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第29話 旅立ち

 魔剣の少女ドリィと出会ってから一日が過ぎた。そして、次の日の今日はドリィにいろいろなものを見せて上げることになっている。俺の今日の目標は、新しいことを教えてこの世界が争いだけに満ちている世界じゃないと教えることだ。それに、昨日約束したのに守らないわけにはいかないからな。


「う~~~~ん。」


 大輝は大きく伸びをする。やっぱ、こういうのんびりした日は清々しく気持ちいい。さてと、遅れるといけないからサッサと準備しようか。


「......ん.......ス――ス――。」


「.......。」


 大輝はすぐ近くから寝息を聞いた。そして、思わず固まる。昨日がタイムリープしてるのかと思ったがそんなはずはない。俺は昨日ちゃんと服を着て......ない!?あれ!?なんで、今、俺パンイチなんだ!?


 大輝は予想外の状況にあたふたする。だが、すぐに一度深呼吸をして心を落ち着かせた。待て待て、落ち着け、ここは俺の部屋だ。なんらかの理由でエミュが間違って入ってきて寝てしまったのだろう。大輝は決心しながらエミュを起こそうとするが、大輝は再び固まった。なぜならその相手がエミュではなかったからだ。


「ん.......マスター.......?」


「.......お、おはよう。」


「......おはようなの。」


 その声の主ドリィは寝ぼけ眼を手で擦りながら、とろんとした表情で大輝を見る。大輝はその完成された容姿に見惚れ.......てる場合じゃない!なに普通に朝の挨拶してんだ、俺!?というか、そもそもなんでここにドリィがいるんだ!?そしてなんでこいつは真っ裸なんだ!?ダメだ、全然頭の整理が追い付かない!?


 大輝は目頭を一度押さえて、もう一度見るがやはり見間違いではないみたいだ。


「ドリィ、どうしてここにいるんだ?エミュの部屋にいたはずだろ?」


「マスター、私はマスターの()()()なの。所有物は所有者の近くにあるのが普通でしょなの。」


「......そうか......そうだな、確かに所有物だったら自分で管理するもんな。そして、ドリィはそんな姿だけど剣だもんな.....確かに間違っていないな。」


 今の状況は倫理的には間違ってるけどと思わなくもない大輝。大輝はバッとドリィにシーツを被せると考え始めた。どうやって言い訳しようかと。いや、まずは俺が服を着ないとどんなに筋が通っていても一蹴される可能性がある。


「コンコンッ、大ちゃん、起きたーーー?」


「!」


 この声はエミュ!?思ってるよりも早い!?どうしてこんなときばっか!?大輝は一気に焦りだす。だが、ここで冷静さを欠いてしまえばもっと被害が大きくなってしまう。今の俺にできることはどれだけ被害を小さく出来るかだ。この時点で大輝は思考をチェンジさせていた。もう被害は受ける覚悟だ。だが、やはり被害を受けないのが一番だ。


「ちょっと待っててくれ、今準備中だから。」


「わかったー。そういえば、ドリィちゃん見てない?昨日、一緒に寝たはずだけど。」


「胸がでかすぎるの!死なないけど、(精神的に)死ぬの!」


 ドリィは大声でエミュの言葉に噛みついた。ちょ、お前!なんでこの状況でしゃべるの!?すると、次第にドアの方からドライアイスの冷気が流れ込んでくるかの如く部屋全体がみるみるうちに冷えてきた。な、なんだこの寒気と悪寒は!?これはまじでヤバいかもしれない。そして、ドア越しに話しかけてきたエミュの言葉も冷たく感じる。


「大ちゃん?どうしてドリィちゃんがそっちにいるの?」


「こ、これは俺にもわからないんだ!」


「ドリィはマスターのものなの。だから、マスターのそばにいるのも当然なの。」


「だそうです。」


「ふ~~~~~~~~ん。とりあえず開けるね。」


「待った―――――――――!」


大輝は開きかけた扉を急いで閉めた。エミュの馬鹿力からしたら焼け石に水だろうが、それでもパンイチの男と裸の幼女というこの状況を見られるのはまずい。だが、それでも徐々に押され、少しずつ扉が開いていく。そして、扉の隙間からエミュの目がギョロリと見えた。.....え、怖い。


「......ロリコンだったんだね。」


「待て待て待て!一度もそんな素振り見せたことないだろ!?」


「......で、その恰好でなにをしてたの?」


「してない!断じてなにもしてない!」


 大輝はドリィに服を着るよう命令するとドリィはまるでプリ〇アのようにくるりと回りながら変身した。すると、昨日見たようなゴスロリに戻った。一体どうなってんだか。そうして大輝はエミュを部屋に通した。エミュはもの分かりがいいからこれで追及も収まるだろう。そう大輝は安堵していたが、エミュの追及は別のことにも飛び火した。


「そういえば、大ちゃん。あの一週間、クリスさん達に修行つけてもっらって言ってたけど他にもなにかしてたの?」


「な、なにかとは?」


 大輝はなにもなかったような雰囲気を醸しながらとぼけた。正直、当てはまることはいろいろある。ありまくる。だが、それを言ってしまったらエミュとの関係が崩れそうだ。どうにか、どうにかこのまま過ぎてくれ。大輝はそう思いながらエミュの目を見ようとするが、エミュの眼力にスススッと目をそらす。ドリィはその修羅場をドキドキしながら見ていた。


 エミュは「しょうがないな」というため息を吐くと土下座体勢に入ってる大輝に目線を合わせた。


「私は大ちゃんが頑張ってきたのを知ってるから......私は大ちゃんを信じる。」


「......エミュ。」


「......でも、大ちゃんのえっち。」


「........。」


「ほら、早く準備して行くよ。ドリィちゃんはこっちね。」


「嫌なの~!」


 ドリィはエミュに手を引かれながら部屋を出ていった。そして、大輝はいそいそと準備すると市場へと行った。


**********************************************

「わ~~~~~~~なの~~~!」


「な?すごいだろ?」


「ドリィちゃん可愛い~~。」


 ドリィは目を輝かせておのぼりさんのように周りをキョロキョロ見る。大輝はチュロスのような棒状のお菓子を買うとそれをドリィに渡した。ドリィはそれをよく観察するとパクっと大きな一口で食べた。


「ん~~~~~~美味しいなの~~~~!」


「そうかい、ありがとな嬢ちゃん。」


 ドリィはそのほのかな甘みに歓喜の声を上げる。ドリィの美味しそうに食べる表情に店主も思わず頬を緩める。


「おい、大輝。この嬢ちゃんは一体......」


「あ~、上手くは話せないんだ。」


「そっか、訳ありか。俺はてきっりお前とエミュちゃんの隠し子が会いに来たと――――――――」


「んなわけねぇだろうが!これ、あと2本追加な!」


「はいよ。」


 「全くなにを言い出すんだか」と思いながらも思わず顔を顔を赤くする大輝。そんな大輝を怪訝な顔で見つめつエミュとドリィ。和やかな雰囲気が漂う。それから大輝はドリィに様々な場所を紹介した。その都度、ドリィは新鮮な声を上げて喜んでいる。この世界がドリィが見続けた世界から変わっていることが、賑わいに溢れていることが伝わってくれたならそれでいい。俺はこれからもそれを伝え続けるだけだ。


 それから一週間が経った。今日は旅立ちの日。これは前々から決めていたことだ。お金が貯まったことだし、本格的にあいつらを探さないとな。


 そして、大輝たちは準備を済ませるとリューク達に挨拶をした。もうすでに他の人達には挨拶は済ましてある。ただ、クリスさん達は俺たちが挨拶する前に先に旅立たれてしまったが。


「これでお別れかー、寂しくなるわね。」


「そうですね。」


 ルナとシューレイは寂しそうな声を上げる。こいつらにはほんとに世話になったからな。ほとんどなにも返せてないのが心残りだが、またここに来ればこいつらにも会えるだろう。そう思っているとリュークから驚きの言葉が出た。


「あ、そうだ。俺たちも旅に出ることにした。」


「え、そうなのか?いつだ?」


「もう少し後になるがな。」


「......そうか。」


 それだとなんだか恩が返しそびれそうだな。大輝は思わず悩んだ顔をする。するとリュークが「やれやれ」といったジェスチャーも交えながら表情をする。その表情やめろ、ちょっとイラッとする。


「おいおい、大輝。もしかして俺たちに『恩を返さなきゃ』って思ってないか?それともなんだ?寂しいのか?」


「んなわけねぇよ。でも、俺は―――――――――」


「そうだな。確かに俺たちはお前たちを世話しただろう。でもな、俺たちもお前の活躍を見てこのまま腐るのは勿体ねぇって思ったんだ。これは俺たちの意見だ。......だから、恩とか気にすんな。」


「......そうか、そうだな。また、どっかで会えるだろな。」


「そういうことだ。」


 大輝とリュークはグッと強い握手を交わした。そして「それじゃあ」と最後の別れを告げようとした時、後方から聞き覚えのある声が聞こえた。


「いた!大輝だ!」


「やっと会えた~」


「良かった、無事で。」


「良かったわね。」


 その声の主は俊哉、香蓮、茉莉、そしてもう一人知らない少女だった。


**********************************************

「あ~あ、見事に失敗したな。」


「タイミング的には間違っていないと思うけど、予想外の動きがあったからな。だから、いつまでも泣くんじゃねぇよ、気持ち悪い。」


「あ――――――――、俺のキングちゃ――――――――――ん。」


 若い男は泣いてるローブを着た男を汚物を見るような目で見ながら足蹴にする。もう一人の男はそれを笑いながら見ている。


「ふふふっ、相変わらず気持ち悪いわね。それで、失敗したあいつはどうするのかしら?」


「俺は慈悲深いからな。生きてるんだったらチャンスぐらいは与えてやるさ。.......我らが神の復活のためにな。」


「そう......で、あのシスコン野郎はどちらへ?」


「あいつは知らん。だが、まあ、どうとでもなるからいいさ。」


 男はカラカラと笑うとその場から消えた。女もため息を吐くと壁に立てかけておいた杖を持ちその場を去った。その場所にはもう一人の男の嗚咽交じりの鳴き声が響き、そして――――――――――


「次こそはぶっ殺す。」


 ――――――――凶悪な言葉を吐きながらまた新たな研究を始めた。

これで第1章完結です。思ったより長くいきましたが、個人的には大満足です(笑)。第2章以降は第1章よりは短くなるかもしれませんが、内容は濃くしていきたいと思います!

それでは、今後ともよろしくお願いします。

それではまた次回!

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