第42話 初陣#1
明日、諸事情のため今回は2話投稿です。
全員が目を覚まし、朝食をとり終えた後、大輝たちは聖樹のさらに中心付近に向かった。
「なんだ、あれ?」
「なにかの繭みたいにも見えるね」
そして、大輝たちがたどり着くとエミュが言った通り聖樹の根元には白いドーム状の繭のような膜が張られていた。
<気配察知>で確認してみるが目ぼしい強い反応がない。大輝は不意打ちとかが無いことを確認するとその繭のようなものの一部を切って、中に入った。
「でかいな」
「ああ......なんか誘い込まれた感も否めないけどな」
全員が周囲を見渡して警戒する。するとレオ(大)が聖樹の方向に向かって吠えた。大輝はその方向をすぐさま<気配察知>を使って反応を見た。すると聖樹の中から反応がある。10......50!......80!?
大輝は<気配察知>が示した情報に思わず目を見開いた。「初戦でこの数はないだろー!?」と思わず嘆きたいところをグッと堪える。覚悟はしてきたはずだ。たとえどんな相手だろうと。
しかし、無数の反応はあるものの動き出すような様子はない。こっちの出方を伺っているのか?大輝がそう思っていると俊哉がスッと動き出した。
「おい、俊哉、何する気だ?」
「お前が警戒してるってことは、なにかいるってことだろ?だが、その相手は動き出そうとしない。だったらその間に先制攻撃しようかなって、強攻撃で」
「だが、聖樹を攻撃するのはまずくないか?」
「なら、どうすんだ?」
「そうだなー、まあ、とりあえず任せてくんね?」
「うん?......まあ、いいけど」
俊哉は大輝に行動権をあげると大輝はゆっくりと聖樹に近づいた。そして、聖樹の隙間へ近づくと警戒しながらその中をのぞき込む。
「カサカサカサカサ......ギョロッ」
「......!?!?!?」
大輝は聖樹の中にいた多くの何かに見られた瞬間、言い表しようもない嫌悪感に襲われた。......ダメだ、生理的に受け付けられない。あれは......あれは!!
大輝はサッと振り返ると全力でその場から離れた。そんな大輝の様子に一同は困惑の表情を浮かべた。
「お前らあああ、逃げろおおお!」
「カサカサカサカサ!」
「「「「「ぎゃああああああ!」」」」」」
大輝を追ってきた虫は黒光りして、素早く、恐怖を与えるやつであった(次からは便宜上その虫をGと呼称する)。そのGはカサカサと耳障りな音を立て、こちらへ向かって来る。
大輝たちは生理的嫌悪感にとてつもなく襲われ、SAN値がゴリゴリと削られながら、一旦この繭から出ようと出口に向かった。
「カサカサカサカサ!」
「ひっ、こっちくんなあああ.......おらああああ!」
「シュ――――――――――――――」
大輝は空間宝物庫から匂い袋を取り出すとそれを追ってくるGにッ向かって投げた。そして、その袋から中身が漏れ、ブワッと周囲に広がるとGに直撃......したものの進撃は止まらない。
「みんな、早く出て!」
エミュの呼びかけにより、全員がドームから出るとエミュはフーッと息を吐いたかと思うと今度は逆に掃除機の吸引並みに空気を吸い始めた。そんなエミュの行動を大輝と俊哉はどこかで見たことがあった。.....そうだ、漫画に出てくる息だ。
「竜の吐息」
エミュは火炎放射器の比ではない火力の炎をGに向かって真っ直ぐ吐いた。この炎に直撃したGは叫ぶ間もなく消し炭になる。そして、エミュは顔を左右に振って全てのGを殲滅した。
エミュはもうGがいないことを確認するとドヤ顔のサムズアップをした。
「もう、大丈夫」
「ありがとう、エミュ。助かった」
「どの世界にもいるものね」
「いた時点でもう冗談にもできねぇしな」
「それに、アレを見た時の反応も共通かもね~」
「あんなの受け入れられるわけないでしょ」
全員、それぞれ言いたいことがあるようだ。まあ、しかたない。だってアレだから。もしかしたらと思っていたらまさか現実になるとは......これこそたちの悪い冗談だな。
大輝たちは失われたSAN値を取り戻すためにしばらく時間を要した。
しばらくして、全員の顔色が良くなると改めて繭の中へ入っていった。
入るないなや、大輝は<気配察知>で反応を見た。すると聖樹の中から先ほどのGとは比べなものにならない反応を確認した。姿は見えてないのにブワッと思わず気圧されるような威圧を感じた。
そして、聖樹の中の何かはゆっくりとこちらへ向かって、聖樹の中から這い出てきた。
「ギシャアアアアアアアァァァァ!!!」
大輝たちの目の前に現れたのは、全長20メートル以上はあろうかという大ムカデの魔物であった。
大ムカデの魔物は勇ましい咆哮をあげる。その咆哮だけで大輝の肌はピリッとどこか痺れのようなものを感じた。今回の災悪はあの時の蜘蛛といい、この繭といい、てっきりボスも蜘蛛だと思ったがそうではないらしい。もしかして、あの時の蜘蛛は偵察用とかだったのか?そして、あのGも考えてみれば、まるで自分たちを待ち伏せするみたいにじっと集団で固まっていたし。
「まあ、今更そんな考えはどうでもいいか」と頭を振ってその思考を払拭すると目の前にいる大ムカデの魔物に集中した。そして、負けじと吠え返した。
「よっしゃあああ!行くぞ!!」
「「「「「お――――!」」」」」
大輝は<追走の風>で加速すると真っ直ぐ大ムカデの魔物に突っ込んだ。その大輝に大ムカデは大きく体を反らせた。......やっぱりこっちを向くよな。
「エミュ!」
「わかった!.......せりゃああああ!」
「ギシャアアアアア!」
大輝が名前を呼ぶと大ムカデの魔物の死角からエミュが現れ、竜人族の超火力で大ムカデの魔物の胴体をぶん殴った。その攻撃に大ムカデの魔物は声を上げるが、見たとこと装甲に傷らしい傷は見られない。
「精霊の光」
「氷華」
「影の手腕」
「ギャシャアアアアアアア!」
俊哉の精霊の力を借りた光魔法の光線が大ムカデの魔物に直撃し、香蓮の氷魔法が大ムカデの魔物の胴体に華が咲くように凍り付き、セレネの闇魔法が大ムカデの魔物に絡みついて、動きを拘束した。
大ムカデの魔物がいら立ちを感じているような泣けび声を上げる。大輝は大ムカデの魔物が自分から注意が逸れていることがわかると土魔法で大ムカデの魔物に向かって階段を作った。
「月島君、レオちゃん、いくよ......強者の構え」
茉莉が補助魔法で大輝とレオを強化すると大輝は上から、レオは下から同時に攻めた。
「先手必勝!.....魔力解放!神聖属性付与!」
「わかったなの」
「わかったのじゃ」
「グルルルル......ウァン!」
「紅蓮炎斬衝!」
「ギャシアアアアアアァァァァ!」
大輝の指示により能力を開放したドリィとフランによって、大輝は闘気のように魔力が全身から溢れ出し、聖剣が神々しく輝いた。
大ムカデの魔物が大輝の方に注視していると下の方で一気に駆けて来たレオ(大)は爪で大ムカデの魔物の足の一部を引き裂いた。そして、畳みかけるように階段の最上段から飛び出した大輝は聖剣を天高く掲げる。その聖剣は天を焦がすような炎を纏い、そのまま大ムカデの魔物の頭に振り落とした。......マジか、あれでひびだけか!?
大ムカデの魔物は悲痛な叫びを上げ、地面へと叩きつけられる。
大輝は大ムカデの魔物から距離を取と大ムカデの魔物の出方を伺った。すると大ムカデの魔物は怒りの叫びを上げながら体を起こしたかと思うと自身の胴体の後方を鞭のようにしならせ、思いっきり薙ぎ払ってきた。......速い!
「全員、後退だ!」
大輝の声により全員後退するが、薙ぎ払いに伴う風がまるで物理的に殴っているように大輝たちを吹き飛ばした。そして、そのまま追撃とばかりに自身の尾の方を噛むと車輪のように転がって来た。
「ギシャアアアアア!!」
「まず――――――――――グフッ.......ガハッ」」
「大輝!」
大輝は大ムカデの魔物の攻撃を避けるのが間に合わず、跳ね飛ばされる。そして、空中をすごい勢い飛んでいったかと思うと繭を突き抜け、木をへし折りながら叩きつけられた。
大輝は強制的に肺の空気が出されたと同時に内臓が気づ付けられたのか、思わず血反吐を吐いた。そんな大輝に香蓮は悲しい声を上げる。
「お前ら、大輝は大丈夫だ!目の前にいる敵に集中しろ!!」
「「「「!!!」」」」」
俊哉が怒号のような声を上げた。その声に俊哉以外の全員はハッと目を覚ます。
俊哉は眉間を狭め、歯を食いしばって睨んでいた。怒っていたのだ、大輝がやられたことに。もともとそういうことは起こり得ると覚悟は作ってきた。だが、それで感情も左右されないということはない。だから、大輝は復活すると信じていてもやられた怒りは覚える。だが......
香蓮は思わず苦い顔をする。覚悟が足りなかった。なんだかんだで大輝がいればきっと大丈夫、そう思ってた。傷つくことなど考えていなかった。魔法や剣があって、どこか幻想的に捉えていた。そうだ、ここは現実だ。襲ってきた相手が生かすなどまずない。集中しろ、自分。なのに......
茉莉は俊哉の表情に驚いていた、そこまで大輝のために怒れることが。薄情と思われるだろうが、自分が俊哉の立場であってもきっとあそこまで怒れない。自分は人の心に疎い部分がある。だから、俊哉の感情を推し量ることができない。でも、自分が仲良くしている人が傷つくのは嫌だとわかる。けれど......
(((どうして体が動かない!)))
三人は心の奥底では恐怖が隠しきれていなかった。だが、そのことに本人たちは気づいていない。無理はない三人が過ごしてきた世界はこんなことはありえない。いくら慣れてきたとはいえ、それはあくまで低いレベルでのことで、急にレベルが高くなり、勇者である大輝が吹き飛ばされた今はそのばかりではなくなっているのだ。
そんな中、動き出した二人と一匹がいた。
「エミュ、レオ!私たちがこの世界の生き方を教えてあげましょう」
「うん、わかったよ!」
「ウォン!」
「それじゃ、行くわよ.......影縫い」
セレネの呼びかけにエミュとレオが反応するとまず動き出したセレネは大ムカデの魔物の影から影の針を作り出した。
その影を警戒した大ムカデの魔物は先ほど同様に丸くなるとセレネを引き飛ばそうと動き出した。
「力自慢があんただけだと思わないで......エミュ、お願い!」
「わかった!......ふんっ!」
「ギシャアアアアア」
エミュは大ムカデの魔物の攻撃の射線上に入る。そして、一発気合を入れるために拳を打ち鳴らすと両手を前に出して大ムカデの魔物の攻撃を抹消面から受け止めた。
「ふぬぬぬぬぬ........そりゃあああああ!!!」
「ギシャア!?」
エミュは足を思いっきり踏ん張ると数十メートル引きづられながらも、大ムカデの魔物の攻撃を完全に受け止めた。それに大ムカデの魔物は思わず驚きの声を上げる。
「ナイスよ、エミュ!レオ、かましてやりなさい!」
「ウォン!」
「ギャシャアアアアアアアァァァァ!」
セレネは影の針で大ムカデの魔物の関節を刺して、動きを拘束するとレオがその状態の大ムカデにとびかかった。そして、激しく動きながら大ムカデの魔物の足を噛みちぎったり、引き裂いた。
大ムカデの魔物は悲痛な声を上げた。
三人はその動きの一部始終を逃さず見ていた。思わず「すごい」という言葉が漏れる。その時、三人の後方から声が聞こえた。
「おい、俺がいねぇとダメなのか?」
「大輝.....!」
「月島君!」
「大輝、大丈夫なのか!?」
「おかげ様でな」
三人が咄嗟に振り返るとそこには大輝がいた。大輝は本当に平気そうな顔をしている。無事だと思った瞬間、三人から安堵の感情が溢れ出る。
「行けるか?」
「「「もちろん!」」」
「そんじゃあ、行くぞ!!......超加速!」
大輝はロケットのように飛び出していくと大ムカデの魔物に向かって行った。
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それではまた次回




