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サムライフローマ  作者: いぬっころ
第三章 ローマの錬金術師
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 無数に届けられた手紙の内の一つを改めて読み直し、私は自分の顔がほくそ笑むのを感じた。

 獲物が、この国一番の大物が、私の広げた網の中に誘われてやってきたからだった。

 あとは、力勝負。

 私の網を引き揚げる力が勝るか、大物の膂力が勝るか、単純な力比べだ。

 網を張るにも時間と金がかかっている。

 なんとしてでも、引き上げなければ、それらはほとんどすべて無為な出費に早変わりする。

 このローマでも指折りに業突く張りの商人が、そんなことを許容できる訳がない。

 思いつくすべての用意をしよう。

 奇跡のような幸運で得た機会、これを逃しては商人失格。

 ならば、最高最大の利益を上げなければ嘘だろう。

 ああ、心が躍る。

 頭のいかれた勝負師の顔が、出てしまいそうになる。

 勝ちの決まった勝負はつまらない。

 敗色濃厚の博打に勝つのが最高だ。

 なんてなんて、私は幸運なのか。

 勝ち目の薄い大舞台を、ただ偶然で得られるなんて。

 この勝負で心が躍らないなら、商人などになりはしない。

 今や最大最強の帝国ローマ。

 その第一人者とはどのような人物か。

 曰く、若くして才気あふれる万能の天才。

 曰く、世間を知らぬ絢爛豪華な貴族の申し子。

 曰く、大して才能もない癖に第一人者にまで祭り上げられた哀れな凡人。

 さっぱりわからん。

 わからないからこそ面白い。

 けれども私は決して商人の笑顔を絶やさず。

 我が人生最大の難敵よ。

 あなたは、何をお求めか?

 この商人サウロスが、どんなものでもご用立ていたしましょう。

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