘蛛の魔物がいた。
「お前らに二度も助けれられたな」
「シュー」
「おい、大輝。この蜘蛛は味方なのか?」
なんだか蜘蛛の魔物と親しくしている大輝に思わず俊哉は疑問を尋ねた。本当はもっと言いたいことも、聞きたいこともある。だが、恐怖と驚きがぐちゃぐちゃに混ざり合って、そして一周回って冷静になっていた。しかし、顔は未だに放心状態なのは変わりない。
俊哉の質問に「ああ、その認識で良い」と言うと大輝は自身が吹き飛ばされたあとのことを話し始めた。
その当時の状況を簡単に説明するとこうである。大輝は木に叩きつけられた後、少しの間気絶していた。ダメージが思いのほか深かったのだ。その時、大輝の目の前に木の枝からぶら下がってきた子蜘蛛の魔物たちが現れた。一匹はなにやら果物を持ち、もう一匹は枝を持ていた。
枝を持っていた一匹は大輝の肌を突いて、大輝を起こすともう一匹が大輝にその手に持っていた果物を渡した。
大輝はもちろん警戒した。なんせ一度戦った相手であるから。だが、少なくとも目の前の相手からは敵意は見えない。そして、大輝はその果物を受け取ると<精霊の瞳>で確認し、何もないことを確かめるとその果物を食った。その瞬間、一瞬のピリッとした痺れとともに体の痛みがスーっと引いていくのを感じた。
大輝は立ち上がると手を握ったり、開いたりして感覚を確かめる。大輝の反応で問題なしと判断した子蜘蛛の魔物はスルスルと木に戻っていった。その時、大輝はこの森の守り神はもしかしたら......
そう思うとあの時の戦闘はなにかの間違いだったかもしれない。大輝は頭の片隅にそのようなことを考えると大ムカデの魔物に向かって行った。
「......そうか。とりあえず、味方であるならそれでいい」
俊哉はそう思うと気にしないことにした。いや、そんな小さなこと気にしていられなかった。そして、それは全員、同じ気持であった。
大輝は胴体に巻かれていた蜘蛛の糸を解いてもらうと自分の手を見た。
震えている。それも、恐ろしいほどに。いくら「止まってくれ」と願っても、止めようと意識しても止まってくれない。気づけばあの時の大ムカデの魔物の攻撃がフラッシュバックするからだ。
あの時、確実に「死」という存在を知った。これまで感じてきたのが嘘だったみたいに。今までの魔物とは比べ物にならない。怖い......考えるな、考えるな、考えるな!
「主様......」
「マスター.....」
「だ、大丈夫だ。安心しろって」
大輝は二ィっと笑みを見せる。だが、その笑みは明らかに引きつっていて不格好だ。ドリィにはその能力上、大輝の負の感情が溢れんばかり伝わっていた。
「大丈夫だよ」
ふと誰かが言ったような気がした。なんとなく誰が言ったかわかる。思わず大輝はその言ったと思われる人物の方向を見た。
「―――――――――」
エミュは笑顔でこちらに向かって何かを言っている。距離が離れていて言っている言葉は聞こえないけど、その優しい笑顔からきっと安心できるような言葉を言っているのだろ。
大ムカデの魔物はこちらを見失っている。エミュはそのことが分かると拳を一発小突き合わせ、その足場からダイブした。
「「「「「.......!」」」」」
エミュ以外の全員はそのあまりに突然の行動に動けなかった。
エミュは落下しながら腕を大きく振りかぶると大ムカデの魔物の頭上にからその拳を叩きつけた。
「そりゃあああああ!!!」
「グギャアアアアアァァァァァ!!」
エミュの攻撃は丁度大輝がヒビをつくった場所に直撃した。大ムカデの魔物は激しい痛みの声を上げ、痛みに悶えるように暴れた。
地面に着地したエミュは大輝たちに向かってサムズアップをした。
「勇気をだして、恐怖に打ち勝つんだよ」
「.......!」
その瞬間、大輝はエミュがこんな言葉を言っていたような気がした。恐怖に......打ち勝つ。勇気を......出して。俺は、勇者。勇者は「勇気」を持つ「者」。
その時、震えが止まったような気がした。大輝は自分に感じた変化を逃さないように、その足場から倒れるように自由落下した。
「俺は恐怖している。そして、まだ勇気もない。ならせめて、恐怖を感じる暇もないぐらい動き出せばいい!」
これは大輝なりの今の現状を打破するための逆転の発想だった。
この行動は四人の恐怖に凍り付いた心を溶かしていった。
「大輝、トドメは任せた!これが今の俺の最強の技だ.......太陽斬衝刃!」
「大輝、やっちゃいなさい!一刀流.......轟雷鳴!」
「かましてやりなさい!......闇の捕食者!」
「援護するよ~!......虎怒の咆哮!」
「ウォン!」
俊哉は太陽の如く剣を燃え上がらせると大ムカデの魔物に振り下ろした。
香蓮は刀をしまうと一気に抜刀した。その斬撃は雷の如く速いスピードで大ムカデの魔物に向かって行った。
セレネは自身の手に魔力を込めるとその手を大きく動かした。すると大ムカデの魔物の影から巨大な影の生物の顎が現れ、大ムカデの魔物をかみ砕くようにその口を閉じた。
茉莉は自身が持っている魔力のギリギリまで使って、大輝を強化した。
レオ(大)は大きく腕を振りかぶるとそのまま一気に振り下ろし、三本の巨大な斬撃が大ムカデの魔物を引き裂かんとばかりに飛んでいった。
「グギョアアアアアアアァァァァ!!」
大ムカデの魔物は最初に雷に打たれたかの如く痺れ、次に全身が焼けただれるような炎に包まれ、それから全身に穴が開くかのように影の生物に噛まれ、そして巨大な斬撃が大ムカデの魔物の体の尾の方を切り落とした。
「能力増幅!神聖属性付与!」
「了解なのじゃ!」
「魔力全解放!」
「OKなの!」
大輝の右手に持つ聖剣はその刀身を神々しく光らせ、左手に持つ魔剣はその刀身を暗いオーラで纏わせ、大輝は全身から闘気を溢れ出した。
「これで、終わらせる......風炎滅消閃」
大輝は二つの剣を逆手に持ち替えると自由落下の勢いに加えて<超加速>を使ってさらに落下速度を上げていく。
「おらああああぁぁぁぁぁ!!!」
「ドゴ――――――――――――――――ン!!」
「ギュオアアアアアアアァァァァ!!」
大輝は大ムカデの魔物の頭頂部に二つの剣をぶっ刺した。大ムカデの魔物の頭は大輝の剣によって地面に固定され、激しく動いてそこから逃れようとするが、段々とその動きを小さくしていく。
そして.......ついに動きを止めた。
大輝の<気配察知>からも反応が消失している。災悪討伐......完了だ。そして、大輝は声高らかに宣言する。
「勝ったぞ~~~~~~!!!」
「「「「「うおおおおおおお!!」」」」」
仲間達からの叫びも合わさりその声は森の広くに響いていった。
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討伐終了後、大輝たちはその場で一夜を明かすことにした。それは時間帯の問題もあったが、主には肉体も精神もヘロヘロで今すぐ帰れる体力もないからであった。ただ、討伐が終わった後の夕飯はめちゃくちゃ美味かったのは記憶している。まさに生きてるという感じで。
そして、夜番をしている。大輝と俊哉はたき火に木をくべながら、話をしていた。
「俺、あんな飯が上手く感じたの初めてかもしれない」
「俺も。ただ、料理出来ない俺たちの代わりに作ってくれた四人にはなんか申し訳ない気持ちになったな」
「それは、しかたない......とは言えないよな。後で、なにかお返しすればいいさ。......とにかく全員、無事で生きれたんだ。今はそれだけでいい」
「......そうだな」
大輝は二人とも火をジッと見つめた。未だ実感がわかないのはなぜだろうか。明確に実感した「死」という存在に後ろ髪を引かれているのだろうか。......いや、そんな感じではないのは確かだ。
すると俊哉から声がかけられる。
「なあ、もうそろそろ良くないか?」
「そうだな、さすがに起きないか」
「「ちょー、怖かった」」
大輝と俊哉は大の字になって寝そべった。そして、大きな声で本音を漏らした。「漢」でいる必要はなくなった。今はただの「男」でいい。
「なに大ムカデの魔物でかすぎ」
「強すぎ」
「「それな」」
大輝と俊哉は互いの反応に笑いあう。女性陣がいるとつい見栄を張ってしまう。無理をしてしまう。心配させたくないから。だから、男同士気の置けない関係、それが今はどれだけ心地いいか。
「死にかけた。それも2度も。」
「お前がいなかったら、この旅ムリゲーになっちまうぞ?......まあ、無事だからいいけどさ。」
「......悪かった」
「........。」
大輝は静かに謝った。それに対し俊哉は返事を変えさなかったが、怒っている雰囲気ではなさそうだ。
「そういや、エミュには助けられたな」
「......そうだな」
「エミュの勇気が無かったら、今の俺たちはないかもな」
「......だな」
「今度、ちゃんとお礼しないとな」
「.......。」
大輝は俊哉に話しかけるようにしゃべっているのに、だんだんと俊哉の反応は薄いものになっていった。ここからは俊哉の顔は見えない。もしかして眠っちまったか?
俊哉は大輝に聞こえない程度でため息を吐いていた。我が親友ながらなにも見えていない。
「なあ、大輝」
「なんだ、起きてたのか」
「夜番の俺が寝るわけないだろ。そんなことより―――――――」
「ん?」
「ちゃんと周りを見とけよ」
「どういうことだ?」
「聞くんじゃねぇ、少しは考えろ」
そう言うと俊哉はそれっきり黙ってしまった。大輝はその言葉を頭の中で咀嚼していた。周りを見とけ?まあ、確かに戦闘中の咄嗟の判断があまりできた感じがしないけど、周りは見ていた方だぞ?......んん?どういうことだ?
「........」
遠くで横になっていた香蓮は静かに目を開け、その会話を聞いていた。そして、軽く自身が着ている服を掴んだ。
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それではまた次回




