序章
砂漠の夜は冷え込む。
昼間の暑さからは考えられない程空気が冷たい。皮膚がぴりぴりとはって、感覚がいちいち鈍ってきてしまう。
私は寒さで麻痺した手の平にはぁと息をかけた。
後、何時間だろうか……………
はいた息は白い。おまけに生温く、感覚は戻る様子はない。身寄りもいいわけではなく、着ているコートはほぼ意味をなしていない。手の平どころか身体が芯まで冷たくなっていく。このまま何時間もこうしていたら、間違いなく身体がおかしくなってしまうだろう。
早く、砂漠を越えて都につかなければ……………
私は歩くペースをはやめる。
十何時間と砂漠を歩いてきたものの都なんて全く見えてこない。辺りは月明かりに照らされた白い砂漠が一面。
私達の生気を奪っていく。このままのペースでは、絶対に間に合わない。都に行く前にみんな野垂れ死にだ。
「カイト………ちょっと急ぐよ」
「………芙蓉<フヨウ>、しかし老人や子供が」
「…………みんな野垂れ死ぬよりマシだ」
「でも」と言いかけてカイトは顔をしかめた。私の言っている事が正しいからだ。
砂漠をいく前みんなで誓ったんだ。
誰が死んでも後ろを振りかえらない。迷わない、進むって。だから、
「急ぐよ」
私がそう言った時、誰一人と反論しなかった。みんなはただ静かに頷いて、進むペースをはやめる。
早く都について、
野望を果たすために――――
私達は砂漠を越えていかなければならないから