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第20話 肉フェス#3

「モオオオオオオォォォォォォ!」


「......で、でけぇ。」


 大輝たちが目的地に着くとまず目に入ったのは、それはそれはでかい、通常のブルータスカウの何十倍の大きさがあるというのかというブルータスカウがいた。大輝が精霊の瞳で調べると『個体名 キングブルータスカウ ランクB』と出てきた。どうやら通常のブルータスカウの上位種のようだ。クリシュナ達以外の冒険者は若干引け腰で、何人かは怪我を負っていた。先ほどまで戦闘していたようだ。


 キングブルータスカウはこちらの存在に気づくと地を蹴ってこちらに向かってきた。速い!あいつ、弱い方から蹴散らしていくつもりか。その時、そのキングブルータスカウの頭が跳ね上げられた。何が起こったのか。大輝は周囲を探るとユリスがいた。どうやらユリスが魔法を使って動きを止めれくれたようだ。


「皆さん、ここは私たちが動きを止めます!そのうちに動けるものは怪我人を連れてこの場から離れてください!」


 クリシュナが大声で撤退命令を出した。こんな姿は初めて見る。それほどの脅威ということか。多くの冒険者が撤退していく中、大輝はキングブルータスカウを見つめながら立ち止まっていた。正直勝てる気はしない。だが、もしあいつに勝ったら.......もちろん一人では無理だ。正直これからの行動はかけになる。後先考えてないと揶揄されるかもしれない。


「おい、大輝!早くここから離れるぞ!」


「エミュちゃんも早く!」


 リュークとルナが声をかけるが、依然として大輝とエミュは立ち止まったままだ。怪訝に思ったリュークが「何してんだ!」とさらに声をかけるが二人とも何も答えない。


 現在、大輝の闘志がメラメラと燃え上がっていた。思わず武者震いをする。これが冒険者としての矜持か、もしくはただのバカか。どちらでも構わない。なぜかわからないが一目見た時思ったんだ.......あの強敵を倒したいって。大輝は大きく息を吸うとそれから大声を出した。


「冒険者、全員に告ぐ!俺の名は月島大輝!今からこいつを討伐せし者の名だ!俺の雄姿ををしっかりと目に焼きつけとけ!」


 大輝は剣をビシッとキングブルータスカウに向けた。この声の主にこの場にいる全ての冒険者が注目した。そしてほとんどのものがこの宣言をバカだと思った。するともう一人大声を出す者が現れた。


「冒険者、全員に告ぐ!私の名はエミュ・ドラグニル!誇り高き竜人族だ!竜人族の誇りにおいて、敗北などありえない!」


 この場に数秒の静寂が訪れる。エミュの正体を知って、さらに恐怖したのだろうか。大輝は思わず尋ねた。


「公言して良かったのか?」


「......大丈夫だよ。私は皆を信じてる。......それに、たとえダメだったとしても.....大ちゃんはそばにいてくれるでしょ?」


 エミュは屈託のない笑顔を見せる。大輝は「ああ、もちろん」と答えるとさらに嬉しそうな顔をした。

大輝もまた自分に続いてくれたことが嬉しかった。だが、その後に続くものはいなかった。......そりゃそうだ、冒険者活動なんて命あってなんぼだ。わざわざ無理して危険に飛び込む必要はない。そう思い歩き出そうとすると後方から大声が放たれる。


「俺の名はリューク・カイザ!そこにいる大輝よりも早くこのデカブツを倒す者だ!」


「ちょ、リューク!何言って―――――――――――」


「俺のはラドフ・ガルドス!そこにいるバカ二人よりもさらに早く奴を倒す者だ!」


「ラドフまで!」


 リュークとラドフは高らかに討伐宣言をした。「後に続くとしたらお前らだと思ってた」と大輝は二人にサムズアップをする。二人もサムズアップで返した。これをキッカケに冒険者の何かが外れたのだろうかポツリ、またポツリと次第にその声を増やしていった。若いのが恐怖に立ち向かおうとしてるというのに自分はどうだ。自分が若かった頃はこんなに憶病ではなかったはずだ。若いもんに負けてたまるか。ベテランの意地を見せろ。

 そして最後には......


「「「「「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!!」」」」」


 全員が拳を空に突き立て、雄叫びを上げていた。大輝はここまでなるのは想定外で驚いていた。すると近くにクリシュナが寄ってきた。


「ふふっ、やるわね。冒険者の弱った闘志を強くするなんて。見直したわ。」


「そんじゃないですよ。俺の都合でみんなを巻き込んだだけです。」


「それでも、決断したのは皆よ。そこまで気負う必要はないわ。それに私も仲間もあの言葉を聞いて力強く感じたわ。これはお礼の前払いね......チュッ。」


「うぉ!」


「クリスさん!?何やってるの!?」


 クリシュナは大輝の頬に軽く唇を当てた。大輝は咄嗟に顔をそらしたが、すぐに顔に熱を帯びていく。「ふふっ、可愛いわね」と大人の余裕を見せて仲間のもとへ向かった。しばらく呆然としていたが、エミュに肘打ちされて我に返る。そうだ今は浸っている場合じゃない。


「エミュ、俺たちも続くぞ。」


「うん、わかった......けど、それはそれね。」


「.......。」


 どうやら見逃してはくれないようだ。完全な不可抗力なんだけどな。大輝はそう思いながらもすぐに気持ちを切り替える。そして、他の冒険者も集まってきた。


「それでは、フォーメーションを簡単に説明するわ。」


 そういって説明された内容はこうだ。まずパーティを右翼部隊、左翼部隊、突撃部隊、魔法部隊の四つでリーダーはそれぞれリズベット、ライナ、クリシュナ、ユリスの四姫が務めることとなった。


 それから最初に右翼部隊、左翼部隊が交互に攻撃を仕掛けていく。これは魔物が集中的に攻撃してくる奴を優先的に叩くという性質を利用してのことだ。そして敵の注意が逸れたところで突撃部隊が懐に入り各々の強力な攻撃を当てていく。そして最後に右翼、左翼、突撃部隊が稼いでいた時間で詠唱を完了させた大魔法をぶちかます。これで倒れなければ同じことを繰り返すというものだ。その際の行動は主にリーダーの指示で動き、それがなければ個人が臨機応変に対応していくという形だ。


 ちなみに、クリシュナの指示で大輝は強制的に突撃部隊だ。やはりこの戦いの発起人が前に立たないのはおかしいとのことらしい。


 四パーティがそれぞれ配置に着いたのを確認するとクリシュナが大輝の肩に手を置いた。


「戦闘開始の合図はあなたが始めなさい。」


「俺ですか?」


「そうよ。あなたの勇気にみんな奮い立ったのだから。あなたが思う言葉で始めなさい。」


 その言葉を聞くと大輝は一度目を瞑り、大きく深呼吸した。それから大声で叫ぶ。


「あのキングブルータスカウ()を全員で食らいつくすぞ!」


「「「「「おおおおおおおぉぉぉぉぉ!!」」」」」


 大輝の言葉に全員が反応する。そして初めに左翼部隊が動き始めた。キングブルータスカウはその動きを追っていく。


氷山撃(アイスバーン)!!」


 視線がそがれたところを右翼部隊のリズベットが強力な一撃を与えた。リズベットが剣を振るうとそこからまさに氷山というべき氷の塊がキングブルータスカウを襲い、左前足、左後ろ足を氷漬けにした。そこからさらにルナと他の冒険者の攻撃が続く。


雷刃(ボルトエッジ)!」


 ライナは二つの双剣を逆手に持ち、さらに魔法の効果で刀身を伸ばした。そしてキングブルータスカウへ向かって跳ぶと両腕を振るいその胴体に罰点印をつけた。さらにリュークとラドフと他の冒険者が続く。


「モオオオオオオォォォォォォ!」


 キングブルータスカウは苦しそうな声をあげる。よしよし、効いてる効いてる。それから「行くわよ」というクリシュナの言葉に従い、大輝はキングブルータスカウに突撃した。


聖槍(ホーリーランス)!」


風裂斬(グラムソーサー)!」


「せいやあああああ!」


 クリシュナ、大輝、エミュと強撃をぶちかましていく。そして他の冒険者も攻撃したのを確認すると即座にその場から退く。


「「「「「―――――――その理を示せ!流星雨(スターダストレイン)!」」」」」


 魔法部隊の大魔法が放たれた。炎、風、水、雷、土、光とそれぞれの魔法でできた矢が無数に出て、キングブルータスカウに直撃した。何十、何百発もの矢がキングブルータスカウに刺さっていく。


「モオオオオォォォォ!モオオオオオオォォォォォォ!」


 キングブルータスカウはさらに苦しそうな声を上げ、少しでも頭に当たるのを避けようと左右に頭を振るわせる。まだ倒れる気配はない。なら2ラウンド目だ......とはいかなかった。


 キングブルータスカウは小刻みに体を震わせると凍っていた足の氷を壊して、後ろ足を軸に大きく仰け反った。。それは、明らかにヤバい攻撃がくる前兆であった。


「全員、衝撃に備えて!」


 クリシュナの怒号に近い声を聞くと同時にキングブルータスカウは上げていた両前足を地面に叩きつけた。


「ドゴ―――――――――――――――――ン!!!」


 叩きつけた瞬間、キングブルータスカウの周囲一帯に強い地震が起こり、さらに地割れも起きて地面を浮き上がらせた。その攻撃に多くのものが態勢を崩し、その攻撃によって空中に打ち上げられた冒険者が地面へと落下してまた多くのもの怪我をした。


「みんな、大丈夫?」


 クリシュナは周囲に確認を取った。右翼、左翼、魔法部隊と全員生きている報告を受けたが、すぐそばにいるエミュから切羽詰まった声を浴びせられた。


「クリスさん、大ちゃんがいないの!?」


「ほんとに!?」


 エミュの言葉を聞いてすぐさま周囲を探るが確かに姿は見えない。すると「おい、上を見ろ!」と誰かが言った。それを聞くとクリシュナとエミュは上を見る。そこには......


「おらああああああ!大炎裂刃(バーニングソリッド)!」


 大輝がいた。しかも空中に。大輝は剣を両手に持ち、大降りに構えた。キングブルータスカウには気づかれていない、今がチャンスだ。

 大輝はキングブルータスカウの頭に向かって思いっきりぶった切った。


「モオオオオォォォォ!!」


 キングブルータスカウは苛立った声を上げた。大輝はクリシュナとエミュのもとに落ち、安全に着地した。すると未だ驚いた表情のクリシュナのが大輝に尋ねる。


「大輝君、何をしたの?」


「あー簡単に言うとですね。あのキングブルータスカウ()によって浮き出された地面の勢いを利用して、自分の後方に風魔法を当てて飛び上がったって感じです。」


「さすが大ちゃん!」


「随分と危険な無茶をするものね。」


「危険の無茶じゃないですよ。チャンスの無茶ね。」


「ふふっ、ふふふふふ......男らしいのは好きよ。でもね、それとは別に話があるから早く終わらせましょう。」


「わ、わーもう少し時間がかかりそうだー」


 クリシュナは笑顔なのに全然笑ってない。明らかに矛盾していることを言ったがこれが一番しっくりくる。大輝は別の脅威を感じながら、棒読みで適当に返した。どうしよう怖くてクリシュナさんの方を向けない......とまあ、茶番はここまでにして。


 大輝はクリシュナにある提案をする。


「クリシュナさん、時間を稼いでもらえないでしょうか。」


「時間を?何かするってことよね?」


「はい、とっておきのを一発。その際エミュにも手伝ってもらいますけど。」


「私も......!」


「エミュも気づいたか、そうアレを使う。アレならばワンチャン倒せるし、そうでなくても確実な大ダメージを与えられる。」


「......二人には策があるというのね。わかったわ、時間を稼いであげる。」


「ありがとうございます。」


 大輝はエミュと共に一度後方へ行く。するとクリシュナの指示が飛ぶ。


「全員に告ぐ。今から私たちは大輝たちの時間稼ぎをする。右翼、左翼はそのままに魔法部隊は二つに分けて先の二つのバックアップをして。そして、相手の強撃に十分に注意しなさい。」


「「「「「おおおおおおおお!!」」」」」


 クリシュナ達が時間稼ぎし始めた一方で大輝はエミュにあるものを持ってくるよう伝えた。エミュは一度、大輝のもとを離れ森の奥に入っていく。


 大輝はふと自分のストレージから出したアレを見る。.....はあ、またこれに頼る機会が来るとはな。念のためと思って入れといたが見事に的中だとは。まあいい、これを奴にぶつけてやる。大輝は覚悟の目をして作業に取り掛かった。

無性に肉が食いたい時ってありますよね。

それではまた次回。

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