表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
絵の中に在る  作者: 中野あお
1.考える人
4/38

1-3

 手短にできることは手短に、無駄な労力は費やさない。それが私の基本的な考え方だ。

 だから、他人からは「めんどくさがりな人」と思われているらしい。実際、「面倒くさい」は口癖になってしまっているから否定できない。


 そんな私でもちゃんと行動するときは行動する。

 たとえば、副部長としてのサークル活動とか。


 最近、葵はとても悩んでいる。新勧の時期だから仕方がないかもしれないが、少し気を張りすぎだと思う。美術部自体の人数は減っているわけでもないし、活動も滞りなく行われている。他のサークルに比べて人数が少ないのは昔からだし、作品の提出率も良くないとは言っても、毎回何だかんだいって展覧会が開催できるだけは集まる。そんな状況なのにそこまで思い詰めなくてもとは思ってしまう。


 そうは思っていても、葵の前で口に出しはしない。友人として、副部長として葵のことを支えるのが私にできる最善のことだ。そして、最も手短なことだ。私のスタンスはそれで貫かれる。


 いや、なんかかっこつけてしまって、自分を良い風に言っているけれど、ただの理由付けでしかない。


 第一志望で入ったK教育大の美術専攻の学科にいる私だが、正直なところ、この学校に対して特になんの思い入れもない。それどころか、学部にも美術部自体に特に帰属意識のようなものを抱いていないため、普通にしていると単位や卒業に必要な分以外は年に一枚も作品を出さないかもしれないので、友達のためだとかスタンスを貫くとか理由をつけて自分のモチベーションを維持しているだけなのだ。


 めんどくさがりでないにしても積極的な性格はしていないので、そうやって誰かの手伝いでもしていなければすることがなくなってしまう。それでも一応、何もしない学生生活は嫌だとは思っているから、友達なりを利用して適度なモチベーション管理に努めているというのが実際のところだ。


 そんな性格と主義が災いしてか、最近、私が行動したことに対して意図や背景を深読みされることが増えてきてしまった。私が行動する理由なんてただ「なんとなく今がいいと思ったから」でしかないのに、余計な意味を追加されてしまうから動きづらくなる。


 めんどくさい。


 手短にやることによってさらに余計に考慮することが増えるなんて変じゃないか。大学生と言うのはなんでこうも深く考えたがる人が多いのだろうか。


 千夏や朝居なんてのがそうだ。

 まだ知り合って大して時間もたってないのに、何も私のことなんて知らないのに私が動いたりすると注意深く観察してきたりする。ただの自意識過剰かもしれないけど。


 私は大物的なそんな立ち位置ではない。言うならば積極的な第三者である。


 葵にはどこが積極的なのかを教えてほしいなんて言われてしまったが、傍観者よりは十分積極的だと思う。ただ、自分が巻き込まれそうになったら逃げてしまいますけど。


 積極的に関わった段階で第三者ではないなんて考え方もあるけれど、それはこの際置いておこう。


 最近は自分の行動指針がブレがちなことくらいは自覚がある。そろそろこういうごまかしや言い訳がきかなくなってきた。ただ単に三回生になってやらないといけないことが増えてしまったからだ。


 サークルだけではなく、学業の方でも色々とやることが増えている。今年には教育実習もあり、それに向けた説明や練習、指導案の作成についての話などが出てきている。

 もちろん、サークルでは副部長なんて柄じゃないとは思いながらも選ばれてしまったからには仕方ないので、葵の助けになればと思ってやっている。


 そんなことをしているとどうしても手短に済まないことが増えてしまう。

 その中でもできるだけ簡潔に終わらせてはいるが、明らかに活発的になってしまっている。


 動いているとその分手を抜くところが出てきているかもしれない。そういうところとの差を見られて、また「この人は普段、めんどくさがっているだけなんだな。」なんて思われてしまう。


 正しいけど正しくない。


 この誤解は卒業するまで続くのだろうか。それとも、卒業後も―。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ