第13話 我らは男であって
「これでクエスト20件受けたことになりますので、おめでとうございます。Eランクに昇格です。」
「やったね。大ちゃん。」
「地味に長かったよな。」
大輝は昇格で嬉しい顔と疲れ切った顔が混じったなんとも言えない表情をしていた。大輝はふとそれまでの道のりを振り返った。
時はさかのぼって装備屋を後にして、初めてのクエストを受けた時のこと。大輝は特に凄まじい潜在能力を持っているという訳でもなく普通にFランクだったので、基本的に薬草採取というE、Fランク以外誰もやらないクエストを受けていた。一応一つ上のクエストも受けられるのだが大輝は慣れるまでFランクのクエストを受けていた。
それからEランクのクエストを受けるようになると大輝にとって精神的に堪えることが続いた。それは動物系の魔物を殺すことだ。この村に来るまでにそれらの魔物が死ぬところは見たことはあっても、自身で手を下したことはない。その時が初めてだった。
ラノベや漫画のように切るのは簡単ではなかった。肉を切っている感覚が妙に慣れなくて、慣れるまで何度も躊躇し、危ない目に合い、エミュに助けられた。そして、切った後の良心の呵責が大輝を襲った。今思えば、あの時を乗り越えられたのはエミュが助けてくれたおかげかもしれない。
そして現在に至る。
「時間あるけどどうする?」
「軽めのやつ受けようか。それじゃ、この『マンドラゴラの採取』ってやつはどう?」
「私はそれで構わないよ。」
大輝はエミュの反応を確かめるとクエストの紙を受付嬢に提出した。
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大輝たちは村から少し離れた森に繰り出していた。ここら辺にマンドラゴラが自生しているとのこと。甘い匂いがするということなので、大輝はエミュの嗅覚を頼りにマンドラゴラを探していた。
「......それにしても甘い匂いか。」
大輝は疲れた顔でため息を吐く。甘い匂いと言えばアレしか思い浮かばない。俺の記憶に色濃く染みついてやがる。......いや、考え過ぎだ。念のため調べたがそんなことは記述されてなかった。記述されていたことはよく知る引き抜いたら叫び声をあげるってことぐらいだ。ただ、叫び声を聞いても死ぬことはなく、気絶するだけでそれも意識を強く保てば気絶しならしい。
そして大輝は木に絡みついている蔦を見つけた。これがマンドラゴラがある目印らしい。大輝は蔦を辿って地面から出ているところを探し出し、一気に引き抜いた。
「うっふ~~~~ん。」
「........。」
「違うみたいだね。」
実はこれも記述されていたのだが、マンドラゴラにはモドキが存在するらしく、正しく大輝が見つけたのがソレだ。特徴としては引き抜いた時の声が叫び声ではないというところと.......
「意外ときもいね、これ」
「!......確かにそうだな。」
エミュの言う通りでマンドラゴラは人型に近く大の字の形をしているのだが、このマンドラゴラモドキは言わば美脚大根みたいな感じで足を組んでいる形である。もちろんこれに限らずいろいろな形があるのだが、とにかく大の字でないやつはすべてモドキらしい。
まあ、それだけならいいのだが......ついている顔が謎の青髭に無駄に分厚い唇、気持ち悪いほどぱっちりした目、詰まるところ明らかなオカマ顔。......別に悪いとは言わないがもうすでにオリジナルが存在しているんだ。お腹いっぱいなのだお前らは。おいやめろ、ウインクすんな。
二体目
「ドスコ――――――――――イ。」
「これも違うね。」
見た目も声も力士これ以上言うことがない。
三体目
「なんザマスか。」
四体目、五体目、六体目
「何用でござる。」
「なんだニャン。」
「我に何用だ。」
......五十八体目、五十九体目
「なんだってばよ。」
「グサッ」
「ぎゃああああああ」
「おす、おら―――――――。」
「グサッ」
「ぎゃあああああ。」
大輝はただ無心に死んだような目をしながらマンドラゴラモドキの息の根を止めていた。五十九体目にして一つもあたりを当てていない。しかもモドキの声のかぶりは一つもなかった。根気強い方の大輝でも四十体目で一度発狂した。そして六十体目。
「ぎゃああああああああああ。」
「うるせぇぇぇぇぇぇ!!......じゃない、これだ。本物だ。」
「やっと終わったね大ちゃん。」
「終わったぁぁぁぁぁ。」
大輝は脱力するように大の字で倒れこんだ。なんだろうか、この達成感は。軽めのやつ選んだはずなのに全然軽くなかった。依頼内容は一匹だから良かったもののもう一匹あったら一体どうなっていただろうか。
すると近くから聞き覚えのある声が聞こえた。これはリュークの声だ。リュークもこちらの存在に気づくと「よう。」と声をかけてきた。
「大輝、その手にしてるものを見る限りだとマンドラゴラか?お前、よくやったな。」
「どういう意味だ?」
「あれな実は闇クエって言われてて、マンドラゴラを引き当てるのすげー時間かかるらしいんだよな。全然受ける人いないし、だからギルド側はそれが分かってて、その上で黙ってるらしいんだよな。クエスト説明とかなかっただろう?俺たちはそれを知ってたからやってないけど、その様子だと......おつかれ。」
リュークは気の毒そうな顔をしながら大輝を労った。そんなに疲労感が漏れ出てただろうか、いや出ていただろうな。それに加えマンドラゴラモドキの量か。これは依頼内容とは違うけど、これも引き取ってもらえるらしいし。
確かにリュークに言われた通り説明はなかったな。あの時点でギルド側に嵌められていたということか。それにしても闇クエって......響きがもはや闇ガチャなんだけど。......まあ、確かに精神的にくるって意味では同じだな。
「それでお前らは今何やってんだ?」
「何も。つーかこれからだな。」
「そうそう、俺たちがやろうとしてるのはメルトスライムのとうば――――――――。」
「?」
その瞬間リュークとラドフに電流が流れた。そしてすぐに怪訝な顔をしている大輝を両サイドから肩を組んで、女性陣から離すように歩かせると小声で話し始めた。
「大輝、いや同志よ。お前に一つ問う。女性冒険者が魔物に襲われたが、傷つけられず服だけ溶けて辱めを受けるシチュは好きか?」
「......!ふっ、愚問だな。だが、それがどうかしたか?」
リュークの問いに未だわからない大輝に対してラドフは「やれやれ」といったジェスチャーしながら、再び大輝に問う。
「同志よ、俺たちはクエストに向かってるんだが、その依頼内容がメルトスライムの討伐なんだ。この意味は分かるか?」
「......!まさか!?」
「ああ、そのまさかだ。それで提案だ。お前も来い。」
大輝は思案した。正直見たい.......が、エミュを巻き込んでいいものか。正直すごく見たいがそうはいかないだろ。正直とても見たいが装備の替えだってまだ持ち合わせてないし......
「ほらよ、同志。これを忘れないうちにやる。」
「これは?」
「見てみろ。」
言われた通りきんちゃく袋の口を開けるとそこには銀貨が入っていた。これぐらいならもう一着の装備を買えそうだ。......!
「お前ら、どうしてそこまで俺を!」
「同志よ、何が言ってんだ。」
「俺たちは聖書を読んだ仲だろ。それにそもそも最初にこの世界を教えてくれたのはお前だ。そんなお前を邪険にはしない。」
「お前ら!!.......だけど、もしここで俺に会わなくても実行しただろ。」
「「......。」」
「おい、お前ら。」
「まあまあ、落ち着け同志よ。結果的にこういう流れになったんだろ?それでどうすんだよ。」
「俺は......。」
大輝は再び思案する。良くないことだと分かっている、だがなぜだろう、先ほどよりも見たい気持ちが膨れ上がっている。だが......いや.......それでも......うーん。
未だに悩み続ける大輝に悪魔たちがささやく。
「無理をするなよ。」
「うーん。」
「欲望に忠実になれよ。」
「う、うーん。」
「見たいんだろ。」
「んー。」
「正直になれよ。」
「......見たい。俺は見たい!」
大輝の目はまるで操られたかのようにぐるぐるして、そして欲望のままに答えた。その答えにリュークとラドフは小さくガッツポーズをした。
「決まりだな。」
「同志よ、花園の先を見に行こうではないか。」
男三人は戦場に向かった。
前々回、前回とでギルドあるあるのランク説明とかしてませんが、まあ特に無くても話が続くので書きませんでした。一応説明しておくと、高い順にS、A、B、、C、、D、、E、Fとなっています。これだけ知ってもらえれば結構です。必要とあらばこちらで本編にて捕捉します。
それではまた次回




