第15話 聖霊国華の四姫
さかのぼることリュークとラドフが気絶された時のこと、少し回復した大輝はリュークとラドフを引き摺りながら家に戻った。そして、戻るとすぐにルナがおかしなことを言い始めた。
「それじゃ、大輝、今から罰を執行するわね。」
「......!おい、ルナ、何言ってるんだ?もう罰は受けたぞ。」
「?、それはエミュの分でしょ?私たちはまだよ。」
「!!」
「大輝君は私たちごと......その、え、エッチなことしようとしていたんですよね。」
「ま、待って、なんかその言い方すごく語弊があるような感じが―――――。」
「大ちゃん?どこにも語弊なんてないよね。」
「......はい、そうですね。」
エミュの笑顔に圧迫感を感じる。ここで何を言っても詰みだ。おとなしく受け入れるしかない。
「......大ちゃんは誰でもいいのかな.....。」
「ん?エミュ、何か言ったか?」
「いや、何も言ってないよ。」
エミュが何か言ったような気がしたが気のせいだろうか。表情見てもいつも通りのニッコリスマイルだ。やはり気のせいか。
「それじゃ、大輝に受けてもらう罰はこちら!」
「これです。」
「!」
シューレイが手に持って見せたものはおおよその人なら永遠に着ることのないゴスロリ。大輝は引き気味に苦笑い。まさかこれを着ろと!?
「本気か!?」
「本気も本気よ。前から化粧すれば似合うと思ってたのよ。」
「化粧もするのか!?」
「さ、おとなしく観念しなさい。」
「ちょ、待って、わあああああ!」
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「つーわけだ。」
「......なるほど。」
大輝はリューク達が目覚めるまでの経緯を話した。とりあえずは理解してくれたようだ。だが、もちろん理解しかねることもある。
「で、俺たちはどうして目覚めた時からこの恰好なんだ?」
「......なんか、俺だけじゃ可哀そうだからってのとこれまでのことを改めて清算してもらう意味でやったらしいのだが、そうそう以上に醜い生物が出来てしまったとのことだ。」
「酷い言われようだな。」
「これに関しては俺らはどうしようもないな。」
「いや、お前らは過去を悔い改めろよ。」
なんというかすがすがしいほどに反省の色がない二人にある意味感心する大輝。すると、玄関から音がした。丁度リューク達が目覚める少し前に何かを買いに行ったエミュ達だ。それにしても、なぜだろうか。もうすでに俺にゴスロリを着させ、化粧するまで行っているのだが......悪い予感がする。これ以上、俺に何かするとしたらアレしかない。
ルナは男どもの前に立つと袋からブロンド色のなにかを取り出した。......やっぱり!
「さてこのブロンドのカツラ、これで最後よ。じっとしてなさい。」
「大輝君は絶対似合いそうだから特に言うことないけど、リュークとラドフはますますひどい絵面になりそう、いやなりますね。」
「「うるさいわ!!」」
「大ちゃん、良かったね。似合うって。」
「......全然うれしくない。」
男どもは完全アウェーに立ってる。しかも、椅子に縛られているので逃げることもできない。大人しく受け入れる、否、受け入れさせられる。頭を振って悪あがきをするがエミュに頭を固定されて全てが無意味。そして大輝の頭にカツラが装着された。
「ほーら、似合う、にあ......う。ねえ、似合い過ぎじゃない?」
「はい......そうですね。」
「大ちゃん、可愛い。ほら、大ちゃんも鏡を見て。」
思いのほかの高評価に驚く大輝。そしてエミュに促されるままに鏡を見る。......!
「これが俺......。」
自分でも見間違えるくらいに鏡には女性の姿が映し出されている。あまりの出来栄えにルナはちょっと引いている。俺、ちょっと女装の才能あるかも。
「ね、ねえ......大輝、高い声とか出せない?」
「ま、まあ、出せるけど、俺の特技声帯模写だし。」
「なんというか、初めて聞く特技ですね。要するに声まねができるってことですか?」
「そんな感じ、俺が出せる声だったらな。」
「それじゃ、一杯水くれ。」と大輝が言って水を受け取ると、ちょびちょび水を飲んでは「あーあー」
と声を出して喉を調整する。
「......こ、これでどうだ?」
「「「「「おおーーーー!!」」」」」
大輝が発した声は紛れもなく女声だった。その完成度に一同感嘆の声が漏れる。町で見かけて男と言われてもその言葉を嘘だと思うレベルだ。なんだかわからないが謎の自信が湧いてきたぞ。大輝の思わぬ魅力を発見した一方で、ルナはリューク達を道端の石を見るかのような目で見ていた。
「あんたたちは、つけなくてもキモイってわかるわ。」
「「余計なお世話だ!!」」
「ですが、これは罰なので似合わないからといってやめるとはいきませんよ?」
「「いや、そこはいってくれよ!!」」
「それも、そうね。」
「「納得してんじゃねえええええぇぇぇぇ!!......ああああああああ!!」
そうして着けてみたもののやっぱりキモイ。チンパンジーとゴリラにカツラをかぶせ、ゴスロリを着せただけだ。見るだけで毒。できるだけ視界から外しておこう。ルナはそう思いそっと目をそらす。かぶせられたリューク達も目が死んでいる。そんな中、エミュがさらに爆弾を投げ込んできた。
「それじゃ、みんなで外に出よう!」
「「「なんで!?」」」
大輝たちは揃って疑問の声を上げた。それにエミュはさも当然のように返す。
「だって、クエスト達成報告してないでしょ?それにもともとその予定もあったから一石二鳥だね。」
「「「いやいやいや!」」」
「無駄よ、あんたたち。エミュちゃんは誰にも止められないわ。」
「「「やめて~~~~~~~~!!!」」」
拘束を解かれるとすぐに大輝はエミュに襟を掴まれ、リュークとラドフはそれぞれルナとシューレイに耳を引っ張られ強制的に外へ出されいった。
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ギルドに着いて、女装している経緯をベテラン冒険者に話す(半強制的に)と盛大に笑われた。そりゃ、そうだ。笑いもの以外何者でもない。ただ、ほぼほぼ笑われていたのはリュークとラドフで、大輝は謎の歓声が一部から上がった。そのさらに一部は「意外といけるかも」、「俺もワンチャンありだな」と明らかに不審な会話をしている。それを聞いた大輝は貞操が危ないと身もそぞろであった。
こんなところにいては危ない。早く報告して帰ろう。そう思って大輝はエミュと共に受付に向かうと後ろから若い女の人たちの声が聞こえてきた。
「ふー、やっと着いたな。」
「長かったですね~。」
「ふふっ、でも意外と楽しかったじゃない。魔物もたくさん狩れたし。」
「そうらよ。思わぬレア素材も入っらじゃない。」
入ってきたのは一言で言えば男装麗人といった感じのポニテールの女性、見た目は中学生ぐらいの少女、なんか怖いこと言ってるおっとりお姉さん系の女性、確実に滑舌がわるいであろう大輝と同い年ぐらいの少女。そして、その四人の姿を見るや否や若い人たちからベテランまで口々に何かつぶやいてる。
「......聖霊国華の四姫だ......。」
「華の四姫?」
「知らねえのか?数少ない女性Aランク冒険者のパーティだ。どこの誰がつけたか知らねえがあの四人のことをそう言うんだよ。」
大輝の疑問に近くの冒険者が答えてくれた。まあ、なんとなくわかった。要するにめっちゃ強いアイドル冒険者ってことだな。隣にいるエミュもあの四人のことを強いと呟いてるし。
大輝が状況を理解し終えると何やら見られているだろう視線をあの四人から感じた。......もしかして俺が男だとわかったのか?いや、確証はないな。とりあえずわかることはリュークとラドフというすげー強い存在感のするやつらを軽く無視している。まあ、俺があの立場であったなら間違いなく同じ行動するだろうけど。......あ、目が合った。
大輝と目が合った男装麗人のようなカッコいい女性はなぜかしゃがみ込んで、さらにクラウチングスタートの体勢をとった。なにかわからないがこちらの身が危ない。そして大輝が身構えるよりも早く、女性は大輝に向かって飛び出した。
「マイスウィィィィィィィィトハァァァァァァァァ二―――――――――!」
「え!?え!?ちょ......あああああああああ!」
カッコいい女性はカッコよさを微塵も見せずに周囲の目も気にせずに大輝の胸元に飛び込んだ。大輝はまるで大型トラックに突っ込まれたかのような衝撃を受けてそのままブラックアウトした。
「ハニー?ハニィィィィィィィィ!!」
静かなギルド内にカッコ悪い女性の声だけが響き渡った。
急いで作ったので見直しが甘いところもあると思いますが、なにとぞ暖かい目で見守ってくれると幸いです。




