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第21話 肉フェス#4

「右翼は一旦下がって、左翼は展開させなさい。魔法部隊は中級魔法で敵の意識を逸らして。」


「モオオオオォォォォ!!」


 後方ではクリシュナの指示が飛び交っている。大輝はそれを耳にしながら、大きめの風呂敷に例のアレを置いていく。そして空間宝物庫(ストレージ)内に入っていたすべてのアレを取り出して置くとアレが割れないように慎重に包んで袋状にして口を紐で絞った。......よし、できた。


「大ちゃ~ん。これでいい?」


 エミュは頭上にある二つのアレのもとをそれぞれの手に持ちながら、大輝のもとへキュキューと物凄い速さで移動していたのかブレーキをかけながら近くに寄ってきた。エミュが持っているものは「ギャギャアアアア」となんとも耳障りな声を上げている。大輝はこれでいいとサムズアップをエミュにする。


「全員、この場から直ちに離れなさい!」


 クリシュナの声がする方を向くとキングブルータスカウがあの時と同じように両前足を空中に上げた。ただひとつ異なることがあるとすれば後ろ足も空中に浮いていることだろうか。それすなわち......先ほどの倍の攻撃が来る!


「ドッゴ――――――――――――――――――――――――ン!!!」


 浮かび上がっていた地面がさらに浮かび上がった。ほぼ全員が宙に舞う。


風の翼(エアウィング)


 そして全員落下―――――――――はしなかった。全ての冒険者に文字通り風の翼ができ、落下を抑えてくれた。冒険者はゆらゆらと降りていく。これをできるのはおそらくユリスだろう。ユリスも先ほど以上の攻撃がくると予測していたのかもしれない。そう思ってユリスを見ると多大な魔力を使ったのか辛そうな顔をしている。これは急がなければ。


 だが同時にチャンスだとも思った。今現在、全ての冒険者がキングブルータスカウから離れている。加えて、キングブルータスカウもこちらから注意が外れている。大輝はエミュに合図を送ると袋をハンマー投げのようにグルグルと回し始めた。そして最大遠心力でキングブルータスカウに投げた。同時にエミュも手に持っていた二つのものを投げた。


 今更だが、大輝が投げた袋の中にはあの爆発するリンゴだ。精霊の瞳より名を「エクスアポー」というらしい。また、エミュの投げたものはその実を宿す木で名を「エクストレント」というらしい。そしてその大量のエクスアポーと二体のエクストレントはキングブルータスカウの顔前へと迫る。そのタイミングを見計らって、大輝は剣を地面に刺すと左手を支えにして右手をキングブルータスカウに向けた。


「全員伏せて!」


 エミュの声が響き渡る。この声を聞いた冒険者たちはすぐさま身を屈めた。


「最大火力の魔法見してやるよ!炎滅波(ギルランテ)!」


 大輝の右手から特大の火球が発射された。そしてその火球は途中で半分に割れて、二つの火球ができた。そこからさらにそれぞれの火球が半分に割れて四つになった。そこからはまるでネズミ算のように2乗ずつ増えていった。そして最終的に128発もの火球がキングブルータスカウを襲った。大輝は射出の衝撃で少し後方へ吹き飛ばされるがなんとか耐えた。ただ魔力の消費がでかく倦怠感がかなりある。

 キングブルータスカウはその攻撃を避けようと後方へ跳び上がる――――――――――


「どこにも行かせねぇよ。たっぷりと味わえ。拘束する土の薔薇(チェインソイルローズ)。」


 ―――――――ることは出来なかった。キングブルータスカウの後ろ足付近の土がせり上がるとまるで薔薇の茎のように棘を有しながらその後ろ足に絡みついたからだ。キングブルータスカウはその痛みにたじろぐ。そしてその刹那の時間が命取りだった。


「ドゴ―――ンドゴ――――ンドゴ――――ンドゴ――――ンドゴ――――ンドゴ――――ンドゴ――――ンドゴ――――ンドゴ――――ンドゴ――――ンドゴ――――ンドゴ――――ンドゴ――――ン――――――――――――」


「モおオオオオオオォォォォ!モオオオォォ!モオオオオオオオオオオオォォォォォォォォ!!」


 流星雨(スターダストレイン)とはまた違う爆撃の雨。そしてその火球の一つが大輝とエミュが投げたものに当たった。


「ドガアアアアァァァァ――――――――――――――――――ン。」


「~~~~~~~~~~~~~~~!」


 キングブルータスカウの顔の近くで大大爆発を起こした。キングブルータスカウは声にならない叫びをしたかと思うと静かに膝を折り地に伏した。キングブルータスカウの頭は跡形もなく消えていて、近くに少し焼き焦げた角だけが残っていた。しばらくの静寂がこの場を支配すると大輝は叫んだ。


「勝ったぞおおおおおおぉぉぉぉ!!」


「「「「「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」」


 大輝の言葉に全冒険者が反応した。大輝は盛大に両拳を空へと突き立てるとそのままバタッと後ろに倒れた。......やった。やったぞ。言葉にならない喜びとはこういうことだろうか。喜びに浸って―――――本当は魔力の使い過ぎによる倦怠感だが――――――動けない。するとエミュが大輝のすぐ近くに座った。


「頑張ったね。」


「お互い様だろ。」


 エミュがいつもの元気溢れる笑顔で大輝を労う。大輝は少し照れくさくなりながらもエミュを労った。大輝はエミュに肩を貸してもらって立つとキングブルータスカウの亡骸へと歩みを進めた。


 すぐ近くへと寄ってきた大輝だったがある光景を見て立ち止まる。それは誰も剥ぎ取りを始めていないのだ。大輝はとっくに始まってると思っていたから少し戸惑っている。


「......どうしたんですか?立ち止まって、剥ぎ取り始めないんですか?」


「ええ、始めるわよ。ただ、それを始めるのは大輝君が始めてからよ。」


「いや、全員で倒したから俺から始める必要はないのでは?」


「一番の功労者はあなたよ。それにこれは冒険者の暗黙のルールのようなものだから受け取って頂戴。」


「......わかりました。」


 どうやらそういうことらしい。ならありがたく頂戴しよう......一番いい部位を!大輝が剥ぎ取りを始めると他の冒険者も剥ぎ取りを始めた。それから終わるまでに1時間弱ほどかかった。やはりこれだけの大きさになると剥ぎ取りだけで疲れ、加えて戦闘の疲労もあって長丁場になった。だが、その割には―――――キングブルータスカウは骨まで使えるということなので――――――骨も残さず回収した。


「それでは、帰るわよ。」


「「「「「はーい/おーす/おー」」」」」


 クリシュナの引率の人のような掛け声すると冒険者は各々の返事で返した。そして村に戻っていった。


**********************************************

「それでは今回のクエスト達成とクエストのボス的存在のキングブルータスカウの討伐成功を祝してカンパーイ」


「「「「「カンパーイ」」」」」


 大輝の音頭とともに冒険者ギルドで宴は始まった。


「ゴクゴクゴク......ぷはー、大輝さん!なんなんれすかあの魔法はわらしの魔法がかすんだんじゃないですか~。」


「ちょ、落ち着け師匠。酒に弱すぎだ。」


「いまは、ユリス様と呼びなさい。」


「痛い痛い痛い痛い!ゆ、ゆふぃふはまふねるゆのはやめれくれ(ゆ、ユリス様つねるのはやめてくれ)。」


「――――――――ということなのよ。って聞いてるの大輝君!?」


「はははははは、大ちゃん。ははははは。」


「大輝、耐えろ。特別こいつらは酒が弱いんだ。」


「なら、なんれ飲ませるのかっれ?それはらいちゃんの反応が見たいかららよ~。」


 「誰か助けてくれ」という思いは無情にも届かない。むしろ男性冒険者からの殺気にも似た視線が突き刺さる。逃げ出したいが、右手側にはエミュが左手側にはユリスが腕をガッチリと固めて動けない。そのせいでまだまともな食事ができていな。また大輝の正面に座っているクリシュナが普段のおっとりとした雰囲気をおくびも出さず、大輝へあの時の行動に関して冒険者としての動きを教え......もとい説教をしている。それがなんとも耳が痛いことで。それにリズベットとライナは面白がって助ける気なし。加えて、たとえ逃げ出せても行ける場所がない。下手に知り合いの場所に行けば餌食にされる。だからここは耐えるしかない!


 大輝はとりあえず適当に相槌を打ちながら、話を流していく。とりあえず自分がとってきた肉を食わしてくれ。


「.........え?そうなんですか?」


「そうなの!?大ちゃん!?」


「へ~、第一号がユリスちゃんとはね~。」


「.........。」


 気づいたらなんとも言えない空気になっていた。......え?何した俺?何にうなずいたんだ?適当に返事しすぎて全然覚えていない。......待て、冷静になれ、俺。会話では下手に探れない。ならとりあえずこの場にいる全員の表情で探るんだ。そして、不自然にならないぐらいに周囲を見る。それからわかることはユリスは顔を手で押さえてなにやらもじもじしている。エミュは顔は赤いが目は割に真剣だ。そしてその他は基本的にやにやしている。おそらくこの三人は自分の状況を知っているのだろう。その上で楽しんでいそうだ。くそっ、なんて厄介な連中なんだ。


 大輝は思考を巡らせる。そして一つの答えにたどり着いた。......俺のうぬぼれでなければだが。


「.......大輝さん、私――――――――」


「あ、ちなみにLIKEだぞ?もちろん師匠としてもユリスとしてもな。」


 それに俺の()()()()()()()わからない限りまともにそういうこと出来ないと思うしな。大輝は少なくともベストな回答をしたと思った。だが、ユリスの瞳から光のハイライトが消え、エミュには「それはない」と言われる始末。クリシュナ、リズベット、ライナはつまらなそうな顔をする。おい、なんだその顔は

 するとグッとユリスに胸ぐらをつかまれ、じっと目を見てくる。


「......大輝さん、OHANASIがあります。いいですね。」


「......はい。」


「返事は大きな声で!」


「は、はい!」


 後で説教が確約されてしまった。もう逃げれないな。そんな大輝の心境も知らずリズベットは茶化しにかかる。


「お?なんだそれだけか。てっきりチューすると思ったぞ?」


「な、ななな、何を言ってるんですか!?そ、そんなんじゃありません!////」


「そ、そうですよ。ユリスがそんなことするわけないじゃないですか。」


「それはどういうことですか!?」


「え!?」


 ......どっちにしろ地雷を踏んだ。逃げ場があると思うこと自体間違ってたんだ。そこからさらにエミュも参戦してそれは見事にカオスな宴となっていき、夜は深まるばかりであった。

それはまた次回

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