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第27話 深まる気持ち

 大輝が目覚めると自分の部屋にいた。血が足りてないのと寝ぼけているせいであまり頭が回っていないが、とにかくあの決闘から一日が経ったことだけは分かった。


「むにゅ。」


「んん......ス――ス――。」


「......!」


 大輝は右手にとんでもない柔らかな感触を感じた。そしてそこからは嗅ぎなれた匂いと寝息が聞こてくる。.....どうして俺のベットにエミュが!?それにこの感触は!?


 なぜだろうか、大輝の右手は触れてからまるで離れようとしない。自分以外の誰かが右手を操作をしているみたいにふわふわなマシュマロのような感触を堪能している。す、すごい!これがあのおっぱいというやつなのか!?だが、これ以上はいろいろと不味いと思った大輝は左手で右手首を掴むと強引に引きはがした。


 大輝は思わずため息を吐いた。このことは黙っとかないとな......いや、正直に言って謝った方がいいか。ただ直に触らずにシーツの上からで良かった......良かった、うん良かったのだ。するとふと肉フェスでエミュを起こしに行った時のことがフラッシュバックした。大輝は思わずかき消すように頭を振る。いやいやいや、何を思い出してんだ俺!最近というかこの世界に来てから時に悶々とした日々を過ごしてきたが、情欲に身を任せてなるものか!まあ、せっかくなら童貞ぐらいは捨てたいとは思うが......それはそれでこれはこれだ。


 大輝はベットから降りようとシーツを剥いだ。良かった、服を着てる。ただ、下はトランクスだけだったが。しかし、もしこれが裸で、そして自分の記憶もただ単に思い出せないだけだったら、事後ということも否定できない可能性があった。そんなことがあったなら目も当てられない。そして大輝はふと辺りを見渡した。なぜだか嫌な予感が拭えなかったから。


「.......。」


 ......見つけた。見つけてしまった。え、エミュの服と下着を.......。大輝はバッとエミュを見た。エミュがまだ寝ているという理由でシーツをエミュの方まで剥がさなかったのが幸いしたのか、エミュのあられもない姿は見えていない。いないがしかし、依然として危険なことには変わりはない。むしろ、事後の可能性が跳ね上がったのだ。やばいやばいやばい!やってないと否定出来る状況証拠何もない!


「ん......大ちゃん.....起きたの?」


「え、エミュ!?起きたけど、起きないで!」


「......?」


 エミュはとろんとした瞳を向けながらふにゃりとした笑みを向けた。だ、ダメだ。自身の状態に何も気づいてない。このまま体を起こされたらラッ......ゲフンゲフン、まずい!大輝は咄嗟にエミュの両肩を掴んだ。構図としては大輝が押し倒したような形だ。


 大輝は真剣な目でエミュを見る。大輝の眼差しに射抜かれたエミュもまた大輝を見る。するとエミュがとんでもないことを言い出した。


「大ちゃんがしたいなら......いいよ。」


「!?!?!?!?!?」


 .....え?今なんつった?大輝の思考は思わず停止する。エミュはというと顔を見ている時間に比例して赤みを増していく。そして緩んでしまう口元を隠すようにシーツをたくし上げる。その恥じらいが可愛いらしくて大輝の理性が飛びそうになる。


「.....エミュ。」


「大ちゃん.....。」


 大輝はそっとエミュの頬に手を当てる。エミュの頬が、吐息が火傷しそうなほど熱い。


「大ちゃん、じらさないで......。」


「ああ、わかった。」


 大輝はそっとエミュの顔に近づけて―――――――――


「おーい、大輝ー。起きてるかー?。」


「「!!」」


 大輝とエミュは思わずビクッとして、大輝は咄嗟にエミュから顔を逸らした。そして、二人ともドアの方を見る。この状態はまずい。だが、無情にもドアノブの音が鳴りそっと開く――――――――――


「こら、ばかリューク!昨日の今日でしょうが、もう少し寝かせてあげなさい。」


「いてっ、何も殴ることないだろ?」


 ――――――ことはなかった。ドアが閉まり、ルナとリュークが遠ざかっていく音が聞こえてくる。大輝とエミュは思わず安堵のため息を吐いた。そして、突然のアクシデントで熱が冷めてきたのか現在自分たちの状態を見て二人は羞恥心に襲われた。大輝は咄嗟にベットから飛び降り、エミュはシーツで体を隠す。


「「と、とりあえず、外行こうか!」」


 二人は噛むタイミングまでぴったりハモらせるといそいで支度をした。


**********************************************

 大輝とエミュは市場に向かうと適当に露店をうろついていた。この村で早三か月、大輝もだいぶ知り合いが増えてなにかと茶化されるくらいには親しくなった。


 大輝はふとエミュを見る。するとエミュは顔を緩ませていた。おそらく、いや確実に露店や宿屋から漂う美味しそうな匂いに反応してのことだろう。大輝も香しいこの匂いに腹に音を立てる。


「大ちゃん、お腹減ってるんだね!」


「そうみたいだな。そういえば、俺たち急いで家を出たから飯を何も食ってなかったな。」


「そうだね、それじゃあここで朝食済ませようよ。」


 大輝とエミュはすぐ近くの串肉屋に行くと串肉を15本買った。この串肉は通常のサイコロステーキの一回り大きいサイズで意外にボリュームがある。大輝は大体この串肉を買うと3本でいっぱいになるのだが、エミュは胃袋がブラックホールでできているのかというくらいよく食う。今回は他の露店も寄りたいのでこの数だが、いつもはエミュサイズという特注サイズで買っていて、そのサイズは豚の丸焼きサイズである。それを見るといつも「いったいどこからそれを仕入れているのか」と大輝は考えてしまう。加えて......


「ほら、大輝、銅貨3枚だ......と言いたいところだが、今回は特別に銅貨1枚だ。」


「......。」


 これは特別でもなんでもない。エミュが買いにくると必ずこうなるのだ。そして、これはこの店に限ったことではない。他の店でもだいたい割引になり、ある店では半額になり、またある店になると無料になる。もちろん、エミュは何もしてない。いつも通りの笑顔を見せているだけなのだ。それで勝手にやられていく店主。......同じ男として何とも言えない感情が湧く。


 大輝とエミュは他の露店でも買い物をすると近くのベンチに座って朝食をとり始めた。エミュは串肉を両手に持つと美味しそうに頬張ってく。


「美味いよな、これ。」


「うん、タレがいいよね。」


 心地よい風が吹き、聞きなれた村の喧騒が耳に優しく入ってくる。このゆっくりとした一日が心地いい。あの怒涛の一週間がなければ、どんなに良かったか。だが、あったおかげでこう思えるのかもしれない。上手く表せる言葉が見つからない。するとエミュは大輝の顔を覗き見る。


「もぐもぐもぐ......ごくん。どうしたの、大ちゃん?」


「......ふとあの一週間のことを思い出してな。」


「そっか。改めてありがとね.....。」


「え、エミュ!?」


 エミュは大輝にピタっと寄り添う。大輝は思わず挙動不審になる。エミュはただ無言であった。ただただこの時間を噛みしめていた。するとエミュは大輝にひょいと顔を向けた。ちょ、近い近い。


「見て見て大ちゃん、これ。」


「......これは!」


 エミュがポケットから取り出したものはエミュにプレゼントするはずだった髪留めのアクセサリーだ。そういえば、すっかり忘れててもうどこかに捨てられたと思っていたが。大輝がそう思っているとエミュは愛おしそうに見つめながら説明し始めた。


「これね、決闘が終わった時にこっそり回収しておいたんだ。お守りと思って。」


「それで、さっき装飾店に寄っていたんだな。」


「そう、昨日のうちに出しててね、それもネックレスに。それで、今日出来上がったってわけ......ね、大ちゃんつけて。」


「......!」


 エミュは甘えた声で後ろ髪を大輝がつけやすいように上げる。な、なんだこのリア充感。心なしか周りの視線が痛い。だが、ここでやらねばエミュにも恥をかかせてしまう。し、しかたない。


 大輝は顔を真っ赤にさせながらも、受け取ったネックレスをつけようとする。するとその時、エミュの耳が赤くなっていることに気が付いた。顔は見えていないがエミュも自分と同じように顔を真っ赤にさせているのだろう。


「.....どう......かな。」


「......いいと思う。」


 エミュは大輝の方を見て感想を聞くが、大輝はエミュに顔を向けられず口元を手で覆いながら顔をそむけた。エミュは大輝のその反応に嬉しそうに笑う。


「そうだ、大ちゃんに教えたいことがあるんだ。」


「え、エミュ!?」


 エミュは大輝の手を引っ張るとそのままある場所へ向かった。

自分で書いてて砂糖吐きそうでしたね(笑)

それではまた次回

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