第38話 エルフの森のアスレチック#1
第27話だけアクセス数が異常でした(笑)
やっぱ、ヒロインの心の内が人気なんでしょうかね。これからはそちらも意識して書いていきます。
大輝と俊哉は森の入り口へと向かうとすでにいた香蓮達と合流した。そして、互いの持ち物を確認しあうと歩き始める。
「ねぇ、大輝、場所は分かってるの?」
「わからん、だが、それを聞きに行くんだろう?」
香蓮が大輝にそういうのも無理はない。実は、村長から『災悪』の居場所などは言われてない。聞いても「わからない」と答えられただけだ。ただ、「森の管理者に聞いてくれ」と言われた。この意味を理解したのは大輝だけで、今は大輝の後ろをついて歩いている状態なのだ。だが、大輝は香蓮の質問に「わからん」と答えた。これは一体どういうことなのか。
大輝は先ほどから何かを探すようにキョロキョロしている。そして、大輝の右目は妖しく赤く輝いている。
「......見つけた。」
「おい大輝、これただのバカでかい木だぞ?」
「ああ、そうだな。.......今はな」
そう言った大輝は空間宝物庫から酒瓶を取り出した。これは最初に会った女性エルフからもらったものだ。そして、おもむろに栓を抜くとその木の根元に注ぎ始めた。酒を注ぐ大輝にエミュはヒョイっと近づくと大輝にその酒瓶について尋ねた。
「大ちゃん、その酒瓶のラベルにはなんて書いてあったの?」
「ああ、これか?これは『トレントの雫』っていうので、俺たちのような人族が飲むもんじゃないんだ。そうだな......例えるなら、神様にお供えする酒、みたいな?」
「なるほどー。」
エミュは「物知りだね。」というとそのまま大輝の隣でそれが終わるまで見ていた。エミュはどうやら大輝が精霊の瞳という便利スキルがあることを忘れているようだ。まあ、しかたない。あの村にいた時はクエストに出る前に事前に調べていて、あまり使っているところは見せていなかった。
香蓮はそんな大輝とエミュが楽しそうに話している光景をただジッとしかし、どこか寂しそうな表情をしてみていた。
大輝が注ぎ終わると先ほどまで静寂に包まれていた森が少しずつ音を大きくして騒ぎ出した。大輝はその場から数歩下がるとその木を見上げた。エミュ達も釣られるように同じ行動をした。
「儂を起こしたのはお主か?」
「「「「「「木がしゃべった!?」」」」」」
大輝を除く転移組、二本の剣そしてエミュは突然幹にジャック・オ・ランタンのような顔が現れた木がしゃべりだしたことに驚いた。......エミュさん、エミュさん、お前さんはこういう奴にすでに知っているよな?
大輝は香蓮達を横目に見ながら話を進める。
「キングトレントさん、あなたがこの森の管理者でいいんですね?」
「ファッファッファッ、そうじゃ。正確に言うなら『あなた』ではなく『あなた達』だがな。」
ハスキーボイスのご老人ならぬご老木は軽快に笑うと大輝の言葉を肯定した。
「ということはお主が勇者であるな?」
「はい、そうです。村長から『災悪』の居場所を聞くならあなたにと。」
「ふむ、そういうことか。なら、少々待たれよ。」
そう言うとキングトレントは静かに目を閉じ、そして僅かに葉を揺らした。するとその葉は見惚れるぐらい幻想的な光を一度だけ光らせると再び静かに目を開けた。
「たった今、仲間たちにお主の存在を知らせた。詳しいことは、この先をまっすぐ行ったところにいる儂の仲間に尋ねてくれ。」
「わかりました。協力、感謝します。」
大輝たちはキングトレントに一礼するとそれからキングトレントが枝で指した方向に進んだ。
歩いていると大輝は<気配察知>でなにかが近づいていることを感じ取って、他の一同を制止させた。
「キャン!」
「......子犬?」
大輝たちに現れたのは一匹の白くて小さい犬だった。その犬は何かを訴えるように吠える。
大輝はすぐに<精霊の瞳>を使って調べると『聖獣 勇者と共に歩むもの』と表示された。この一文に大輝は思わず興奮した。
「この子犬、どうやら聖獣みたいだ。」
「聖獣!?マジかよ!?」
「大輝、聖獣って?」
「勇者に並び立つものだ。」
大輝はそう言うと聖獣に近づき、手をそっと差し出して.......カプッ。
「いってぇ!」
「あ、噛まれた。」
大輝は咄嗟に手を引いた。なかなかにマジ噛みされた。そんな大輝に仲間たちは笑いが堪えきれない様子だ。大輝は恥ずかしさと悲しさで仲間たちに顔向けできない。すると「しっかり目線を合わせなきゃ、怖がっちゃうよ~」と茉莉が近づいてくる。聖獣のもふもふ毛並みが動物好きの茉莉の心をくすぐったのだろう。そして、茉莉が聖獣に目線を合わせそっと手を差し出すと聖獣の方から近づいて来て、茉莉の手にスリスリと顔を擦りつけた。
「きゃあああぁぁぁ!かわいい~~~~!」
茉莉は思わずガシッと聖獣に抱きつくが聖獣は嫌な顔を一つせず、むしろ喜んでいるように見えた。大輝はそんな聖獣に妙な裏切られ感を感じた。
大輝は少しして気を取り直すとある疑問を聖獣に尋ねた。
「聖獣、お前、俺たちについていきたいのか?」
「キャン!」
「だが、そのサイズだと―――――――」
大輝がそう言い切る前に聖獣は大輝の言葉の先を察したのか、茉莉のところから離れ開けた場所に出るとプルプルと震えだし、毛並みを逆立たせた。そして、同時に眩い光に包まれる。
「ウォン!」
「―――――――大丈夫そうだな。うん、大丈夫、大丈夫。」
光が消えた時には聖獣は子犬の大きさから1.8メートルぐらいの大きさになった。大輝はその変化に呆然としながら言葉を続けた。
「わ~~~、今度はカッコいい~~~~~!」
茉莉は立ち上がると再び聖獣(大)に抱きついた。もう茉莉の相棒でいい気がする。茉莉はその聖獣に『レオ』と名付けると小さくなったレオを抱きかかえる。大輝は「俺、ほんとに勇者なのか?」そう思いながら再び進み始める。
進んでしばらく、大輝たちは切り立った断崖にたどり着いた。もちろん、道などあろうはずもない。遠くに見えるのはもはや世界樹といっても過言ではない聖樹だけだ。崖の下を覗いてみるが、濃い霧が立ち込め白一色で何も見えない。
「来たか、勇者よ。」
「「「「「わっ!!」」」」」
突然横の木から先ほどの同じ声がかけられた。大輝たちは思わず驚き、大輝は崖から落ちそうになったが、なんとか踏ん張り間一髪助かった。あぶねー、何もせず死ぬかと思った。それに対し、キングトレントは笑いながら謝った。「全然笑い事じゃないからな」と大輝は思わず睨んでしまう。
「今からお主たちにはこの先を進んでもらう。だが、注意事項が一つある。必ず決められた道を通るのだ。」
「この先って......そもそも道がないんですが。まさか、飛び込めと?」
「それについては後で説明する。霧についてだが、この霧は迷いの霧と言ってな。先代のエルフが作った結界で、一度入ってしまえばまずもと場所へ戻ることはない。」
大輝は「なんか話を無理やり変えなかったか?」と思いながらも、キングトレントにその霧の存在について尋ねた。
「なんで、先代のエルフはこんな結界を?」
「それはな、筋トレブームがあったからだ。」
「..............は?」
大輝は何言ってるのかわからず、思わず疑問の声が漏れた。.......いや、言っていることは分かる。まさかこんな所で「筋トレブーム」なんて言葉を聞くとは思わなかったが。あれか?門番が妙に筋肉質だったのはそれに関係があるのか?
キングトレントは大輝の反応を気にせず、話し始めた。そして、要約するとこうであった。今から700年ぐらい前のこと、あるエルフが旅に出た。そのエルフは、人一倍ひょろっこくて、魔力も少なかったし、それが理由でイジメられていた。だが、ある日そのエルフが戻ってきたのだ。筋肉を隆々にして。そして、魔法など一切使わず、自慢の筋肉でかつてイジメたエルフを返り討ちにした。
エルフはもとより体が弱い種族なので、森の外へ出たというのも驚きなのに、さらにその肉体で魔法で補助魔法を使ったときよりも早く動いた。そのことが、エルフたちのなにかに火をつけた。それが、筋肉ブームの始まり。
「――――――そして、この先、お主たちが進んでもらうのはそのエルフたちが作った建造物のいくつか......いわば、アスレチックだの。」
「「「「「........。」」」」」
「それじゃ、そろそろ行くかの。」
「「「「「いやいやいや」」」」」
大輝たちの声は見事に揃った。この先にアスレチックがあることは分かった。だが、だからなんだ!?確かに、いじめられっ子がいじめっ子に勝つとか悪くない話だともうよ!?なにも関係性が見えないけど!?
するとキングトレントは大輝たちの反応を察すると言葉を付け足した。
「ああ、そういえば、この道は聖樹までの最短ルートとなっている。」
「「「「「それを先に言ってください!!」」」」」
大輝たちはまたまた声を揃えた。だが、こう言われてしまえば行くしかない。なんだか、せっかく決めてきた覚悟にやるせない気持ちを抱きながらも頑張って気持ちを切り替える。全員の落ち着きを確認すると大輝はキングトレントに向かって言った。
「準備できました。」
「そうか、それでは行くぞ。」
そう言うとキングトレントの顔の上から紐のようなものが落ちてきた。そして、キングトレントはその紐に枝を絡める。大輝は、それを見て嫌な予感しかしなかった。
「ちょ、待っ―――――――」
「ほーら、行ってこーい........ガタンッ。」
「「「「「......え?......ぎゃあああああああ!」」」」」
キングトレントが紐を引いた途端、大輝たちの足元が突如として消えた。大輝たちは一瞬放心状態になると段々と何が起こっているのかを理解して叫んだ。だが、時すでに遅し。大輝たちはそのまま穴の奥へ落ちていった。
キングトレントは大爆笑しながらそれを見送った。
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それではまた次回




