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第31話 それぞれの思い

ちょっと一気にヒロインが増えて会話多めになります。

 大輝たちがあの村を出発してしばらく目的地である聖霊国アイリスまではばだしばらくかかるというので、その途中のクルッカートという町へ買い出しに出かけていた。


 エミュの粋な計らいで大輝は転移組として俊哉、香蓮、茉莉の三人とそしてプラスαのドリィともに別の買い出しに行っている。そして、エミュはというと個人的にも話したかったセレネとともに歩いて、改めて大輝との冒険の話をしていた。


「へ~、いざ詳しく聞いてみるとあんた達ってある意味運命的な出会いしてるのね。」


「えへへ、そうかな。」


 エミュはあまり気にしてないような言い方をしつつもまんざらでもなさそうだ。そういい笑顔だと言ったこっちが恥ずかしい。セレネはどう反応したらいいのか迷い、迷った末に話題を変えることにした。


「そういえば、エミュって竜人族なんでしょ?どうしてこんなところにいるのよ。」


 竜人族は基本的に他の種族とは関わらないと聞いている。ましてや、竜人族を嫌悪している人族のところになんて。


 先ほどエミュは冒険のことを話してくれたが、自身の話はほとんどしていなかった。だからこその疑問だ。エミュはその質問に対して乾いた笑みを浮かべた。


「......少しね、昔にいろいろあって。」


「......まあ、大体はそんなことだろうと思ったわよ。それで、今はちゃんと手を差し伸べてくれる人がいるんでしょ?」


「うん!いるよ、大ちゃんがね!」


 エミュは嬉しそうに答える。だから、こっちが照れる笑顔はやめてって。どう話を曲げても最終的には惚気につながるエミュにセレネは思わずどうしようもないため息を吐く。まあ、今のは自分が悪いんだけど。


 すると近くの宿からいい匂いがしてきた。


「グ~~~~。」


「.......!」


「ふふっ、お腹すいたね。それじゃあ、そこでなにか食べよっか。」


「....ええ、そうね。」


 その匂いに誘われて腹の虫が鳴いた。セレネは赤面しながら思わずお腹を隠す。そんな姿を微笑ましそうに見たエミュはセレネをその宿へと促した。


 エミュとセレネはその宿でミートパイや見た目がコーンスープのようなスープ、他にもいろいろな料理に舌鼓を打ちながら、今度はエミュの方からセレネへと質問した。


「セレネちゃん、さっき私に『どうしてここにいるの?』って聞いたけど、セレネちゃんの事情は分かっててもやっぱり危険すぎるんじゃない?私とは訳が違うような.......」


「あら、俗世に疎いあなたたちがよく知ってるわね。」


「まあね、私もセレネちゃんと()()としては同じだし。」


「......え?」


 セレネは思わず目を見開いた。あの言い方からするとエミュは竜王の娘ということになる。そして、竜王の娘といえば超がつくほどの箱入り娘のはずだ。どんな理由があろうと外に出られるはずがないし、出られたとしても必ず多くの護衛が付く。昔にそれで竜人族が大群で攻めてきたと勘違いした人族が「人類の存亡をかけた戦いだ」とか言って仕掛けた戦争もあるぐらいだし。だが、もちろん言葉を捉え間違えてるという可能性もある。まあ、その可能性はだいぶ小さいが。


 それでも、この単語をこの場で口にするのはよからぬ危険を生む可能性があると判断したセレネは慎重に言葉にした。


「確かに、私のような立場の者の存在が知られれば、ただでは済まないでしょうね。でも、母様がいないと私の国はやっていけないの。私の国を守る意味でもどのみちこれに近いことはやっていかないといけなかった。そういう意味では相手が()()で良かったわ。加えて、話せばわかる人達でね。」


「.....なるほど。」


 セレネは一息に話すと再び食事を始めた。正直、これ以上の詮索は避けたかった。エミュを信用してないわけではない。竜人族は己の強さに誇りを持つ種族、故に弱者がするような嘘はつかないからだ。だが、それでも避けたかったのは今はまだこころの整理がついていないからだ。香蓮達に出会ったのもそう前のことではなく、言うなれば最近といった方が早い。なので、いずれはあの勇者に言わなければならないとしてもまだ心の踏ん切りがつかない。


 そんなこんなを考えているといつの間にか食べ終わってしまった。最初の方は味をしっかりと感じてたのにまた無意識に考え込んで料理を楽しめなかった。探し始めて半年がたった頃からだいたいこんな調子だ。幸い体を壊すほどには至ってないが、この調子で居続ければ心がすり減ってくのは間違いない。


 セレネはそんな自分に辟易としたため息を吐くとふと目の前のエミュを見て唖然とした。


「......エミュ、あんた一体どれだけ食べるのよ。」


「もぐもぐもぐ......ゴクン。そうだね、やっぱり『お腹が減っては動けぬ』だからね。」


「それは確かにそうだけど......それを言うなら、『腹が減っては戦は出来ぬ』でしょ。」


「ははは、そうだったね。それじゃあ、出されたものだけはちゃんと食べていきたいから少し待ってて。」


「はいはい。」


 セレネはあきれたような声で返事をしながら、エミュの食事風景を見る。エミュの両端に皿のタワーが四つもできているというのに全くペースが衰えていない。恐るべし、竜人族。......ところで、ちゃんとお金払えるのよね?


**********************************************

「ねぇ、マスター。これ買ってなの。」


「......おい待て、ドリィ。お前はまだ食うのか。」


「マスターはこの世界の面白さを教えてくれるって言ってたの、だから教えてなの。」


「......うぅ。」


「ぶふっ、幼女に言い負かされてるがる。」


「ふふ、こら、わ、笑わないの。」


「ふふふふふっ。」


 大輝の手を引っ張り、ドリィは目を輝かせるまま食への好奇心のままにあっちこっちにある店に大輝を連れ回す。そんな困り果てた大輝を見て、楽しそうに笑う香蓮達。久々にこんなに笑ったかもしれない。


 大輝がいない日々は眠れない時が続いた。夜が訪れるたび、心配する思いに拍車が掛かる一方であった。大輝らしき情報があったのもつい最近のことだ。この世界では黒髪は珍しいらしくそれが決め手になったらしい。そして、飛ぶように会いに行った。この三か月間の心配させた思いをぶつける為に。しかし、実際にはそんな気持ちにはならなかった。大輝が無事である、元気そうである、それだけが全てであった。だがもちろん言いたいことは山ほどあるが、それは今でなくてもいいだろう。


 香蓮はドリィに続くような形で大輝にドーナッツを買ってくれるよう頼んだ。大輝は「お前もか」と思いながらも、これまで心配をかけていたと思うと断ることも憚られ大輝は渋々香蓮の分も買った。


「......くっ、俺の金が減っていく。」


「ふふっ、ありがと、大輝。」


 香蓮は大輝に笑顔を見せた。普段、仏頂面かため息を吐いている(ほぼ9割、俺のせいだが)のでこんな表情を見るのはいつぶりだろうか。よく見ると目の下に薄っすら隈が見える。もしかしたら、俺が思ってる以上に心配をかけていたかもしれない。そう考えてると自分のケチ臭さがアホらしくなった。よし、もう俺の全財産使い果たしてやるわぁ!


「もう、わかった。遠慮は無しだ!好きなもんを言え!全部、買ってやる!」


「「「「おおおおおお!」」」」


 そうして大輝は振り回されるまま持ち金8割を使い果たした。


「よっこらせっと」


 大輝はベンチに座ると空間宝物庫(ストレージ)から菓子パンを取り出し噛り付いた。しばらくすると、隣に香蓮が座った。香蓮は視界に映る位置にドリィがいることを確認しながら大輝に話しかける。


「ほんとドリィちゃんが魔剣なんて思えないわ。小学生みたいな容姿だし、それなら未だしも私たちと同じように食べるし。」


「あいつにとっての食事は食べ物を魔力に変換する意味合いもあるらしいけど、ほとんどは嗜好品感覚で食ってるらしいぞ。......だがまあ、その感想は確かに思った。というか今も思ってる。」


「そうね。だから、大輝に懐いてるのね。」


「懐いてる......か。あんま実感はないな。どちらかというと俺が契約者ってのと俺の言質を使っていいように振り回してるような.......。」


「でも、それって結局は信用してるってことじゃないの?やっぱり、自分が信用できない人には後が怖いからそもそもそんな行動は出来ないだろうし。」


「......なるほどな。」


 大輝は香蓮の言葉がしみじみと感じるのがわかった。そう思って見ると少しだけドリィという存在の捉え方が少しだけ人間よりに近くなった。


 そんな思いが伝わったのかどうかわからないが、ドリィは何やらキラキラとしたものを頭上に掲げて見せつけている。「あれ、装飾品だよな?まさかあれも買えと!?さすがにあれはダメだ!」そう思うと大輝は頭上で腕をクロスさせ✖印を作った。その意思が伝わったのかドリィは少し悲しそうな表情を見せながら店の商品棚に戻していった。


 再び困り果てている大輝の顔を見て香蓮は思わず笑った。そんな香蓮に大輝は不貞腐れる。


「そんな笑うことねぇだろ。」


「ふふふっ、ごめんって。やっぱり、嬉しいのよ。大輝がいることが。」


「......寝れなかったんだろ?」


「......え?」


「その目の下の隈だ。」


「ああ、これね。......誰かさんのせいよ。」


「......すまん。」


 大輝は思わず俯いた。目を合わせることが躊躇われた。香蓮は冗談めかしながらも何でもないような顔をすると話題を変えた。


「この世界に来て、一人でどうだった?」


「......怖かった。だが、なによりもお前らのことが心配だった。」


「......そう。」


 その言葉が聞けただけでも嬉しくなる。少しだけ心が跳ねるような気がした。気のせいだろうか。だけど、普段よりも喜びが勝るのは確かだ。香蓮は思わず微笑みを浮かべる。

 大輝は暗い気持ちはいけないと顔を上げて澄んで晴れ渡った青空を見た。そして香蓮に聞いた。


「......俺は勇者らしい。どんなことが起こるのかはわからないが、危険なこともあるだろう。それでも、一緒に来てくれるとありがたい。」


「その答えはすでに決まってるわよ。大輝が決める前にね。」


 そういうと香蓮は立ち上がり、大輝の前に立つ。そして手を差し伸べる。


「頼りにしてるわよ、大輝。」


「......ああ、任せろ!」


 大輝は香蓮の手を握るとそのまま立ち上がった。そして、エミュとセレネに合流するために歩き始めた。

評価、ブックマークしてくれた方ありがとうございます。長らく変動が無かったのでとても励みになりました。もっと面白くなるよう頑張っていきます!

それでは、また次回

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