第40話 エルフの森のアスレチック#3
昨日は文章がおかしくなっていており申し訳ありませんでした。確認不足でした。
大輝は仲間が無事こちらの岸まで辿り着いたのを確認すると進み始めた。
そして、次に見えてきたアスレチックは......いや、あれをアスレチックと呼んでもいいのだろうか。大輝がそう思うのも無理ないほど、進路上に道の端から端まで塞ぐ巨大な壁が存在している。<精霊の瞳>で確認してもただの壁としか表示されない。見てわかるのは、その壁には蔦が壁前面を覆うほど伸び生えていることぐらいだ。
「これ、どう行くんだ?」
「まあ、考えられるとしたら某赤い帽子を被ったおじさんのように蔦を登っていくとか......じゃね?」
「......そう、だよな」
大輝は俊哉と意見を擦り合わせるととりあえず壁の直前まで近づいた。そして、その壁に張っている蔦を掴んで、強度を確かめる。うん、めっちゃ丈夫。ということはこれを登るのか。
大輝は嫌そうな顔をした。もっと楽したい。......しょうがない、適当に理由つけて楽するか。そう思うと大輝は仲間の方へ目を向ける。
「俺、先に行って上の方や向こう側がどうなっているか調べてくる」
「ちょっと待って、この壁の上の方は霧に覆われているのよ。下手したら、はぐれてしまうわよ。まだ、他に突破する方法があるんじゃない?」
香蓮の言う通り壁の上方は霧に覆われていてどのくらい高いのか、先に何がるのか目視では確認できない。だが......
「いや、それはなかった。これは精霊の瞳で確認して確実なことだ。......この壁を横から通ったら、それこそ霧に入ってはぐれるだろう?それに、俺たちはこの道をずっと真っ直ぐに来てここに辿り着いた。なら、ここは聖樹までの進路上ってことになる。であったら、上の方の霧はただの霧なんじゃないか?」
「だけど......」
香蓮はまだなんとなく腑に落ちていないようだ。どっちにしろなにがあるかわからない以上誰かが見て来るしかないんだが。
「う~ん、どうしたものか」と大輝が香蓮を説得するための言葉を探しているとエミュがスッと前に出てきて、大輝に目を合わせた。
「私は、大ちゃんを信じるよ」
「エミュ......。」
「まあ、大輝なら大丈夫だろ」
「でも......!」
「まあまあ、香蓮~。ここは信じてみようよ」
「そうね、伊達に勇者やってないだろうし」
「主様を信じるのじゃ」
「マスターを信じるの」
「............わかったわ」
みんなの説得によって香蓮は渋々納得した。だが、まだ言いたいことは多そうだ。これは......はあ、この討伐が終わったら愚痴ぐらい聞いてやるか。
大輝はそう思いながら<超加速>を使って、一気に壁を登っていく。その姿をエミュは優しい笑みを浮かべながら見送っていた。そんなエミュをなんとも言えない表情で香蓮はそっと見ていた。
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「やっぱり、心配?」
「ええ、そうね。でも、きっとこれで良かったのよ。......止めても、止まらないしね」
その割にはやはり香蓮の顔は晴れない。どうすれば良かったのか、なんて言葉を送ればいいかわからなかった。本当はエミュみたいに言えたら良かった。言いたかった。でも、それよりも早く心配する気持ちが漏れてしまった。
エミュは香蓮の浮かない顔を見るとそっと言葉を告げる。
「『信じてあげて』......なんて言葉は言わないよ。香蓮ちゃんは心配する気持ちと同じくらい信じている気持ちもあるだろうから」
「......え?」
「でも、その気持ちに気づいてないだけ」
「......少しわかるわ」
「だから―――――――――」
エミュは香蓮に微笑みながら、目をしっかりと合わせる。香蓮は思わずその目に釘付けになる。
「言いたいことははっきり言わないと後悔しちゃうよ?」
「.......」
「私みたいに......は無理でも、香蓮ちゃんなりに言葉で気づかせないと」
「......それでも気づかなかったら?」
「諦めるの?」
その言葉は香蓮の心に深く刺さった。なぜかはわからない。でも、嫌だということはわかる。
「そうね、諦めないわ」
「そう来なくちゃ......ね」
「ん?エミュ、どうしたの?」
香蓮はエミュが最後の「ね」が他の誰かに言っているように思えた。......いや、それはさすがに考え過ぎか。そう思うと香蓮は再び壁の情報を見た。
セレネは焦っていた。興味ないふりして聞き耳を立てていたのがエミュにバレていたのか?一体、いつから!?
「はあ......どうすんのよ、あの勇者」
セレネは小さく呟く。香蓮のことといい、エミュのことといい。そして、再びため息を吐くと香蓮と同じく大輝の向かった方向を見て、平然を装った。
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大輝は霧に突入した。そこで<気配察知>を使うと下方に仲間たちの気配を感じる。どうやらただの霧らしい。そして、壁の上面に到着した。
「うわぁぁ、なんも見えねぇ」
大輝が嘆くのも無理はない。今いる場所は一寸先は闇ならぬ一寸先は霧なのだ。こんなの結界張らなくたって迷える自信がある。
大輝はそう思うと背中から剣を抜いた。<気配察知>で捉えたのは仲間たちだけの反応では無かったからだ。きっと他の人だったらここでやられていただろ。だが、俺には死角はない!
大輝は回転しながら後ろの敵に向かって聖剣を薙ぎ払った。すると蜂の魔物の胴体が二つに分かれる。そして、すぐに魔剣を床に刺すと魔剣を支点にして跳び上がる。
大輝の足元を狙おうとしたクワガタの魔物は攻撃を躱されると落ちてきた大輝に聖剣で頭を貫かれた。そして、次々に襲ってくる虫系の魔物を難なく倒していった。
「ギュオオオオォォォ!」
「......!ドリィ、俺のもとへ来い!」
霧の中から突如として3メートルもの大きさのカブトムシの魔物が現れた。形状からしてコーカサスか。
大輝は魔剣に命令して、手元まで引き寄せると剣を交差するようにして防御態勢に入った。そして、カブトムシの魔物のタックルを防ぐ。
「.......くっ!」
大輝は思わずうめき声が漏れながらもなんとか踏ん張るとカブトムシの魔物を跳ね返した。そして、カブトムシの魔物の体勢がよろめいた隙を狙って攻撃を仕掛けようとするが、またしても突如として後方から大きな気配が向かってきた。
「ギシシシシシッ!」
大輝は後ろを振り返ると聖剣と魔剣をともに両サイドへと向け、今にも大輝を挟もうとしている鋏を間一髪で止めた。
大輝を襲っていたのはまたしてもクワガタの魔物だ。先ほどのクワガタの魔物がコクワガタだとしたらこちらはオオクワガタで、こちらも大きさが3メートルある。気を抜くと鋏に押し潰される。
「ギュオオオオォォォォ!」
「......!」
大輝がクワガタの魔物に対処して動けないのをいいことに、カブトムシの魔物は角を突き立てて突進してくる。
「なめんなああああぁぁぁぁ!......炎竜旋!」
大輝は雄叫びを上げると一瞬だけクワガタの魔物の鋏を押し返し、隙間を作ると腰を下げ、聖剣と魔剣をそれぞれ前後に構えた。そして、聖剣に風を滞留させ、魔剣に炎を纏わせるとそのままその場で勢いよく回転した。
風と炎は大輝が回転したことで次第に混ざり合い、身を焦がすような火災旋風を発生させた。
「ギュオオオオォォォォ!!」
「ギシ――――――――!」
カブトムシの魔物とクワガタの魔物はその大きな体躯を持ち上げられると猛烈に燃え上がる炎によって身を焼かれ始めた。その痛みでカブトムシの魔物とクワガタの魔物は悲痛な声を上げ......
「「ドサッ」」
全身を黒くして床に落ちた。なかなかに強敵であったが、まだ余力はある。
そうして、大輝が歩き出そうとするとなぜかつんのめりそうになった。「なんだ?」と思ってみて見ると蜘蛛の糸のようなものが足にくっついており、それが床へと続いていた。どうやら何かが自分の足と床を糸で繋げたらしい。一体いつの間に――――――
「主様右じゃ!」
「......!」
フラウの警告を聞いた大輝はすぐさま右を向いた。すると赤ん坊ぐらいの大きさの蜘蛛の魔物がこちらに向かって突っ込んでくる。
「土壁!」
大輝は自身の目の前に咄嗟に土の壁を作り、その場から距離を取った。
「マスター、今度は左なの!」
「マジかよ、なんで探知できない!」
大輝は苦い顔をしながらも数体の蜘蛛の魔物を蹴散らしていく。良かった、先ほどの魔物たちに比べれば膂力は大したことはない。だが、大輝がそう思っていたその瞬間、強烈に後方へ引っ張られた。
大輝は思わず体勢を崩し、そのまま引っ張られる。
「こんにゃろおお!」
大輝は無理やり体を反対側へと持て来ると蜘蛛の糸を炎を纏わせた聖剣で焼き切ることに成功した。そして、すぐさま態勢を立て直す。すると目の前には自分と同じぐらいの大きさの蜘蛛の魔物が。それじゃあ、さっきの蜘蛛は子蜘蛛だったてことか。
「一気に終わらせる......風乱舞」
大輝は蜘蛛の魔物に向かって走り出すと全身に風を纏わせた。そこから蜘蛛の魔物に斬撃を放つ。蜘蛛の魔物はそれを簡単に避けるが、大輝の姿を見失った。
「遅いな......こっちだ」
「ギシャアアアアアァァァァ!」
突如として背後に現れた大輝に蜘蛛はその姿を捉え、恐怖に叫ぶことしかできなかった。
大輝は蜘蛛をクロスにぶった切る。そして、蜘蛛の魔物の体液が付いた聖剣と魔剣を軽く振るって、その体液を拭うと背中にある鞘にしまった。それから、スッと一番最初に向かってきた子蜘蛛の魔物に目を向ける。
「まだやるか?」
「キシャア」
その子蜘蛛の魔物は戦闘意思を見せていなかった。戦は無いものをわざわざ追ってまで切る趣味はない。子蜘蛛の魔物の反応も「やらない」と言っているように聞こえた。
それから子蜘蛛の魔物は大輝たちの進行方向に向かって逃げるように走り出した。それを見て、大輝はやっと安堵の息を吐いた。
「それにしても、ちょっとズルする為に言った言葉なのにな.......」
大輝は過去の自分の言葉を振り返ると少し後悔した。本当は蔦を登るという作業を端折りたかっただけなのだが、どうしてこうなったのか。まあ、香蓮に言った言葉は別に嘘ではない。どうせ上に上るんだからそれぐらいはやるつもりだったから。
「でもやっぱ、疲れた......」
大輝はそう言いながら、<気配察知>と目視で注意深く周囲を探った。だが、もう近くに反応はない。そして、いないことを確認すると魔物の死骸を片付けた。それから、大輝は風魔法で落下速度を調節しながら、反対側の壁の下へ降りた。
そこでも反応が無いことを確認すると壁に向かって叫んだ。
「こっちは大丈夫だ。普通に向かって来てくれ」
「OK......やけに時間かかっていたから、南が心配してたぞ」
「鷹岡君、別にそれは言わなくてもいいでしょ!?」
「心配かけて悪かった。なにがあるかわかんなかったから、慎重に調べてたんだ。霧はかなり濃いから気を付けてくれ」
大輝は戦闘があったことを伏せた。香蓮は昔からなにかと心配症だ。だから、こんな感じになるかもしれないと思っていた。正直、もう少し俺のことを信用してくれてもいいと思う。
しばらくして、仲間が全員揃うと次なるアスレチックへと向かった。
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それではまた次回




