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第36話 出立

ついに初仕事です。

「皆さん、お集まりいただきありがとうございます。先ほどアイリス様の神託が下りました。」


 現在、大輝たちは大聖堂に会している。そして、祭壇にいるミリアが神妙な面持ちでいるため、初めての討伐任務ということもあり転移組の四人は緊張を浮かべている。

 それからミリアは言葉を続けた。


「場所は聖霊国アイリスから北東に位置する大森林フォレステイン.....つまりはエルフの国です。そこにある聖樹の近くに『災悪』が現れたとのことです。被害はまだ少なく、未だ目立った行動はありませんが早急な討伐をお願いします。」


「わかった。任せてくれ。」


 頭を下げるミリアに大輝はそっと声をかけると大聖堂を出た。そして、馬車に乗り、馬を動かしていく。


「「「「「おおおおおおおおお!!」」」」」


「「「「「「.......!」」」」」


 大通りを出ると多くの人達が通りの端で「がんばってー!」とか「どうか私たちを助けください!」など老若男女とわず声がかけられる。それに大輝たち全員が驚き、そして大輝は「馬の運転の仕方知っといて良かった」と安堵した。.......それにしても、いつの間にこんなパレードのような出立を企画していたのか。言ってくれれば心構えぐらいはしたのだが。そう大輝は思いつつも粋な計らいに感謝し馬車を走らせた。


 しばらくして開けた場所に出た。随分と遠くまで見渡せて、風も心地よい。しかし、未だ緊張が抜けなかった。覚悟を決めたはずなのだが、どうにも気分が優れない。......はあ、ちょっと動いてこの気分を払拭したい。


 そんな時、前方から複数の気配を探知した。四つの気配がその倍ぐらいの数の気配に追われている。「ちょっと飛ばすぞ。」と仲間に告げると馬車を走らせた。


**********************************************

 大輝は前方から噛みつこうとしてきたオオカミに魔剣の刃で噛みつかせるとそのまま聖剣で切り裂く。そこから、後ろに振り返ると同時に魔剣の柄の頭で後方から襲ってきたオオカミを殴り飛ばす。


炎裂刃(ファイアソリッド)


 そして、聖剣を薙ぎ払い炎の斬撃を飛ばして焼き切り殺した。すると後方から声がかけられる。


「大輝そのまま動くな......全力衝突(タンクボム)


 声の主は俊哉でもはや、否、ほとんど捨て身タックルのような感じでオオカミにぶつかった。オオカミから変な音がし、そのままひしゃげて吹き飛ばされた。


雷刃(ボルトエッジ)


 大輝のすこし離れたところでは香蓮、セレネ、エミュが戦っていた。


 香蓮は日本刀のような刀を持つと上段に構え、こちらに向かって来るオオカミに雷属性を付与した刀でX字に切り裂いた。香蓮は問題なく対処できたことに安堵すると突如として香蓮の影が伸び二つの腕が出来た。


影の手腕(ゲンガーハンズ)


 その二つの影の手腕は香蓮の影からさらに伸びると周囲にいた2体のオオカミを捕まえてそのまま合掌。2体のオオカミをぺちゃんこにした。香蓮はこの光景を見て引き気味だ。


「あ、相変わらずえげつないわね。」


「そうかしら?あの子に比べたらまだマシだと思うけど。」


 そう言うとセレネは右手に立てた親指を自分の後方へと向けた。香蓮はなにごとかと目線をそちらに向けると――――――――


「そりゃあああ!」


「キャインッ!」


「そ――――――れ!」


「ギャイン!」


「キャウン!」


 エミュはあいさつ代わりの一発を1体のオオカミの顔面に当て爆散させると即座に移動してもう1体のオオカミの後ろへ着くとそのオオカミの尻尾を掴み投げ飛ばした。ビュンという風切り音のような音を立てながらさらにもう1体のオオカミに突っ込み、そのオオカミごとさらに吹き飛んで地面に着いた時には倒れて動かなくなっていた。


 するとエミュはこちらの視線に気づき、元気いっぱいの笑顔でピースサインをする。それを見て香蓮は思わず口を覆う。それはエミュの顔に返り血がついているからだ。それがどうにもサイコパスにしか見えなくて、殺〇の天使とはきっとこういう子のことを言うんだろうと香蓮は思った。そして一刻も早く血を拭いてあげなければとも思った。


「皆おつかれ~、それじゃあ一応魔力回復させておくね......魔力譲渡(マナトランスファー)


 茉莉が魔法を発動させると大輝たちの頭上に魔法陣が描かれ、そしてまるで全身をスキャンするように足元まで下がっていった。すると、些細だが疲れが取れたような気がした。


「ごめんね~、役に立てなくって。」


「問題ないわよ。茉莉がいてくれるから私たちは戦えるわけだし。」


「ありがと~。」


 香蓮のフォローに茉莉は嬉しそうな顔をした。これは前から茉莉が気にしていたことだ。茉莉は回復・支援系の魔術師、つまりは戦えない魔術師なのだ。なので自分一人では何もできないし、代わりに戦って助けてもらうことに本人は罪悪感を感じているのだろう。だからこそ、言葉にして気にしてないことを言われたのが嬉しかったのかもしれない。


「助けていただきありがとうございます。」


 声をかけてきたのは二人の若い男女であった。二人は感謝の気持ちとばかり丁寧にお辞儀した。


「私たちは商人でして我が家に向かう最中にオオカミの群れに襲われてしまい。それも普段は見ないオオカミでして.....。」


「そうですか。」


 大輝は返答しているが、全然耳に入っていなかった。......え、今「我が家」って言わなかったか?言ったよな?いや、まあ男女二人で商人の仕事をしている時点でそうなんだけど、だけど俺と同い年ぐらいの()がもう妻帯者に!?くっそ羨ましいぃ!


 大輝の妬みはすごかった。するとバンッと頭を強く叩かれた。何事か!?


「ちゃんと話を聞きなさい。」


「あ、はいすいません。」


「いえ、大丈夫ですよ。普段、いないオオカミがいるって話について思うところがあったんだと思いますから。」


 目の前の男性はなんとも絶妙な勘違いをしてくれた。しかし、その言葉が大輝の良心を深く抉り、先ほどの失礼な考えをとても謝りたくなった。なら、この人たちの手助けをしよう。そう気持ちを切り替えると大輝はその商人に提案した。


「提案が一つあるんですが、もし良かったら家に着くまで護衛しましょうか?」


「え!?い、いや悪いですよ。」


「ですが、またオオカミや他の魔物に襲われる可能性もありますよね?」


「......本当によろしいのですか?あなた方は見たところ冒険者で、普通冒険者なら聖霊国アイリスに向かうはずですから。私たちはその真反対の方向ですよ?」


「それなら好都合ですね、俺たちも丁度そっちに行く用事があるんですよ。」


「そう......なんですか。それならお願いします。」


 そう言うとまた深々と二人は頭を下げる。一方、大輝は罪悪感が晴れたような気がしていた。そうして、大輝たちは二人の護衛をし、エルフの国に向かっていった。


「え、二人はエルフなんですか!?」


「はいそうですよ。」


 二人のエルフはそのことを証明すように髪をかき上げ耳を見せた。すると、その耳はエルフの特徴とも言うべき尖った耳をしていた。これに大輝は思わず感嘆な声を上げる。初めての生エルフ!生女性エルフ!!大輝のテンションはうなぎ登りだ。


 現在、大輝たちは商人エルフの家へと招かれている。本来なら、家まで送ってさよならだったのだが、「義理をちゃんと返すのが商人だ」と強い意気込みに押し切られ、結局その家でお茶をして小話までしている。


 エルフの男性はふと気になる質問をした。


「そういえば、どちらに向かわれているんですか?」


 それは単にエルフの国は冒険者からしてみればあまり魅力がないという点からだ。魔物はそこまで強くないし、珍しいものがあるわけでもなく、料理も肉を使った料理は全くと言っていいほどでない。強いて人気があるのは美男美女が多いところだろうか。こういった点で、メリットが少ない国にわざわざ来る人は少ない。あってもよっぽどの物好きか依頼があった時しかないだろう。


 大輝はこの質問にあっさり答えた。


「あ......俺、勇者なんで、フォレステインに現れた『災悪』を討伐しに行くんですよ。」


「「そうなんですか!?」」


 二人のエルフは驚いた顔をしながら揃って思わず立ち上がった。会ってからずっと無口で微笑んでいるだけのエルフの女性が声を出すほどの驚きだ。これには大輝たちもビクッとした。

 すると、食い気味にエルフの男性が質問してくる。


「それはいつの話ですか!?」


「え、えーと、かれこれ三か月と少し前かな?」


「ええ、それで合ってるわよ。」


「三か月前......くそ、しまった!聖霊国(あの国)には誰も商売に行っていない!.....しかたない、早く伝えなければ!」


 そうして二人は慌ただしく動き始めた。大輝たちはなにがなにやらさっぱりで呆然としながら見つめていた。


 エルフの男性はなにやら書いた手紙を持つと窓を開けて、口に指をあてるとそのままピーと吹いた。すると、鷹のような魔物が飛んできてその鷹の足に手紙を結び付けるとすぐに飛ばした。あれは、伝書鳩のようなものだろうか。


 エルフの女性は倉庫の方に行っていたのか少し埃まみれにながらも一本の酒瓶を持ってきた。


「私たちの国に行くときはこれを持っていってください。」


「はい......ありがとうございます。」


 大輝は流されるままに受け取ると二人はせかすように大輝たちを家の外へと追い出す。


「どうか私たちの国をお願いします。」


 そう言いながら大輝たちを見送った。それほどまでの危機があったりするのか。

 大輝たちは未だよくわかっていないままエルフの国へと馬車を走らせた。

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それではまた次回

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