第37話 エルフの国
エルフっていいですよね(笑)
「お、あれがフォレステインか。」
「そうみたいね。......大きな木ね、あれが聖樹かしら。」
大輝と香蓮が目にしている先にはそれはそれはこの世の木を全てかき集めてようやく張り合うような大きさの木が、遠くに見えていた。間違いなく、あれが聖樹だろう。
馬車を走らせることしばらくして木造でできた強固な砦が見えてきた。そして、門番に先ほど見た二人のエルフとは違い、屈強なエルフが二人。......あれ?エルフってこんな筋肉質だっけ?
「止まれよ、冒険者たち何か身分を証明するものはあるか?」
「ほい、これ。」
「......これは!?勇者様達であられたか!ならば、すぐこちらへ。」
大輝たちは再びせかされ歩かされる。この反応はおそらくあの二人が手紙に伝えた内容じゃないだろうか。となるとこの場合向かう先は村長の家か?大輝がそう思っているとやはり予想は正しかったらしく、連れてこられた場所は村長の家であった。
門番はノックして声をかける。
「コンコンコン......我らは森の民であり。」
「我らは森の守護者である。」
「我らは自然を愛し。」
「決して変わらぬ畏敬の念を捧ぐ......よし、入れ。」
「はっ。」
今のは合言葉であろうか。正直、すげーカッコよかったし、すげーやってみたい。まあ、その倍ぐらい馬鹿にされるからやらないけど。
門番は扉を開けると大輝たちのことを紹介した。
「村長、勇者様達をお連れしました。」
「ごくろう、お前は任務に戻ってくれ。」
「はっ。」
門番が出ていくのを確認すると村長は大輝たちをソファに座らせた。そして、一回咳払いをすると話し始めた。
「まずは、ここまで来てくれて感謝する。」
「面を上げてください。これが勇者としての仕事ですから。」
「そうか、それは助かる。」
村長は頭を上げると優しい笑みを浮かべた。村長という割には随分と優しい顔つきで、それでいて威厳のある雰囲気を醸し出している。正しく、リーダータイプだ。
「勇者様たちのことは息子の手紙で知った。聖霊国に何人か派遣していたはずなんだがな......だめだ、300年前のことは思い出せない。もう歳かな......。」
そう言って村長は頭をかく。意外に抜けてるところもあるみたい......って、え?300年前?ってことは村長は少なくとも300歳以上ということになる。大輝はエミュといいエルフと時間感覚の差に相変わらず驚きが隠せない。そして、息子は最初にあった男性エルフのことだろう。あの人もきっと100歳は超えているだろうな。俺たちと同じぐらいの見た目なのに。
大輝は「これを考えるのはこれぐらいにして」と気持ちを切り替えると村長に質問した。
「そういえば、手紙を送ってくれた息子さんは何を慌てていたんですか?」
「ああ、それか。実は、我々で討伐部隊を編成していたんだ。だが、古より『災悪』は勇者にしか倒せない。そう言い伝えられるほど強大な相手なのだ。だが、およそ200年前にその言い伝えを破って勇者よりも先に倒そうという声が上がったのだ。」
「実は私もその一人でな。」と笑いながら村長は言ったが、すぐに真面目な顔に戻る。心なしか声色も低く聞こえる。
「だが、それがいかに浅はかな考えだったか思い知らされた。いざ『災悪』を目の前にすると恐怖で動けなくなり、攻撃しても傷一つつかず、まるで塵かなにかのように同胞たちは殺されていった。そして、幸い私は殺される前に勇者様に助けられたがな。」
「.......。」
「そんなのどうやって倒したんだ、そん時の勇者。」ととても言いたくなったが、ここはグッと堪える。それなら、なぜ今回部隊を編成しようと思ったんだろう。
大輝は今度それについて尋ねてみた。
「村長はなぜ今回部隊を?」
「ああ、それは息子の早とちりでな。別の目的のためだ。」
「別の目的?」
「......襲われた人たちの保護と聖樹の守り神の安否だ。」
そうして村長が説明しだしたのはこうだ。まず、襲われた人たちの保護。これはこのままの意味で説明をすることはない。次に、聖樹の守り神のことだ。このフォレステインには古くから聖樹に巣くう守り神がいるらしい。「らしい」というのはその守り神の姿をエルフの誰一人見ていないからだ。なので、この守り神の存在を信じていないエルフたちもいるが、フォレステインに入って危険な目にあったとき、いつも何かが陰から助けてくれるらしい。だから、信じている人たちは精霊様が助けてくれていると思っているとのこと。それで、精霊様に最も近しい種であるエルフなら聖霊様にコンタクトが取れるのではないかと思い、部隊を編成したという。
これを聞いた大輝は俊哉に目配せした。俊哉はそのわけに気づくとふと何もない空を見つめる。そして、何かにうなづくと大輝に向かって頭を横に振った。大輝はこの反応でおおよそのことが分かった。
「なら、その精霊様の安否の確かめ、任せてくれませんか?」
「いいのかい?......確かに、精霊様とコンタクトを取るにはフォレステインに入らなければいけないが。」
「もとより、俺たちの向かう先はフォレステインの奥にあります。それぐらい、ついでに確認してきますよ。」
「それはありがたい!」
村長は大輝の手をガシッと握った。なんだかそれがこの国の全てを任された気がして、握られた右手がどこか重く感じた。
「それで、襲われた人たちから何か情報を聞いていませんか?」
「ああ、聞いてるよ。」
「なんでもいいので教えてくださいませんか?」
「そうだね......確か、全体的に黒いフォルムをしていたって言っていたな。」
「黒いフォルム.....他には?」
「他には......そうだ、とんでもなく素早いって言っていたな。それから光沢もあったりなかったり。」
大輝はその時あのカサカサと素早く動き、黒い光沢を放つ一匹の生物のことが思いついた。もちろん、思い出したときもちゃんと気分が悪くならないようにモザイクが入っている。だが、思い当たるのが一匹しかしない.....あのGしか。しかし、ここで大輝はその考えを払拭するように頭を振った。そうだ、ここは異世界だ。なにもあいつが異世界にまで存在ているとは限らない。俺たちはまだこの世界に関してはほとんど無知だ。
ここで、大輝はふと仲間の反応を見た。自分と同じ反応をしている奴が一人いた......マイベストフレンド俊哉だ。俊哉は「まさかな」といった笑みを見せるが、明らかに強張っている。.....安心しろ、俺も同じ思いだ。
「私が思い出せることはここまでみたいだ。あまり役に立てなくて済まない。」
「いえ、貴重な情報ありがとうございました。精霊様の件に関してはお任せください。」
大輝たちは村長宅から出た。そして、女性陣に買い物を頼んで、大輝と俊哉の男性陣は他の買い物に行った。
「なあ、お前が『精霊の件任せろ』って言ったのって。」
「わかるだろ?なら、わざわざいうこともないだろ。」
「ま、そうだな。......それで、俺は今どこに向かってんだ?もしかして――――――――」
「ばーか。んなわけねぇだろ。それは終わってからだ。」
「行ければいいけどな。」
「まあ、無理だろうな。」
大輝と俊哉はそんな他愛もない会話をすると楽しそうに笑った。
「んで、ほんとにどこ行くんだ?」
「ん?お前、分かってなかったのか?......魔法ショップだよ、魔法ショップ」
そして辺りをキョロキョロしながら目的の店を見つけるとその店にある品に目を通した。主に買うものは回復ポーション、魔法ポーション、匂い袋。
「......匂い袋?」
俊哉は思わず疑問を口に出した。これが何に必要だというのか。
「ああ、これは言わば虫よけだ。」
「虫よけ......なるほど、確かに向かう先は森だもんな。俺たちが想像したアレも虫だし。虫系の魔物はいそうだよな。」
「さすが、話が早くて助かる。まあ、互いに異世界系の話すきだったもんな。」
「それはエロ本の話だろ。」
大輝は大きく笑った。まるで緊張感がないように見えるが、俊哉には大輝が無理しているのがわかった。しかたない、勇者なのだから。そうそう覚悟が決まる方がおかしいのだ。だから、大輝は今も二つのポーションを買えるだけ買っている。誰も傷ついてほしくない.......死んでほしくない。そんな時、突然左肩を叩かれた。その左肩を見ていると大輝の右手が。
「なーに、ビビってんだよ。」
「お前もじゃねぇか。」
俊哉が言うように殴ってきた大輝の右手は小刻みに震えていた。本人は「武者震いだ」と言うが、そんなこと確かめなくてもわかる。怖い......なにがどうなるかわからない恐怖。だが、そんな弱った姿は女性陣には見せられない......だって、漢だから。俺たちはこの場では『男』ではなく『漢』でなければならない。勇者である大輝なら尚更に。だから、その最後のケジメをつけるために男二人になりたかったんだろ。
「......俊哉、生きるぞ。」
「宣言することでもないんじゃねぇの?.....当たり前のことだから。」
「......確かに、そうだな。」
「........。」
「........。」
「「........勝つぞ。」」
二人は互いの拳を軽く突き合せた。これが初陣、なにがあるのか、なにが起こるのか、なにがひつようなのか、敵はなんなのか、ゲームのような攻略本もなければ事前にクリアした人もいない全くの初見。だけど、全てが現実で、全てが自分のライフへと繋がっている。覚悟は......決まった。
「行くぞ。」
「行くか。」
漢二人、大輝と俊哉は森の入り口へと歩き始めた。
評価、コメント、ブックマークどしどし募集中です。
それではまた次回




