あんまり記憶力が良くない私は
はじめまして。
ものすごい久しぶりに書いてみました。
以前は夜華とかで書いていました。
盛り上がりも盛り下がりもない淡々としたお話で申し訳ない。
たまにはこういったまったりなお話もいいんじゃい? と思って書いてみました。
「さてと」
私は目の前にデーンと構えている巨大な門の前で手に持っていたトランクを持ち直しながらつぶやいた。
「まさかこのタイミングで過去の記憶というか前世? の記憶的なものをゲットして、自分の立場を理解するとは思わなかったぜ……いや、思わなかったわ」
このままここにいると他の人の通行の邪魔になるので門の端に移動しておく。
門をくぐらない私を他の同年代の人たちは訝しげに視線をよこすが、それよりも自分の今後を左右する入学試験の方が大事なのだろう、すぐに視線を外して門の中に入っていく。
「あー、お嬢さんは中に入らないので?」
さすがに気になったのか、門番さんが声をかけてきた。
「それがちょっと思い出してしまいまして、その思い出した内容に少し問題がありまして」
口調は自然に今までのものが出せたことにほっとしつつ、私は門番さんに当り障りのない感じで答える。
「聞いていいなら聞くが、試験の開始は待ってくれないから行くならそろそろ行かないとまずいぞ?」
「そうなんですよね。んー……やっぱり受験やめておきます。変に引っ掻き回すより最初からいないほうが案外うまく物事は進むかもしれませんし。……というか、そんな決まった行動起こせる自信がないので、このままばっくれ、こほん、このまま姿をくらましてのんびり人生を謳歌しようと思います」
「は? はぁ……」
「ふふ、すみません。私は貧乏貴族の三女ですし、親にはここで玉の輿でも狙えって感じで送り出されたのですが、今までもほとんど育児放棄みたいな扱いでしたし、入学費以外のお金は自分で用意しろとも言われていますので、やっぱり入学やめてというか、入学試験も受かるかわかりませんので、そんな無駄なことにお金は使わずに自分のしたいことにお金を使うことにしました」
こんな私の事情なんて説明されていもいい迷惑だろうに、それでも最後まで聞いてくれた門番さんには感謝をしておく。
それというのも門番さんに話をすることで何となく自分の中でも整理ができたからだ。
困惑顔の門番さんにさよならを告げ、私は軽い足取りで王都を後にする。
「んー王都は人の目が多いから商業都市にでも行って所謂テンプレご飯屋さんでも始めようかなぁ」
指先から小さな火や水、風や土くれを出して問題なく魔法を使えることを確認しつつ商業都市行きの馬車に乗り込む。
やはりテンプレといえばマヨネーズだろうか? でも卵は新鮮さが大事なのでマヨネーズよりも揚げ物とかの方が良いだろうか?
「植物油は見たことなかったから、植物油を見つけるところからでもいいかもしれませんね」
ガタゴトと揺れる馬車の最後尾に座って空を見上げる。
思い出した記憶の中に家族向けの串カツ屋さんの経営展開の情報があったのでそれを真似てみようと思う。
もちろんチェーン展開なんてできないだろうから、お店の位置ではなくて商売内容だ。
それに、おしぼりやお水を無料で配るということ自体が一線を画する日本のサービスらしいし。
山賊に襲われている馬車を頑張って守っている冒険者の方にこっそりとバフ魔法をかけたり、山賊の皆さんの足の小指が箪笥の角に当たった時の痛みを感じさせる黒魔法をかけて応援していると、遠くの空にドラゴンが優雅に飛んでいるのが見えた。
「そもそも男性の記憶をゲットしちゃった私に逆ハーは無理ですし、しかもざまぁさせる側とか相手の公爵令嬢さんに失礼ですしね。そもそもイベントとかいちいち覚えていないので無理無理」
盗賊を全員無事に討伐したのか馬車がまたゆっくりと進みだした。
なんで男性の記憶なのに女性向けの逆ハーもののゲームの知識があるのかとても疑問に思ったけど、まぁゲームの知識以外はそこそこ使える知識もあるようなので有効活用させていただくことにする。
こうして、私こと貧乏男爵家の三女、マリア・フォン・アーネンベルデ・ル・ブラームスは聖女になるはずだった人生と、今までの生活を捨てて商業都市で一番のご飯屋さんを目指すことにしたのだ。
これだけの文章を書くのも久しぶりでしたのでとても疲れました。
あんまり見直していないので誤字などあったらごめんなさい。
指摘いただければ即座に直します。
この後、彼女は商業都市で大衆食堂串カツ屋さんで成功します。
結婚したかどうかはわかりません。
魔法もあんまり真剣に取り組んでいないので初級に毛が生えた程度の腕前です。
顔だけはいいので常連客は多いようです。
さて、実は他にも数年前から温めているお話も3つほどあるのですが、投稿できる日がくるかどうかはわからないです。
一つはおじいちゃんのVRMMOもの。
一つはファンタジーのダンジョンもの。
一つはファンタジーの冒険もの。
です。
では、もし機会があればまた。