4-2
当日の段取りは完璧だった。
あらかじめ二、三回生の各部員に来れる時間を聞いたうえで班を分けて仕事も分けていたので大した問題も起きずに進行した。想定外に四回生の方々も手伝ってくれたため部室の準備も着々と進んでいた。
さも私の指揮の下順調に進んでいるかのように言ったが、ほとんどの発案は純ちゃんだ。
彼女のいつものスタンスがこういった時にはとてもありがたい。頭もキレる子なので、私よりも効率的なことを提案してくれる。とても頼りになる副部長だ。
純ちゃんが部長でもいいのではないかとたまに思うがそれでは上手くいかないらしい。確かに彼女が直接指示を出すことはない。彼女の言ったことを噛み砕いて私が指示を出している。純ちゃんが私のブレインだ。曰く、適材適所と。
「お待たせしました。今から顔合わせを始めます。」
精一杯の笑顔と明るさをもって扉を開ける。
「どうぞお入りください。」
扉を開けた時に朝居がいなかったことは意外だった。
彼のことだから真っ先に来ていて待っているものだと勝手に思っていた。メールで確認した時には参加しますという返事がきていたので来ないわけではないだろう。
由々先輩が気にしていたので真っ先にでも紹介を振ってやろうとか考えていたのに、肩透かしを食らった気分だ。
彼のことを気にしながらも来てくれた子たちにしっかりと応対をする。朝居ばかりが特別ではない。むしろ、彼も特別だというわけではない。
「来てくれてありがとう。」
入り口で彼女らを迎え入れるのが私の仕事。中では純ちゃんが席に案内してくれている。中では二回生が各々に何を飲むか聞いて回っている。
ここまで何の問題もなし。
全員を中に入れ終えたところで開始まで十二分。五コマ目まで授業がある子のためにそのような時間に設定している。
「そういえば朝居はまだ来てないんですか。」
ふと横から千夏ちゃんに問いかけられる。彼女の席は扉から一番近いところになったようだ。
「まだ見てないよ。参加するって連絡はもらってるから来るとは思うけど。」
「そうなんですね。」
彼女は彼女なりに彼を気にかけているのだろう。なんだかんだで、この一ヶ月間新歓で一番一緒だったからか。
「彼、金曜日は五コマ目まであるらしいから、来るのギリギリだと思うよ。いつも金曜日の新歓にあまり来なかったのはそういう理由らしいし。」
純ちゃんが横から言う。
意外なところからの情報に千夏ちゃんは驚いたような顔をしている。
私だってきっとそうだ。
千夏ちゃんがそう言うならまだしも、純ちゃんがその情報を持っているとは思わなかったし、金曜日の新歓に朝居が来ていないことなど私は気に留めたこともなかった。
「へー。そうなんだ。なら彼が来るまで待った方が良いか。それに他にも五コマ目まで授業受けてる人がいるかもしれないし。」
元々、部員でもその時間まで授業がある人もいるので待つつもりではいた。
「同じ専攻なのにそこまで知らなかったです。純花先輩が朝居と話してるところ見たことなかったんでびっくりしました。」
同じ専攻だからって他人の時間割は把握していないだろうという言葉は胸にとどめ置く。
「この前始めて話した。その時に一応今日来れる時間を聞いておいただけ。」
「なるほど。純ちゃんやっぱり仕事ができるね。」
「一応入ってくれた子で直接話した人にはそういう話してたし。正直、彼と話す話題も難しかったから。」
淡々と応答する。
彼の来る時間がわかったところで私も席に戻る。
もう一度だけ考えてきた挨拶文章を見ておきたかったのだ。
二回生が上手いこと新入生に気を配ってくれているおかげで部室の中は和気藹々とした雰囲気になっている。私は私の仕事をしよう。
最後のコマを終えた部員や就活相談終わりの四回生もやってきて、役者はそろってきた。新入生はもう女の子が一人やってきて、朝居も少し前にやってきたところだった。
そろそろいい時間かなと思い時計を見ると十八時十四分。
あと一分で始めよう。いや、もう始めてしまおう。
「お待たせいたしました。人もそろってきたというところで顔合わせを始めたいと思います。」
私の仕事をしっかりと成功させよう。




