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第24話 男の意地#3

「う.....ここは.....!」


 大輝は目覚めると自室にいた。その瞬間、昨日のことが鮮明に思い出される。悔しさに大輝は思わず握りしめた。するとドアがノックされシューレイが入ってきた。その手にはお湯が入った桶とタオルを持っていた。推測するにシューレイが看病してくれたのだろうか。


「大輝君、起きましたか。」


「ああ、怪我治してくれてありがとな。これシューレイがやってくれたんだろ?」


「クリスさん達の指示があってのものですよ、私は少ししかしていません。」


「まあまあ、そんな謙遜すんなって。現にこうやって俺の看病に来てくれたんだろ?」


「う~~~......はい、そうですね。」


 シューレイは少し顔を赤くしながらも大輝の言葉を受け入れた。それから大輝はシューレイに時間を尋ね、朝早い時間帯だとわかるといつもの服に着替え、パン一つ咥えて冒険者ギルドに向かった。


 冒険者ギルドに着くと大輝の存在に気づいたクリシュナが手を振ってこちらに来るよう手招きした。そして大輝が近づいていくとクリシュナは大輝の身を案じてきた。


「到着のようね。体調は大丈夫?」


「はい、俺が倒れた時はお世話になりました。」


「ふふっ、いいのよ。それにまだお世話になるでしょ?」


「......お願いします。」


 大輝は真剣な眼差しで改めてこれからのことに頭を下げる。クリシュナは大輝に頭を上げるよう言うと早速修練場の方に大輝とともに向かった。


 修練場に着くと大輝とクリシュナは互いに向かい合うように並ぶと木刀を構えた。そして、クリシュナは修行を始める前に大輝に一つ問いた。


「大輝君、あの男との差は何だと思う。」


「......そうですね。剣技の差......ですか?」


「それもあるわ。だけどあの男との決定的な差は......圧倒的な対人戦闘経験の差よ。」


 ......対人戦闘経験。大輝は頭の中でその言葉を反芻させていた。確かにその言葉は身に染みてわかる。戦っているときこちらの剣が全然届いてなかった。どんなに工夫しても最小の動きで防がれていた。


「あいつはね、Bランク冒険者なのよ。Bランクともなると敵が魔物だけとは限らなくなってくるの。それ故に相手が次ぎだす手が予測つくのよ。」


「あいつBランクだったのか......。こちらの動きが読めるのは手ごわいですね。」


 大輝はこう分かりやすく実力差を示される言葉を聞くと少し自信を失ってきた。Bランクってことはクリスさんの一つ下ランク。クリスさんの強さは身に染みている。それにあいつはまだ全力ではなかった。......いかんいかん、弱気になるな俺!クリスはそんな大輝の心境が分かったのか思わず微笑む。


「ふふっ、ごめんなさいね、反応が面白いからつい意地悪しちゃったわ。」


「???」


「安心しなさい。あなたは十分に勝てる力を持っているわ。ただその力を十全に使いこなせてないだけなのよ。」


「!」


 ......俺は勝てる力を持っている?自分は単純かもしれない。だが、実力のあるクリスさんが言ってくれたことに嬉しさを感じた。だが、それなら俺はこれから何をするのか。


「大輝君、あなたがこれからやることはとにかく私の攻撃をしのぎなさい。」


「しのぐだけでいいんですか?」


「できることなら、やり返してもいいわよ。でも、まだ厳しいかもしれないけれどね。それに、剣技でも差があるうちはとにかく攻撃をしのいで、しのいで僅かに生まれた隙を強力な攻撃で叩く。それが一番ベストね。」


「なるほど。わかりました。」


「それでは、行くわよ!」


 こうしてクリシュナによる剣技の指導が始まった。


**********************************************

「はあはあはあ.......」


「らいきさん、しごかれれるね~。」


 息絶え絶えの大輝を見て実にいい笑顔をしているライナ。そんなライナに一言申したいが、今の大輝はツッコむ余裕がどこにもない。大輝が案外しんどそうなので、ライナは大輝の呼吸が整うまで軽く会話しながら待った。


「クリスの指導すごかっられしょ?」


「はあはあ、しんどい......です。」


 大輝は大きく深呼吸して呼吸をしながら、ふとその時のことを思い出した。とりあえず、印象で残ってるのは好きなだけボコられたことぐらいか。まず、スキルも使わずにどうして上から下へ木刀を振り下ろしただけで、太刀筋が四本も見えるのか。しかも、どれも同時で。あんなのどうやって防げばいいのか。だが、あの攻撃はラディウスが使った<氷連撃(フローズンガバレッタ)>と攻撃が似ていた。きっと意図的にやったのだろうけど、やっぱあれが防げるようにならないとダメか。......まあ、それはそれとしてどうして四本から増えていったのだろうか。最終的には2倍の数になったぞ!?


「あ~、それはきっとらのしくなっらんらろうね~(それはきっと楽しくなったんだろうね~)」


 ライナが大輝の言葉に反応した。どうやら口に出していたみたいだ。なにやら恥ずかしい。しかし、「楽しくなった」とは一体どういうことなのか。


「どういうことですか?」


「クリスっれ気に入っら人はいじめらくなっちゃうらいぷ(タイプ)なんらよね~。」


「おう.......。」


 それはなんとなくわかる気がする。ボコられてる俺を見て頬を軽く紅潮させてたし、俺が反撃しようとすると先ほどよりも強い攻撃でことごとくねじ伏せてくるし、そしてバテて寝転がってる俺を見てずっと笑ってるし。普段のふわっとした雰囲気はどこへ行ったのやら。

 そんなこんなで呼吸が整ったら、大輝とライナは向かい合った。


「そんじゃ、今かららいきにやってもらうことはとにかくわらしの攻撃を避けてね。」


「避けるだけですか?」


「お!いい向上心らね~。基本れきに避けるころに集中しれ。そして攻撃はなし。余裕があれば、わらしをラッチ(タッチ)しに来れ。らから、木ろうはいらないよ。」


「......わかりました。」


「そんじゃ、行くよ。.......増殖する影(インクリースシャドウ)


「......!」


 ライナはそのスキルを使うとライナ本体から三つの影が生まれ、その影が次第に立体となって伸びていくとライナと瓜二つの三人のライナが出来上がった。そしてライナ本体を残して、三人のライナが突っ込んでくる。


「!」


 三人のライナのうちの一人が短いナイフをこちらに向かって投げてきた。大輝はそれを半身になって避ける。だが、すでにその時には大輝の背後には気配があった。やばい!大輝はとにかく前方に跳んで後ろにいたライナの攻撃を避け、少し転がりながら体勢を立て直す。すると、すぐに頭上から三人目のライナがナイフを持ったままこちらに落ちてくる。


「らいきー、動きが大きすぎる。もっとコンパクトに。」


「はい!」


 この全く隙の無いスリーマンセルの攻撃をどうやってコンパクトにすればいいのか。だが、愚痴を言ってる暇はない。クリスさん達は限り少ない時間を使ってまで俺を強くすることに尽力してくれている。そして、俺にも時間は限られている。一日でも早く上達しなければ。


「......!」


 大輝は出来る限りコンパクトを意識しながら、攻撃を避けていった。ゆっくりずつではあるが、着実に動きを小さく出来ていった。そんな時だった。大輝の背後に気配があったのだ。だが、目の前にはずっと襲ってきた三人のライナがいる。そして、その奥には腕を組みながらこちらを見ているライナがいる。......恐れくあれは本体だろう。......え?だとすると後ろの奴は?


 そんなことを一瞬でも考えたのがいけなかったのか。大輝は後ろの人物に襟を掴まれるとそのままナイフを押し当てられた。大輝は顔だけ後ろに向けるとその人物を見た。するとその人物はライナだった。......え?


「終了~~~~!」


 ライナの声で大輝の周りにいた影は消えた。大輝は思わずへたり込んだ。呆然としている大輝にライナは「してやったり」といった感じの笑みを浮かべながらこちらに歩いてきた。


「ふっふ~ん、らまされられしょ。(騙されたでしょ)」


「一体......いつの間にですか?」


「らいきが案外早く動きに慣れれきれ、調子乗っれ無いかな~っれ確認するらめにろっと.....ね?」


「ね?って......あの数で精一杯でしたよ。」


 だが、これが出来れば他の動きでも無駄がなくなるかもしれない。大輝はそう思うと立ち上がって外にいるユリスのもとに向かった。


今更ですが、シューレイとユリスのしゃべり方似てますよね。もともとユリスのしゃべり方はですます調で行こうと思っていたのでいいんですが、シューレイのしゃべり方が特に決まらずに書いてたらですます調になってしまいました(笑)まあ、とりあえずもうすぐこの章は終わるんでこのままいっちゃいます。

それではまた次回

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