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1,見知らぬ場所、理不尽な死

ホラー短編を書こうと思っていたはずなのになんか長くなったでござる

「…………?」

 

 気がつくと体育館らしきところにいた。多分私の通っている高校ではない。ここは何処だろうかと周りを見回そうとして──

 

「……!?!?」

 

 首が動かなかった。というより体が動かない。心の中で悲鳴を上げたが口も喉も微動だにしなかった。

 何がどうしたのか。確か私は昨日部活から帰って、家で晩御飯を食べて、ドラマを見ながら妹と雑談して、特に課題が無かったからそのままお風呂に入って寝たはず……とそこまで考えて、ああ、これは夢なんだと思い当たった。明晰夢というやつだろう。珍しいこともあるものだ。そう思うと気が楽になった。

 気が楽になったせいか、目だけは動かせることに気がついた。相変わらず首が動かないが、目で見える範囲だけ確認する。目の前は体育館のステージのようだ。自分の位置は割りとステージに近く、中央よりは右寄りといったところだろうか。左右ギリギリまで見ると、どちらにも自分以外の人間が立っているようだ。何となく、後ろにもいるような気がする。集会の時のようだ。誰の顔は見えないが、知り合いだろうか?

 そんなことを考えていると、不意に

 

 キ"ィ"ィ"ィ"ン"コ"ォ"ォ"ォ"ン"カ"ァ"ァ"ァ"ン"コ"ォ"ォ"ォ"ン"

 

 と酷く耳障りな、しかも大きな音がした。大分歪んだといくか、軋んだというか、思わず耳を塞いでしゃがみこみたくなるような音だった。できなかったが。

 頭がクラクラする。平衡感覚が無くなっても倒れなかったことには、動けない現状に感謝した。目眩が収まった頃、ステージの右手から数人……3人の人が表れた。その人たちはステージ中央で立ち止まり、横に並んで此方を向いた。

 

 ……訂正する。こいつら人じゃない。やたらと大きな、ギラギラとした目が二つ、耳まで裂けたような大きな口が一つのニタニタと笑っているように見える顔。しかも全員が同じ顔で同じ背格好。とにかく不気味な奴らだ。

 

「ハイハーイ、皆様お集まりですねー!」

 

 キンキンとした甲高い声が体育館に響いた。壇上の真ん中の奴の声だ。そして続く一言は私の思考を停止させるのに十分な威力を孕んでいた。

 


 

 

「それでは『処刑』を始めまーす! イエーイ!」

 

 

 

 

 

 

 

 ……今何て言った?

 頭がフリーズしていた。一瞬聞き間違えかと思った。処刑なんて単語、テンション上げて拍手するような単語じゃないはずだ。夢にしたってこれはないだろう。

 

「それじゃー前列の……右から順番に行こうか。それじゃあ君、壇上に上がって~」

 

 一人の男子が壇上に上がった。知り合いではない。隣町の高校の制服を着ている。歩調は淡々としているのに目は酷く怯えている。やはり彼も体の自由を奪われているのだろうか?

 彼は中央で立ち止まり、奴らの方を向いて気を付けの姿勢で止まった。一番右の奴がその前に進み出る。その手にはいつの間にか、不釣り合いな程大きなハンマーを持っていた。そのハンマーを頭上高くに持ち上げる。……嫌な予感がする。

 

「それじゃあ一人目、『ミンチ』でーす!」

 

 言い終わるか終わらないかのうちに、肉と骨が潰れる音が響き渡った。そのハンマーが降り下ろされたのだ。

 血と肉片が飛び散り、辺りは凄惨な状況だった。吐き気を催さなかったのは、余りの現実味の無さに思考が停止したままだったからだろう。

 

「次の方~♪」

「………………」

 

 私の右隣の人が歩き出した。今度は私服の女性だった。ステージに上り、中央へと進む。その目は恐怖に見開かれ、涙が溢れていた。

 ハンマーを持った奴は元の位置に戻り、代わりに左の奴が前に出た。そいつは何か筒状のものを構えている。その筒にはホースが繋がっており、それが背中に背負ったものに繋がっている。

 女性が、先程男子の殺された場所まで辿り着いた。筒先が女性に向けられる。次が何が行われるのだろうか。その答えはすぐ明らかになった。

 

「それでは二人目、丸焼きでーす!」

 

 言うが早いか、筒から炎が吹き出した。人肉の焼ける臭いが辺りに充満する。かなりの熱量のようで、離れている私にも感じ取れるくらい熱かった。

 悲鳴も何もなく、ただただ焼ける音だけが続いている。1分程経った頃に炎が止まり、そこには人だった黒い塊が転がっていた。

 

「上手に焼けました~‼」

 

 真ん中の奴は相変わらず楽しそうだ。

 異常な奴等に異常な光景。流石に私でもこの夢がただの夢じゃないことには気づいている。ここで死んだら、現実の自分がどうなるかなんてわかったものじゃない。しかも次は──

 

「つーぎのっかた~♪」


 ──私の番だ。そう知覚した途端、恐怖が心を支配した。

 足が勝手に動き出す。止まれと念じても止まらない。自分の身体が誰かに支配されていることと、これから起こるであろうことへの恐怖で頭が変になりそうだ。

 一度体育館の端の方へ行き、ステージに登り中央へと、私の意思に反して足は進む。そうして遂にステージ中央に辿り着いてしまった。足が止まる前、足元からバキッと何かが砕ける音がした。何を踏んだのかなんて考えたくもない。

 目の前に居るのは、残りの奴等の配置的にさっきハンマーを降り下ろした奴だろう。ただしその手に持っているのはハンマーではなく……巨大なチェーンソー。

 

 嫌だ

 

 ニタニタとした顔のまま、そいつはチェーンソーを持ち上げる。

 

 死にたくない

 

 そしてそいつはチェーンソーを、勝鬨を上げるように高々と掲げた。

 

 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死んでたまるか

 

「次は~三枚下ろしでーす!」

 そう言った声は最早私の耳に届いていなかった。

 

 こんな訳のわからない死に方をしてたまるか。動けよ、私の身体だろう? 私の意思に従えよ!

 

 チェーンソーの刃がギュルギュルと音を立てて回転し始めた。

 

 動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け

 

 チェーンソーが降り下ろされる。本当はかなり速かったのだろうが、私にはスローモーションのように見えていた。

 

 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ死にたくない死にたくない死んでたまるか動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け──

 

「動け!」

 

 ぶちっと何かが千切れる音がした。髪の毛が何本か巻き込まれたようだが、私は身体をひねってその斬撃を紙一重でかわした──動いた!

 初めて奴等の顔が驚きに染まった。私は考えるより早く、ひねった勢いを利用してをチェーンソーを持っている奴に裏拳を叩き込んだ。私が動けるようになるなど思いもしなかったのか、面白いくらい綺麗に入った裏拳は、後ろの奴等を巻き込んでそいつを吹き飛ばした。

 

「今のうちだ、逃げろ!!」

 

 誰かの叫び声が聞こえた。どうやら今のでみんな金縛りが解けたようだ。振り返ると我先にと体育館の出口の方へ駆けていくのが見えた。

 私もステージを飛び降り、彼らに続こうとして……後ろから物音が聞こえて反射的に横へ飛んだ。

 

 ズガン!

 

 そんな音を立てて、さっきまで私がいた場所に深々とチェーンソーが突き刺さっていた。一歩遅れていたら私に串刺しになっていただろう。 

 ステージを見ると、奴等の一人が立っていた。残りの二人は動かない。気絶しているのだろうか?

 

「よくもやってくれましたねぇ……」

 

 かなり怒っているようだ。ニタニタ笑いが消えている。これはまずい。しかもそいつは、いったい何処にあったのかは知らないがまだチェーンソーを持っている。

 どうしたものかと考えていると、不意に何処からか野球ボールが飛んできてそいつの頭に直撃した。よろめいたところにさらにもう1発、今度は鳩尾に命中し、そいつはたまらず膝をついた。

 

「今のうちに、早く!」

 

 声の方を見ると、入口の陰から一人の青年が焦ったように私のことを呼んで、そして駆けていった。

 拒絶する理由は何処にもない。私はその青年を追って体育館を後にした。

 

 

 

 


主人公「私の名前が出てないんですが(威圧)」

作者「ごめんなさい、次で出るので許して下さい(土下座)」


6/14 サブタイトルを一部変更

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