第33話 謁見
主人公が困る形っていいですよね。
突然だが、現在大輝は緊張の面持ちで王の間で膝まづいている。それは目の前に王様、王妃様、聖女、騎士団長、そして大輝を取り囲むように兵士たちがいる。
大輝は以前ミリアから「落ち着いてからでいいので王様にはあいさつした方がいい」と言われていたのだ。もちろん、香蓮達は召喚されたときにあいさつを済ませているのでいない。なんだかそれが随分と心細い。そして来てみれば、想像以上の圧迫感。こんな状況慣れているはずないし、勝手にそう感じているだけかもしれないが、なぜだか冷汗が止まらない。これが、王の威厳というやつなのか......。すると王様から声がかけられる。
「面を上げよ、勇者殿。そんなに緊張することないぞ。」
「はっ。」
その言葉を聞くと大輝は面を上げた。そして、王様の顔を見るとさっき感じていた威圧が嘘のようなに、好々爺のような顔をした人であった。それから、王妃は美魔女であった。見た目は20代にしか見えない。大輝はなんだか拍子抜けのような気分になりながらも安堵の表情を浮かべた。
「まずは、よくぞ無事でいてくれた勇者殿。本当に心配しておったぞ。」
「その節は申し訳ありませんでした。」
「よい、勇者殿のせいではないことはわかっているからの。」
「はい、それは随分と軽い女神様のせいですもんね。」という言葉を大輝はグッと飲み込んだ。それはそうとして「受け答えはこんな感じでいいのかな。」と大輝は内心ずっとソワソワしている。できる限りの敬語で話しているつもりだが、不敬になってないかひどく気になる。そのせいかさっきの安堵が嘘のように今はまた別の意味で緊張している。
「勇者殿、貴殿は勇者業については聞いておるな?」
「はい、聖女様から『災悪』討伐の件についてを。」
「それならよい。必要なものがあれば言ってくれすぐに用意する。」
「ありがとうございます。」
「ふむ。そうなるともう言うことがないな......。」
「早く終われ!早く終われ!早く終われ!早く終われ!」大輝は内心で必死に呟いていた。もうこの緊張感から解放されたい。すると、目の前にいるミリアが王様になにやら耳打ちをしている。一体何を言ってるのだろうか。そして、王様はミリアの言葉に了承すると大輝に言葉を投げかけた。
「勇者殿、貴殿はもとの世界に帰りたいか?」
「......!」
大輝は思わず目を点にした。それは盲点とも言うべきことであったからだ。大輝はこの世界に来てから帰還方法について、いやそもそも帰還方法があるのかどうかということを全く疑問を浮かべなかった。それを聞く相手もいなかったし、そもそも別の場所に召喚されたので生き残ることに精一杯だったこともあるがそれはまずミリアに出会ってからまず初めに聞くべきことだったと思えた。
この言い方からするともしかして帰れないのか?大体の話では帰れないという設定が多いが、本当にそうなるのか?だが......だとすると香蓮達の表情が理屈に合わない。帰れないだったら、まず初めに伝えに来るはずだ。なら......どっち?どっちなんだ!?
大輝は起こりうる最悪と望む希望との間でひどく混乱した。すると、なんだかめまいがして思わずよろめく。
「勇者殿、大丈夫か!」
「勇者様、大丈夫ですの?」
「勇者様、お気分が優れませんか?」
「い、いや......大丈夫です。少し考え過ぎただけなので。」
大輝はそう言いながら手を前に突き出し、こちらに向かって来る兵士を制止した。そして、一度大きく深呼吸すると姿勢を戻した。王様や王妃様は安心したような顔をすると思わず立ち上がった状態から座り直す。大輝はその行動に好感を覚えた。......優しい人たちだ。だから、街でも王様の誹謗中傷の声がないわけだな。
「もしかすると帰れないことに不安を感じたのか?......だとしたら、言葉の配慮が足りなかった。申し訳ない。」
「い、いえ大丈夫ですから!謝らないでください!」
「いいや、こうさせてもらう。これは王の.......もとい人としての礼儀だ。これは筋を通すべきことだ。」
「......はい、わかりました。ですから、面をお上げください。」
「うむ。」
そうして王様は顔を上げた。なんともできた人だ。ここまでの人にはあったことない。これが王たる器なのか。大輝は思わずしみじみと感じた。すると、王様が言葉を言い換えてもう一度大輝に言った。
「勇者殿、安心してくれ。帰還方法ならある。」
「本当ですか!?」
「ああ、王として嘘はつかん。だが、そのためにはアイリス様の信仰力が必要なのだ。そして......今はまだその信仰力が低い。仮に高かったとしても各地に発生した『災悪』が暴れてしまえば、勇者殿達を帰す前にこの世界が滅んでしまう。であるから.......」
王様は再び頭を下げた。そして、王妃様も聖女も騎士団長も兵士もこの場にいる全員が深々と頭を下げた。
「無力な私たちを......どうか、どうか救ってほしい。」
「......わかりました。」
大輝はそういうとその場で立ち上がり、右拳をドンッと左胸に当てて力強く宣言した。
「この勇者、月島大輝にお任せください!必ずや『災悪』を討伐して見せましょう。」
「うむ、よろしく頼む。」
王様や王妃様はその力強い言葉に安心するような笑みを浮かべた。しかし、すぐになんとも言えない顔をするとこんなことを言い始めた。
「う~~~~~~む。しかし、これは困ったな~~。勇者殿が帰りたがっているとなると我が娘の貰い手がな~~。」
「......え!?」
「ちょっと、お父様!?ななな、な↑に↓を言ってるのですか!?」
「ミリア、落ち着きなさい。」
王妃様はそう言いつつも慌てているミリアを微笑している。「落ち着きなさい」と言ってる割には止めるつもりは全然ないらしい。しかし、王様のあの言い方だともし帰らなかったら、俺とミリアをくっつけようとしてたのか。それは嬉しくはないこともないんだが、まだ会って数日だしな......。やっぱ、そういうことは互いの意思疎通が取れてないと.......。
大輝はこのことに驚きながらも苦笑いを浮かべながらやり過ごす。この流れは分が悪い。
「でも、あなた。まだ大輝さんが帰ると決まったわけではありませんよ。あくまで、今はそういう意志であるだけです。ミリアの行動次第では未来は変わりますよ。」
「え!?」
「ははははは、そうだな。」
「おおおおお、お母様まで一体何を!?」
「あの人何言ってんだぁ!!」と大輝の心が叫びたがっていた。もうこうなったら失礼だがこちらから話を切らせてもらう。もういろいろとメンタルが持ちそうにないからな。それにきっとあの言葉が来るから!
「国王様、聖女様もお困りで、お疲れのようなので私はここらで失―――――――――――」
「勇者殿、我が娘をどう思う?」
「もう止まってください、お父様ぁぁぁ!」
「......。」
ミリアの困り果てた声が響き渡る。両親に揉みくちゃにされてもう可哀そうとしか言えない。だが、大輝は内心でその言葉すら言えないほどの窮地に立たされていた。正直、こういう質問が来ると思ってた。だから、何としてでも終わりたかったのに話を遮られた挙句に完璧に質問された。「もう、誰か助けて!!」大輝の心はもう叫んでいた。
大輝はとりあえず、これ以上話が広がらないように当たり障りのない言葉で返した。
「そ、そうですね。聖女様は私の一つ下でありながら仕事熱心であり、人々への優しさも忘れない素敵な方だと思います。」
「ふむ、それでは容姿の方はどうだ?」
「よ、容姿ですか!?.....そうですね、容姿の方は国王様のような威厳も見られると思いますが、王妃様のような美しさも見られると思います。加えて、同年代では一番の可愛らしさではないでしょうか。」
「ふむふむ、なるほどなるほど。」
大輝はもう自分自身何を言っているのかわからなかった。当たり障りのないとか言っておきながら滅茶苦茶ヨイショしてないか!?もう冷汗が止まらない。
国王様の隣にいるミリアはうずくまり、「もう......やめて......。」と呟きながらプルプルと震えている。
「......つまり、脈ありっと。」
「大きく捉えすぎです!!」
大輝は思わず叫んでしまった。嘘偽りない答えだがあれをお世辞とも捉えられただろうに、なぜ正面から受け取るのか。混沌。もはやこの場は混沌と化していた。「もはや助けは無いのか」大輝がそう思っていると誰かが咳払いするのが聞こえた。
「ゴホン。国王様、御戯れはここまでに。聖女様も勇者様も困り果ててしまわれています。」
「ははははは、そのようだな。すまんすまん。」
国王の暴走を止めたのは騎士団長であった。大輝は思わずその人が救世主に見えた、否、見える。ふとミリアの方もみて見るとミリアもきっと同じことを考えているだろう顔をしていた。
こうして騎士団長の(大輝から見て)英雄的行動によって謁見は終わった。そして、大輝とミリアは大聖堂にて全身に溜まった全ての疲れを取るように椅子に座りながら脱力していた。
「疲れましたねー。」
「そうだなー。」
「リフレッシュしたいですねー。」
「そうだなー。」
二人とも眉一つ動かさずにボーっとした顔をしていた。体力が回復するのはもう少し時間がかかりそうだ。すると、ミリアがおもむろに立ち上がると大輝に言った。
「こうなったら遊びましょう!」
「ミリアにしては思い切った行動だが......いいのか?」
「いいんですよ!お父様もからかってる自覚があるようですし少し位なら許してくれます。」
「うーん。」
最初は「やはりまずいのではないか?」と渋っていた大輝であったが、その時ピコーンと閃いた。
「なら、俺に街案内してくれよ。これならいい口実になるだろ?」
「......!ナイスアイデアです!それでは早速行きましょう。」
「ちょ、ミリア落ち着け!」
ミリアは大輝の腕を掴むとグイグイと突き進んでいく。相当疲れが溜まっていたのだろうか、こちらの声が届いていない。大輝はミリアに引きづられるままに城下町へ向かった。
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それでは、また次回




