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絵の中に在る  作者: 中野あお
1.考える人
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1-2

 私が部長をしている美術部は、毎年、新入部員の少なさに悩んでいる。


 マイナーなサークルでこそないもの絵を描くという事を大学から始めるような人も少ないし、派手さもない。どこの大学にもあるが、うちの大学みたいに規模が小さいところでは、地味なサークルに入ってくれる人も少なくなるわけで存続を確実にしていくためにこの時期は新歓に力を入れなければならない。


 この大学には美術の教員になるための学科が存在して、その新入生の八割はうちの部活に入ってくれるのだが、その学科の定員は毎年六名だ。そして、他の学科から入ってくる子は毎年二人ほどしかいない。


 この数字だけ聞けばサークルの存続上、何の問題もないように思うかもしれないが、問題なのはそこではない。問題は兼部を了承しているという事もあり、入ってくる子の半分は掛け持ちであることに端を発するのだ。


 兼部自体はまだいい。部活ではなくサークルである以上兼部することを禁止するつもりもない。それにずっと兼部を認めているのにそこに文句をつけだしたらおしまいである。それこそ、部員が集まらなくなってしまう。


 一番の問題は、作品の提出率が低いことだ。では、どうすればいいのか。答えは明確だ。サークルへの「意識が高い」新入生を何人か捕まえればいいのだ。


「簡単にそれができたら、毎年悩んでないって。早々に千夏が入部してくれただけでも良かったと思いなよ。」


 ここ数日、この話をするたびに、純ちゃんにそう言われる。別に、千夏ちゃんに満足していないというわけではない。むしろ、あんな可愛い子が美術部に入ってくれると、個人的にとても嬉しい。でも、まだ足りないのだ。


「朝居がいるじゃない。彼だって一応それなりに絵は描けるんでしょ。」


 純ちゃんはそう言うのだが、私はまだ彼の作品を見ていないし、作品を描く気があるかもわからないので数に数えていない。少なくとも、部活には参加してくれそうな人という認識である。まあ、美術専攻以外の貴重な部員であることには違いはない。


 それでもまだ二人だ。朝居の方は兼部するみたいだし、千夏ちゃんも積極的ではあろうけど、本人は作品を描くのが遅いと言っているので過度な期待はできない。


 四月も終わりの方だというのに、新入部員はこの二人だけ。例年、この時期が入部のピークだから、作品を出してくれそうな部員を捕まえるしかない。


 例年通りの事情ばかりなら私はこんなに焦っていない。


 今年は例年にまして、同回生や先輩方が作品を出してくれる頻度も少なくなりそうなのだ。学部柄みんな、忙しいから仕方はないのだが、全員が年に一作品とかいう頻度では年数回行う展示会が成立しないのだ。


 そうなるとそれこそ本当に大変な事態だ。だから、部長として私が率先して頑張って、サークルとしての活動が例年通り行えるように進めていかないといけない。


「なるようにしか、ならにならないのに考えすぎなんじゃないの。やれることは手短に行って、無駄な労力を使いすぎずにするべきだよ。」


 そうやって無意気込みすぎる私を止めて、いつも私を支えてくれる純ちゃんがいるから、部長なんて大変なことをやってこられたし、残り半年もやっていけそうな気がする。この時期さえ乗り越えられたら。


 乗り越えるには、あと四人ほど部員が必要だ。今日の新歓には美術専攻の子が二人ほど見学に来る予定だから、それをしっかり捕まえられたら何とかなるだろう。そう思ったら少しは気が楽になる。

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