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第34話 ミリアと勝負/幼女二人の能力

登場人物が増えると気持ちに触れる回が多くなりますね。

「主様、これを買ってなのじゃ。」


「おい、お前もまだ食うのか。ドリィと仲が悪いアピールする割には行動は全く一緒じゃねぇか。」


「アピールじゃないのじゃ!」


「アピールじゃないの!」


 謁見の後、大輝は城下町の中心街に来ている。先ほどの疲労が嘘のように今はいろんなものを買ったり、見たりして楽しんでいる......主にミリアが。一方、大輝はというとここに歩いてくる途中で幼女二人に見つかり、そして現在はその二人にあっちこっちへ連れ回されている。


 大輝は聖剣に思わずツッコミを入れながらも結局は買ってあげている。そんな姿にミリアは微笑んでいる。すると聖剣はムスッとした顔をした。「買ってやったのにその態度は」と思ったがそうではないらしい。そのことについてミリアが説明してくれた。


「呼びやすい名前をつけて欲しいのではないですか?」


「......名前?」


「ほらさっきこの子を『()()』って言ってたのに対して、ドリィちゃんは『ドリィ』って呼んでいたのではないですか。それに仲が良くとも―――――――――――」


「仲良くないのじゃ!」


「仲良くないの!」


「はいはい、それになにかと張り合うのではないですか。だとしたら、当然自分にも名前をつけて欲しい。......そういうことですね?」


「さすが、聖女じゃ。よくわかっておる。」


 「お前ら二人の扱い方もな」と聖剣の言葉に付け足しながらも大輝は確かにと納得した。そうであるならば、聖剣にも相応しく呼びやすい名前の方が良い。聖剣の名は確か「フラガラッハ」。そしてドリィ同様女の子だ......見た目は。フラガラッハ......フラガ......フラ...フラ...フラ.........フラン!


 大輝の頭に電流が流れるように名前が閃いた。これなら大丈夫だろ。


「いいかフラガラッハ、お前のこれからの名は『フラン』だ。よろしくなフラン。」


「......!主様、ありがとうなのじゃ!」


「あ――――――――――――!ドリィもなの!」


「おいおい、お前ら。」


 そういうとフランは大輝に抱きついた。ドリィはフランの突然の行動に叫びの声を上げながらも負けじと大輝に抱きついた。傍から見れば一見微笑ましい光景に見えるだろう。だが、大輝の心象はあまりよくない。なぜなら、もうすでに大輝が勇者であることは伝わっているのだ。公表してから一日も経っていないのに。なので、現在周りの視線が痛い。まるで昨日、仲間から投げつけられた視線のようだ。


「......ロリコン勇者」


「.......!」


 周りにいる誰かが言った。きっと小さい声で呟いただけなのだろう。だが、大輝イヤーはしっかりと捉えていた。ああ、なんかもう違う形でメンタルがやられそう。

 

「あ、安心してください!たとえロリコンでも頑張っていればちゃんと見てくれていますから!」


「.....ミリア、それあんまりフォローになってない。」


「.....!ご、ごめんなさい。言葉を間違えてしまいました。」


 ミリアはそのことにシュンとした顔をする。真面目ちゃん故の思ったことを言ってしまった感じか。大輝はミリアに「気にすんな、俺も気にしないことにするから」と言い、気を取り直すと再び歩き始める。


「なあ、どこか高い場所ないか?」


「高い場所.....ですか?」


「ああ、こんなきれいな風景だからな。上から見ればどうなるんだろうなって。」


「それなら、先ほどのお詫びも兼ねてとっておきの場所を案内しますね。」


 そうして大輝が案内されてたどり着いたのは時計塔の最上部。そこから見える景色は絶景だった。


「うぉ~~~~~!」


「「わ―――――――――――!」」


 白一色の建物でありながら、それが味気ないという印象は与えずにスッと心の中に美しさという言葉が溶け込んでくる。そして、目が奪われ離せなくなる。気持ちの良い風が吹く。冷たい風ではなく、肌に当たるとじんわりと優しい暖かさを与えてくれる。きっとこの風景が見られるのはここに来た人の特権だろう。


 大輝たちは思わず感嘆の声を上げ、大輝は少し身を乗り出し、フランとドリィは柵の隙間から覗いている。そんな大輝たちにミリアは嬉しそうな笑みを浮かべた。


「どうでしたか?」


「いいな、すげーいい!街が一望できるし、きれいだし。ここにはよく来てたのか?」


「そうですね、昔はお姉ちゃんと一緒に......。」


 ミリアは段々と声のトーンが尻すぼみになっていき、表情も暗いものになっていった。なにかいけないことに触れてしまったのか。するとミリアは慌てて気を取り直し、笑顔を見せた。だが、その笑顔はすぐに作り笑顔とわかるものだった。


「す、すいません。急に暗くなってしまって。」


「いや、気にしてねぇよ。それよりも俺も悪かったな。知らなかったとしても触れてほしくなかった感じだよな?」


「い、いえ、私がいつまでも引きづっているだけです。いつまで経っても踏ん切りがつかないだけです。」


「......。」


 大輝は何も言えなかった。何を言ったらいいのかもわからなかった。きっとどこぞのイケメンだったらカッコいい言葉の一つや二つを簡単に言えただろう。ただ......ただ、もっと笑えばいいと思う。


「きっとすごい姉だったんだろうな。」


「......はい、すごいお姉ちゃんでした。」


「ならさ......もう少し大きく笑えよ。視野が狭くなっちまうぜ?」


「......そんなに暗い顔してましたか?」


「暗い顔じゃない、笑顔が固いんだ。まだ、出会って間もないけどそれぐらい見ればわかる。」


「........。」


「真面目ちゃんには難しい話だったか?」


「......!そんなことありません!私だってできますよ。」


「なら勝負だ。それぐらい悩むんだからそうだな.......半年。半年の間にエミュぐらいの笑顔にならなかったら。一つ可能な限りの相手の言うことを聞く、これでどうだ?」


「わかりました!それぐらい余裕です!」


「それじゃあ、そういうことで。」


 大輝はミリアへの挑発が成功するとニシシと笑った。ミリアはすごい姉に近づきたくて頑張っている。なら、どんなに難しいことでもそれを試練の一つとして乗り越えようとするはずだ。それを逆手に取ったのが今のだ。このぐらいしないといつまでも経っても気にして考え込んでそうだからな。現にそうだし。


「それでは、今度は東の商業区を案内しますね。」


「おう、任せた。ほら、二人とも行くぞ。」


「「はーい。」」


 フランとドリィは大輝の言葉に元気に反応する。「仲良いじゃねえか」と思いながら大輝は案内されるままミリアについてった。


**********************************************

「おらああああ!」


「グギャアアアアア!」


 大輝は右手に持った聖剣を縦に振り下ろすとそこからさらに左手に持った魔剣を薙ぎ払った。ゴブリンは大輝の初撃によって盾を破壊されるとそこから胴体を一文字に切りつけられ叫び声を上げながら倒れ伏した。


「ギャアアアア!」


「バレバレなんだよ!」


 大輝は後ろを振り向くと聖剣でゴブリンの振り下ろした剣を防いだ。そして、ヤクザキックでそのゴブリンを吹き飛ばすと同時に魔剣を逆手に持つとそのままノールックで後ろから襲ってきたゴブリンに突き刺した。挟み撃ちのつもりだろうが、俺に<気配察知>がある限り死角はない。


「ふー、終わり。」


 大輝は大きく息を吐くと背中にある市販で買った鞘に魔剣、聖剣をそれぞれクロスするように戻した。そしてその場にへたり込む。


 これは大輝が最初の村にいた時、正確に言うならクリスさん達から修行をつけてもらった頃からだ。それでなんだかんだでクエストを受けるついでに現在まで続けている。いや、自分が勇者だとわかってからは尚更やらなければと義務感を感じた。


 大輝は右手を見ると握ったり開いたりを繰り返して、手が強張ってないのを確かめた。ゴブリンは人型の魔物である。きっとこの先同じような人型の魔物と戦う機会があるかもしれない。その際に人を切りつけることだからと躊躇していたらこっちがやられてしまう。それを防ぐために先に確かめたかったのだ......ちゃんと切れることを。結果は切れた。だが、「ゴブリンは魔物である」という漫画やラノベでつけた知識があったから切れた可能性も高い。......これは今後の課題だな。それはそうと......


「ドリィの能力は助かるな。戦略の幅やいざとなった時のごり押しにも便利だ。」


「!......マスターありがとうなの!」


「な!?主様、わらわ......わらわはどうなのじゃ!?」


 大輝がドリィを褒めるとドリィは剣の状態から反応した。言葉からもそうだが、声のトーンからも嬉しそうなことが伝わってくる。そして、当然の如く張り合ってくるフラウ。


 大輝がそう思うのもいくつか理由がある。まず魔剣(ドリィ)の能力は本来の名前からもそうだが「ドレイン」である。その能力の主な力は切った相手から魔力を奪うことだ。そしてその奪った魔力をストックして置くことができ、所持者の任意でその魔力を開放し魔力を所持者に与えるという能力だ。他の能力としては所持者が感じた負の感情を魔力に変換するというものだ。その際、その負の感情は少し軽減されるらしい。これはまだ経験がないのでわからないが。


 切った時に魔力がストックされるのは大輝が魔力を使い果たした時でもその魔力を使って攻撃できるので、いざという時の切り札になるし、負の感情を魔力に変えるというのも魅力的なものできっとこの先には自分より強い相手と戦わなければいけない時が来た時に心で負けることが少なくなるはずだ。

 そういった理由で大輝はドリィの能力を高く評価している。


「主様、主様!わらわはどうなのじゃ!?!?」


「フラウ、安心しろ。お前も俺の役に立ってるよ。」


「ふふっ、そうなのじゃな、そうなのじゃな!」


 大輝はフラウに優しく声をかけるとフラウも嬉しそうな声を出した。


 聖剣(フラウ)の能力は単純で能力増幅である。これはシンプルに強くなるやつだが、これには少し欠点があり、それは魔力を消費することである。本来なら魔力消費を考えながら一撃必殺の攻撃をするための魔力を残して置かなければならないのだが、その問題は魔剣(ドリィ)によって解消される。そう「ドレイン」の能力だ。これによって、場合によっては一撃必殺の攻撃を乱用できる可能性が浮上したのだ。


 他の能力としては神聖属性の付与だ。これは能力増幅よりもさらに増幅させてくれるが、これは魔力消費が能力増幅の比ではなく消費するので、これはたとえ魔剣(ドリィ)の能力があっても考えものである。だが、これはアンデット系や特に災悪に対して有効的だというのであった方がいいだろう。


 そういうわけでフラウの能力も大輝は勇者業に重要だと感じている。


 総合的に言えば両剣とも必要である。いや、両剣あるからこそ自分は強くいられ、さらに強くなれるのだろう。聖剣に魔剣とはなんともチートなアイテムを所持している勇者だとは思うがこれで人々を守れるのだったらあってもいいだろう。もちろん、それがなくてもある程度は戦えるぐらいには体を鍛えy解かなければ。いや、まずは双剣に慣れることからか。


 大輝が腕を組みながらそんなことを考えていると後ろが騒がしい。なんだというのか。


「ドリィの方が役に立ってるの!」


「いーや、わらわの方が役に立ってるのじゃ!」


「聖剣なんて能力増幅しかできない。ごり押し戦法しかできないの!」


「そういうお主こそ、魔力のストックしか取り柄がないのではないか!」


「なによー!」


「なんなのじゃー!」


「おい、落ち着けお前ら――――――――――――」


「主様......」


「マスター......」


「「どっちの方がいいの!?」」


 フラウとドリィは声を揃えて大輝に質問した。しかもなんとも答えにくいやつを。全くもって絶賛修羅場中である。俺って女難の相とかあるのか!?大輝はよく考えながらさらにこのいざこざが広がらないように答えた。


「ふ、ふたりともいてほしい......かな。」


 結局この言葉しか思いつかなかった。これが本音だし。だが、間違いなく今の自分は優柔不断男だろう。そして修羅場の炎に油を注いだ。


「主様の優柔不断。」


「マスターのたらし。」


 そう大輝に告げると二人は勝手に人型に戻り、そのまま言い合いを続けた。大輝はその言葉がだいぶ心に刺さる。しかし、すぐに気を取り直すとケンカするほど仲が良いという言葉を思い浮かべながら二人が納得して言い終わるまでそのケンカを眺め続けた。

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それではまた次回

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