第17話 女(※大輝)の魅力
「ハァァァァ二ィィィィ―――――――――!」
「わあああああ!」
「ちょっとやめなさい!止まりなさい!」
17:55。逃げる大輝、それを追うリズベット、それを追うユリス。
少し戻って17:40。予定よりも早くにギルドに着いた大輝はそれよりも早くにいたライナとクリシュナと話していたが、途中で言いようのない寒気に襲われた。その方向を見ると女装大輝を見てハアハアと興奮した様子でギラついた目をしたリズベットの姿が!リズベットは風を切るような速さで大輝に突っ込んだ。それを見てもはや反射的に逃げる大輝。大輝を追うリズベットを追うユリス。
そして現在に至る。クリシュナはパンパンと二回叩くと走り回っている三人に声をかける。
「はいはい、そこまでよ。もうすぐ時間だからこちらに集まりなさい。」
三人が集まるとクリシュナは作戦を説明しだした。
「今回の作戦はいたってシンプルよ。敵のアジトに着いたら、大輝とエミュちゃんは敵を引き付けて。」
「具体的にどんな感じとかありますか?」
「うーん、そうねー。」
クリシュナは顎に指を当て、数秒考えると「こんなでいいんじゃない?」と一言。
「敵のアジトに一発大きいのぶちかましたら?」
「......え、ええー。」
それ敵の注意引きまくりじゃ......いや、陽動ならそんな感じでいいのか?まあ、俺よりベテランが言ってるんだからいいんだろうけど。確実にブチギレられそうだな。
「大輝とエミュちゃんが引き付けてる間、私とリズが内部へ突入、そして制圧。ユリスちゃんとライナちゃんは逃げる人もいるだろうからその人たちを捕まえて。」
「俺たちは陽動だけって言ってましたけど、捕まえられるなら捕まえた方がいいですよね?」
「そうね。でも無理しなくてもいいわよ。できる範囲で構わないわ。それじゃあ、時間になったから出発しましょうか。」
大輝たちは敵のアジトに向かって歩き始める。
大輝はなにやら浮かない顔をしていた。人と戦うということもそうだし、相手が殺しにかかって来るかもしないってのもある。なんというかそれはもう流れるままに身を任せるしかない。だが、ある程度は心を整理しとかないと。しかし、唯一整理がつかないことがある。
「俺、この恰好の必要あります?」
大輝の今の姿は昼間と同様、金髪のゴスロリだ。この時には大輝の羞恥心はもうすでにこと切れている。すると大輝の言葉に全員が反応した。
「面白からよ。」
「面白いからな。」
「面白いかららね。」
「面白いからですね。」
「面白いからね~」
「え!?皆さん!?それにエミュまで!?」
その回答はほぼ即答に近かった。エミュまで言われたことに妙な裏切られ感を感じる大輝。そんな大輝を見て「ふふっ」と笑うクリシュナは言葉を付け足した。
「それに相手も油断しやすいでしょ?......女だかっらってだけで下に見てあざ笑うあいつらの顔を想像するだけでイライラしてくるわ。あいつらの価値なんて虫以下よ。虫様を見習って地面を這いつくばっていればいいわ。私が忌々しく踏んであげるから。いや、それだけじゃ足りないわね......。」
「......クリスさん。スイッチ入ってます。落ち着いてください。」
「ふふっ、ふふふふふふふふふ。」
「大輝、こうなったクリスはしばらく放置しとけば勝手に戻るから。」
そんなもんなのか。だがなあ、早く止まってほしい。単純に怖いんだよな、溢れ出てるオーラが。油断していたら、俺まで鞭で打たれそう。「頼りがいはあるんだけどなぁ」と大輝は疲れた顔をしながら目的地に向かった。
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場所は変わって、薄暗い森の中。その近くに今は廃れた屋敷があった。そこの門の近くには二匹の番犬がいて、「グルルルルル」と喉を鳴らしながら、敵の侵入を阻んでいる。そしてそこから少ししたところに四人の男たちが屋敷の扉の前で酒を飲みかわしながら、日頃の愚痴を言っていた。
「ゴクゴクゴク、んあ―――――――、やっぱ酒はうめぇな。」
「おいおい、俺が買った酒だぞ。誰がそんなに飲んでいいって言ったよ。」
「お前のじゃねえだろ。」
「そうそう、今日はたまたま頭の機嫌が良くてもらえただけだろう?」
「それでも買ったから、それは俺のものだろが。......はあ、それにしてもどんだけ金にがめついんだよ、頭は。」
「そうそう、それにその大半の金使って行ってるのは色街だぜ?どうせ行くなら俺たちも連れってくれよ。」
「俺たち下っ端が行けるわけねえだろ。それにここでの頭への文句は厳禁だ。」
酒が入ってか、いろいろと饒舌になる下っ端AとB。下っ端Cは冷や冷やしながら言葉を慎むよう言及する。すると、下っ端Dもその話はどうかと思い話題を変えた。
「そうそう、下っ端C。お前、女性恐怖症はどうなった?」
「お、お前。それをこいつらの前で言うか......。」
「ん?なにそれどういうこと?」
「俺も初耳なんだけど。」
下っ端AとBが身を乗り出して、興味津々に聞いてきた。言いずらそうにしているCを横目で見て、笑いながらCの秘密を暴露する。
「こいつな、昔、女に偽造品を掴まされて借金地獄になって途方に暮れてたのよ。んで、仕事帰りの俺がたまたまこいつを見つけて、ここに入れてやったわけよ。」
「はははははは、それで女嫌いになったと。」
「嫌いじゃない苦手なだけだ。」
「くくくくくっ、お前も不憫だな。くくくくくっ。」
「こうなるって分かってたから言いたくなかったんだよ~~~~~!!」
馬鹿笑いするAと堪えきれてないBを見て頭をかかえるC。Dはその光景を見ながら、酒を飲む。その時、Dは微かな音が聞こえたような気がした。
「ん?」
「ははは、ふー、どうした?」
「いや、気のせいかもしれない。」
「そうか、なんか聞こえたのか?」
「靴音っぽいのがな。」
その言葉を聞くとBが笑いながら否定する。
「それはおかしいだろ。ここに来るまでに番犬が吠えてねぇ。」
「......まあ、そうだな。」
「なんか腑に落ちてねぇみたいだな。いいか?あの番犬を手懐けるのも無理だぞ。あの犬は頭によって調教されている。頭と頭に認められた奴以外噛み殺すぞ。」
「......ああ、そうだな。確かにそうだ。」
Dは「気のせいだ」と思い直すと不安をかき消すかのように酒を飲んだ。
「こつん。」
「!?」
「おいおい、今度はどうした?まさか、また聞こえたって言うんじゃねぇだろうな。」
「お前はさっきから酒を飲み過ぎだ。」
「つーか、いつまで人の酒飲んでんだ!」
三者三様に言われるが、Dは動きを止めて耳を研ぎ澄ましていた。三人はDの様子がおかしくなったのかと思うだけで深くは気にしなかった。
「こつん。こつん。」
「「「!?」」」
D以外の三人は動きを止めた。それはDの言う通り音が聞こえたからだ。四人は聞こえた通路側の方に目を向ける。四人の顔は先ほど違いすっかり赤みが抜け、そして少しだけ心拍数が上がっているような気がした。すると通路側から月明かりに照らされてできた影がこちらに向かってゆっくりと近づいて来てるのがわかった。静寂が流れる。森のさざめきと心音、そして靴音だけが聞こえた。
そして現れたのは......
「やっほ~~、夜遅くにこんばんわ~~~~!!」
「突然だけどあんたたち!悪いことをするのは見過ごせないわ。この私たちが月に代わっておしおきよ!」
「「「「........。」」」」
大声で叫ぶ水色の髪をした美少女と金髪ゴスロリの美少女。もちろん大輝とエミュだ。そして大輝は女声になっている。
注目を集めようと考えた大輝のセリフは完全に不発に終わった。反応がない。大輝の顔は赤くなる。別に全然問題ないし。これはどうせ女装しているならと言ってみたくなっただけだし。しっかりとポーズまで決めたけど全然恥ずかしくないし。
一方、下っ端どもの反応は「か、かわいい」というものだった。
「......ごほん、あんたたち。大人しく投降するならまだ優しくしてあげるわよ。」
「うん!優しくしてあげる。」
「「「「......ストライク。」」」」
「え?」
「「「「優しくしてください!!」」」」
「お、え?......おう。」
四人の下っ端どもは何かを言ったかと思えば、突然向かってて来るとそのまま土下座にした。膝、絶対痛いだろうと思うほどの見事なスライディング土下座であった。それに、なぜか熱い吐息を繰り返している。大輝は思わず一歩後ずさる。こいつら俺の言った言葉の意味を絶対変に捉えてやがる。
大輝は頬を引きつりながらもできるだけ愛想よくしながら、四人をストレージから取り出した縄で縛った。距離を取りたかったのでとにかく迅速に。......どうしよう、こいつら縄で縛られてるのに興奮してやがる。
一旦大輝はこいつらを無視すると再び大声を出した。
「おーい、いるんだろ~~~~」
「反応して~~~~~~」
大輝は気配察知で、エミュは臭いで仲間がいることはわかっている。しかし、窓はカーテンで閉ざされていて中は見えない。あくまで隠れてことを済ませるようだ。はあ、しかたない。
大輝はクリシュナから預かっていた時計で時間を確かめ、そして右手を屋敷に向けた。加えて、大きな声でカウントダウンを始めた。
「「10......9.......8......」」
敵の動く気配はない。
「「5.....4......」」
まだ動かない。
「「3.....2......」」
バッと一斉に窓が開いた。その窓からは魔術師らしき杖をもった姿が見えた。そして隠れていた時に詠唱していただろう魔法を大輝に向かって放った。その放たれた魔法の数に先に捕まっている下っ端たちは見捨てられたと思い慌てふためいてる。確かに、この数は少しまずいな。ちょっと強めのやつにしとくか。
「.....1......0。......烈爆炎弾 」
大輝の放った魔法は向かってきた魔法をすべて打ち負かし屋敷に大爆発を起こした。あまりの爆発に大輝も「あっれ~?」と腑抜けた声が出た。一方、エミュは興奮気味だ。
もともと老朽化した廃れた屋敷なので、炎はみるみるうちに広がって中にいた盗賊を外に追い出した。しかし出てきた人数は少ない。クリシュナとリズベットが仕留めているようだ。こちらに文句の一つを言おうものなら、その隙を仕留められている。
そして数分後......
「お~~~!」
大輝の目の前には70人以上の盗賊たちが縄で縛られている。これで全員のようだ。それにしてもさすがAランク冒険者、一切の無駄なく剣術と魔法で次々と倒していった。俺もあんな風になりてぇ。ちょっと指導してくれるか頼んでみるかな。
それとは関係ないが大輝は今エミュの背に隠れている。大輝がなぜそのような行動をしているかというと......
「「「「「ジ―――――――――――――――。」」」」」
盗賊全員からの熱い視線だ。特に親玉の視線がエグイ。盗賊らは大輝が男であると知らないので、完全にロックオンしている。大輝のSAN値がゴリゴリと削られていく。うぷ、吐きそう。
「大輝さん、そろそろ現実を見せてあげたらどうですか?」
「ふふっ、ユリス、良いアイデアね。大輝君、やっちゃいなさい。」
「......わかりました。俺もこの空気に耐えかねてましたからね。」
......俺?盗賊全員の思った感想が一致した。それに心なしか声も低いような......。まさか!?大輝はゆっくりと頭に手を伸ばし、髪を掴む。
「「「「「ま、待て!!」」」」」
「......俺はな―――――――――――」
「「「「「や、やめてええええええええ!!」」」」
「男だぞ。」
「「「「「わああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」」」
大輝が素早くカツラをとって正体を明かした途端、盗賊らは発狂したかのように叫んだ。それは森の遠くまで響いたという。
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とある森とある場所に一人の男と三人の女がいた。男はふとある方向を見た。その行動に一人の女が怪訝な顔で尋ねる。
「どうしたの?」
「ん?なんでも......いや、君たちに嘘はつきたくない。正直に話そう。」
「もしかして......。」
「ああ、君が思ってる通りだよ。また、僕の助けを待っている女神がいると思っただけだ。この先の場所にな。」
そういうと男は木に寄り掛かる。その男に寄り添うように密着する三人の女。男は静かに月を眺めた。
書いてたら、長くなって二つに分けようと思ったんですが、切るタイミングを逃して、今までで一番長くなってしまいました(笑)。作者はあんまり一回で長く書けるタイプではないので、今後は分けるかもしれません。
それではまた次回




