第19話 肉フェス#2
ギルドに着くとまず察しの良いルナに大輝とエミュの妙な距離感について茶化される。また、それに釣られたルナの友人も集まりだして茶化された。大輝とエミュはひたすら黙秘を貫いたが、それすら見透かされているのかイジり、イジり、イジられる。......辛い。くそぉ、リューク!ラドフ!笑って見てないでお前の中間の蛮行を止めろ。
するとしばらくして、二回手を叩く音が鳴った。その方向を見るとクリシュナが皆の注目を集めていた。
「ふふふっ、皆さん、注目して。今日のクエストの討伐リーダーを任されたクリシュナよ。気軽にクリスでいいわ。それで毎年参加してる皆さんはご存知だと思うけれど、クエスト内容はブルータスカウだわ。」
今更だが、今回のクエストは初のマルチクエストだ。マルチクエストとは、簡単に言えば複数のパーティが一つのクエストに挑むというやつだ。そして、今日は肉フェス。今、このギルドにいる全パーティがが参加している。クリシュナがリーダーとなっているのはランクの高さによるものだろう。
「私はリーダーであるけれども、今回のクエスト自体は私たちは初めてなのよ。まあ、討伐と剥ぎ取りだけと聞いてるけど、わからないこともあると思うの。なので、私たちに気軽に話しかけて......ね。」
......あざとかわいい。と大輝は思ったが、どうやら大輝だけではないようだ。他の男性冒険者もしっかりと鼻の下を伸ばしている。女性冒険者の中にも見惚れているものがいる。が、その大半はキモイ顔をしている男性冒険者に対して冷めた目を向けている。
「.....うぐっ。」
「............。」
突如として横にいるエミュに肘打ちされた。無防備だったわき腹に肘が突き刺さる。何事かと大輝はエミュを見るが、エミュはクリシュナの方を見たままこちらに見向きもしない。こころなしかこちらに関心がないような目に見える。......焼きもちだったりするのか?いや、それはないか。
それからクリシュナの後に続いて、リズベット、ユリス、ライナと自己紹介をしていった。あの時、応接室でしたような自己紹介はさすがになかった。だが、さすが四姫といったことだろうか。たったそれだけで男どもの士気という名のボルテージが上がっていった。あまりの上がりようにクリシュナ達も若干引いていたが、おおむね良好。クエストは始まった。
目的地にたどり着くと、赤々とした表皮に鋭い角を携えた牛が何体もいた。あれがブルータスカウか。あれは精霊の瞳で解析するところによるとランクはCだ。今の俺のランクより一つ上だけどエミュがいれば問題なく倒せるだろう。それにしてもなんでブルータスカウなんだろうな。名前に入ってるの青なのにな。
ブルータスカウは2メートルもの体躯でありながら、素早く力強い攻撃をしてくる。なので基本的ひとつのパーティに一体といった感じになった。例外としたら、あの四姫だろう。そして、現に大輝たちも一体のブルータスカウに対峙している。
ブルータスカウは前右足で地面を蹴りながらタイミングを見計らうと次の瞬間にこちらに向かって突撃してきた。ブルータスカウは頭を下げ、自慢の角で突き刺そうとしてくる。大輝はそれを剣で受け流した。......よし、できてる。これはあの夜以降、クリシュナ達に教えてもらった技術だ。まだ、初歩の初歩らしいがそれでもできたことが嬉しかった。
「空切断!」
「モオオオオォォォォ!」
大輝は自身の横を通り過ぎるブルータスカウに斬撃を放った。ブルータスカウに多くの切り傷がつけられる。そのことでブルータスカウは大輝を標的にしたが、そのせいで気配を消していたエミュに気づかなかった。
「せいやっ!」
「モガフ!」
エミュの強烈な一撃がブルータスカウの顔の側面にぶちこまれる。ブルータスカウは変なうめき声を上げながら、そのまま2メートルもの体躯が吹き飛ばされた。大輝はエミュのあいかわらずの馬鹿力に苦笑い。でも、これで決定的な隙ができた。
「追走の風......おりゃああああ!」
「モオオオオオオオオォォォォォォォォ!!」
大輝は自身に補助魔法をかけて移動速度を上げた。そしてブルータスかに向かうと無防備になっている頭に向かって剣を振り下ろした。ブルータスカウは断末魔を上げると頭と首から下の胴体がお別れした。
「ふー、やったな。ナイスファイト、エミュ。」
「うん、大ちゃんもね。」
大輝は剥ぎ取りを始めた。手早く肉を切り取っていく。......随分と慣れたものだ。最初は生臭さや手の感触に残る気持ち悪さが拭えなくて何度も吐きかけたな。でも、この経験があったおかげで食事がより美味く感じたな。......よし、剥ぎ取り終了。
あたりを見回すともうすでに剥ぎ取りまで終わった冒険者が次の目的地に向かっている。さすがに早いな。やはり長くやっていることだけあるな。すると後方から声をかけられた。
「よう、調子は良さそうだな。」
「リュークか。お前らもな。」
「そりゃ、あったりめぇよ。この俺様が――――――――いてっ。」
「調子乗ってんじゃないわよ。勝手に突っ込んで、運よくあの牛が惑わされただけでしょうが。」
自慢げに話そうとするリュークの頭をルナはひっぱたいた。「俺のおかげだろ。」とリュークは言おうとするがルナは睨みで行動を制止する。リュークももうルナの地雷原は分かっているだろうに。
大輝たちはリューク達とともにしばらくしてふとあるもの見つけた。その瞬間、大輝は思わず「げっ」と声が漏れた。その声に気づいたエミュも同じく「げっ」と声を漏らす。そこにあったのは凄惨な衝撃を与えた例のリンゴだった。大輝たちなにごともなかったかのように通りすぎようとするが、そのリンゴにリュークとラドフが気づいてしまった。まずい!
「お!こんなところに美味そうなリンゴが―――――――――」
「な、なあ。そんなの食ってるより早く目的地行こうぜ?......ラドフもな?」
「あん?大丈夫だって、もう誰かついてるから目的地は逃げねぇよ。」
「ほ、ほら?でもね、私たちの取り分とかも減っちゃうかもよ。」
「安心してください、エミュ。あまり取れなっかった冒険者はベテラン冒険者が分けてくれるんです。それにしても、エミュもどうしたんですか?」
「いや~。」
大輝もエミュも止めるのに必死過ぎて不審な行動をしすぎた。そのせいで不審な目で見られている。だが、友の命には替えられない。
「あ、あ!だから食おうとすんな!」
「おいおい、一体何なんだ?大輝、お前、おかしいぞ。」
ついに言われたが行動は言うよりも易し。大輝はリュークからリンゴを掻っ攫うと遠くの木に向かって投げつけた。そして木に当たった瞬間
「ドガ―――――――――――――ン!」
「「「「........。」」」」
突如として起きた大爆発にリューク達は放心状態になった。大輝とエミュはその光景に苦笑い。まあ、最初はそうなるよな。と思いながら、無言で空間宝物庫に詰め込んだ。
「モオオオオオオオオォォォォォォォォ!!!」
「「「「「!!!」」」」」
突如として怒号のような雄叫びを聞いた。全員、その声のする方向を向く。なにやらとんでもない威圧感がある。声的にブルータスカウに似ているが......
「行けるか?」
「ふっ、当たり前だ。」
「はっ、誰に言ってやがる。」
「全然問題ないわ。」
「私も大丈夫です。」
「行けるよ~。」
「よし、行くぞ!」
大輝たちはその威圧の先へと向かった。
それではまた次回




